夏場はどうしてもヤル気がおきない……
うーん、この時期のモチベーションの低下は問題ですねぇ……
とある豪華なホテル。
見渡しの良い上階の高級ルーム。
一拍するだけで、ウン十万という金額がとられるであろう部屋。
巨大なTVに広い個人用の風呂、4人はゆうに寝れるであろう巨大なベッド。
様々な高級な調度品が並ぶその部屋で、凡そふさわしくない声が響く。
「おぉおおおおらぁあああああああ!!!」
それはジェイルの声だった。
変身した姿で、目の前の赤い服を着た女の様なプレイズナーを攻撃する。
『ぎぃ、ぎぎぃ!?』
何とか人に見えるそのプレイズナーが、白目を剥き爪を尖らせ、牙をむく。
恨みや憎しみを持った女性に見えるがなんのプレイズナーなのか、玲久には分からなかった。
だが、このプレイズナーが何をしにこの部屋に来たかは分かる。
「トドメ、だぁ!!」
『チェイン!ナックル!!』
ジェイルナックルで、女性型プレイズナーの動きを封じて鋭い突きのラッシュをくわえる。
『ぎ、ぎぃういいい!!』
「うる、せぇえええ!!」
ジェイルはその攻撃を続け、遂には女性型プレイズナーが動きを止めた。
「やったか?」
目の前で、そのプレイズナーが音もなくはじけると、地面に栞が一枚落ちる。
ジェイルがそれを拾おうとした瞬間、栞が燃え上がり消失する。
消失した栞を確認した後、玲久が振り返った瞬間――
ゾクゥ!!
「ぐぅは!?」
鋭い刃物で全身をバラバラに引き裂かれた!!
そう、
「何者、だ!!」
背後から投げかけられた殺気を感じて、玲久が再度ジェイルに変身している。
そこに立っていたのは、見た事もないライダー。
紫の生物的なボディに、腰にぶら下がるのは本のバインダーだろうか?
『何者』かと、玲久は問うたが本当に何者か分からない。
プレイズナーなのだろうか?それとも、自分たちの様にライダーなのか?
はたまた、以前みたベリアルの様に――
バサァ!
謎のライダーがマントを羽ばたかせる。
「!?」
目の前で思考していたせいか、一瞬だけ反応が遅れた。
殺されると覚悟したが、次の瞬間にはそのライダーは姿を消していた。
「はぁー……」
戦闘で荒れた部屋を見ながら、玲久は足元に転がったミニバーの冷蔵庫の中にあったコーラを取り出して飲んだ。
必至で自分を落ち着かせようとしたが、あのバケモノの存在が頭にこびりついて離れなかった。
「ただいまー」
「おう、帰ったか」
玲久の声に岩さんが反応する。
何時もの殺風景な留置場。
壁はコンクリートの打ちっぱなしだし、床も変わり映えしないし、何より家具が必要最低限しかない。
それも、見た目や使いやすさなど全く考慮していない必要最低限の物ばかり。
さっきまでの部屋とはまさに天と地ほどの差がある。
そして、この場所の主は――
「なぁ、岩さん……」
「んだ、指名手配?」
机に肘をつき、新聞を読んで言る中年の男。
「金持ちって、あんな部屋を借りて住んでるのか……」
「ああ?知るかよ。ンなこと!」
興味ないと言いたげに、岩さんがあくびをする。
「お帰りなさいませ。お茶、淹れますね?」
その時奥から柔和な声がかかってくる。
そして、髪の長い女性が姿を見せる。
彼女はヴァレフォ。
数日前から、この留置所で寝泊まりしている女性で、同時に――
「私の泊まっていた部屋。プレイズナーが来た様ですね?」
ジェネラルが健在だった頃の【監獄】の中でも上位のプレイズナーだった人間だ。
「…………」
ヴァレフォの淹れたお茶に全く手を付けないまま、玲久がヴァレフォをにらむ。
「あの、どうか致しましたか?」
「いいや、別に……」
玲久は冷やかな目をするだけだ。
それもそのはず、玲久は少し前まで――否、現在でもプレイズナーを倒す為に仮面ライダーをやっていた。
だが、そんな玲久は今回は、理由があるとは言えどそのプレイズナーを守っているのだ。
気分が良いという事は決してないだろう。
「まさか、本当だったとはな……」
玲久がため息をつきながら、椅子に座る。
一瞬だけヴァレフォの淹れたお茶に視線を送るが、すぐにそらす。
「何もかわかりませんが、私たちはやはり狙われている様ですね……」
ヴァレフォが目を伏せて、弱弱しく話す。
「まぁ、プレイズナーだから誰かの恨みを買うなんてしょっちゅうだろうな!」
露骨に毒を込めた言葉を投げる。
「ッ……」
仕方ないと分かっていても、ヴァレフォが目を伏せた。
「けど、アイツはまともじゃない……」
玲久が思い出すのは、さっきの謎のライダーの存在。
存在感が違う、滲みだす殺意が違う、そして何より――
「アイツは、まるで……」
玲久の脳裏には、【監獄】の中心――実体化した地獄ともいえる【存在】を否応なしに思い出させた。
「……今夜は嵐に成りそうだな」
沈黙に耐え兼ねた岩さんがそうつぶやいた。
ゴロゴロ……バシャ、バシャ……
夜の闇を雷の光が引き裂き、激しい雨が窓を叩く。
目栗家では、出流がパソコンのキーボードを叩く。
楊とヴァレフォにもって齎された情報は、出流や岩さんの間で共有されてた。
もともと共同戦線を張る存在だ。それは当たり前の事だが一つ出流は敢えて二人に言っていない事があった。
それは――
「あれは、間違いなく父さんだった……」
以前見た父のあまりにリアルな幻影。
いや、あれは決して幻影などではない。
だが父はもうすでに――
「プレイズナーだ!!あれは、プレイズナーに決まってる!!」
机を叩く。
そうだ、そんなことが出来るのは決まっている。
「……なんの、事?」
同じ部屋にいる少年が声をだす。
それは楊少年だった。
看守の一人で、ヴァレフォに付き添っていたが今ではこうして出流に連れられている。
岩さん、玲久と話し合った結果、看守と囚人であるヴァレフォを一緒にしているのは危険と判断されたのだろう。
ヴァレフォは留置所で岩さんが、楊は目栗家で出流がそれぞれ監視する事となった。
「……ここに……ダンタリオンがいた……」
「!?」
楊のつぶやいた言葉に、一瞬だけ出流が反応をして見せた。
知っていたのか。という言葉が出そうになって止まった。
そうだ。楊は看守だった。
ならば、同じく【監獄】の側に属していた側の存在であるハズのダンタリオンを知っているハズだ。
そう、出流にすら見せなかったプレイズナーとしての父の姿を――
「なぁ、教えてくれ。父さんは――ダンタリオンはどんな奴だったんだ?」
「ダンタリオン様……?」
楊がゆっくりと話し始めた。
そこに在ったのは、出流が決して知らなかった父の姿。
警察のトップという立場を利用し、犯罪者を【監獄】へ連れていき新たなプレイズナーを生み出す協力者としての姿。
生まれたばかりのプレイズナーを社会に溶け込ませる役割。
中には出流にとって耳をふさぎたくなる話も合った。
だが、出流はそんな中で父は正義の為に自身の装備を作った事も知っている。
正義だけではない、悪の部分も出流は楊の言葉によって知っていった。
数分後――
「僕の知っているのは、ここまで……」
「そうか……」
出流が楊の話を全て聞き終わり目を閉じた。
自身の父は正義の味方では無かった。
裏で悪人に通じていた。
だが、同時に警官としてしたことも決してウソでは無かったハズだ。
「人の心は天秤だ……正義に、悪に揺れる……」
出流は部屋に会った天秤のディスプレイを見る。
裁判所などにある『公平』を意味する道具だが……
「けど、人の心はこれで傾く……」
楊がポケットからブランクのキーを取り出し、天秤に置く。
キーの重さに引っ張られ天秤が傾く。
「ああ、だから俺たちがいる」
出流が逆側の皿に、シーカーの起動キーを置く。
すると不思議な事に、天秤が丁度釣り合った。
「へぇ、奇妙な偶然もあるもんだ」
「……うん」
二人はプレイズナーとライダーの二つのキーで釣り合った天秤を不思議そうに見た。
その時――
ガラららぁん!!
近くに雷が落ち、外を一瞬だけ照らした。
そして、その光は窓の外に立っていた人物の存在を二人に知らせた。
『やぁ、ひさしぶりだね……』
その人物は、あまりにもフレンドリーに挨拶をした。
「ダンタリオン……」
「父さん……!」
嵐の中、すでに死んだはずの目栗が立っていた。
『こんばんは――』
留置所の夜。岩さんと玲久は一瞬だけ、雨音に交じってそんな声が聞こえた気がした。
「え――?」
次の瞬間
シュン!シュシュン!!
一瞬だけ、建物の中だというのに玲久の頬を風が撫でた。
玲久はその風を受けた頬を撫でると、そこには血が付いていた。
がららららら……!
その後、凄まじい音を立てて留置所の壁が瓦解した。
『良い夜ね?』
雨に打たれてルノアが姿を見せた。
「野郎――来やがったか!」
「岩さん!退いてろ!」
銃を構える岩さんの隣を玲久が変身しながら通り過ぎる。
二人がちらりと、留置所の奥に視線をやる。
その姿にルノアが確信を持った。
『やっぱり、ここにいるのね?プレイズナーが……』
ルノアの羽の攻撃を受けながら、ジェイルが立ちふさがる。
「なんでだ、なんでプレイズナーを集める!!」
『再起動の為――だよ』
ルノアが楽しそうに頬をゆがめる。
「再起動?一体なんの」
『新しいジェネラルかな?』
「ジェネラルだと!?」
ルノアの言葉に、ジェイルが驚きの声を上げる。
あの怪物の事を忘れる事は出来ない。
こことは違う世界から来たとされる怪物、いや形を持った『地獄』とでもいうべき存在か……
「やはり、そういう事ですか……」
扉を開けて、ヴァレフォが姿を見せた。
「アンタは隠れてろ!」
岩さんがヴァレフォの前に躍り出る。
『あはぁ!やっぱりいたぁ……
たっぷり力をため込んだキー……』
うっとりした様な顔でルノアがにらんだ。
その瞬間ルノアの蹴りが、ジェイルを蹴飛ばした。
「ぐぅ!?」
『消え――ちゃえ!!』
ルノアが羽を羽ばたかせ、ジェイルに叩きつける!
『今すぐに――キーを奪ってあげる』
「欲しいのなら、さし上げます」
『え?』
ルノアに向かって、ヴァレフォがキーを投げる。
そのキーは床に落ちて鈍い光を放つ。
『は?なんで?』
理解できないと言った様子で、ルノアが話す。
ここに来て簡単にキーを渡すというのは完全に予想外だったようだ。
「私は……私はプレイズナーに成りましたが、人を苦しめる意図は無かったのです」
「っ!」
ヴァレフォの言葉に、玲久が息を飲む。
『はぁ?何言ってるの?』
それはルノアも同じ事だった様だ。
「私が望んだのは『救い』でした……
苦しむ人々を救う力が欲しかった。
けど、その力は到底人に受け入れられるモノでは無かったのですね……
結果として、私は多くの犠牲者を生み出し、悲しみを増やしてしまった。
悲しい限りです……」
ヴァレフォがその場で涙を流す。
「ふ――ざけるなよ!?」
その言葉に激高した人物がいた。
それはルノアではない、岩さんでもない。
それは玲久本人だった。
「俺はお前たちを倒すために戦ってきた!!
クライムキーは多くの人間を暴走に追い込んできた悪魔の道具だ!!
岩さんも、俺も出流も、ダァトも大切な人を失った!!
それを『救い』だと!?」
ヴァレフォの言葉は、玲久の琴線に大いに触れたらしい。
「お前は自分の悪から目をそらしてるだけだ!!」
「それは重々承知です」
「分かっちゃいねーんだよ!!
そんなんだからお前は、自分勝手に――」
ジェイルが言葉を発した瞬間、ルノアが跳んだ。
そして翼を広げ、ジェイルに切りかかった!!
「ぐぅあ!?」
それは痛恨の一撃となった。
ジェイルは大きく切られ、変身が解除され床に転がった。
『許し?赦しってなに?誰がそんなの望んだのよ?
正義なんて知らない!!正義なんてくだらない!!
誰も、誰も助けてくれなかったのよ!!
正義も悪も関係ない!!私を助けてくれた存在だけが、私にとって正しい!!』
ルノアの様子がおかしい。
彼女にも、何か思う所があったのかもしれない。
そして、その思う所が玲久よりもずっと、深い所に通じている様だった。
血の滴る羽を振り払い、尚も玲久に襲い掛かる。
最早、キーなど眼中に無いようだった。
『死――ねぇ!!』
その時玲久とルノアの間に岩さんが滑り込んだ。
構える手にはリボルバー、引き金を引き絞る瞬間、岩さんは手を離した。
グさぁッ!!
「ぐぅ!?」
岩さんの体にルノアの爪が突き刺さった。
「岩さん!!」
玲久が声を絞る。
「待て!犯罪者!!」
岩さんが玲久を諫める。
「まったく、跳んだじゃじゃ馬だな……」
岩さんがルノアの頭に手を置く。
『なんの、つもり?』
「俺はな、プレイズナーだからって差別は、しねーんだ……
わりぃモンは叱りつける。
だが、オメェは助けを求めてる気がしたんだ。
なら、助けねぇとな……」
岩さんが優しくルノアの頭を撫でる。
その行為はルノアの中にある過去の優しい記憶を思い出した。
自分を大切にしてくれた少女。
そして悪意に飲まれ死した存在。
「私ね……私ね……」
その行為は悪意のみで固まった人形の心に響いた。
「ああ、分かってる、分かってるさ……
もう、何も言わなくていい……もう、なにも……
ずっと、助けて欲しかったんだよな?誰かに……
もう安心だ、俺が来た……俺が、お前を助けに……きた……だから」
ルノアを抱きしめると、岩さんはそのまま倒れた。
そして、それにつられる様にルネアも倒れその後には一体の人形が残った。
「岩さん……なんだよ。アンだけやって助けたの人形かよ……」
玲久が茫然と倒れる岩さんを見る。
ルノアは確かに人形だったかもしれない。
だが確実に心を持ち助けを求めていた。
岩さんは最後の最後まで、正義の味方として生きていたのだろう。
「すげぇよ……やっぱ岩さんはすげぇよ……」
助けたのは人形だ、人ではない。
だが、彼の行いは確かに救われない存在を救ったのだ。
ライダーでもない、ただの人間が度を越えた悪意を存在を
「そうですか……」
ヴァレフォが目を伏せる。
岩さんとそこまで深い間柄では無かっただろう。
だが、それでも相手の気持ちは分かるハズだった。
彼の強い心は、決してヴァレフォを差別はしなかった。
「悪い……岩さんを病院へ連れて行ってくれるか?
致命傷――いや、岩さんは殺そうとしても死なない系の代表だけど、これ以上は本当に危ない。
だから――」
『そんな事が出来ると?』
一瞬だけ、不愉快な声がした。
嘗て戦ったクレルを思い出させるほどの声が――
「お前は――!?」
破壊された壁の向う。
一人のライダーが立っていた。
腰につけるのは、本の様なバインダー。
そして、そのバインダーから栞を抜き、それを剣に変えた。
『ヴァレフォのキーは頂いて行こう』
投げた剣がキーを弾き飛ばすと、キーは吸い込まれる様にライダーの腰の本に吸い込まれた。
「お前は、何なんだ!?
クレルなのか?それとも――」
『私が何なのか、それは私自身にも分からない。
貴様が破壊したジェネラルの膨大なデータを寄せ集め、クレルのデータを繋ぎ合わせ、プレイズナーたちのデータを組み合わせ偶発的にそして必然的に私は生まれた
私は、散っていった者たちの力を取り込み我が糧とする。
この身にすべてのキーがそろいつつある。
その前に、貴様らを倒すのが我が望み。
集まるがよい。我らは貴様らを必ず屠る』
その言葉と共に、謎のライダーは姿を消した。
だが、その言葉はジェイルの最期の戦いが近い事を示していた。
「この先――
岩さんの傷を手当しながら、玲久がつぶやいた。
ジオウ映画見てきました!
見てみてサプライズ出演の多さにびっくり。
マイナーすぎて「え、誰?」となるのも居ましたが……
私は、十分楽しめました。