仮面ライダージェイル   作:ホワイト・ラム

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さて、駆け足で進みましたが、仮面ライダージェイルの遂に最終回です。
皆さま今までご愛読ありがとうございました。


悪意の終焉

一体いつからだろうか?一体誰からだろうか?

知らない内に眠りに落ちる様に、知覚しない内に時が過ぎる様に……

『ソレ』はゆっくりとゆっくりと、しかし確実に進行していた。

無数の悪意が生みだされ人に寄生する。

そして、寄生された人間は町に広がり新たな寄生できる存在を探す。

最後に十分に悪意を溜めた人間は再度ここに帰ってきて……

 

 

 

 

 

「父さんを見た……あれは本物じゃない、プレイズナーだ!!」

出流が岩さんに電話をかける。

 

「おう、こっちにも他のバケモンたちが来たよ。

指名手配犯は前にお前と一緒に行った山へ向かった。

知ってるだろ?前貰った、プレイズナー候補の地図。

そのメンバーの殆どが行方不明、または死亡している。

だから、この山は生き残ったプレイズナーに会える最後のチャンスかもしれんな」

岩さんが電話を切る前に、出流はビフロントの山へと足を進めていた。

 

「頼む、ライダーたち……俺は、間に合いそうにない……」

ルノアとの戦いで傷ついた体を岩さんは抱えた。

包帯を巻いた胸の下、血がにじんでくるのが分かった。

 

 

 

 

 

夕焼けが沈む世界。

玲久はその夕日の背を向ける様に、とある山に向かってバイクで進んでいた。

ヴァレフォの情報に在ったリストの中で殆どの住人が、襲われ消えている事が分かった。

そして――

 

「ん?」

玲久の操るバイクの隣に何者かがいつの間にか並走していた。

黒いバイクに黒いヘルメット。

そして、地面を蹴って飛び上がる3つ首の小さな機械。

 

「よぉ、ダァト。来てくれたのか?」

 

「フン、貴様が俺に尋ねたのだろう?

お前の予想通りだ、ジェネラルおよびクレルが消失したことで《監獄》そのものは自然解体された。

もともと、力だけで制御されていたんだ。

頭が居なく成れば、存在できる可能性は――ゼロだ」

 

「だよなぁ?ならさ、今までのリストに居た人たちはどうなった?

攫うにしろ、殺すにしろ、『場所』は不可欠だよな。

だが、大勢の人間を閉じ込める場所もない、死体を仕舞っていくスペースも用意できない」

 

「だが、その『場所』は()()()

大がかりな道具を隠せて、大勢の人間を集められて、尚且つ――」

 

「普通の人間が入ってこない場所!」

ダァトの情報から齎されて、クレルの居なくなった後の情報。

そしてそれら二つを考慮して考えられる可能性は一つに絞られた!

 

「山だな?ビフロントの個人所有の!!」

 

「ああ、そうだ、そこで厄災の最後の残り香が眠っている!!」

二人は全力でバイクのアクセルをふかし、以前向かったビフロントの山へと向かった。

 

 

 

 

 

カチっ!カチっ!

 

嘗てビフロントの住んでいた地下迷宮の奥の奥。

その最奥部に異様な部屋が存在した。

 

3メートルを超えるであろう金属の様に見えるプレート。

所々歯車が見え、小さく軋む音が漏れている。

そしてそれには無数の鎖が生え、その先に錠前がぶら下がっていた。

一見するとひどく悪趣味な、オブジェに見えた。

だが、これはそうではない。

 

きぃぃぃ……

 

地下にあるこの部屋に繋がる扉が開く。

そして――

 

ゴシャ

 

人がその部屋に、まるでゴミの様に投げ込まれた。

そして、数秒その人は痙攣して水が弾ける様に形を失い、赤黒い血に変換されてプレートに吸い込まれていった。

 

かちッ!

 

プレートに繋がる錠前の内一つが外れ地面に落ちる。

だがそれだけでは終わらない。

 

ドさっ、ドさサっ、ドさサっ!

 

次から次へと、人がその部屋に落ちて溶けて吸収される。

歯車の見えるプレートは、溶けた人間を吸収する度に少しづつ少しづつ動いていく。

そして――

 

ずるっ、ずずずっ!

 

地の溜まった中から、鎧の騎士が姿を見せる。

赤黒く錆びて腐食した鎧。

だがその鎧が血を吸って、再生していく。

歪にまがまがしく。そして忌々しく……

 

『新たな体が完成した。これでまたライダーたちを始末できる』

振り返るとそこには無数の怪人たち。

ある者はルノアを模して、ある者はクレルを思わせ、またある者はライダーを思わせる姿をしていた。

 

『もっとだ、もっと悪意を満たす体を。

体を満たす為の悪意を!!もっと、もっと、もっとだ!!』

そこは悪意の工場だった。

人の悪意をかけ集め、絶望に染まった人間を材料に新たな体を作り出し、悪意という人格を埋めつける最低最悪の悪意工場。

 

『あのクズを生かしておいた意味は在ったな。

まぁ、大した材料にはならなかったが……』

少し前に、自身を作る為の材料に成った者を事を思い出す。

 

『ソレ』に名前は無い。

嘗てジェネラルが残した残骸が、勝手に意思を持った『物』。

誰に願われたでもなく、誰かのためでも、無論自分の為ですらなくただただ目的も無く悪意をばらまき増やすだけの存在。

それが、この存在の正体だった。

 

『もっと、壊す。もっと苦しませる。もっと、もっと、もっと』

行きつく先など無い存在が部屋で吠えた。

その時――

 

「おぉおらぁ!!」

 

「ぬぅんんん!!」

2台のバイクが壁を突き破り侵入してきた!!

 

『お前は、お前たちは!!』

 

「よぉ、こんな所に隠れてたんだな?」

 

「お前らをこの場で、倒させてもらおうか?」

玲久とダァトが同時にバイクから飛び降りる。

そして――

 

「「変身!!」」

玲久が鍵を、ダァトがバイトを構えて同時に変身する。

 

次の瞬間、地下に二人のライダー、ジェイルとハウンダーが立っていた。

 

「行くぞダァト!」

 

「無論、そのつもりだ!!」

二人が同時に飛びかかった。

 

 

 

『ゆけ――悪意の結晶たちよ……』

地面のこぼれる血肉や残骸が皆、同時に浮かび上がった。

腕の形を取る物、剣の形を取る物、鳥の形、人の形、ケダモノの形……

様々な怪人と、怪人モドキが二人に遅い掛かった。

 

「そんなもので!!」

 

「我らを止められるか!!」

10、20、30と次々飛んでくる存在を打ち倒していく。

 

『止められんか?有象無象では……な!!』

『ソレ』が両腕を広げ砕けた。

そしてその一瞬後に、姿を変えた。

 

『壊したい、刻みたい、破壊したい、害したい、害したい!害したい!!』

『ソレ』噴き出すような悪意は狂気として凶器を司った。

凶器が形を作り、全身が鎧を作り出した。

鉄の銀と血の赤が混ざり合い、いびつな鎧騎士が姿を見せた。

 

キィン!がぎぃン!!

 

鎧騎士が二人の蹴りを同時に弾き飛ばした。

 

「コイツ」

 

「固い!!」

 

『…………』

鎧騎士がランスを振るう。

ジェイルは攻撃を躱し、ジェイルナックルを召喚して鎧騎士の首にチェーンを巻き付けた!

 

「お――らぁ!!」

部屋の穴から飛び出し、首吊りの要領で思いきり鎖をひっぱる!

壊せないなら、締めて倒す事に二人は移行した。

 

「ダァト!!トドメを――」

 

「できるか!!この攻撃で!!」

ダァトの言葉通り、凄まじい攻撃が二人を襲っていく。

本来ならばジェイルが締め上げ、ダァトがトドメをさす気だったが鎧騎士の攻撃が激しく攻撃をするスキがない。

 

『!!、!!』

鎧の騎士が、ひたすらに暴れる。

槍、剣、こん棒、ムチなど様々な武器が鎧から生み出されては攻撃を繰り返してくる。

 

そんな時――

 

『シーカーシュート!!』

一条の光線が暴れていた鎧騎士を打ち抜いた。

数秒の後、暴れていた鎧騎士が、動きを止める。

そして、小さく爆ぜて破片が再度溶けて形を失う。

 

「来たのかい?坊ちゃん?」

 

「無論だ!!俺は最後の最後まで正義の味方だ!」

入口からシーカーが身を躍らせる。

 

『まだ、まだ!』

溶けた破片は再度機械に取り込まれ新しい姿を手に入れる。

今度は餓鬼の様な姿、手足が細く長く、胴体のみが膨れている。

鋭い爪でジェイルに襲い掛かる。

 

「舐めるな――三下」

ダァトが踊りかかり、餓鬼の腹にバイトをめり込ませる。

 

『うっぷ!?』

餓鬼は一瞬目を見開き、再度破裂して姿を失う。

そして先ほどと同じように機械に吸収され姿を新たに加える。

 

『無駄ね、貴方たちじゃ私を倒せない』

何処かルノアを思わせる、女性に変化して鋭い牙を見せて飛びかかる。

 

「見せてやるよ、人間の可能性を!」

今度はシーカーがシーカーレンズを振るい、相手を打ち倒す。

そしてまた新たな怪人が生まれては倒される。

 

繰り返される怪人の崩壊と再生。

ライダーたちがそのたびに怪人たちを倒してく。

10は確実に超えた、100に行くかもしれない。

実際は最早すでに100すら超えているかもしれない。

 

機械が生み出し、ライダーたちが倒す。

まるで無限に思えるこのサイクル。

だが――

 

「おらぁ!」

 

『あぁああ!』

黒いのっぺらぼうがジェイルの一撃で霧散する。

 

「おい――コイツ等」

 

「弱くなってるな?確実に……」

 

『弱い?そんなワケなどない!!

悪意は絶対!!悪意は不滅!!貴様らは、終わることの無い無間地獄に――ぐぅ!?』

人面蝙蝠を叩き落し、ハウンダーが鼻で笑う。

 

「その可能性はゼロだ。なぜなら、お前たちは今まで決して俺たちに勝てていない。

何故か、分かるか?」

 

『偶然だ、偶然貴様らが――うぅえ!!』

次から次へと湧き出る怪人。

だが、そこの苦戦は無くなっていく。

最強の怪人から始まったこの戦いも、すでに――

 

 

 

 

 

『やめろ!やめるのだ!』

最後に機械から生み出されたのは、人のなり損ないだった。

短く左右のバランスが取れていない手足、半分が骸骨の様に骨がむき出しになり、歪んた頭部。

余にか弱い、子供の様な大きさでそれは現れた。

 

『わたしは、あくいをでんぱした、だがそれはにんげんがのぞん――ぎゃ!?』

ジェイルの拳が、なり損ないを打ち据えた。

ゴロゴロと転がり、地面にうつ伏せになって倒れる。

 

「人間は悪意だけで生きていない!!」

 

『だが、かくじつにあくいは、ある!』

 

「在るな。俺はそれを利用した――」

ダァトがつぶやくように、玲久にバイトを投げ渡す。

 

「だけど、それを防ぐ心も必ずある!!今お前の目の前に!!」

 

『う、あ……』

なり損ないが膝をつく。

最早、体を構築するだけの力も残っていない様だった。

その姿を見て、ジェイルがバックルにキーを差し込む。

 

 

 

「トドメだ。ライダー……」

 

『やめろぉ!』

なり損ないが飛び上がり、ジェイルの邪魔をしようとする。

だが――

 

「パンチ!」

ジェイルの拳がなり損ないごと機械に突き刺さった!

確かな手ごたえの後、機械が壊れだした。

 

『ああ、だめだ、きえる、きえてしまう……きえて……すべて……なく……なって……』

 

「違うさ。あんたには最初から何も『無かった』のさ」

ジェイルが拳を引きぬくと同時に機械は沈黙した。

そして音もなく全身にヒビが入り溶ける様に砕けていった。

 

「俺たちの仕事は終わりだ」

 

「こっからは、人の心にある正義の出番だ」

ダァトと玲久二人が話し合う。

 

「お前たち、まさか……」

その様子に、出流は何かに気が付いた様だった。

 

「ジェネラルの最後の遺産が残ってる」

 

「ああ、()()にな」

二人が自身の胸を親指で刺す。

 

「おい!待て!!ま――」

出流が二人の意図を理解した瞬間、バイトが口から黒いガスを放つ。

そしてそのガスが晴れた後には――

 

 

 

 

 

「えー!結局二人ともいなくなっちゃったんですか?」

華姿が事の顛末を聞いた岩さんに、言葉を返す。

 

「ああ、ま、俺様としては犯罪者が野放しに成ってる事は問題だが……

それより今は昼めしの方が大事なのよ~っと」

岩さんが天丼に箸を突っ込む。

留置場の一日はまたこうやって過ぎていく。

 

 

 

 

 

額に『絶対合格』の文字を入れたハチマキを巻いた出流が気合を入れる。

 

「うぉおおおおお!!ファイト!!ファイト俺!!

こんどの試験で必ずトップで合格だ!!

俺こそが、正義の味方に成る!!」

 

「坊ちゃま……」「坊ちゃん……」「ご子息様……」「出流様……」

ドアの隙間から、力を込めて勉学に励む様子を4人の使用人たちが見ていた。

彼の努力が実を結び、自称探偵かられっきとした警察官に成る日も近いだろう。

 

 

 

 

 

「さぁ、楊君行きますよ?この世の中には救いを求める人はたくさんいますからね」

 

「はい、ヴァレフォ様!」

楊が一台の車椅子を押す。

そこに座るのは一人の老婆。彼女こそキーの力を失い本来の姿に戻ったヴァレフォその人だった。

 

「あの鍵の力なんて頼らず、私は私の力で世界を救ってみせるわよ?」

 

「ヴァレフォ様、ご無理をなさらずに……」

 

「老い先短いこの体、無理をしなくてどうするというの?」

二人は仲良く、新しい道へと進みだした。

 

 

 

 

 

「そう言えば、結局玲久君とはしっかりお話できなかったな……」

華姿がお茶を出しながら、つぶやいた。

 

「んだぁ?女学生、アイツに気でもあったのか?」

 

「在りませんよ。ありませんけど……お礼位はしっかり言いたかったです……

何処か心当たりありませんか?」

 

「さぁなぁ、また旅にでも行ったんじゃないか?

なんせ――」

 

「なんせこの世界は広いから、ですか?」

岩さんの言葉を華姿が先読みする。

 

「へっ!そういうこった!」

 

 

 

 

「へっくし!あ~……なんだ、急に?誰か噂してるのか?」

何処か遠い場所で、一人の旅の途中の青年が天丼を食べながらくしゃみをした。

 

「汚い。ひどく不愉快だ」

隣にいた男が、むすっとしながら答える。

 

「あ、わり!」

 

「……俺は、このまま『島』へ向かう。

あそこは形こそ変わったが、俺のふるさとともいえる場所だ」

男はそう言って、現金をテーブルにおいて立ち去っていった。

 

「んそっか、ばいばーい!」

もう一人男が残され、漬物を食べ始める。

そして、去っていった男の姿が完全に見えなくなった頃――

 

「ごっそさん!さ~て、次は何処へ行こうかな?」

名も無き青年は、お勘定を払うと店の外へ出てバイクにまたがった。

見上げた空は、何処までも蒼く広く澄み渡っていた。




正直言って、上手く書ききれなかった感がすごいですね……
うーん、やっぱりライダーを書く作家さんはすごいとしか思えなかったり……

何処かで、またリベンジしたいですね。
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