仮面ライダージェイル   作:ホワイト・ラム

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すいません!
今回で終わる予定の話が長くなりました。
次回で、きれいに納めたいと思います。


歪曲する感情/闇の中の胎動

薄暗い狭い路地を一人の女性が進んでいく。

そして、広い場所に出るとともに目を顰める。

 

「どうにもここは、辛気臭いですね」

ヴォレフォが自身の席に座る。

そこは、異様な空間だった。

螺旋状に床の作られた、巨大な穴。

天から大きな杭を打ち込み、そしてそれを引き抜いた跡の様だと言えばわかるだろうか?

席は最大72個も有るのだが、その全てが序列準に並んでいるので6位の自分を探すのは楽なのがせめてもの救いだ。

 

「あー、席順とかめんどくさいぜ……」

下の方で文句が聞こえる。

そちらに目をやると37番目のフェネクスが悪態をつく。

 

彼の機嫌は分からないでもない。

この序列など最早無意味だ。

椅子には空席が目立ち、50近くの席が空白。

寧ろ逆に、座っている人物は10人程度しかいない。

もともとあった序列も、出席番号の様な物にすぎない。

 

「なぁなぁ、この前また一人やられたんだろ?」

序列19位の男、サロスが口を開く。

穏やかな口調だが、要するに楊がキーを、しかも数字付きを破壊されたことを弾劾したいのだろう。

サロスはいつもそうだ。自分のしたい事しかせず、他者の失敗を待っている様な奴だ。

 

「キー自体は修復可能。楊もしっかり生きています。

何か問題が?」

 

「ああん?直せるから問題ねーですってか?ふざけんなよ?

お前の失敗に俺たちの王はお怒りだぜ?」

サロスが椅子から立ち上がり、穴の底を指さす。

 

二人の視線の奥。

大きな穴の底には、地面に巨大な扉が付いていた。

 

ガァン!!ガシャン!!ガシャン!!

 

何かが内側から叩くようにして、扉が少しだけ開かれる。

しかし、すぐに扉を閉める無数の錠前の鎖で妨害され、わずかにスキマが開いただけだった。

 

「さぁ、『ジェネラル』お怒りだぜ?」

ジェネラル、この扉の向こうの存在はこの組織のメンバーにそう呼ばれていた。

誰が呼び始めたのか、わかりはしない。何時から存在するのかも分からない。

言葉も話さず、タダ態度で示すのみ。

 

分かっているのは、このジェネラルの封印が72本のキーで行われている事。

そして、上位へと進化したクライムキーには1~72までの数字が被らない様に振られる。

そう、まるで「罪を重ね、その悪意を自分に差し出せ」と言う様に、ジェネラルはキーを求める。

 

「お前の目を掛けている小僧のキーだけじゃ、足りない!

お前のキーも食わせたらどうだ?」

嫌な視線をこちらに這わすサロス。

 

「なぁ――」

 

『貴方のいう事はおおむね正しいですよ?』

部屋に響いた声に、その場にいる全員が不快感を示した。

 

「クレル……!」

サロスが忌々しそうに、その男の名を口に出した。

 

『はぁい、正解です。ジェネラルのメッセンジャー、クレルですよ?』

ニコッと笑って見せるが、その笑みを見るだけで不愉快な感情が全身にあふれてくる。

看守の服を着た、ジェネラルのメッセンジャーたるクレルは見るものすべてに不快感を与える。

見た目が醜いや、体臭がキツイなどという事は無いのだが、なぜか不快感を感じずにはいられないのだ。

いうなれば、蛇や蜘蛛、蝙蝠などの生物を見たときに抱く理由のない不快感に近い。

 

『サロス、貴方は人の事を言えませんよ?

何かを研究する訳でもなく、戦いに出向きダァトやジェイルを倒す訳でもない、挙句の果てに新たなプレイズナーを作りもしない……

ならばいっそ、ジェネラルの慰めとしてキーと悪意を差し出したらどうですか?』

感情の全くこもっていない言葉に、サロスが震える。

 

「ま、待ってくれ!俺だって、俺だって、そ、そうだ!!!

今すぐ俺に外出許可をくれ!!ジェイルを捕まえる!!ダァトを破壊する!!」

 

『ん~~ダメですねぇ。

ジェイルは倒しても良いですが、ダァトは回収してください。

それに二人の居場所、貴方知ってないでしょ?』

覗き込むように異様に顔を近づけるクレル。

 

「じゃ、じゃあ――」

 

『はい。じゃァ――死にましょうか?』

クレルの腕が、サロスの喉をつかみ――

まるでゴミでも捨てる様に、穴の中央に投げ捨てた!!

 

「うわぁあああああああ!!!」

サロスは飛行系のプレイズナーではない。

いや、不幸な事に今飛行を得意とするプレイズナーは誰も居ない。

 

ゴン!

 

小さな、何かがぶつかる音が穴のそこから聞こえた。

 

『いやぁ、いつ見ても絶景ですね!』

扉の真ん中、サロスに向かって無数の黒い手が絡みつく!!

そしてサロスを開いた扉の隙間へ押し込もうとする。

 

「いやだぁ!!助けて!!死にたくない!!俺は、俺はまだやりたいことが、ああ、いやだぁ!!!いやだぁあああああ!!!あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”」

完全の扉に押し込まれ、サロスの声が聞こえなくなった。

 

そして、ジェネラルを縛る鎖の鍵――ナンバー19が音もなく開いた。

こうして、またジェネラルの復活が一歩近づいた。

 

シンと静まり返った部屋は、クレルのにやにやした笑みだけが異様に生き生きしていた。

 

 

 

 

 

『厄介なのに、気づかれたか……』

ビルの屋上、そこに立っていたプレイズナーがこちらを見上げるジェイルを確認した。

この鍵をくれた少年が言っていた。

 

(自分たちを邪魔する奴らもいる)と。

 

『お前なんだな!』

プレイズナーが、ビルの屋上から飛びおりた。

 

とっ……

 

地面に降りるや否や、周囲の様子を改めてみる。

トラックは子供の列に飛び込みはしなかったが、目の前のジェイルが無理やり止めたことで道路は大渋滞。

車同士がぶつかって、廃車に成ってしまったであろう物も多い。

控えめに言って――惨状だった。

 

『ぐふ、ぐふふ……』

 

「おい、てめぇ!何笑ってやがる!!」

トラックの中から下りてきた男(服装からして警察だろうか?)がこちらに銃を向ける。

その近くの、白黒のヤツはプレイズナーを睨んだままだ。

 

『警察か……見てみろよ!俺の力を!!

これ全部俺がやったんだぜ?全部、全部だ!俺にはその力が有る!!

俺を止められるか?止められるか!?警察に白黒ぉ!!』

 

「白黒?違うな、俺はジェイルだ!!」

ジェイルがベルトの鍵をひねる。

 

『チェイン・ナックル!!』

手錠の様な、ナックルガードが出現してとびかかる!!

 

「うおぉぉぉぉ!!」

 

『な、にい!?』

高速での1、2コンボ!!

プレイズナーが、腕でガードするが簡単に跳ねのけられ、胴体に2発ほど食らう!!

 

『ぐ、う……つえーじゃねーの……だけど!!』

プレイズナーが自身の胴をガードする姿勢のまま、指先の矢印を飛ばす。

それはジェイルではなく、さっきまで岩さんの乗っていたトラックとほかの車にヒットした。

 

「? ハズレ――」

 

『じゃ、ないんだよ!!』

 

パチィン!

 

「なにぃ!?車が!

ぐぅあ!?」

プレイズナーが指を鳴らすとともに、その車とトラックがこっちに突っ込んできた!!

2台の車に、ジェイルが挟まれる。

しかし、それだけではない!!

 

『まぁだまだぁ!!』

次々と矢印を発射し、どんどんジェイルめがけて車が突っ込んでくる!!

 

「あああああ!!」

痛みの余り、玲久が仮面の下で悲鳴を上げる!!

 

ガァン!

 

ジェイルの目の前の車のボンネットの上に、昆虫をイメージしたような怪人が立つ。

楊の変身した、クリケットプレイズナーだ。

 

「お、お前は……?」

 

『やぁ、初めましてジェイル。僕は楊、黒輪 楊。

ダァトと君が逃げ出した『監獄』の看守の一人さ』

ジェイルを見下ろすような形で、クリケットプレイズナーが話しを進める。

 

「看守……なるほど、ダァトの後任の一人か。

けど、ダァトと比べるとずいぶん弱いんじゃない――」

ジェイルが話した瞬間、クリケットの蹴りがジェルの顔面を捉えた!!

 

「ぐぁ!」

 

『黙れよ。僕は看守、お前は囚人。囚人が舐めた口を効くな。

僕の育てた『リフレクト』に手も足も出ないくせに』

タクトの様なスティックをジェイルの首筋に充てる。

 

『おい、坊主!!そろそろ、お話は終わりにしようぜ!!

もう、こいつ等ぶっ殺していいんじゃないか?』

さっきまでのプレイズナー。楊の話では『リフレクトプレイズナー』が声を荒げる。

どうやら、自分の遊びを邪魔されて不機嫌な様だった。

 

『うるさいなぁ……せっかくいい気分で話しているのに――』

 

「ああ、そうだ。実にいい()()()()だった」

 

(こいつは何を言っているんだ?)

一瞬ジェイルの言葉に、楊の頭に疑問符が浮かんだ。

だが、その考えはすぐに変わる。

 

ジェイルが腕を振り上げていた!!

その瞬間、何かがジェイルの手から投げられた!!

 

『不味い!』

クリケットプレイズナーが手に持っていたタクトで、それを受け止めたが――

 

『チェイン・スラッシュ!』

ジェイルドライバーの音声と共に、クリケットのタクトが変化した!!

それは緑の大きなカッターナイフを思わせる一本の剣へ!!

ジェイルの新たな武器、ジェイルスラッシャーだ!!

 

『ぼ、僕の力の一部を乗っ取った!?』

 

「知らなかったのか?ドライバーは、他のキーを制御する力を持っている。

ダァトのプレゼント、ここで使わせてもらう!!」

ジェイルスラッシャーを、振うジェイル。

その刀身はカッターの刃の様に伸び、鞭の様にしなった!!

 

『そん――な!?』

しなるジェイルスラッシャーの刃を受け、クリケットプレイズナーが後退する。

そして、そのままスラッシャーは道路脇の街灯へ切り傷を付ける。

一瞬揺れた後、街灯が倒れる!!

その先には、リフレクトプレイズナーによって、潰された車がガソリンをこぼしており……

 

「じゃーな、お二人さん!」

 

『な――』

 

『おいおい!?』

車のガソリンタンクに引火して、爆発を起こす!!

 

『ジェイルは……クソ!逃げられた!』

楊が忌々し気に、人間の姿に戻る。

 

『…………ちッ』

地団駄を踏む楊を、リフレクトが舌打ちをしてみていた。

 

 

 

 

 

「おい、岩さん。岩さん?岩さん!!」

路地裏で、玲久が岩さんの頬を叩く。

 

「叩くな!ったく……関係の無いモンばっかり壊しやがって!」

岩さんが悪態をついて見せる。

どうやら怪我などは全くないようだ。

 

「そう言わないでって、とっくの昔に避難は済んでるだろうし……

第一、あのリフレクトってやつの操れるものが多い場所じゃ不利過ぎるでしょ?」

見た所、リフレクトの能力は物のエネルギー、特に方向性のある物を操れるようだった。

車をまっすぐ進めたり、人の悪意を増幅させているのだろう。

 

「あーあ、ちっとやすむか……」

玲久がそう言って、意識を失った。




サロス敗退……
っていうか、まともに出番すらないとか……
けど、ある意味犠牲者っておいしい役な気もします。
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