そして始まったビルド、やばい、すごい面白い……!
病院の廊下内で、2体の異形が向き合う。
一つはジェイル、もう一つは顔を奪うプレイズナーだ。
「まずは、小手調べッ!」
腰のベルトの、キーをひねる。
『ジェイル・ナックル!!』
機械音声が響き、ジェイルの両手に手錠の様な物が出現する。
「ハァ!!」
ジェイルが、それを投げプレイズナーを捕獲しようと迫る!!
ジャラ……!
『あ、くぅ!』
目論見は成功して、プレイズナーの腕にジェイル・ナックルが絡みついた。
「これ以上、被害は出したくない。
今すぐキーを捨てて、自首しろ!!
痛い目を見ずに済むぞ?」
『はぁ?何ってるのか、わかんない!!』
プレイズナーがナックルを付けられたまま、窓に飛び込んだ。
場所は地上3階プレイズナーなら、余裕で助かるだろう。
しかし――
「馬鹿な、こっちにはナックルが――あら?」
病院の窓の外、ジェイルがナックルの先を見るとわずかに泥が付着しているのみで、肝心のプレイズナーの姿はなかった。
「指名手配犯!!逃がしたな!?」
ガン――!
岩さんが後頭部を殴り、嫌な音がジェイルの中に響いた。
「いや、逃げちゃったもんはしょうがないでしょ?」
バックルから、キーを引き抜き元の姿に戻る玲久。
相対する岩さんは明らかに不機嫌だ。
「今の音、なんですか!?まさか怪物が?」
華姿が友人の病室から出てきて、廊下の惨状を見る。
「ああ、出やがったよ。他人に変身する力があるみたいだ……
気を付けな?すこしでもおかしいと思ったら、そいつから離れる事を進める」
岩さんの言葉を、華姿は唇を噛みながら聞いていた。
「ああ、ああ!!ダメ、まだ足りない!!もっと、もっと顔を!!」
薄暗い部屋の中、一人の女が病的なまでのまなざしで自身の部屋の鏡を睨む。
傍に散らばるは無数の美容雑誌やアイドルのグラビアだ。
自身は――醜い。
それがこの女の自らの顔に対する結論だ。
先日バイト中に、謎の男によって顔を傷つけられた。
沢山の血が流れるなか、あの男の嘲笑う声が耳の奥、脳裏の最奥まで刻まれ何をしてもぬぐい切れない。
だが、キーを見つけた。
このキーは他者の顔を奪う力がある。
足りないなら、奪えばいい。たったそれだけの事。
だが……
ぺり……パラ……
机の下、乾いた泥が落ちて崩れる。
「ひぃ!?あ……!」
鏡の中の自分の顔が崩れている。
親から、友人から、通りすがりから奪った顔が崩れてい行く!!
皮膚の下から出るのは、無残に傷ついた自身の顔。
薄暗い部屋の中では、まるで幽霊だ。
「いや、お化けは――化け物顔は嫌!!
もっと、もっと顔を奪わないと!!」
焦りからか、頭に手をのばすと今度は、頭皮までがずるりと向けた。
次第に崩壊していく自身の顔、長年連れ添った自分の顔が自分でなくなる恐怖。
女はそれを必死に埋めようとしている。
その心の隙間にクライムキーは自身の先端をねじ込み、理性と自制心の堰を壊すのだ。
「作らないと……顔を作らないと!」
女は自身の腹にキーを差し込みプレイズナーへと変化した。
『顔ぉ……もっと顔を……』
ドロドロの体、ところどころ浮いているパーツが顔の方へと集まってくる。
耳は横に、鼻と口は真ん中に……
まるで趣味の悪い福笑い。
数分後、女は再び人間の姿に戻っていた。
しかし顔が違った、その顔は新しく作ったもの。
他人から奪い、自らを装飾した者だった。
「もっと、もっとパーツを――」
ピりりりり!
その時、携帯電話の着信が鳴った。
そこの表示された文字は、『琴始 華姿』。
数時間後
華姿が、大学の影になる場所で一人待った居いた。
病院で出会った怪物の声、その声は自身の友人にひどく似ていたのを覚えている。
大学で出来た二人の友人、その中の一人おしゃれが好きな由美の声だ。
「どうしたの、こんな所に呼び出して」
その時、不意にその相手の声が聞こえた。
後ろを振り返ると、件の友人が立っていた。
「ねぇ、あなたが怪物なんでしょ?」
「は?ちょっと、どうしたのよ?
怪物?」
由美が困惑して、立ち止まる。
「警察の人が言ってた、プレイズナーって怪物は鍵を指すことで生まれるって……
お願い、もし怪物なら鍵を捨てて!!」
頼み込むような、態度で華姿が話す。
相変わらず、表情は変わらない不気味な姿だがそれでも必死さは伝わってくる。
「いや、いやよ!!これは、これは私の!!誰にも上げないんだから!」
由美が華姿を蹴り飛ばした。
その必死な顔が、音を立てて崩れ始めた。
「!? ソレ……」
「そう、私の顔はもう『ない』の無いから他人から奪うしかない……!」
顔を抑えた由美の指の間から、さらさらと砂の様な物が落ちる。
顔面を引き裂くような大きな傷が、指の間から見えた。
「もう、もう戻れないの!!」
『エヴォリュート・アイドル!!』
腹にアイドルキーを差し込み、由美の姿が泥だらけの怪物に変化する。
『ああ、醜い姿……もっと、もっと美しく!!』
校舎のガラスに映った自分を叩き割り、アイドルプレイズナーが華姿に躍りかかった!!
「う、ぐぅ……」
泥が華姿に絡みつき、動きを拘束する。
『あんたも顔を奪ってあげるわ……』
アイドルプレイズナーが泥の触手を、華姿に伸ばす。
「まてぇい!!」
『ジェイル・スラッシュ!!』
飛来した斬撃が、アイドルの泥の触手を引き裂く!!
拘束されていた華姿を岩さんが抱き留めた。
「予想通り此処か」
「そうみたいだね」
仮面の男と岩さんが交互に話し合う。
「驚きです。まさか、バレるとは……」
驚いていたのはむしろ華姿の方だった。
「はぁ、オマエとお前さんの友人が襲われたら、友人関係が怪しいと踏むだろ?」
岩さんが胸から、数枚の紙を取り出しぺらぺらめくる。
「けど、要するに岩さん好みの美人の子で襲われてない子探しただけだろ?」
玲久の言葉に、岩さんが厳しい視線を向ける。
「……警察の権限ですか」
何かをあきらめたように華姿がため息をつく。
「さぁて、岩さんの情報からアンタが誰かもうわかってる。
大人しく鍵を捨てろ!!」
ジェイルがジェイルスラッシュを構える。
『いやよ!!私は、理想の私になる!!』
バキ、ボギ、ブジン……!!
アイドルプレイズナーの体から、無数の腕や顔が生える!!
最早人型ですらない異形を誇るが、体のバランスが悪くその姿は全身を引きずっている様にしか見えない。
「ここまで来ると、哀れだな……
なら、ここで終わらせるのがやさしさか!!」
ジェイルが、腰の鍵束からスラッシュキーを取りだし、ジェイルスラッシャーを召喚する。
そして、スラッシャーのスラッシュキーそしてベルトにジェイルキーを指し順番にひねる。
2本のキーが共鳴して光出す。
『ジャッジメントターイム!!ジャッジメントターイム!!』
「見せてやる、2本のキーの共鳴を!!」
ジェイルが刀身に光を纏い飛びあがる!!
「ライダースラッシュ!!」
『スラッシュジャッジメント!!』
光を纏う刀身がぶれると同時に、無数の破片へと別れる!!
「はぁああああ!!」
刀身の無くなったスラッシャーを振るうと、空中のバラバラになった刀身がアイドルプレイズナーにとびかかる!!
『がぁあああ!!』
「はぁ!!」
『いやぁああ!!』
悲鳴と共に、アイドルプレイズナーから破片が飛ぶ!!
「止めだ!!!」
ジェイルが刀身を振り下ろす瞬間、バラバラだった破片が再び一つに戻りアイドルプレイズナーを真っ二つに切り裂いた!!
アイドルプレイズナーが爆発四散!!
「はぁ、はぁ……なんで……」
爆風の中から、一人の女が現れ地面に倒れる。
「由美……由美!!」
華姿がそれに気が付き、近寄って顔を見た瞬間――
「ひ!!?」
華姿の顔が恐怖に歪んだ。
「由美……その顔……」
「そう、私は化け物よ!!こんな顔じゃ、まともにいきれない!!」
「!?やめろ!!それは――」
ジェイルが止めるより早く、由美が落ちていたキーを再度自分の体に差し込んだ!!
『エヴォリュート・アイドル』
本人の体が疲弊している影響か、ゆっくりと怪人へと変わっていく。
『私は、ね……もう、人じゃいられな……』
その瞬間、新たな声が響いた。
『醜いですね。実に醜い』
その場にいた全員が目を見開いた。
現れたのは黒い看守の様な服を着た、長身の男。
そして、腹を貫かれるアイドルプレイズナーの姿。
腕が腹を貫通して、その先にはキーが握られている。
『あぐ……あんたは……』
『もう少し、遊べるとは思ったんですが……
ま、暇つぶし程度とそこそこ面白いキーが手に入ったから良しとしましょう。
ああ、もう十分楽しんだので、
クレルがアイドルプレイズナーの腹からキーを引きちぎった。
『ふざ、けるなぁあああ!!私の顔を返せ!!私の人生を返せ!!
私の、私の幸せを――』
『うるさいですね』
叫ぶアイドルプレイズナーにクレルが少しいら立つ。
「ヤメロ!!」
ジェイルが走り出すが――
『私、クリーンな人間を自称しているので、自分の手を汚すのは好きではないのですが……』
クレルが手を大きく伸ばす。
掌の横から、蝙蝠の羽を想われるブレードが体から生える。
『邪魔。です』
そして腕を振り下ろした瞬間アイドルがしゃべらなくなる。
足元にゴロンと泥の塊が転がる。
『やはり女性は物静かな方が良いですね』
「おおおおお!!!」
クレルめがけて、ジェイルがスラッシャーを振り下ろす!!
『おおっと、危ない。
そんな物を振り回して物騒ですよ?』
「ウルさぁい!!お前は、オマエだけは俺が!!」
ムチャクチャに武器を振り回し、ベルトにキーを差し込んだ!!
「ライダーキック!!」
『チェインジェイル!!』
両足から、手錠型のエネルギーを発してクレルを捕獲するが……
『理解できませんか?圧倒的な実力差という物を?』
クレルの右目に蜘蛛の目のような複眼が走る。
そして、右手の二の腕から短い蜘蛛の様な足、蛇の様な鱗状の皮膚そして先ほどの蝙蝠の翼をイメージさせるブレードが生える。
『ふっ!』
ジェイルのエネルギーを力任せに、引きちぎる!!
そしてカウンターで蝙蝠の羽のブレードをジェイルにたたきつけた!!
「うわぁああ!!」
変身が強制解除され、玲久が地面に転がった。
『おや、懐かしい』
「触るな!!!」
クレルが地面に落ちた、ジェイルドライバーを手にする。
『コレの前の持ち主って、どうやって死にましたっけ?
私が手を下したのは覚えていますが、はて?
どうやって死にましたっけねぇ?』
にやにや笑いながら、倒れる玲久にドライバーを投げつけた。
『今度までに、思い出しておいてくださいね?』
瞬時、蝙蝠が羽ばたくような音がして、蜘蛛と蝙蝠、さらには蛇を融合させたような怪物が一瞬姿を見せて消えた。
事件は解決した。
ただし最悪の形で――
アイドルプレイズナーになった緒方 由美は死亡。
奪われた体のパーツは帰って来たが、代わりに華姿の大切な友人を失った。
「……くそ……!」
玲久が壁を思い切り叩きつけた。
もうアレから3日、敗北の記憶は消えない。
「指名手配犯!!外へ出ろ!!面会だ!!」
「俺に?」
岩さんが玲久を部屋から引きずり出す。
「あんたは……なんで?」
「来ました。ここへ、私の意思です。
きっと、あの怪物は此処に居れば会えますよね?」
その視線の先に居たのは、華姿だった。
「帰――」
「帰りませんから。なんで由美があんなになったか、アイツがどうなるか。
分かるまで私は帰りませんから」
強い意志を感じさせる口調で華姿が言った。
「岩さん、なんで――」
「納得するためだ。こればっかりは当人が決めるしかないんだ。
俺もそうだったから、
一瞬真剣な顔をして、岩さんがすぐに笑い出した。
「ま、男所帯に華が来たのは良い事だろ?
所で……顔、戻ってないのか?」
岩さんが言うように、華姿は無表情のままだった。
「え?かえってきましたよ。私の泣きボクロ」
そう言って、自身の目の所にある黒子を見せた。
「は?表情がないのは?」
「私、昔からポーカーフェイスなんです。
生まれつきですね」
しれっと華姿が言い放った。
岩さんと玲久の間に何とも言えない空気が流れた。
『どうです、納得する研究所は出来ましたか?』
古い大きな家の地下室で、クレルがその住人に話しかける。
「邪魔をしないでもらおうか、ここには貴重品も多い」
苛立たし気にその住人は、背を向けたまま言葉を発した。
『おやおや、せっかくジメジメした『監獄』からでたというのに……』
「あんたの仕事は俺を外に出すことだ。
仕事が終わったなら、さっさと帰ってくれ!!」
ボっ!
クレルの目の前を、炎が通り過ぎた。
『はぁ、数字付きは我が強くて困りますね……
あなたの活躍、楽しみにしてますよ。フェニシオン?』
「ハっ!お前のおもちゃになる気はないんだがな!!」
フェニシオンが再び苛立たし気に話す。
そこにもうクレルの影は無かった。
ラビットタンク……
ゴリラモンド……
動物プラス物体なのか……
ならば……!!
『ガマガエル!!』『ボイラー!!』
ベストマッチ!!
キモかわの先駆者!!ガマボイラー!!
さて、ガマボイラーを知ってる人が何人いるか……(昭和ライダー感)