東方日妖精   作:空色空

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第六話 西の瓜

 

 

 

 

 

 手に持った赤いソレをしゃくりと一口。みずみずしさと甘さが口の中に広がった。

 

「おいしい!」

「ホント。このスイカおいしいわね」

「ああ、ちゃんと甘くて良かったな」

 

 私、魔理沙、そして今代の博霊の巫女――博麗霊夢の三人は、手に持った西瓜を齧り、それぞれ感想を溢した。

 こんなに暑い季節の、こんなに暑い日に食べる西瓜は、何時にも増して美味しく感じられる。

 

 私が今いる場所は博麗神社の縁側。

 其処で、霊夢が出してくれた……いや、私達が奪ったと言った方が正しいのかもしれない。まあ、西瓜を三人で食べている。 

 

 私が何故博麗神社にいるかを説明しよう。 

 

 時は、少し前まで遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 さて、今日は何をしようかなと、ぶらぶらと道端に生えている草たちを眺めながら歩いていた時。偶々上を見上げてみると、空を飛んでいる何かを発見した。

 鳥と呼ぶには大きすぎる何か。

 一体何が飛んでいるのか気になったので、私も空を飛び、その何かを目指して近づいてみる。

 近づいていくにつれて段々と明らかになっていくシルエット。

 黒い帽子を被って、箒に乗って飛んでいる、魔女っぽい格好の少女。その特徴的な格好は見覚えがある。

 

 『飛んでいる何か』は、何時ぞやの普通の魔法使いさんだった。あのときは湖まで送ってくれてありがとうね。

 

「ねえ、魔理沙」

「……ん? お前は……ああ、何時ぞやの妖精じゃないか。何してるんだ?」

 

 私の声に気付き、此方を振り返る魔理沙。向こうも私のことを覚えていてくれたようで何より。

 

「上を見上げたら魔理沙が飛んでいたから近づいてみたんだ。これから何処か行くつもりなの?」

「ああ。私はこれから霊夢のところへ行くつもりなんだが、お前も一緒に来るか?」

「霊夢……?」

 

 知らない名前に首を傾げる。

 んぅ。何処かで聞いたことがあるような無いような名前だなぁ。誰だっけ?

 

「霊夢を知らない奴がいるとは……う~ん、博麗の巫女と言えば分かるか?」

 

 へぇ、今代の博麗の巫女は霊夢って名前なんだね。思い返してみれば、人里でその名を聞いた覚えもあるし、チルノが口にしていたような気がする。確か『霊夢にまた負けた~!』とか言って悔しがっていたような記憶が。

 確かに妖精の中ではチルノは強い方だとは言え、博麗の巫女相手に妖精が勝てるわけないだろうに……

 

 そう言えば私、今代の博麗の巫女とは会ったことが無いなぁ。

 先代の巫女とは会ったことがある。それなりに仲が良かったと自負してはいるんだけど。会う度に何かくれたし。

 

「じゃあ、私も霊夢のところまで行くことにするよ」

 

 と言うことで、私は久しぶりに博麗神社まで行くことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

「霊夢~遊びに来たぜ~!」

「うわ、最悪。……って魔理沙。そいつ誰?」

 

 魔理沙と一緒に神社まで飛ぶこと暫く。

 縁側に腰掛け、何個かに切られた西瓜のうちの一つを手に持ち、それを齧ろうとしている紅白巫女服の少女を発見。多分あれが『霊夢』だろう。

 霊夢の目の前に着地。

 すると、霊夢は魔理沙の姿を確認した途端に嫌そうな顔をした。

 此処に来るまでに霊夢のことは色々と聞いたけれど、魔理沙、霊夢には嫌われていないんじゃ無かったの? 思いっきり嫌がられてるけど。

 

「初めまして霊夢。私は千九咲、宜しくね」

「あ~はいはい、宜しく宜しく」

 

 まるで、あんたには興味ない。みたいな反応をする霊夢。こ、この野郎……!

 

「ところで、霊夢は何でそんなに残念そうにしてるの?」

 

 何か私達の姿を見てから、どんどん表情が暗くなって行ってる気がする。別に悪いことはした覚えはないんだけどなぁ。

 

「魔理沙は何時も来てるから良いとして、何で妖怪退治を生業にしているこの神社に、あんたみたいな妖精が来るのよ。これだから人里で『妖怪神社』とか『博麗神社は妖怪達に制圧された』とか言われるの」

 

 どうやら、今代の巫女は色々と苦労しているらしい。大変だね。私が悩みの種であるらしい以上、何かをしてあげることは出来ないけれど、まあ、霊夢には強く生きて欲しい。がんばれ。

 

「おっ、其処にあるのは西瓜じゃないか。どれ、この魔理沙様が貰ってやろう」

 

 既に切り分けられ、皿に盛られていた西瓜を魔理沙が見つけた。

 

「あ、私にも頂戴!」

 

 西瓜……美味しそうです。

 

「良いぜ。ほら」

「何であんたが決めてんのよ……はぁ……折角一人で食べようと思ったのに」

 

 霊夢は残念そうに肩を落とした。ついでにため息も落とす。

 西瓜を独り占めしたかったのか……ケチだな、この巫女。魔理沙に聞いていた通りだ。もしかすると、魔理沙が来ると絶対に西瓜を食われるって分かっていたから、最初魔理沙を見たときにあんなに嫌そうな顔をしたのかもしれない。別にちょっとくらい貰ったって良いじゃんね。

 

 う~ん。しっかしまあ、先代と比べてみると、博麗の巫女も変わったものだねぇ。少なくとも、先代の頃は『妖怪神社』だなんて呼ばれ方はしていなかった筈。

 如何やら霊夢は、人間よりも妖怪達の方に気に入られてしまうらしい。博麗の巫女として、それが良いのか悪いのかは良く分からないけれども。

 

 

 

 と、まあそんな訳で冒頭のシーンに続く。

 

「ああ、私の西瓜がもうこんな少なく……」 

 

 そりゃあ、三人で食べているのだから減るのも早くなる。単純に考えて、一人で食べる時間の三倍のスピードだ。

 そして、霊夢。君は一体どれほどケチなのさ。人に何か分けあたえられるくらいの広い心を持った方が良いと思うんだ。

 

 それからも三人で西瓜を食べ進め、それぞれが持っている一つで最後だ。三で分けられる数で良かったね。そうじゃなければ争奪戦が始まるところだった。

 

「――良し」

「急にどうしたのよ」

 

 いや、折角良いタイミングだし、此処で西瓜のお話でも。と思ってね。

 

 スイカ。漢字で西瓜。英名はウォーターメロン。

 原産は熱帯アフリカのサバンナ地帯や砂漠地帯。日本に伝わって来たのは室町時代以降らしい。定かではないけど。

 西瓜の果肉には、何と90%以上の水分が含まれている。甘いし、水分補給も出来るしで、夏にはうってつけの食べ物。

 そして、西瓜の花言葉。野菜とは言え花は花なのだから、当然花言葉もつけられている。

 ただ、西瓜の花言葉はなぁ……

 

 西瓜の花言葉は二つある。

 

 その一つ目は、『どっしりしたもの』だって。

 

「そのまんまね」

「と言うかソレ、花と言うよりは実の方の言葉じゃないか?」

 

 二人の言う通りです。

 

 ……いや、うん。西瓜の実ってどっしりしてるもんね。明らかに花じゃなくて実の感想だけれど、これでも一応花言葉なんだ。気にしちゃいけないんだよ、きっと。

 まあ、一つ目の花言葉は置いといて。西瓜にはもう一つ花言葉がつけられているんだ。そっちに期待しようじゃあないか。

 

「でも西瓜の花って、黄色いアレのことよね。ちょっと地味だし、正直、そんな良い花言葉がつけられているとは……」

 

 ええいうるさいぞ霊夢! 気にするなと言っただろうが!

 

 

 そして、気になる二つ目の花言葉は『かさばるもの』

 

「…………」

「…………」

 

 もう何も言うまい。

 

「……確かに、西瓜の実って大きくて邪魔だよな。置き場所に困るし、重いし」

 

 やめて! 西瓜のライフはもうゼロよ!

 

 しっかし、一体何があったんだろうね?

 結局、二つあるうち、どちらも花のことには触れてくれなかった。

 実のインパクトが大きすぎたんだ。仕方がないね。

 

「いや待てよ。もしかしたら、他の野菜の花言葉も案外そんなもんだったりしてな……ってなんだよその目は」

 

 全く魔理沙め。余計なフラグを建てやがって。

 

 因みに、他の野菜の花言葉は、

トマト『完成美』

ナス『優美』『希望』

ピーマン『海の恵み』

 

 となっております。

 

「…………」

「魔理沙、あんた……」

 

 他にも、西瓜と同じウリ科の野菜は、

メロン『裕福』『豊富』

キュウリ『洒落』

 

 だって。

 

「他の野菜はそこそこ詩的なのね」

「西瓜、お前……かわいそうな奴だったんだな」

 

 いやホント、ね。どうしてこうなったんだろうね。

 

 

 それから、私達は最後の西瓜を、しっかり味わうようにして食べた。

 

 とっても美味しかったです。

 

 

 

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