哿と婚約者   作:ホーラ

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不知火の性格が微改変
今回の文体は緋弾のアリアぽくないです。
甘さは控えめ


第21話:真相

俺と銀華は喧嘩をしたことがほとんどない。

 

女性関連のことで銀華に問い詰められたことはあるが、あれは喧嘩というか尋問という感じで喧嘩のようには思えなかったし、喧嘩の原因となるわがままも、ほとんど言ったことはないし、言われたこともない。

強いていうなら、俺と銀華が婚約して2日目の入学試験の時は喧嘩と言えるだろうが、あの時はどちらも互いのことを知らなかったから喧嘩らしいものといえば、これが初めてだと言えるだろう。

 

そう、これは俺と銀華が初めて喧嘩した話なんだろうな……

 

 

 

 

7月に入り、夏休みをもうすぐに控えた、そんなある日の--昼休み。

 

「遠山君。ここ、いいかな?」

 

ガヤガヤとうるさい学食の中、俺がハンバーグ定食を1人で食ってたら、目の覚めるようなイケメン面の男が話しかけてきた。ニコッと笑うのは同じクラスの不知火だ。

 

「聞いたぜキンジ。ちょっと事情聴取させろ。逃げたら轢いてやる」

 

反対側から俺のトレイを押しのけるようにしてトレイを置いたのは武藤。決闘からよく絡むようになって、銀華がいない時は不知火、武藤、俺の3人でつるんでることが多い。

 

「なんだよ事情聴取って」

「キンジお前、北条さんとケンカしたんだって?」

 

…流石武偵高。

情報というか噂が広がるのが早い。

 

「北条さんの怒り方が『プンプン』と擬音がでる感じだったから、深刻そうじゃないけど…遠山君たちのカップルは校内でポピュラーな話題だからね。北条さんのファンクラブがそんな珍しい姿を盗撮し(撮り)に行ってたよ」

 

確かに銀華がああいう風に俺以外の前で怒るのは珍しいが……

というかなんだ!?銀華のファンクラブって!?

 

「なんだ、キンジ知らなかったのか?武偵高の中でも割と有名なファンクラブだぜ。北条さんの日常フォトを高値で取引しているところで、ほら俺も持ってるぜ」

 

武藤が俺に見せてきたのは、風に髪を靡かせてそれを押えてる銀華。明らかに盗撮だが、構図上手すぎだろ。たぶんとったのは諜報科(レザド)の生徒だな。ったく…こんなことに無駄な技術使いやがって………

俺もそれ欲しくなったんだが……

 

「……それどこで売ってるんだ?」

「遠山君も欲しくなったのかい?でも、遠山君には売ってくれないと思うなあ」

「…?……なんでだ?」

「北条さんのファンクラブの別名は、キンジ死ね死ね団だからな」

「なんだその別名は…」

 

相変わらず武偵高らしい別名だなおい。そして俺が死んでも銀華がそいつらのものになるとは思えないが…

 

「そんなことはどうでもいいんだよ。なんで北条さんとケンカしたんだ」

「北条さんに聞いても『私は譲らない』というだけで、何にも分からなかったからね」

「やっぱりか……」

 

はあ…といったため息が思わず出てしまう。銀華は結構頑固だからな…譲らないことは譲らないだろう。

 

「…で、何があったんだよ」

「相談くらいならのるよ?」

 

武藤は興味津々、不知火は優しい顔で俺にそう声を掛けてくる。相談に乗ってくれるなんて中学ではそんな友達いなかったし、少し嬉しい。

 

「…………」

 

だが俺の口は重い。この喧嘩の内容をこいつらに話すの恥ずかしいんだが…しょうもなさすぎて…

 

「まさか、浮気したとか?」

「星伽さんとか!?」

 

どうして武藤、お前がそんなに慌てる。あと何でそこで白雪が出てくる。

 

「銀華が浮気を知ってあんな穏やかだと思うか?」

「それはないな…」

「別の線だね…」

 

2人とも入学当初の銀華のプレッシャーを忘れてはいないようだ。

 

「もしかしてプライベートなことかい?」

「プライベートといっちゃ…プライベートなんだけどな。お前らには話しづらいというか…」

 

話したら絶対笑われる。

 

「もしかして…夜の行為の話とかか?」

「は?」

 

武藤の質問に不知火は笑うのを堪え切れないという風に笑っているけど、夜の行為ってなんだ?

 

「夜の行為ってなんだよ」

「は?」

 

逆に聞き返された。いや、マジで分からないんだが。

 

「武藤君、たぶん遠山君と北条さんの2人だったらその線はないよ。どっちも鈍感なんだから」

「確かに。あんな美人な婚約者がいるのに勿体ねえなキンジ」

「何が勿体ないのかよく分からん」

「それでこそ遠山君だ」

 

なんか2人はウンウンと納得しているが……何に納得しているのかよく分からんぞ。銀華に今度、夜の行為の意味聞いてみるか。あいつも分からなさそうだけど。あいつ日本の文化に詳しいわけではないし。

 

「それで何を恥ずかしがってるんだキンジ。高校生だろお前」

「逆に高校生だから恥ずかしいんだが…」

 

俺がそう言い俯くと

 

「吐いちゃえよキンジ。言ったら楽になるぞ」

「そうだよ。遠山君。ここでの話題は秘密にするよ」

 

そう言って2人揃って肩を組んでくる。鬱陶し!

 

「わかった、わかったよ。話せばいいんだろ!」

 

なんでこうなるんだか。

 

「話すけど笑うなよ?」

「笑われるような話なのか?」

「わかったよ、遠山君」

 

と言ったものの絶対笑われるよな……

 

「この話は昨日の夜のことなんだが……」

 

 

 

 

 

今回の回想は昨日の夜に遡る。

 

放課後、銀華の家に寄り、銀華と共に、銀華の作った夜ご飯を食べている時だったのだが---

 

 

 

「「ちょっとまった」」

「なんだよ」

 

俺がせっかく話し出したのに話の腰を折ってきた2人を睨みつける。その2人、武藤は別だが珍しく不知火も苦虫を噛み潰したような顔をして頭を振っていた。

 

「おい、キンジ……聞きたいことあるんだが?」

「北条さんと遠山君は同棲しているの?」

「んなわけねえだろ、時々銀華の手料理食わしてもらってるだけだ」

 

銀華の手料理が食えるのは銀華の任務がない時か、俺とペアで任務をしている時だけ。

個々の任務で顔を合わせない日すらある。

そういう時は電話しているのだが。

 

「ちょっと興味本位で聞きたいんたいんだけど、週いくつのペースで北条さんの手料理食べてるんだい?」

「そうだな…週5ぐらいか?」

「「それほぼ毎日じゃねえか(だよ)」」

 

なんか2人に怒鳴られた。

 

「いいだろ、銀華の飯旨いんだから」

 

和食は。

 

「あはは。これ胃袋掴まれてるっていうのかな?」

「嫁さんが美人で頭良くて強くて家事もできるって、キンジお前前世でどんな徳を積んだんだよ…」

 

ご先祖様が将軍の命を救ったら美人な婚約者ができていました。

 

「それで、話を続けてもいいか?」

「好奇心は猫をも殺すというが、こうなっちゃやけだ。男には命を張らなくちゃいけない時がある」

 

それは今じゃないと思うぞ。

 

「そうだね。僕もこのバカップル(2人)のことをもっと知りたくなったよ。それがどんな毒でもね」

「毒?」

「嫁さん持ちのお前には分からないと思うが、独り身にとってそういう惚気話は毒なんだからな」

「砂糖のように甘い話は劇毒にもなるんだよ、遠山君。ちょっと武藤君の分もコーヒー買ってくる」

「ああ頼む」

 

惚気話ってなんだ。俺は事実しか答えてないんだが…それにお前らが聞いてきたんじゃねえか。

不知火が近くの自動販売機でブラックコーヒーを買ってきて武藤に渡し席に着いたので、俺は再び話し始める。

 

 

 

 

 

「ごちそうさま」

「お粗末様でした」

 

今日のメニューはご飯、肉じゃが、ほうれん草のおひたし、煮物、しじみの味噌汁だった。銀華の和食は相変わらず旨い。洋食はあれだが………

 

「片付けるよ」

「いつもありがと」

「これぐらいはやらないとな」

 

俺が洗い物をやってる間に銀華は紅茶を淹れる。そして俺が洗い物を終える頃には菓子も用意されており、お茶会の準備が整っていた。

銀華の家でご飯をご馳走になる時はこれがいつものパターンだ。

 

「今日のご飯どうだった?」

「美味かったぞ。いつも美味いけど」

「ありがと、キンジ」

 

銀華が笑顔を向けてくるが、最近気づいた。この笑顔は俺にしか向けてこない笑顔だ。

俺がこの笑顔を独り占めしてると思うと少し嬉しい。

 

「ねぇ、キンジ。お願いがあるの」

「お願い?」

 

ヒスってもないのに銀華がお願いしてくるのは珍しいな。

 

「あ、あのね…」

 

モジモジ恥ずかしそうにしながら、手を合わせ人差し指でツンツンとしている。

 

「明日から、朝ごはん届けに行ってもいい?キンジの家に」

 

それは嬉しいことなんだが…

 

「いや、いい」

「……え?」

 

俺からてっきり承諾の言葉が聞けると思っていた、銀華の顔が曇る。

そんな顔をさせてしまったことに罪悪感が湧くが、ここは俺も譲れない。

 

「そこまでする必要は…」

「……いや」

 

プイっと、そっぽを向く銀華。

 

「なあ銀華」

「いい返事をくれるまで私も返事してあげない」

「だから銀華って」

「お返事しません」

「銀華」

「いまの銀華は応答しません」

 

 

 

「で、その後、口を聞いてくれなくなったんだ」

 

これからどうするんだという風にため息一つついた俺だったが、横の2人が同時にすっと立ち上がった。

 

「なあ、不知火。お前もキンジに言いたいことあるよな」

「奇遇だね武藤君。僕も遠山君に言いたいことがあるよ」

「ん?」

「「1発殴らせろ(て)!!」」

 

そう大声をあげ、拳を2人同時に俺へ向かって突き出してきた。危な!

だが、銀華との特訓で鍛えた反射神経を持つ俺はそれをギリギリかわす。

 

「な、何すんだよ!?」

「遠山君と北条さんの関係を心配して来たのに、最初から最後まで惚気話なんて、流石の僕でもイラっとしたよ」

「なあ、キンジ。お前一回轢いていいか?」

 

なんでこいつら怒ってるんだ?正直に話したのに意味がわからん!

2人ともその後、首を振って再び席に着いた。いったい何なんだよ…まったく。

 

「それで、なんで遠山君は断ったんだい?」

「忙しい銀華にこれ以上無理をさせたくなかったから」

「なんでそれを言わなかったんだよ、キンジ」

 

だって

 

「銀華は無理をするなって言ったら意地を張って無理をするタイプだから」

「「………」」

 

銀華は三つも兼科しており、毎日遅くまで学校に残って授業を受けたり、日々のトレーニングをこなしたりしている。それに加え、たくさんの任務をこなすことも怠らない。

銀華は超人だが……人間だ。日々の生活で疲れが溜まっているのがわかっていた。自分のぶんを作ることの延長線上にある俺の夜ご飯を作ることはともかく、朝食を作らせて届けさせることは延長線上になく流石に銀華の負担になる。

そして、あいつは基本なんでもできるがゆえに無理をするなと言うと逆に無理をしてしまう。プライドが高いって言うのかなこういうの。

なので銀華に言うことはできなかったのだ。

朝ごはんがいるいらないで高校生にもなって喧嘩するなんて、正直笑われると思ったが…

 

「それで遠山君はいつ謝りに行くんだい?」

「俺が謝ること前提かよ」

「男の度量の見せ所だぜキンジ」

 

そうは言ってもな…

 

「俺が尋問されるならともかく、喧嘩をしたのはほぼ初めてだから勝手がわからん。午前中も目を合わせてくれなかったし」

 

目を合わせようとしたら、目を逸らされたのは結構心にきた…

 

「ま、その辺は俺らに任せとけ」

「そうだね。それにしてもあの遠山君からあんな言葉が聞けるなんてね」

 

2人が胸を叩きながら任せとけと言ってくるが、俺にとってお前らに任せるのが一番不安だぞ。

そう思いながら、2人の姿をみて嘆息するのだった。

 

 

 

 

 

午後の専門科の授業を終えた放課後。

俺は2人に、人気のない一般科の校舎裏に呼び出されていた。今後の作戦を決めるためらしい。

お前らに頼りたくねえよと言うのが正直な感想だが、俺1人だったら解決できそうにもないのでこいつらと緊急会議を開くことになったのだ。

 

(おせえな…あいつら)

 

呼び出した本人たちが遅いので何してんだと思っていると……

ーーザスッザスッ

後方から誰かがこちらに向かって歩いてくる音が聞こえる。どうやらようやく来たようだな。

 

「……ッ!」

 

振り返った瞬間、びっくりして息が詰まっちまった。なぜなら来たのは武藤や不知火ではなく……

 

「………」

 

銀華だった。しかしその顔はいつもの優しい笑みを浮かべた顔ではなく、拗ねたようなツンとした表情のまま。時間が解決して少しでも機嫌が回復していることを望んでいたが、流石にそれは虫が良すぎたな………

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

武藤君と不知火君に呼び出されて、一般科の校舎裏に来たわけだけど……

 

(なんでキンジがいるの……!?)

 

そんな気持ちで一杯。父さんもだけど私たちって推理できないことに対しての反応がすこぶる悪いんだよね…

そして、私はキンジが関わると初歩的な推理すら間違えるので、考えれば考えるだけ無駄。肝心な時に頼りにならないなあもう。

推理できないということなので、答えを知るためにはキンジに話しかけなくてはならないということだけど………でも、話しかけたら負けたことになっちゃうし……うーん…どうしよう。

とりあえず、まだ怒ってますよっていうフリをしとけばいいかな?

そう思って私がまだ怒ってますよアピールをしながらキンジに近づくと、キンジは驚いたって感じで振り返った。

キンジも話を聞かされてなかったみたいだね。

お互いに何も話さない気まずい雰囲気が流れるが、先に口を開いたのはキンジだった。

 

「…なあ、銀華ちょっと話を聞いてくれるか?」

「…何?」

 

ベルセ気味の声を出すとキンジは一瞬ひるんだけど、言葉を続ける。

 

「俺が昨日お前の提案を断った理由」

 

それは昨日聞けなかったもの。

昨日から今日にかけてずっと推理してたけど、当てはまるものがなかった。

 

「『そんなことはない』ってお前は思うかもしれないが、これは俺の気持ちだ」

 

そういうとキンジは一つ息を吸った。

 

 

 

 

「---銀華、俺のために無理をしないでくれ---」

 

 

 

「…え?」

 

予想外のことを言われて、私の怒ってる演技が崩れる。

 

「自分ではそんなことないって思っているだろうから、俺が言ってやる。お前は疲れてるんだ」

「そ、そんなこと…」

「いいや、そんなことある。お前、最近あまり寝れてないだろ?」

 

キンジの言う通り、ここ最近授業や任務などで忙しくてあまり寝れてないけど……表には出してないつもりだったんだけどなあ…

 

「そんな疲れているお前に、これ以上無理させるわけにはいかないってことで断ったんだ」

 

キンジが私のことをそこまで考えてくれてたなんて…

 

「銀華に無理をさせないって言うのは俺のわがままだし、お前は無理するなって言われたら逆に無理するタイプだけど……今回は俺のわがままを聞いてほしい!」

 

そんなキンジのわがままを聞いて、私の目から……

ポツン、ポツン

と何か熱いものが流れ出るのがわかる。

それは涙。

 

「お、おい」

 

黙って聞いていた私がいきなり泣き出したのでキンジが狼狽える。

 

「ご、ごめんね、キンジ。キンジがそんな私のことを思ってるとは知らずにわがままなこと言って」

「いや、謝るのはこっちだ。銀華の善意を断っちまったんだからな」

 

キンジが自分のハンカチで私の涙を拭ってくれる。その手つきは優しく、私のことを本当に思ってくれてるとわかり、私は…

--ギュッ

思わず抱きついてしまう。

大好きなキンジの胸に。

 

「私が無理していたらまた止めてくれる…?」

「ああ、お前を守るのは俺の役目だからな」

 

人目のない校舎の裏で抱き合った。

 

 

 

 

 

 

これが私とキンジの初めての喧嘩。

たった1日だけど…キンジが私のことを思ってくれてると確認できた。そんな出来事。

 

 

 

 

 

 

「どうしていきなり朝ご飯を作るとか言い出したんだ?」

「……言わなきゃダメ…?」

「ダメ」

「…私のご飯を美味しそうに食べるキンジの顔が好きだから」

「………」

「照れてる照れてる。照れてるキンジは可愛いね」

「…お前の方が可愛いぞ…」

「………」

「お、照れてる銀華も可愛いな」

「……もう…!」

 

 

 

 

 

 




爆発しろ
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