哿と婚約者   作:ホーラ

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ようやく原作ですね…原作はオリジナルと違い構成を練る時間が少ないですが、面白くするのがなかなか難しい…


第3章:二人の探偵(ホームズ)
第26話:神崎・H・アリア


武偵高二年の始業式の日。

とうとうこの時がきてしまった。

父さんが主導、私が手伝う形で行ってきた「緋色の研究」。

その研究結果がわかるのが今年。私の条理予知(コグニス)はともかく、父さんの条理予知ですら推理できないことが今から始まる。

私達親子は推理できないことに好奇心を持つ。実は緋色の研究の結果は私も少し楽しみにしている。

でも緋弾を覚醒させるにはどうやらキンジが必要らしい。

私としてはキンジを巻き込ませたくないけど……キンジと一緒に一般人になるためだから仕方ない。

そして神崎・H(ホームズ)・アリア。

1年次末であるところの今年の冬から転校してきている私の親戚であり、緋色の研究の集大成の人物。

私とは合わない人間だし、キンジとの時間をかなり取られるだろうけど……父さんとの約束がある。

 

まず始めの事件はキンジとも因縁がある『武偵殺し』。理子との取引もあるし、私は2人に怪しまれない程度に傍観に回る。理子がアリアに負けるとは思えないけど、キンジと組んだアリアは…まあきついだろうね。HSSキンジは今の私をはるかに凌駕するレベルになったし。

 

その状況を覆し、たとえ理子が神崎を殺してしまってもそれまでのこと。死んだら死んだで所詮そこまでの器だったということだし、研鑽派(ダイオ)の人たちも弱者の下につくつもりはないだろうからね。

まあ仮に神崎が父さんの後を継いだとしても、命令を聞く気は無いし、というか父さんが死んだ時点で私は生まれ故郷であるイ・ウーから抜ける。

一般人になりたいキンジにも迷惑かかるだろう。キンジの重しにはなりたく無い。私としてはイ・ウーが崩壊してイ・ウーのしがらみがなくなるのが一番いい。

イ・ウー生まれイ・ウー育ちの私が何を言っているんだろうね…まるで正義の味方の家系に生まれ、武偵をやめるって言っているキンジみたい。

まあいいや。

私の条理予知によるともうすぐ始まる……いやもう始まってるね。

 

「その チャリには 爆弾 が 仕掛けて ありやがります」

 

チャリで爆走するキンジとネットで人気のボーカロイドの声だすUZIを搭載したセグウェイが裏路地に止めている私の車の前を通り過ぎる。助けてあげたいが、その気持ちをグッと堪える。

 

「アイ出して」

「承りました」

 

私がそう言うと車内モニターに、今ハッキングしている監視カメラに映っている映像が表示される。

場所は女子寮の屋上。そこにいたのは丈夫な縫い目を持つパラグライダーを背負っている神崎アリア。

彼女は監視カメラの方を見られているのを感じたのかこちら一瞬一瞥した。相変わらず直感は父さん並みだね…私よりいいもの持ってるよ全く。

 

彼女はそのまま下を通っているだろうキンジを真っ直ぐ見つめて--女子寮の屋上から飛び降りた。

 

これがキンジとアリアの初めての出会い。

 

さーて、序曲(プレリュード)のスタートだよ。

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

(やっちまった…)

世にも奇妙なチャリジャックという事件の報告を教務課に済ませ、俺は新しいクラスにトボトボと向かう。

あのちびっこピンク髪の少女にヒステリアモードを見られてしまった。

これのまずい点は2つある。

1つはヒステリアモードが女子に再び利用されるとまずい点。銀華のおかげでトラウマはだいぶ克服できたが、まだ心の傷跡は少し残っている。もう二度とあんなことはごめんだからな。

そして2つ目の方がやばいんだが……

また銀華が入学試験の時のように暴走しないかだな。俺が銀華以外の女でヒステリアモードになったことを知ったら、たぶん9割以上の確率でベルセになるだろう。そのキレた銀華は、すでにヒステリアモードがきれた俺にはどうすることもできん。死んだな俺。

 

二年生になって1日目から絶賛鬱病進行中だったが……まあ中学一年の冬、女装して女子校に潜入したときよりマシか。

そんなことを考えながら、新教室にたどり着き、自分の机を探し出して座り、嫌悪感で机に突っ伏す。

 

「おはよう、遠山君。朝から元気ないね」

 

そんな俺にまた同じクラスだった不知火が話しかけてくる。

 

「新学期早々爆弾事件(ボムケース)に巻き込まれるなんて不運だったね。」

「なんでお前がもう知っているんだ」

「さっき教務科から出てた周知メールだよ。二年生の男子で始業式に出てなくて不幸体質なのは遠山君ぐらいしかいないからね」

「不幸体質って……言ってくれるな不知火」

 

1発ぶん殴ってやろうかと思ったが、そんな元気はない。再び突っ伏す体勢になった俺は

 

「いよー、キンジ!」

 

今度は後ろから武藤が話しかけてくる。ほっといてくれと言おうと思い、振り向くと……

 

「おはよう、キンジ」

 

武藤ではなく銀華が立っていた。

 

「おはよう銀華…あれ武藤は?」

「私が今武藤君の声出したんだけど。どうだった?似てた?」

「ああ…似てたぞ…」

 

探偵科の優等生でもある銀華は変声術も俺と違ってうまい。

 

「元気ないね、大丈夫?」

「……ああ、問題ない」

「それならいいけど」

 

不安そうな顔で心配してくれている。

やっぱりいいやつだな銀華は。

 

「相変わらず北条さんは遠山君といい関係だね」

「こんな美人な嫁さんがいるなんて轢いてやろうか」

 

不知火と今度は本物の武藤が俺にそんなことるを言ってくる。

 

「美人なんて嬉しいこと言ってくれるね武藤君。キンジはあまり私にそういうこと言ってくれないんだよ」

 

ヨヨヨと嘘泣きする銀華。確かに、気恥ずかしくてヒステリアモードの時以外言ったことはないが…そしてそんな話をしていると周りの嫉妬するような目が集まってるのを感じる…

 

「はいはい、皆さん席に着いてくださーい」

 

ほんわかな雰囲気で教室に入ってきたのは、俺が三学期に転科した探偵科の主任をしている高天原(たかまがはら)ゆとり先生だ。

常に笑顔で穏やかな性格で気が弱いのだが、彼女が教卓に立つと生徒は早足に自分の席に戻る。

武偵高の教師は大なり小なり殺気を発してるものなのだが、彼女は異質。

荒くれ者集団の武偵高の連中がそんな人に従うとは普通は思えないのだが、彼女を困らせると彼女とルームシェアをしている武偵高二大やべえ教師であるところの蘭豹(らんびょう)(つづり)が飛んでくるからな。生徒みんな従うってわけだ。

まあ…あの2人とルームシェアをしていて傷1つおってないのを見ると、やっぱりこの人も只者じゃないんだろうけど。

 

「このクラスの担任となりました高天原ゆとりです。一年間よろしくお願いしますね」

 

先生がそう自己紹介すると拍手が巻き起こる。蘭豹とかが担任だと地獄だからな。拍手が巻き起こるのもわかる。

 

「うふふ。じゃあまずは去年の3学期に転入してきたカーワイイ女の子から自己紹介してもらっちゃいますよー」

「うおおお」「マジで!?」「やったぜ」

 

先生のそんな言葉にクラスメイトは喜んでいるが俺にとっては嫌なニュースだ。

可愛い女の子と言う言葉だけでも嫌なのに、さらになんか…嫌な予感がするぞ。そして俺の嫌な予感は大体当たるってことが経験上わかっている。

 

「神崎・H・アリアちゃんでーす!」

 

ずりっ、と椅子から転げ落ちそうになる。嫌な予感大当たりだ。いい加減外れて欲しいぞ。

俺の死角にあった席から立ち教壇に立ったのは不幸なことに同じA組だったピンクのチビツインテールの女子。神崎・H・アリアだった。アイツはクラスを見回すと俺を見つけたようで…

 

「先生、あたしはアイツの隣に座りたい」

 

俺を指差してそう言うもんだから

ずりっ、今度は椅子から転げ落ちてしまう。

突然のことに、教室もざわめいている。

 

(やめてくれよ…)

 

意味がわからなさすぎて絶句。ただただ絶句するしかない。

いや銃撃されるならばわからないこともない。俺に最後まで武器を突きつけて怒っていたからな。でも『隣に座りたい』ときた。

あれか。よく、怒った銀華が俺によくやる、近くに座って(なぶ)り殺しにする気か。

 

「よ…良かったなキンジ。早速可愛い子から指名があるなんて。先生!俺、転入生さんと席変わりますよ」

「あらあら。遠山君は北条さんといい神崎さんといいモテるのねー。じゃあ武藤君席を代わってあげて」

 

やんややんやとノリのいいクラスメイトは騒いでいるが……おい、武藤(バカ)。その言い方明らかに銀華を挑発してるだろ…

先生に抗議するか銀華に弁明しようとしたその時、アリアが

 

「キンジ。さっきのベルトを返すわ」

 

といきなり俺の名前を呼び捨てにしつつ、さっきの事件で俺が貸したベルトを放り投げてきた。

 

「あれれ〜おかしいぞ〜」

 

俺の左隣から某国民的推理アニメのちびっ子のような口調でそう言ったのはこのクラスで武藤に続くバカ、峰理子だ。

 

「キーくん、ベルトしてない!そしてそのベルトをそのツインテールさんが持ってるのはおかしいよね?これ謎でしょ謎でしょ!?でも理子には推理できちゃった!できちゃった!」

 

自分の席でぴょんぴょん跳ねながらそういう理子はそんなことを言う。というかアリアと理子背の高さ同じぐらいだな。ちょっと理子の方がデカイけど。

 

「キーくんはしろろんだけでは飽き足らずツインテールさんにも手を出したんだよ!つまり神崎さんと熱い熱い浮気の真っ最中なんだよ!」

「北条さんだけじゃなくこんな可愛い子まで!?」「北条さん以外に興味なさそうだったのに裏ではもしかして肉食系?」「フケツ!」

ツーサイドアップにゆった金髪を揺らしながら理子はお馬鹿推理をぶちまけると、それに便乗してクラスメイトがそんなことを言ってきた。というか新学期なのに息があいすぎだろお前ら。

だがそのお馬鹿推理やこういう盛り上がりも銀華を怒らせる要素となりうる。冷静な状態なら突拍子もないことってすぐわかるだろうが、アイツはキレてベルセになると途端に推理力が下がるからな。怖すぎて理子のもう1つ左にいる銀華の方を見ることできん…

 

「しろろん判決を」

無罪(イノセンス)

「「「えーーー」」」

 

助かった…そしてなんでクラス全員で、えーなんだ。どんだけ俺が銀華に処刑されるのが見たいんだお前ら。

 

「しろろん、そんなこと言ってたらキーくん取られちゃうよ!なんたってあの2人は熱い熱い恋人関係になってるんだよ!」

 

銀華裁判長の判決が気に入らないのか理子はそんなことを言ってる。対する銀華は怒ってはないものの、ほんの少しだけ不機嫌そうだ。多分他のクラスメイトはわかっていないだろうがな。そんな時--

 

すぎゅんぎゅん!

 

鳴り響いた2つの銃声がクラスを一気に凍りつかせた。

その音は今まで黙っていたアリアから発せらている。手を広げるように伸ばしたその両腕の先には、壁に1発ずつ穴が空いており、銃口からは白い硝煙がでている。

チンチンチチーン…

落ちた2つの空薬莢の音が静けさをさらにきわだたせている。

それを起こした張本人、顔を真っ赤にしたアリアは

 

「こ、恋人なんて……くっだらない!覚えておきなさい。今度そんな馬鹿なこと言った奴には…」

 

1つ言葉を区切って、

 

「--風穴開けるわよ!」

 

そう言い放った。

それを聞いたクラスメイトの様子は畏怖するもの、痛いものを見るものなど様々だったが、銀華はアリアを観察しているようだった。それも動物実験の様子を見るような目で。

 

 

 

昼休みになると質問責めにされるのがわかっていた俺は、追ってくるクラスメイトをなんとかまき、理科棟の屋上に避難した。

というかアリアのことを聞かれても困る。俺は何にもあいつのことをしらないのだ。朝チャリジャックを助けられてそっから追いかけられたそれだけの関係。

なんでこんなことに…とため息まじりにしょんぼりしていると…何人かの女子が喋りながらやってきた。声に聞き覚えあるぞ。たぶん同じクラスの、それも強襲科の女子どもだ。見つかるとやばいと感じた俺は物陰にこそっと隠れる。

 

「今日のキンジってば不幸。チャリ爆破されてしかもあのアリアに絡まれてるんでしょ?お気の毒」

 

屋上に入ってきた3人の女子はどうやら俺のことを話しているようだ。

 

「さっきのキンジ。ちょっとかわいそうだったよねー」

「確かに。アリア、朝からキンジのこと探ってたし」

「あ、私もアリアにいきなり聞かれた。キンジがどんな武偵だったとか実績とか。『強襲科で銀華と組んでた時はすごかったんだけどねー』って適当に答えといたけど」

「アリア、さっきは教務科の前にいたよ。あの『金銀の双極(パーフェクト・デュオ)』の2人の間に入り込む隙間なんてないのにね」

「ねー。アリアがガチでラブでもあの2人のラブラブ度に勝てるわけないのに」

 

渦中の当人としてはつい話を盗み聞きしてしまう。というかラブラブ度ってなんだ…

 

「銀華もキンジもカワイソー。あの2人のことは結構有名なのに空気が読めないアリアに亀裂を入れられそうになるなんてねー」

「でも、アリアって男子の中では人気ぽいよ」

「あーそうそう。転校してきてすぐにファンクラブできたらしいね。写真部が盗撮した写真とか銀華の写真並に高値で取引されてるみたい」

「それ知ってる。フィギュアスケートとかチアリーディングとかのポラ写真なんて万単位の値段らしいよ。でも過去最高は銀華の水泳の時の写真だってさ。あれだけは桁が違うんだって」

「銀華のファンクラブは熱狂的だからねー。まあ銀華ファンクラブってよりはキンジ死ね死ねクラブだけど」

 

いつも思うがなんだそのクラブ名。強襲科の別名、死ね死ね団みたいな名前に俺の名前を入れるのやめてくれよ。

 

「いつかキンジ刺されそうだよね」

「わかるー」

 

そんな風に俺やアリア、銀華の話題でわいわいと盛り上がる女子たちはしばらくするといなくなった。俺が隠れていた物陰から出ると…

 

「だーれだ」

 

後ろから手袋をした手で目を塞がれ、低く野太い声で聞かれる。声は違うが爽やかな菊っぽい匂いでわかるし、こんなことやるやつ1人しか知らない。

 

「銀華しかいないだろ…」

「ピンポーン。声も違うし手袋したのにどうしてわかったの?」

「……勘かな」

「キンジもなかなか勘が鋭くなったね」

 

相変わらず銀華は俺の嘘には引っかかる。

いつもは嘘発見器かよってぐらい正確に嘘を見分けれるんだけどな。

なのでこの会話を続けるのはまずい。話題を変えるか。

 

「よくここってわかったな」

「キンジの行動パターンはお見通しだよ」

 

確かに。銀華は今年のランク試験探偵科Sランクだし十分あり得るな。というか去年強襲科Sで今年探偵科もSってチートだろ。衛生科(メディカ)だったらAが精一杯らしいが。

 

「ねえ、キンジ。神崎さんとはどんな関係なのかな?」

「……そ、それはだな」

 

うまくヒステリアモードになったことを隠しながら説明したいがうまい説明が思いつかん

 

「 どうせ、朝のチャリジャックの時に助けてもらって、そのあと事故か何かでキンジはHSSになった。そんなところでしょ?」

 

違う?という風に聞かれる。

 

「その通りだ…ごめんな」

 

婚約者ではないアリアでヒスったことを一応謝っておく。銀華がノルマーレやリゾナで弱くなったことは俺が知る限り、俺との接触しか無いからな。

 

「ま、まあ仕方がないよ。生理現象なんだし」

 

ちょっと顔を赤くして銀華は許してくれる。

 

「でもむやみやたらに他の女の子と接触するのはNGだからね!!…………もしHSS…なりたいな…私を….….もいいよ……」

「後半の部分声が小さくて聞き取れなかったんだがなんて言ったんだ?」

「なんでもない!!!!もうすぐ午後の授業始まるし行くよキンジ!」

「うおっ」

 

俺は顔を真っ赤にした銀華に腕を引っ張られ、屋上を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

夕方、授業を終えて自室のソファーに体を沈めている。ここは本来4人部屋なんだが、転科したことと相部屋になる探偵科の男子がいなかったのでルームメイトはいない。銀華も転科はしていないが、強襲科から衛生科の方に力を入れるとのことで、俺が住んでいる男子寮の近くの衛生科の女子寮に1人で住んでいるらしい。

何が言いたいかと言うと、銀華の家で開かれていたお茶会や食事は俺の家でも行われるようになったってことだ。

 

「何かわかるか?」

 

銀華が入れてくれた紅茶を飲みながらゆっくりしている俺の横で真面目にチャリジャック事件のレポートを読んでいる銀華にそう聞く。

 

「武偵殺しの模倣犯ってことぐらいしかまだわからないかな。情報が少なすぎる」

 

まあそうだろうな。鑑識科(レピア)にまわしたセグウェイの残骸の回析はまだ終わっていない。まだこの事件の解決には遠い気がする。

 

ピンポーン。

 

俺が狙われたのか無差別なものなのかもまだわかっていない。

 

ピンポンピンポーン。

 

爆弾魔は無差別なことが多い。ターゲットを選ばず爆発で人々の注目を集めてから、自分の要求をぶつけるのが一般的だ。

 

ピポピポピポピポピポピポピポピポピポピンポーン!ピポピポピンポーン!

 

 

うるせえな!マジで、誰だよ!

 

「…私隠れとくからキンジ出て」

 

銀華がいるから、居留守を使おうとしたがダメらしい。男子寮に女子がいることやその逆も外聞が悪いからな。まあそんなこと御構い無しに去年は銀華の家に行っていたわけだが…そんなことを思いながら、銀華がベッドルームに隠れたのを見て

 

「誰だよ……?」

 

と渋々ドア開けると

 

「遅い!あたしがチャイムを鳴らしたら5秒以内に出なさい!」

「か、神崎っ!?」

 

なんでこいつが俺の家の前にいるんだ!?

 

「アリアでいいわよ」

 

そう言い終わる前に部屋の中に侵入してくる。なんなんだこいつ!

 

「お、おい!勝手に入るなっ!」

「トランクを中に運んどきなさい!ねえ、トイレはどこ?」

 

アリアは俺の言葉に耳を貸さず、トイレを発見すると、とてとて、と小走りに入ってしまった。なんなんだあいつは…

 

「このトランクすごく重いんだけど何が入ってるんだろう?」

 

玄関前に置いてあったアリアの小洒落たストライプ柄のトランクをうんしょうんしょと、律儀に運んでいる銀華の代わりに持ってやると、なんだこれ。見た目に反して異様に重いぞ。

俺たちがトランクを運び終えると同時にアリアもトイレから出てきた。そして出てきたアリアは

 

「アンタは同じ教室にいたというか、ニ、三年前に会ったわよね。キンジのこと調べててさっき思い出したわ」

 

そんなことを言う。まあ銀華も優秀な武偵だしどこかで会ってもおかしくないのかもな。

 

「私は忘れてたけどね」

「まああたしも忘れてたしおあいこね。ところでアンタもここに住んでんの?」

「ううん、近くの女子寮に住んでる。この部屋はキンジが1人で住んでいるよ」

 

銀華が俺の代わりにアリアに説明する。

 

「まあいいわ、それにちょうどよかった」

 

何がいいのか。

何がちょうどよかったのか。

嫌な予感しかしないぜ…

アリアは窓際まで移動し、くるりとふりかえり、

 

「あんたたち2人、あたしのドレイになりなさい!」

 

そんな声が俺の部屋に響き渡った。

 

 

 




タグ付けし忘れていましたが、AAの話も次回から入ります。
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