哿と婚約者   作:ホーラ

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1人称視点難しいですね…ちょっと変かもしれませんが許してください


第2話:入学

4月8日

大体の小中学校の入学式がある頃だろう。兄さんも今日、高校の入学式らしいしもしかしたら高校もこのころかもしれない。

それは、いろいろ異端なこの神奈川武偵付属中学でも珍しく例外ではなかった。

 

俺は今日新しい制服に袖を通し、柄にもなくワクワクしている。

これでようやく父さんや兄さんと同じ武偵の仲間入り出来ると思ったら気分が高揚するってもんだ。

まあ、武偵ランクはA〜Eの5段階評価の一番下Eランクなのは仕方がないだろう。

なにせ俺はまだ武偵の卵、何も教わってないんだからな。これから頑張ってランクを上げていけばいいんだ。

実際、今年の一年で武偵ランクがEランクじゃなかった奴は2人しかいなかったらしい。

1人は諜報科(レザド)でDランク。

それでも十分すごいのだが、もう1人は俺と同じ強襲科(アサルト)でAランク。

しかもそいつが知り合いよりも深い関係なのがな…

 

「おっはよ!キンジ」

 

ーーシュ!

そんな声がかけられた同時に拳が耳元を通る。危ねえ!

こんなことやる奴なんて1人しか知らないし、そもそもこの学校には知り合いが1人しかいない。

 

「もうちょっと普通に挨拶しろよ、銀華…」

 

後ろを振り返ると神奈川武偵中学の制服を着ている、一応俺の婚約者の銀華(しろは)が立っていた。

 

「普通ってことは遠山流だったら鉄拳でしょ?北条流は蹴りで、武偵流は発砲かな?どれがいいキンジ?」

「どれも物騒だなおい!」

 

そんな物騒な挨拶があってたまるかと思うが実際うちは、爺ちゃんの鉄拳制裁がよく起きるからな。その爺ちゃんも婆ちゃんに吹っ飛ばされてるし否定はできん…というか北条流って蹴りが主体なんだな。婆ちゃんはあんまり蹴りを使うシーン見たことないんだけど。

 

ちなみにこいつが今年の強襲科、武偵ランクAランクで入学した北条銀華だ。神奈川武偵中の歴史の中でAランク入学は史上初らしい。何せAランクっていったらその道のプロって呼んでも差し支えがない実力を持つんだからな。この学校にも1〜3年全員含めても、こいつ含めて2.3人しかいないことからも異端さが伺える。

 

「で、なんでキンジはこんな校門の前で立ち尽くしているの?」

「ああ、ちょっと考え事をしていただけさ」

「わかった!この前の遠山家であった体罰フルコース思い出してたんでしょ!」

「嫌なことを思い出させないでくれ…」

 

体罰フルコースとは入学試験の日、銀華を怒らせたことを始めとするその後の出来事のことだ。

まず入試の終わった後すぐ、銀華に土下座させられることから始まり、家に帰り入試結果を聞かれ、銀華に負けたことを言うと「何、女子に負けとるんじゃ!」といつも婆ちゃんに吹っ飛ばされてる爺ちゃんに理不尽な鉄拳制裁を受け、夕飯直後には兄さんに特訓と称してボコボコに痛めつけられた。

ちなみにこの出来事を全て、その日俺と一緒に遠山家に帰った銀華は見ていたのだが、銀華は俺が痛めつけられる様子を見てご満足げだった。婚約者が痛めつけられてるのを見て喜ぶなんてドSすぎる。

 

銀華は春休み中2日に一回ぐらい遠山家に遊びに来ていた。俺的にはヒステリアモードがあるので女と喋るのは嫌なのだが婚約者だし、そう言うわけにもいかなかったのだが、銀華は小学校の時の男友達と同じく、婚約者というよりは友達って感じで喋ることができ、気が楽だ。

銀華は会話が上手いというか聞き上手というか、喋ってるともっと自分のこと話したくなるし、ぶっちゃけ小学校の時の男友達と話すより楽しかった。兄さんともいろいろ話していたようだしな。

 

そんなわけで銀華とは話しても俺の胃が痛くならないぐらいは仲良くなったわけである。

 

「僕の灰色の脳細胞が、キンジはもう一回あのフルコースを受けたいと思っていると推理しているようだよ。ワトソン君」

「受けたくねえよ!」

 

それっぽい声出すのうめえな。声優にでもなった方がいいんじゃないか?ていうかよく考えたら灰色の脳細胞はポアロだし、ワトソンはホームズだしいろいろ混ざってるなおい。

 

「まあいいや。早く行こキンジ」

「そうだな、行くか」

「せやな」

「なんで関西弁なんだ…あとせやなの意味は同意する意味はあるが、この場合使わないと思うぞ」

「ウソ!?」

 

銀華は時々、それ知らないの?というようなこと知らないんだよな。アクセントとかは全くおかしくないけど、時々変な日本語使うし。一体どこで暮らしていたんだ。

そんなことを思いながら、入学式が行われる体育館を目指す。

 

 

 

 

俺と同じように今年入学した新入生と前年度からいる上級生がひしめき合う体育館に着いたわけだが…ここも試験会場と同じように弾痕やそれを修復した跡が多数見受けられる。壁はもちろんのことバスケットゴールや校歌が書いてあるところにも弾痕確認できるぞ…

 

それもやばいんだが、一番やばいのは壁際にいる先生たち。あの大剣使いの藤堂も大概だが、ゴリラみたいな体格の先生、いかにも薬キメてそうな先生。見た目だけでもやべえってことが感じ取れる。

 

「藤堂も大概だと思ったが、他の先生もやばいな…」

「そう?藤堂先生以外は普通じゃない?」

 

俺の思わず出た呟きに反応する銀華。「あれ見て普通って目付いてんのか。明らかにおかしいだろ」と言いたいが我慢。あいつを怒らせると怖いのはこの前の一件で身に染みたからな。触らぬ神に祟りなしだ。

 

というか俺たち注目されてるな。正確には俺たちではない。銀華がだ。

銀華は数少ないAランクだし、何より美少女である。注目される要因しかない。

このままでは一緒にいる俺まで注目されそうだな。

 

そんなことを考えていると入学式が始まった。小学校の時のように来賓はいなかったので来賓の挨拶はなかったが、それでも校長挨拶などでそれなりに長い時間喋られるとさすがに眠くなるな。

暇に任せて、ふと横を見ると銀華は物珍しそうに式を眺めていた。まるで初めて式に参加するような目だ。そんなに珍しいか?

どう考えても先生たちの方が人間として珍しいと思うんだが。

 

 

 

 

 

入学式と始業式を終え、体育館を出て自分のクラスを確認しにいく。

えーっと、俺のクラスは…

あった、1-B。

なんと偶然にも1-Bの名簿には銀華の名前もあった。

なので銀華と一緒に教室に向かっているわけなのだが…

 

「クラス分けって初めて見たよ。くじ引き感あって面白いね。それに入学式も面白かったし、この学校に来てよかったよ!」

 

どうしてこいつはこんなにテンションが高いんだ?これ田舎者が都会に出てきた時のテンションの変わり具合だぞ。

 

「銀華、お前こういうの初めてなのか?」

 

婆ちゃんに銀華の過去のことを聞くなとは言われているが気になるものは気になるし、これぐらいなら問題ないだろう。

 

「えーとね…外国の学校には通ってたんだけど、人数は少なかったしこういう式もなかったんだよ。だから私にとって入学式やクラス分けは面白いんだよね」

 

なるほど。確かに人数が少なかったら、毎回同じクラスになるからクラス分けは行われないだろうし、外国だったら日本と文化が違うから入学式が行われなくてもおかしくない。

というか、銀華お前外国で暮らしてたんだな。髪の毛の色とか明らかに外人だけどさ。

 

「あとめっちゃ注目されてるな、銀華」

「別にAランクってそんなにすごくないよね?だってその上にSランクがあるんだし」

 

少し銀華は不満そうだが俺からしたら十分すげーよ。上があるって言ってもSランクってあれだろ?特殊部隊1隊相手に1人で戦えるだろう化け物レベルの実力者。Aランクが束になってかかっても勝てないほどSとAの差はあるらしい。

 

「Sランクの最年少って確か15歳だったはずだし、12歳のお前がAランクでも何も問題はないだろ?というかAランクのお前が胸を張らなかったら、Eランクの俺はどうなるんだ」

「残念な人」

「相変わらずひどい言い草だな….」

 

俺は銀華を褒めているはずなのになんで貶されなくちゃならないんだ…

というか銀華が注目されてるせいで横にいる俺も注目されてるのどうにかならないんですかね。特に強襲科の連中は俺に倒されたやつもいるから俺に注目してるやつもいるぽいしな。

 

入学前は実力を示して目立つことはいいことかと思っていたが、そんなことは全然ないな。注目されても鬱陶しいだけだ。今回はヒステリアモードを出してないし、あれを出すのは別の意味で躊躇われる。

そういえば銀華も試験の時、本気は出さないみたいなこと言っていたが、あれで本気じゃないっていうのはやべえな。

もしかしてあいつも俺と同じヒステリアモードみたいな体質を持っているのか?

 

1-Bに辿り着き、俺の番号が書かれた席に着くと、銀華から離れたからかこちらをうかがい見る鬱陶しい視線は無くなったな。

銀華は視線は集めているが、まだ喋り掛けられたりはしてない。それもそのはず、まだ他のクラスのメンバーはあいつのことをAランクってことしか知らないし、何か地雷を踏んでボコられるのは御免被りたいだろう。

 

肘をつきながらそう観察していると、入学式にいた薬をやってそうな死んだ目をしている担任と思われる先生が入ってきた。

 

「おーい、座れー」

 

気だるげな声が教室に響くが、おい先生…目見えてんのか?入学初日なのもあるが、全員しっかり座ってるぞ…本当に薬でもやってんじゃないか…?

 

「皆さん、座りましたね。ええっと、自分がこのクラスの担任のええっと……そう、駒場です。一年間よろしくお願いします」

 

本当に大丈夫かこの人。自分の名前すら忘れてるぞ。本当に担任なんて務まるのか?あと俺はこんな奇妙な学校に馴染めるのか?

 

 

そんな不安の中、俺の武偵中生活はスタートした。

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★

 

俺のその不安は的中してしまった

 

武偵中に入学してから早くも1ヶ月。

学校生活は退屈ではないが、入学前想像していたほど楽しくはない。

俺は生来のコミュ力の低さ、非社交的な性格により、入学式直後にできた男子のグループのどこにも入ることができず、女子はおろか男子とすら話すことが稀な日々だ。誰かと話すといえば下校時と休み時間、時々銀華が話しかけてくれるぐらいか。

 

その銀華は--俺とは対極の、クラスの中心人物であり人気者だ。あいつはAランクなので、最初クラスメイトとしては近寄りがたかったようだが、あいつは俺とは真逆の社交的性格からクラスメイトの心を掴んでいる。

 

それに銀華は戦闘だけではなく、座学の成績も優秀だということがわかった。俺が授業でわからなかったところを聞けば、先生よりわかりやすく解説してくれる。あいつはどんだけオーバースペックなんだマジで…

 

現にこの昼休み、銀華は俺の列の一番後ろの席でクラスメイトに蟻の入る隙間もないぐらいに囲まれていた。たぶん、午前中の授業の質問か相談とかを受けているのだろう。俺も午前中の授業で分からないことあったから、それを聞きたかったんだけどな。あの様子じゃ無理だ。

そんなことを考えながら昼飯を食べていると、同じクラスメイトの1人の女子が俺に近づいてきた。ん?なんだ。

 

「遠山君だよね?北条さんから遠山君にこれ渡すよう頼まれたんだけど…」

「あ、ああ。ありがとう」

 

1ヶ月もたって名前をうろ覚えなのは武偵の卵としてはどうなのかとは思うが、口に出さず素直にお礼を言って受け取る。女子が手渡してきたのは1枚のルーズリーフ。彼女が銀華の元に戻るのを確認してから、閉じてあったルーズリーフを開く。

 

(こ、これは…)

 

中に書いてあったのは今日、俺が授業で分からなかったところを網羅した俺用の解説プリントだった。

なんで俺が分からない場所がわかったんだ?

そんなわかりやすい仕草はしてないはずなんだが…

 

『ところでキンジはなぜ、自分が分からなかった場所がわかったんじゃないかと思ったんじゃない?』

 

ルーズリーフの最後の方にそう書いてあったのだが、おいおい銀華お前、エスパーかよ…

 

『私のことエスパーかなにかと思ってるかもしれないけど、簡単な推理だよ。今までのキンジがわからなかった場所と授業中のキンジの仕草を重ね合わせただけ。重ね合せるとキンジは何か分からなかったりすると頭をガリガリ掻く癖があるということがわかったからね。授業中に先に作っておいたんだよ。これを教えたお礼はプリン1個で」

 

銀華、俺のことよく見てるな。この癖は早めにちゃんと直さないと。

というか報酬プリン1個って安いなおい。武偵同士のやりとりだから報酬が発生するのは当然なんだが、癖を教えてくれるのは重要なことだしもっと要求してもいいと思うんだが。まあ、あいつと違って懐が寂しい俺にとってはありがたい話なんだがな。

 

 

 

 

 

午後の授業は射撃訓練場での射撃訓練だ。

訓練内容は簡単、人型の的に向かって銃を撃つ。ただし俺たちは武偵となる身。ひとつ考慮しなくてはいけない点がある。

それは武偵法9条に、武偵は如何なる状況に於いても、その武偵活動中に人を殺害してはならないというものがあるという点だ。

つまり、俺たち武偵は人を殺してはならないのだ。

つまり、よくあるドラマのように人間の急所である心臓、頭、喉などを狙うのではなく、それ以外の手や足や肩などを狙うことを要求される。

これが意外に難しい。

 

ちなみに俺の使っている銃はベレッタM92F。武偵中で入学直後に行われた米軍横流しセールといった狂ったセールで銃本体やパーツ、弾が安く販売されていたから、金欠気味の俺はそれに飛びついたわけだ。

ベレッタは9mmパラペラム弾を使用する拳銃で米軍制式採用拳銃に指定されているほど信頼度が高い。

本当はアメリカ軍のトライアルでベレッタより精度などが高かったp226の方が良かったのだが、値段が高かったので断念した。だが、ベレッタも自分の命を預ける拳銃としては信頼を置けるだろう。

 

父さんの遺品で最強の自動拳銃があるのだが、まだひよっこの俺が扱えるものではないからな。あの拳銃は本当にやばいって時に使うために丁寧に保管してある。

 

「2班、前に出て」

 

この学校に似つかわしくないインテリジェンスな雰囲気を醸し出している強襲科の教師、須郷がそう告げた。全員は一気に射撃訓練はできないので、クラスを3つの班に分けているのだが、俺の番が回って来たみたいだな。

前に出て、ベレッタの装弾数であるところの15発を打ち切る。

 

(まあ、こんなもんか…)

 

人形に当たったのは15発中11発。一応11発とも狙い通り急所を外していたので良かったのだが4発も外してしまった。

実戦ではコンマ1秒が生死を分けることがあるので外すなんて論外だし、もっと精進しないとな。

俺らが終わると次は3班、銀華の番だ。

 

 

銀華は落ち着いて狙いをつけ、一度引き金を引くと3つの銃声が鳴り響いた。

 

銀華が使っている銃は俺と同じベレッタなのだがモデルが違う。銀華が使っているのはベレッタ93R。

俺の持っているM92Fとの大きな違いは93Rは三点バーストできるという点だろう。93RはフルオートできるM1951Rの後継であり、反動が大きく非常に使いこなすのが難しいフルオートの代わりに、フルオートよりは制御しやすい三点バーストを採用したものと銀華から聞いている。

銀華は小気味いい銃声を響かせながら装弾されている全弾21発を撃ちきった。

 

「うおおおおお」

「すごい…!」

「これがAランク…」

「北条、やるじゃないか」

 

銀華の射撃に射撃場が湧いた。須郷も少し驚くように褒めている。

それもそのはず、結果は21発全弾命中。しかし弾痕は7つしかない。なぜなら…

 

(3点バーストで全弾同じ場所に命中ってどんな射撃精度してるんだよ…)

 

一度銀華に93Rを触らせてもらったが、三点バーストはフルバーストよりは制御しやすいとはいっても、セミオートよりは反動が大きく制御しにくい。

それに全く同じ場所を命中させるのは針の穴を通すような繊細な技術が必要だ。それを反動が大きい三点バーストでやるなんてヒステリアモードでも難しいぞ。

 

 

一通り1人での射撃訓練が終わったあと、ペアでお互いにアドバイスをし合うという内容になったのだが、クラスでぼっちの俺にとってこの内容は鬼畜だ。

ペアどうするかな…

銀華は大人気だろうしと考えていたのだが

 

「キンジ、私とペア組んでくれないかな?」

 

声をかけられ振り向くと笑顔で銀華が立っていた。クラスでぼっちな俺にとってはありがたい申し出だ。

 

「ああ、頼む」

「私が組んであげないとキンジずっと1人だからね」

 

実際、入学してすぐの授業時に最初のペアの実技が行われ、銀華が他の人と組み、俺は1人取り残されてしまい、1人で実技訓練をした身としては否定できない。

ペアが作れたことはいいことなんだが、銀華とペアを組もうと思ってていた人が恨みがましい目線を向けてくるのはどうにかならないんですかね…本当に。

あと普段の俺より数段先にいる銀華には、俺からするアドバイスなんてない。

 

「俺としてはお前にアドバイスすることないんだが…」

「キンジが私に教える時間分、私がキンジに教える時間が増えるからいいんじゃない?他の時は私がキンジに教えてもらってること多いんだし。それでキンジのさっきの射撃見てたんだけど…」

 

なんか妙に銀華は教え合うってことに慣れてるんだよな。自分のできないことを他人に聞くのは普通に思っているというか。それも外国では普通なのか?

それにあいつの戦闘能力の高さ、何かどっかの戦闘部族生まれでも驚かないっていう程度には高いぞ…あれでSランクじゃないんだから驚きだな。

 

「って、おーい。キンジ聞いてる?」

 

しくじったな…せっかく教えてくれていたのに聞いてなかった。

 

「ええっと…そのだな…」

 

首を傾けながらニコニコ笑顔で聞いてくるのだが、俺は銀華のこの笑顔を知っている、ちょっと怒っているやつだ。誤魔化すのはマズイ…

 

「すまん…聞いてなかった…」

「まあ聞くまでも、推理するまでもなくわかってたけどね。どうせ考え事でもしてたんでしょ?」

 

銀華は瞳の奥に潜んでいた剣呑な光を消し、呆れたような顔をしながら腰に手を当てる。

 

「キンジはちゃんと人の話聞かないとだめだよ?そんなんだからぼっちになるんだからね」

 

はい…その通りです…コミュ力が高い銀華がいうと説得力も増すな。

 

「なんで銀華は人の思考が読み取れるんだ?」

 

人の思考を読み取れる人は実際にいるがそれは超能力だしな。銀華がそれとは思えない。

 

「別に難しいことはしてないよ。相手の視点移動、呼吸回数、唾を飲む数その他諸々から驚き、動揺などの感情を読み取ってるだけ。キンジは如実にわかりやすいからポーカーフェイスする訓練もした方がいいね」

 

まだ入学して1ヶ月だしそこまで習っていないな。というかそれ探偵科や尋問科の方が専門じゃないのか?

 

「どうしてそんなこと知っているんだ?」

 

銀華の過去を詮索するのは婆ちゃんに止められているが、文武両道で全てにおいて出来すぎている銀華のことが気になる。

 

「ええっとね…」

 

一瞬、銀華の目が泳ぐ。確かに銀華のいうとおり微かに動揺してるのが見てとれる。

 

「答えられないなら別にいいぞ。ちょっと気になっただけだしな」

 

ちょっと踏み込みすぎたか。

 

「細かいことは言えないけど、自分の居場所を確保するためかな。肩身がせまい思いをしないでどうどうと生きていくのに必要だと思ったから。そんな感じでどう?」

「…そうか」

 

ここではないどこか遠いところを見つめるように銀華はいうのだが、なんか悪いこと聞いちまったな…

 

「まあ、私のことは傍に置いといてまずはキンジの射撃の腕が今は一番大事なことだよね」

 

相変わらず、空気読めるなおい。暗い空気になったのを見てすぐ話題を変更するなんて、会話偏差値30ないだろう俺には無理な芸当だな。

俺は銀華の爪の垢を煎じて飲むべきかもしれない。実際に実行したら婚約破棄されそうだけどな。

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

学校が終わり、今日はキンジの家に寄らないから、1人で帰宅し部屋の電気をつけた。

制服のままベッドに横になっていているから、シワになりそうだけどまあいいや…

 

考えるのは私の婚約者、キンジのこと。

この1ヶ月間一緒に学園生活を暮らして、わかったことといえばキンジは通常時はそこまで強くないってことぐらいだね。

 

どうして母さんは私とキンジをくっつけたがったのかなあ…これがわからない…

やっぱりキンジのHSS、ヒステリアモードを見てみないと何も進まないか。

男版HSS。一騎当千、天下無双と言われている能力。

仕方ない。私も一肌脱ぎますか。

 

手を伸ばしてベットのそばにある秘密回線処理がされている電話である人に電話をかける。

 

「あ、私私。紅華だけど。うん。ちょっと頼みがあるんだけど」

 

私の学園生活は始まったばっかりだよ、キンジ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いまさらですが婚約者がいるキンジが書きたかっただけなんでキンジ視点多めになります。

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