第37話:武装巫女
シャーロック・ホームズ。
約100年前に活躍した、イギリスの名探偵。拳銃の名手で
その子孫は……ももまんがだいすきで…拳銃を乱射して…刀をぶん回して……
--こんな、ホームズありえんだろ!
という事実を突きつけられた俺が、理想と現実のギャップに悲しくなってる中、アリアはなんと俺の部屋に戻ってきてしまった。なんでやねん!しかも、名目は俺のモード切り替えの鍵を探るというものらしい。やめてくれよ…
婚約者の銀華がいるんだから同居は勘弁してくれと抗議しても、「武偵殺し」の一件は理子を捕まえてないからまだ解決してない、銀華も一緒に住めばいいと言われてしまった。そういうの屁理屈っていうんだぞ。
とはいえ…理子はどうせ生きているというアリアの意見には同意するしかない。
聞きそびれたが、武偵殺しとして起こした兄さんのこと。イ・ウーとやらのこと、そして一番気になるのは理子の昔話。
この事件はまだ解決してない。
そんなことを考えながら…
「ももまんの方が絶対美味しいわ!」
「いや、ウナギまんだ。お前は何も分かっていない」
「はいはい。そんなどうでもいいことで喧嘩しないの」
「「どうでもいいことじゃない!!」」
ももまんとウナギまんはどっちがうまいかでアリアと口喧嘩していた夜。俺達に呆れた銀華が誰かと廊下で電話をしていたかと思ったら…
「き、き、キンジ。に、に、逃げるよ!」
顔を青ざめブルブル震えた銀華が廊下から戻ってきた。
「お、おい。どうした。何があった!?」
「ぶ、ぶ、『武装巫女』がく、来る!ていうか…もう来た…!」
どどどどどどどど…!!
何かが突進してるような足音がマンションの廊下に響き渡っている。
近づいている!
しゃらんッ!!
金属音と共に俺の部屋の玄関の扉が斬りあけられた。
そこに仁王立ちするのは…巫女装束に額金、たすき掛けという、以前銀華を討ち取りに来た時と同じ戦装束に身を固めた
「星伽さん!」
「白雪!」
だった。ここまですごい勢いで来たことがわかる白雪は肩で息をしているが、それでもぱっつん前髪の下の眉毛をギリギリギリッとつり上げている。
「本当にいた!!銀華さんの声が嘘をついてる時の声だったから来てみれば……!!キンちゃんどういうこと……?」
銀華は白雪に甘いから、嘘つくの下手なんだよな。時々Sランクとは思えないポンコツさを誇る銀華。いつもは可愛い部分だが今はそこが憎い。
「お、落ち着いて星伽さん」
「銀華さんは黙ってて!」
「は、はい」
銀華への特効薬といえば白雪というぐらいに銀華と白雪は仲がいい。お互いに家庭的なところがあるので波長が合うのか、決闘の後はずっと仲良くしていた。白雪にとっては同年代の初めての女子の友達かもしれない。それを銀華は俺から聞いて知っているので、白雪に優しくしてしまい言うことを聞いてしまうのだが、それが今は恨めしいぜ……
「キンちゃん…ねえ…どうして、銀華さん以外の女の子と一緒に暮らしてるの?」
「いや、それはそのだな……」
こうなったバーサーカー白雪には何を言っても通用しない。だがなにも言わないわけにはいかない。
「あ、ごめんね……キンちゃんは悪くないよ……」
あれ。なにも言う前に許してくれた。
と思ったのもつかの間、
「この泥棒猫!き、キンちゃんを誑かして銀華さんとの間を切り裂く大悪党。私はもう諦めて、考えないようにしてるのにうらやまけしからん行為をしといて!言い訳は聞きません!今ここで死になさい!」
アリアに矛先が向かっただけだった
「ちょっ、ちょっと、いきなりなんなのよあんた!意味わかんないわよ!」
「キンちゃんはわかるよね?……キンちゃんは騙されてるだけだもんね?」
「お、おう」
ちなみになんで白雪が怒ってるかなんてビタ一文もわからん。けどここで否定したら殺されるかもしれない雰囲気だったから頷いてしまった。そしてこの肯定が…
「やっぱり、キンちゃんは騙されてるだけ!言質をとりました!銀華さんは優しいから何も言えないんだったら、私が悪を滅します。悪!即!斬!」
さらに油を注ぐ結果となった。これはまずい!
「お、おい白雪ってうおっ!?」
がすっ!
セリフの途中でアリアが俺のことを思いっきり蹴り飛ばして来た。
俺は廊下の壁にぶつかり、転倒する。
「キンジ、なんとかしなさいよ!」
「知らねえよ!白雪の狙いはお前だ。お前の役割を果たせ」
「なんですって!パートナーなら助けなさい!銀華も黙ってないで!」
「だ、だから、あのね。星伽さん…?」
「キンちゃんと銀華さんは悪くない。悪いのはアリア!アリアが悪い!アリアなんか死んじゃえ!」
ダメだ。銀華の言うことを聞かないとなると完全に我を失ってる。もう手がつけられん。
銀華もベルセってないし、実力で抑えるのは無理そうだ。
「天誅うううううう!!」
そんな叫びを伴いながら、アリアの脳天めがけて刀を振り下ろした。
ま、マジかよ!
ほ、本気でやる気だぞこいつ!?
「みゃっ!?」
猫のような声をあげたアリアは
ばちいいいいいい!!
白雪の日本刀を両手で挟んでとめた。
(真剣白刃取りだとっ…!?)
あれを銀華以外に使えるやつがいたとはな。
流石強襲科のSランクだ。
「うおっ!?」
「キンジ、逃げるよ!」
いきなり手を引っ張られベランダに向かう。な、なるほど。流石銀華賢い!
二人が争う戦場のようなリビングを通り抜け、銀華と共にベランダにある防弾製の物置に入る。
「キンジ!」
「キンちゃーん」
二人の声が聞こえるけど無視だ無視。俺は命が惜しい。
ガシャン
物置の扉を閉めて、第一次俺の部屋大戦を見なかったことにする。部屋は犠牲になるけれど…まあそれはコラテラルダメージだ。
「キンジ、何かこれ秘密基地みたいだね」
違う意味での危険人物の侵入を許した…
物置は狭い。ベランダにおけるぐらいだからな。当然荷物も入っている。そんな中で、銀華と二人っきり……
(まずいまずいまずいまずいっ!)
鼻腔に銀華の菊っぽい香りが飛び込んで来る。この匂い反則だろ。クスクス笑ってる銀華にそんな気持ちがないのもさらにマズイ。リゾナならそういうことは抑えれるが、銀華がヒスらずリゾナにならなかったら、そういうことをやりかねん。
すーはー、すーはーと鼻呼吸を止め、口で呼吸している俺を見て心配したのか
「だ、大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ、すまん」
暗闇の中でも心配してくれる銀華の顔は可愛い。可愛さの化身かよお前は。
…………気を散らすために何か喋るか。
二人で狭い物置の中、おしゃべりをしばらくしていると、戦争のような音がようやく止んだので……二人でそーっと防弾物置から出た。
「「…っ!?」」
なんだこれ…
部屋の光景に気が遠くなる。
壁のいたるところに弾痕やら斬撃の跡ができており、お気に入りだったあれやこれやの家具は破片となり床に散らばっている。大切なものは寝室に置いてあるから良かったが、もしここに置いてあったら泣き崩れてたかもしれない。
で、その災害が起きたような光景を作った災害娘の二人だが、格好は乱れに乱れ、美少女が台無しになっていた。
「はあ…なんて、しつこい泥棒、ネコ、なの…」
東の美少女、白雪は日本刀を杖のようにしてなんとか立ち上がり、ぜーぜーと肩で息をしている。
「あ、あんた、こそ、はやく、くたばり、なさい……はぁ……はあ…」
西の美少女、アリアは床に尻をつき息絶え絶えと言った状態だ。
「で、どっちが勝ったの?見た感じ引き分けに見えるんだけど」
東と西のハーフの美少女(実際はクォーター)、銀華が第三者に入り和平調停をしようと、交渉を促す。
「キンちゃん様っ!北条様!」
俺たちが出て来たことにやっと気づいたらしい白雪は、立ち上がるのを止め、正座し直した。
そして、びたっ!と音が聞こえるが如く床と平行に頭を下げた。
「し、死んでお詫びしますっ!北条様とキンちゃん様の、恋路を邪魔する泥棒猫を、殺しきれずに大変、申し訳、ありませんっ!こ、こうなったなら、わ、わたしはここでアリアと討ちたがえますっ!」
なんだかよくわからないこと言い出した。
銀華のこと北条様って言い出してるし、なんだキンちゃん様って。接尾辞が二つ付いてるぞ。
「あのなあ…相打ちするって何言ってるんだ?」
「だって、だって。ハムスターはカゴの中にオスとメスを入れておくと勝手に増えちゃうんだよぉ!銀華さんとならいいけどアリアはだめぇー!」
「何言ってるか意味わからんし飛躍しすぎだバカ」
「あ、アリアはキンちゃんのこと絶対遊びだよ!」
「ぐえ、ぐえ…!襟首を掴んで揺らすな!というか銀華助けて…」
「……キンジとの子供……//」
く、くっそ。こいつ脳内トリップしてやがる。
「わたしが悪いの…二人のことをちゃんと見張ってなかったから…二人の間に悪の化身が…」
「誰が悪の化身よ」
横から憎まれ口を叩いたアリアに対して…
「キンちゃんとちょっといい関係になったからっていい気になるな、この毒婦!」
「毒婦ですって!?」
「そこは否定できないと思うぞ」
「風穴祭りにするわよ」
物騒なお祭りだな。
「キンジはあたしのドレイ!ドレイにすぎないわ」
「どっ、ドッ、ドレイ…!?」
それを聞いた白雪は顔面蒼白にした後、何を想像したのかアリアのような急速赤面術で顔を真っ赤にした。こいつも忙しいやつだな。
「そ、そんなイケない遊びをキンちゃんにさせてるの!?」
「な、な、なななな、何バカなこと言ってんの!違うわよ!ていうか銀華助けなさいよ!あんたの役割でしょこういうの!」
「キンジのドレイ…いいかも…」
あ、こいつもうダメだ。
「違わない!キンちゃん、銀華さんとならいくらでもしていいけどアリアとはダメ!」
「ちがう!ちがうちがうちがう!ちがーう!キンジ、ナントカしなさい!」
仕方ないなもう。
「…えっと白雪…」
「はいっ」
俺に呼ばれた白雪は俺の方を向いて正座し直した。
「よく聞け。アリアとは武偵同士一時的にパーティーを組んでるにすぎないんだ」
「……そうなの?でも銀華さん、キンちゃんが女の子と組むの嫌がってたはずだけど」
「これについては銀華の了承を得ているし、銀華もまだ事件がないからわからんが、パーティー入りするはずだぞ」
「そうなんだ」
「そうだぞ。白雪、俺のあだ名知ってるだろ?」
「……女嫌い」
「だろ?」
「あと、銀華依存症」
「それ、初めてきいたんだがっ!?」
誰だよ、そんなあだ名作ったやつ。
「それでアリアはキンちゃんとそういうことはしてないのね?」
と安心したのか、少しだけ落ち着いた声で問いただしてくる。
「そういうことってなんだよ」
「口説かれたり、き、キスとか…」
口説き。
ですか。
口説きですか。
「……」
「……」
正直に言うと俺はヒステリアモードでアリアを口説いた。この件はすでに銀華に言ってあるんだが、仕方がなかったんだ。だってあの興奮したアリアを落ち着かせるには、一種の催眠術をかける『呼蕩』ぐらいしか思いつかなかったし、それじゃなかったらアリアの恋愛耐性の低さを利用したキスぐらいしか思いつかん。
銀華だって口を膨らまして不機嫌ですアピールをしながらも、「むうー仕方ないね」と言って許してくれたし、あれを弾劾されると困
「……し……た……の……ね……」
白雪の瞳孔がすーっと、開いていく。
その顔はみるみるうちに表情を失い、のどの奥からはうふふふ、ふふ、ふふふふという
笑い声が聞こえてきた。
お、おい白雪。
今のお前R指定に引っかかるぞ!
「ま、まてっ!白雪!キスはしてない!」
「じゃあ…アリアは…口説かれたのね…」
「そ、そういうことはされたけど!」
なぜかアリアが立ち上がった。
そして、ぐい。
ありもしない胸を思いっきり張る。
「で、でも、だ、大丈夫だったのよ!」
大丈夫?
「昨日ちゃんと検査したんだけど!こ、こ」
こ?
「
なんだよ……子供って……
アリアは仁王立ちしながらどうよって顔をしている。
ひゅう
白雪の体から、何かが抜けていった。
「白雪!?」
どさっ。
白雪は座った体勢のまま、後ろに倒れてしまう。
「お、おい。アリア!お前なんで子供なんだよ!」
「だ、だってあんた手を繋ぎながら口説いてきたじゃない!手を繋いだら子供ができるってお父様が…小さい時に--」
この--
ホームズ家!
娘の性教育ぐらいしっかりしてくれよ!
「あんなことで子供ができるわけねえだろ!」
「何よ!じゃあどうすればできるのよ!教えなさいよ!」
「バカッ!教えられるわけないだろ!」
「ははぁん…知らないのね」
「知ってる!」
「じゃあ、教えなさいよ」
「教えられるか!」
と顔が真っ赤同士の俺たちが互いに詰め寄り、睨み合ってる間に白雪は煙のように消えていた。この時俺も逃げるべきだったのかもしれない。俺は弁明に必死で、この場にいるもう一人のことを完全に忘れていた。
「ねえ……キンジ」
呼びかけられただけなのに全身が身震いした。興奮した俺とアリアの真っ赤の顔は一気に血の気が引いていき、真っ青になる。
「お話聞いてもいいかな」
両目を紅色に染めた魔王がそこには降臨していた。一歩ずつ進むのに秋水を使ってるのか、床が凹む。ガラスが風も吹いていないのにビリビリと震え、辺り一面物音一つしなくなった。これ耐性ない人が気絶してるからじゃないの?
「子供ができなかったってどういうこと?」
「い、いや。そういう行為をしたわけじゃない!?そうだよな!?な、なんとか言えアリア!」
「こ、子供ができなかったのはじ、事実よ」
そうじゃねえだろおおおおおおおおおお!
「黙れ
「っ………」
Sランクの虎の子アリアでもベルセ銀華はどうしようもないみたいだ。アリアですら恐怖でぶるぶる震えているし、どうすればいいんだこれ……と、とりあえず事実を言うしかない!
「い、いや、呼蕩の時、効果を上げるために手を握っただけだから!ち、誓ってそ、そんなことやってません」
「じゃあ、神崎。今日は帰れ」
「…な、なんでよ!」
「もう一度忠告する。今日は帰れ。3度目はない」
「…わかったわよ……明日また来る」
唯我独尊なアリアもこの銀華には逆らえないのかさっさと逃げるようにして俺の部屋から出ていった。
もしかして、この銀華を一人で相手しなくちゃいけないのか…?
「あの銀華、そのだな…俺とアリアはそういうことはし…………っ!?」
俺の口が何かに塞がれる。
すうっと交換される銀華の息は菊のような爽やかな匂いで。
……ああ。
わかる。
俺は銀華にキスされたんだ。
そして--
ドクン、ドクン…という。
俺の高鳴る鼓動も。
いつもより情熱的で積極的な銀華に興奮し、中心・中央を熱くたぎらせていく。
「まったく…そんなに俺が欲しかったのかい?」
男版ベルセは女を奪うヒステリアモード。
じゃあ女版ベルセはどうなのか。
当然男を奪うヒステリアモード。
「そうだけど……なるほど、ベルセからはノルマーレには移行しないんだね…」
男、俺を奪ったことで満足したのか銀華は通常モードに戻っている。
「まったく悪い子だね。銀華は」
「キンジが悪いんだよ。浮気したんだから」
むうーと言った風に不機嫌そうな銀華。
ヒステリアモードじゃない銀華も男を興奮させる術を天然でやるからずるいね。
「俺の世界には銀華しかいない。銀華以外いらない。いつもそう言ってるだろ?浮気なんてするわけないさ」
「じゃあ、私だけを見て?」
「ああ」
そのあとリゾナになり、浮気してないことを証明するために長い時間愛し合うのだが、それはまた別のお話。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★
「ふああ」
一つ背伸びをして、自分の携帯を見て時間を確認すると朝の結構いい時間。そろそろ起きないと。
「あれ?」
もう4月末なのに妙に肌寒い。なんでだろう?って……
(下着姿だからじゃない!)
そうだった。私がベルセになってキンジを求めたんだった…
子作りまではしてないけど…うん。それに近い行為までして…お、思い出すだけでも恥ずかしい…
最近ライバルが多くなってきて、頑張って色々苦手なそっち方面の勉強とかしてるんだけど、キンジは喜んでくれてるのかなぁ。
HSSになるってことは興奮はしてるってことだけど….うーん。
どうすればキンジにもっと気に入ってもらえるのかわからない。男心はよくわからないよ…
銀華さん、ライバルが出てきて焦り中
次回辺りは久しぶりに銀華視点だけで砂糖少なめで書きたいですね(砂糖過多で気持ち悪くなってきた)