哿と婚約者   作:ホーラ

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連続投稿最終日


第55話:金色の閃き

行なった窃盗行為を教務課に連絡したのだが、俺の報告は黙殺された。

保護観察どころかアリアが言ってた通り罪に問われないらしい。

だがその返事の代わりに来たのが『司法取引』だった。

各所の偉い所から来た書類をヒステリアモードの解けた平凡な頭を使いまとめると…ランドマークタワーでの一件--特にクレハの事は永久に他言無用、その代わりこの1ヶ月の違法行為はお咎めなしという事らしい。

俺がそれに同意し送り返せば終わりらしい。

すげえなこの制度。そして戦闘行為は一切報道されなかった。どういうわけか落雷事故ということになったらしい。

何か過剰に俺達に気を使ってるような気もするがこういう制度なのだろう。イ・ウーの事はいかほどのタブーかということを思い知らされたよ、まったく。

 

ちなみに理子も、そしてどこかで同じように仕事をしていた銀華も武偵高に帰ってきた。

いつもどおり生活が戻った--という事はなく、銀華は笑ってるくせにすげえ怖いし、アリアは理子を捕まえようとしないし、理子はいつものうざいぐらいの元気は影を潜めており、徹底的に搾り取られたようで机に突っ伏している。

銀華が怒っている理由は不明だが、アリアと理子、2人の理由はわかった。

まずアリアだが家へ帰るとやたらご機嫌で、理由を尋ねてみたら、理子がアリアの母親の冤罪を晴らすために証言をするらしい。もう弁護士にあっているそうだ。

理子が証言するという事は、証拠に問題があるので、最高裁から高等裁判所に裁判を差戻す--差戻審が確実になるらしい。

アリアの母親・かなえさんが無罪判決を勝ち取るチャンスが増えることになる。

珍しく俺にありがとうとお礼を言ったアリア。聞き間違いかと思って耳を疑ったぞ。

 

そして理子は--

どうやらクレハの地獄のお仕置きを受けたらしい。あれほど俺たちから逃げ回り、アリアに攻撃を受けてもああはならなかった理子が、まるで生気を抜かれた状態。

お前何やったんだよと聞いたが

『キーくんのせいだよもう…プンプンガオガオだ…』

と力の抜けた声で言われた。

一体なんだって俺のせいなんだ?俺は真面目に紅鳴館で仕事してたし、なんならあいつの好感度高かったぞたぶん。

 

さて、わからないのは銀華だ。いつもは怒りを直接ぶつけてくる(物理)のに、なんか静かに怒っている。顔は笑っているとはいえ機嫌の悪い銀華さんからベルセがいつ飛んでくるかわからん。しかも銀華の怒りは単細胞のアリアと違って長い。ご機嫌を取らなければ、ずっとあのままだろう。アリアの時みたいに、逃げ回って解決するもんじゃない。

ということで、あまり気がすすまないが銀華さんをうちに呼び出してご機嫌を取ることにしたんだが……

ピンポーンと鳴り響くチャイム。おそらく銀華だろう。

うっ…胃が痛いぜ。

俺が恐る恐るドアを開けると

ヒッ…!

ニコニコ顔だけど目が確実に怒ってる銀華さんがやっぱりいた。ま、俺が呼んだんですけどね。

 

「で、どうしたの?キンジ」

 

勝手知ったる俺の家、自分のスリッパを取り出しながら銀華が聞いてきた。

 

「…まあちょっとな…」

「キンジが私に隠し事をしている話?」

 

ギクッ…!

その可愛い顔を俺に近づけながら、そう詰め寄ってきた。

ちなみにランドマークタワーでの一件は守秘義務があるので話すことができない。銀華も武偵だからそういうことはわかってくれると思い……

 

「こ、これは言えないんだ!すまん!それに、そんなやましいことじゃなくて…」

「やましいことじゃない…?」

「は、はい」

 

と思わず敬語になってしまいながら銀華に答えると、銀華は顔を離しリビングの方へ先行する。許してくれたのかな?と思い銀華の後ろをついて行くと銀華はリビングの中央で止まった。

 

「ねえ、キンジ?」

 

銀華が背中で語ってくる。

 

「ん?」

「私はね、キンジが思っている以上にキンジのこと知っているんだよ」

 

そう振り返った銀華の目は

(ヒィ…!)

片目が深い紅色に染まっており、その目は俺を震え上がらせる。

な、なんで(メザ)ベルセになってんの銀華。

普段は優しい銀華がこうなると、ギャップによりあの拳銃ゴリラのアリアより怖く感じるぞ。

 

「ところでキンジ」

 

リビングから俺のいる廊下の方へ

パタ、パタ、とフローリングをスリッパで歩いてくる音がする。

その顔はにいッと引き攣るように微笑む。

これもいつもの可愛らしい笑い方とは異なる背筋の凍るような笑みだ。

 

「ど、どうしたッ」

「本当にやましいことはないの?」

「や、やましいこと?」

「今正直に謝れば、もしかしたら許してあげる。でも嘘ついたら……そうね。痛い目にあうかもしれない。さあ、正直に言ってみてよ」

 

パタ、パタと歩いてくる銀華に対して、俺は玄関の方へジリジリ後退する。

この怒り方、ベルセを抑えているのか。ベルセに完全になりきってはいないが、過去最大級の怒り方だぞ。な、何が銀華の逆鱗に触ったんだ?ま、まったくわからん…!

とにかく宥めるようなこと言わないと--

 

「や、やましいことはない」

 

ジリジリと下がりながら説得を試みるが…

 

「今、嘘ついたね」

 

逆効果。

どんどんもう片方の目も紅色に染まっていくぞ…

 

「キンジは忘れんぼうさん。だから教育が必要だね。すぐ終わるから…」

 

銀華ファンが見たら発狂してしまいそうなぐらいのやばい顔をしながら俺を狙っている。

 

「よ、よせ……ッ!」

「私もこんなことしたくなかった。正直に言ってくれれば、ゆるした。今回はキンジはあんまり悪くないって。でもキンジが嘘つきだから。キンジがいけないの」

 

だ、だめだ。ベルセは対話でなんとかなるもんじゃない。それを俺は感覚的に知っている。そして、普段の俺はベルセはおろか通常モードの銀華にすら勝てないので、武力でも歯が立たない。

だが、ベルセはチャンスでもある。

ベルセは異性を奪われたことで発動するヒステリアモード。銀華は誰かに俺を奪われたと思って発動したのだろう。少し恥ずかしいが、原因を知り、それに代わる行動をすれば、銀華もきっと分かってくれるはずだ。たぶん。

 

「し、銀華。お前は何が気にくわないんだ?」

「キンジが嘘つきなところだよ」

 

蛇に睨まれたカエルのように動けない俺の頰に銀華の綺麗な手が触れる。普段ならドキドキするかもしれないが、今は別の意味でドキドキしてる。命の危機という意味で。

 

「キンジは理子にこの頰にキスされた。それでHSSになった。忘れたとは言わせないよ」

「--ッ!?」

 

遠山家のお株を奪う名ゼリフを放つ銀華。

うん……完全に忘れてたわ。いや言い訳させてほしい。だってブラドと戦って、倒したと思ったらもっとやばいクレハが出てきて、それが終わったら司法取引。普段なら印象に残る出来事も完全に記憶から抜け落ちていた。

ってかなんで銀華が知ってる。

 

「理子が私に謝ってきたからね」

 

はい…そうですか。

 

「理子が不意打ちでやったことだし、今回は許してあげようと思ったんだけど、キンジが悪いんだよ。やましいことは何もないって嘘つくんだから。それにHSSになるってことは理子をそういう目で見てるってことでしょ?」

「…それは、その…」

 

やばい…HSSのトリガーを知ってる銀華に言い訳はできない。そして、もう今更謝っても遅いだろう。

……ならばやることは一つしかあるまい。というかこの状態の銀華を止める方法はこれしか知らない。でも…この俺が自分からやるのは初めてだ。しかしやるしかない。ここでやらないと銀華の教育とやらを受けてしまい、遠山桜が親族に散らされてしまいかねん。

覚悟を決めろ俺。

 

「銀華」

「やっと認めるの、キン……!?」

 

銀華の言葉は最後まで言い終わることはなかった。なぜなら銀華の口は俺の口により塞がれたからだ。推理できておらず驚いたのか最初は少し抵抗していた銀華も抵抗をやめ、俺の口付けを受け入れる。

最初に彼女の肩を掴んでいた手を今度は、左手は彼女の背中に、右手は彼女の頭を撫でるように置いて彼女の身体を包み込んだ。

少し違うがさっきと逆の関係になっている。

 くしゃくしゃと頭を撫でると、ベルセはとけはじめたのか、すんなりと口内に侵入を許した。

 

「んあっ、はむっ、んちゅ、んんっ、れろっ、んん……」

 

 久しぶりに入る銀華の身体の中の感覚に興奮して、たまらならくなり何度も何度も口内のあらゆる場所を舐め回す。俺は銀華だけを愛しているということを伝えるために。

 それであっという間に銀華もヒスのスイッチが入ったのか、瑠璃色に戻った薄目を開けて身も心も委ねたようにこちらに体重を預けてくる。

 

「…………ん………!?」

 

銀華の舌に吸い付いて吸い上げてやると、途端に跳ねるような可愛い声を上げ、ヒスってしまい力が入らなくなったのか、膝を生まれたての小鹿のように膝をがくがくと震わせた。腕に力を入れて身体の密着度を更に高め、体が崩れ落ちないようにすると、今度は彼女の舌の底面を徹底的に舐め回す。

 

「えぁぁぁぁ……いぅ、ひぅぅぅぅ……」

 

涙を目に溜め、男の征服欲を掻き立てるような甘い声を上げて、俺を抱きしめてくる銀華。いつもの凛々しい君も可愛いけど、こんな君も可愛いよ。もっといろんな君を見せてくれと思うと同時に、俺のヒステリアモードの頭に電撃が走る。

いや、そんなことがありえるのか?本当にそうなのか?だが、俺の推論を裏付けるものがたくさんある。

俺は()()()()()()()()()()、銀華をそのまましばらく抱いた。

 

 

 

なるほどこれは幽霊だな。

理子が約束として送ってくれたメールに書いてあった場所と時刻に向かうと俺はそんなことを考えていた。指定された場所は、レインボーブリッジを挟んで、武偵高のある学園島の向かいにある人工浮島。

忘れかけていたが俺は白雪に『狼と鬼と幽霊に会う』と占いの結果を言われていた。

俺は一笑に付していたが、当たったな全部。

まず狼はブラドの手下として出てきた。

鬼は吸血()

そしてきたよ、幽霊が。

俺がぶっ壊したせいで動かなくなった風力発電機。

そのプロペラの1枚の上にいたのは--

カナだった。

もしかしたら、この間みたいに理子が変装したカナかも知れない。

最初はそう思ったが1メートル、また1メートルと近づくにつれてその思いは消えていった。

この、カナのオーラ。

美しさで時が止まると感じるほど。

それほどオーラを持つ人物など、俺はカナを含め3人……いや2人しか知らない。

ロングスカートのワンピースを着たカナが海風で長い後ろ髪を揺らす姿は、緋色に燃える日没後の美しい空に浮かぶ天使のようだ。

長い睫毛の下の瞳は地球よりも強い引力で、俺の心を宙に浮き上がらせる。

 

(これは…本物のカナだ)

 

カナ…兄さんはやっぱり生きていたのだ。

 

「キンジ、心配させてごめんね」

 

薔薇色にはっきりと染まった美しい唇でカナが言った。

 

「イ・ウーは遠かったわ」

 

驚きはほとんどない。

遠山家史上最強と言われていた兄さんが、俺に倒された理子に負けるわけないからな。

そして生きていることに安心してか、カナへの怒りがふつふつと湧いてきた。

 

「教えてくれカナ。どういうことなんだ」

 

俺の質問にカナは答えない。

その代わり質問に対し質問で返してきた。

 

「キンジはちゃんと銀華と仲良くしてる?」

 

な、何の話だ?

と俺は眉を寄せる。

 

「これは愚問だったわね。もう一つ質問。神崎・H・アリアと仲良くしてる?」

 

あの拳銃暴力ゴリラと?

仲良くしてるというのかあれは。

 

「って、そんなこと…今関係ないだろ!」

 

怒鳴りかえすと、カナはおっとりした目を返す。

 

「肯定したら私一人でやろうと思ったけど、そうじゃなかったね」

 

そして薔薇色の唇で言った。

 

「キンジ--これから一緒にアリアを殺しましょう」




今日はアリア29巻の発売日です。29巻の内容的にちょっと設定がまた大変になりそうだけど私は元気です。(乙葉ちゃん好き)
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