哿と婚約者   作:ホーラ

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短いけど許して…

注意:ほぼ原作通り、銀華出番なし


第59話:警備

俺の予想通り、カナに連れられた銀華はそのまま実家に帰り、夏休みに突入した。

夏休みが始まり約2週間経った7月24日、昼。俺は台場にやってきた。

ここにある公営カジノの警備の仕事で俺の進級に不足している1.9単位を取るためだ。

夏休みなのになんで拳銃ぶら下げ補習任務を受けなくちゃいけないんだ。

俺はどこで選択肢を間違えたのか。それははっきりしている。アリアの辺りだ。

とぼやいても単位が降ってくるわけではない。

青年IT社長に化けチップを受け取った俺は、カジノの中を歩いて警備に回る。ちなみにこの任務は4人用の任務で、俺の他にも同行者がいる。

パートナーだろと言ったら付いてきたアリアと、コガネムシのような虫を見たらやりますと言ってきた白雪、そして風の予感がどうとか言っていたレキの3人だ。

アリアと白雪はバニーガール。レキはルーレットのディーラーだ。

3人とも優秀だが色々問題ある武偵であるので、私服警備なのに問題を起こしていたが、そんな問題など些細に思える問題が起きた。

フロアの片隅から俺の方へ走ってくる人間(?)に、カジノの剥製の間に潜んでいたレキのペット、銀狼ハイマキがタックルした。

 

「!?」

 

なんだあれは!?

その男は異様としか言いようのない姿をしていた。

全身の肌は黒いペンキをカブったかのような黒。そいつは上半身裸で、腰に茶色い短い布を巻いてるだけ。

だけどもそれよりもっとおかしいのは頭。

頭部が人間の形ではないのだ。

あれはアリアが見ていた番組に出てきたジャッカルという犬の頭。

そいつは頭がジャッカル、体が人間というキメラのような身体をしているのだ。

パーティーグッズのようなものではないのは直感的にわかる。

そして、まずいことに手には半月型の斧。

金目当ての強盗には見えない。

ここの誰かを狙いにきたのか?

銀狼ハイマキがジャッカル男に飛びかかり、その勢いでぶち当たったスロットマシンをぶち壊す。

その周囲にはコインが飛び散る中、ハイマキをクビに噛みつかせたまま、ぶんっ!と振り回し、ハイマキを床に叩きつける。

おいおい…!

ハイマキはバイクぐらいの体重があるんだぞ。それを振りほどくなんて。

ハイマキが少しピヨってる間、ジャッカル男はこちらを見て赤い目と斧をギラつかせてきた。

狙いは俺たちか。

 

「あれは人間じゃありません。気をつけてください」

「見りゃわかる」

 

レキの言葉に苦笑いしながら返したあたりで、客たちが逃げる流れを逆走して、一人のバニーガールが駆け上がってくる。

 

蟲人形(むしひとがた)…!」

 

目を丸くして俺と対峙するジャッカル男をそう呼んだのは、男を刺激するような格好をした白雪。

 

「キンちゃん、逃げて!この敵の中身に触れたら呪われちゃう!」

 

なにやらS研的なことを叫んだ白雪は背中に手を回し、刀を抜くような手つきをしたが…

いつものイロカネアヤメはない。

白雪が言うにはジャンヌ戦で封じ布解いたせいで実家に取り上げられて、その後誰かに盗まれたらしい。

イロカネアヤメがないことを思い出した白雪はすぐさま、バニーガールの尻尾からお札を取り出し

 

伍法緋焰札(ゴホウノヒホムラフダ)

 

白雪がそう呟きお札を撒くと--

白雪の前方で横一列に並び、バッ!と一斉に燃え上がる。

ぱちん!と両手の甲を合わせて鳴らすと、それに呼応し、5枚の札が火球となりジャッカル男に……バシュウウウウウウ!

火炎放射器のように炎を浴びせかける。

 

「うっ…」

 

突如吹き荒れる熱風に、俺は身をかがめるが……

 

「あれはおそらく熱に強い。来ますよ」

 

ショートカットの髪を揺らしたレキが、ディーラーをしていたテーブルの裏に隠していたらしいドラグノフを取り出した。

レキの言う通り、白煙から白雪の方へ向かったジャッカル男はダメージを受けた様子がない。

S研の話は専門外だが、超能力には複雑な属性があると()()から聞いている。超能力者には70〜80ほどの種類の属性と相性があるらしいのだ。

その属性とはすごく簡単に言えば、ジャンケン。ある属性にはある属性に弱かったり、全く受け付けなかったりする。今のがそんな感じだ。

 

「来なさい傀儡!キンちゃんには指一本触らせない!」

 

ハイヒールを鳴らし開手で構えた白雪は、相性がわかった上で、敵に挑もうとしているらしい。

 

「「……」」

 

レキも俺もすぐには撃たない。

白雪が俺たちとジャッカル男の間に立っているので、貫通したり外れた弾が白雪に当たる可能性があるからだ。

 

「はっ!」

 

飛びかかるジャッカル男の斧をかわしながら相手の目に向かって二本の貫手--

ガスッ

超反応でそれを避けられ、カウンターの掌底で顎を強打される。

 

「……!」

 

白雪は足を震わせ、壁を背に倒れる。

かくんっと首を前に倒すような倒れ方は脳震盪を起こした倒れ方だ。すぐには立てない。

「白雪!」

 

トドメを刺そうとするジャッカル男に、俺は近接拳銃戦を仕掛けようと踏み出したところを、レキに掴まれた。

そしてテーブルに飛び上がり、片膝立ちしたレキに

 

「キンジさん、肩を借ります」

 

バスウウウンッ!

俺の肩を台座としてドラグノフを発砲した。

ジャッカル男の頭をぶち抜き、ホールの壁に穴を開ける。

今白雪の頭が下がったことで安全な射撃戦が作れたのだ。

頭を撃ち抜かれたジャッカル男は--どたっ。と手足を脱力させ…ざあっ。

溶けるように黒い砂鉄になった。

 

(ど、どういうことだ…!?)

 

砂の中から今度は黒いコガネムシが出てくる。

な、何が起こっている。状況が全く理解できん。だが、考えるより先に白雪の保護だ!

 

「キンジさん、あの虫は危険です」

「危険?虫がなんだっていうんだよ!それより白雪を…」

 

白雪を保護したい俺の袖をレキがしつこく掴んでくる。

一体、なんなんだよ!

黒いコガネムシはレキの視線から逃げるように扉から逃げて行く。

 

「キンジさん」

 

抑揚のない声に振り向くと、レキはドラグノフに銃剣をつけていた。

 

「まず白兵戦で敵を減らしながら場所を変えましょう。ここは狙撃に向きません」

「敵を減らす?」

 

首を傾ける俺がレキの視線を追うと…絢爛なシャンデリアの向こう、ホールの天井に何人ものジャッカル男が張り付いていた。ザッと見ただけで10人はいる。

レキは狙撃手。近接戦闘は向かない。白雪のセーブも必要だ。だが白雪を放っているのを見るに、助けに行ったらそこを狙われるだろう。知性があるってことか。

どうすればいい…どうすればいいんだ。

銀華。

 

バスバスバスバス!

 

2丁の大型拳銃が連射される発砲音。

マズルフラッシュに薙ぎ払われるように天井からジャッカル男が、2、3人落ちて来た。

 

「まーた、こういうやつね」

 

て呆れるような声で言ったのは…ちびバニーガールの……アリア。

ホールに入って来たアリアは天井の敵を撃ちつつホールの中央までずかずか歩いて来る。

 

「ほら、バカキンジ!何、ぼーっと突っ立ってんの!」

 

.45ACP弾を撃ち込まれるのを避けるようにジャッカル男たちは天井の四方八方に逃げて行く。

ウサギとジャッカルの関係逆になってるじゃねえか…。

 

「こういう時は待つんじゃなくて自分から攻めるの!」

 

テーブルを踏み台にし、シャンデリアにしがみついたアリアは

 

「レキ!」

 

ダンッ!ギイン!アリアに呼ばれたレキの銃弾がシャンデリアの金具をかすめ、ぐる、ぐるん。と回り始める。

動く砲台と化したアリアが天井のジャッカル男を撃ちまくる。

ぱらぱぱら。どちゃ。俺やレキの周りには流れ弾や壁の破片、薬莢、ジャッカル男までどんどん降ってきやがる!

 

「お、おいアリア」

 

俺たちが悩んでいた射撃戦とお構いなく撃ちまくるアリア。Sランクでも仲間と合わせることが多い銀華とは大違いだぜ。

アリアが天井から落としたジャッカル男を俺とレキで処理する。

ホールの中央の方へ歩み寄って、周囲を見回すと、ジャッカル男は2体になっていた。

レキがシャンデリアを吊るしている鎖を撃ち、アリアごと落ちて来たシャンデリアに潰され残り1体。

俺たち3人に囲まれた最後の一体は

 

「オオーン!」

 

遠吠えとともに窓をぶち破ってそのまま屋外へ逃亡した

 

「ん、もう。せっかく客を逃したのにゴレムも逃げたらまずいわね」

 

ガバメントにどこからか取り出した弾倉を再装填しながらそう呟く。

 

「ゴレム?この砂人形どものことか?」

「あんたわかんないで戦ってたの?小学生に戻って学んできなさいっ!」

 

日本のどこにバケモノの話を教えてくれる小学校があるんだ。

 

「日本では土偶、埴輪、式神、人形。欧米ではゴレム、ブードゥー。藁や土や紙切れや砂とかでできた超能力で動く操り人形よ」

 

ゲームとかでよくあるやつだな。ボスが護衛として呼び出す下僕。それのようなものだろう。

 

「あんた落ち着いているのね」

「まあ、慣れちまっただけだよ。悲しいことに」

「そんじゃあ」

「やりますか」

 

余裕ありげに笑ったアリアに、ベレッタのコッキング音を鳴らしながら応える。

さあ、追撃戦の準備だ。

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

「さて、もうそろそろアリア君が撃たれる頃だろう」

 

潜水艦の船内でそう話す若い男。

 

「……本当にアリアをイ・ウーの艦長にするの?」

 

男の前に立つのは紅の少女。

 

「そうさ。緋弾を継承した彼女は僕の後継者にふさわしい。僕の娘の君が辞退した今、彼女しかありえない」

「………」

「どうした、紅華君。少し不満そうだね」

「そんなことはないけど……」

 

言葉と裏腹に紅華と呼ばれた少女は納得がいかないようだ。

 

「前の君ならどうでもよかったはずだろ?なんでそんな反応なんだい?」

「………」

「そんなに彼の気持ちが大事なのかい?」

「……!?」

「ふむ、興味深い。それほど彼のことを君が愛しているとは。だがね紅華君。もし彼がアリア君をリーダーにするのを拒もうと僕に刃向かうなら」

 

男は言葉を一旦区切り、彼女にこう言い放った。

 

 

 

『僕は彼を殺すよ』

 

 

 

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