アリアと俺の仲違いの喧嘩があったがひとまずアリアを説得することはできた。
その後急に素直になったアリアによると、シャーロックはアリアに聖堂に残るよう言った後、奥の扉に姿を消したらしい。
ならばと思い、俺たちがそちらに一歩足を踏み出した瞬間…
「遠山、神崎」
先ほどのアリアとの戦闘で赤い部分だけ残したステンドグラスによって
俺たちはその声に足を止めざるをえない。
「あーあ、貴方達のせいでお母さんが大好きだった場所が台無しじゃない」
「クレハ・ホームズ・イステル…!」
紅の光を浴びてさらに紅く光る、クレハ。
その光景は神神しいもので、緊迫した状況じゃなければ見惚れていたぐらいだ。
「全く、私の
「あんたの……家?」
家…だと……
この潜水艦がか…?
「そう。私はイ・ウーで産まれ、イ・ウーの中で育った。他の途中参加したメンバーとは違う」
イ・ウーは数多くの超人を擁する戦闘集団。
その中でもクレハは他とは違うレベルってことか。
「神崎、貴女は私と似ている。同じホームズ、同じような姿…そして同じ緋弾の適合者」
「緋弾…?」
聞きなれない単語をアリアが繰り返すが、クレハが答えることはない。一度長い時間目を閉じ、再び開けた時
「帰って」
そう呟いた。
「私は戦うのはあまり好きではないの。いまなら私は何もしない。だからイ・ウーから早く出て行って。そして二度とイ・ウーと関わらないこと、お互いのために。これが受け入れなければ、私はあなた達をとめる。これは最後通牒よ」
「な、何言ってるの!あんた達がはめたせいでママが捕まっているのよ!」
食い気味にアリアが返す。
「あんたが私の大叔母様的な位置にいるけど、あんたのことを敬う気は無いわ!ひいお爺様も逮捕するの!」
ほんの少し前まではシャーロック・ホームズはアリアにとってのカリスマだった。かつての俺にとっての兄さんのような。
だが、俺の説得によりそれは少し改善した。
俺がカナ…兄さんよりアリアを選んだという話で。
同じホームズであるクレハに銃を向けることを恐れることはないだろう。
「交渉決裂というわけだ。まあ、こうなることは推理していたけど」
スカートのポケットの中から、何かを取り出し自分の前に撒くクレハ。
あれは…種?
「じゃあ、やろうか」
パチンと指を鳴らすと、まるで早送りしたように地面に撒かれた種から蔓…いや荊が伸びていく。
その荊は密集しながら伸びていき、俺達とクレハの間を隔てるように成長した。
まるで荊の壁だ。
アリアが手持ちのガバメントで撃っているが、異様に硬いせいでクレハにダメージを与えることはおろか、荊の壁を貫通することすらできていない。
やっぱり普通の荊じゃないということか。
「コノオォォォッ!」
女性があげたものとは思えない野太い声をあげながらアリアが両手にもった2振りの日本刀で壁を切るが……ダメだ。
切れることには切れるのだがすぐに再生してしまう。
だが、この壁を突破するしかない。
この壁の向こう―――奥の扉にシャーロックが消えていったんだから。
そんなことを考えていると……
(…!?)
壁にほんの小さな穴が開き始めた。
その穴の中を覗くと、さっきまではもっていなかった弓を左手に、右手には荊で作られた矢があって--
--ピュンっ!
射ってきたッ!
だが、放たれた矢は速いといっても銃弾の速度ほどはない。
銃弾さえ止まって見えるヒステリアモードの敵ではないと--
--銃弾撃ち
ならぬ矢撃ちで迎撃しようとしたところ…
--ビュンッ!
それを先読みしたように吹いた旋風が矢を煽り下降した。
しまったッ。
そう思った次の瞬間、矢は俺の靴と防弾制服の間のわずかな部分を掠め、地面に突き刺さった。
「……ッ!」
ピッと足に走る鋭い痛みに、いや、今の出来事に俺は目を見開く。
銃弾撃ちが破られた。
あの矢は正確に俺の防弾制服と靴の間からわずかに覗いた皮膚を狙っていった。それほど正確な射撃ができるのに俺がまだ生きているのは、単にクレハが頭を狙わなかっただけ。
本当だったら
と思った矢先--濃霧が俺たちの周りを囲んでいた。
「--?」
「きゃああっ!」
ピシッという衝撃と共に、当たり前のように何かが防弾制服と左肩を貫いていく。
今のは銃撃じゃない。
傷口が濡れているのを見ると、高圧の水の矢が俺の肩を撃ち抜いていったのだ。
荊だけじゃなく、弓、風、霧と水も使うのか。
流石は世界最強と謳われてるだけあるぜ。
「もうわかったでしょ、実力差があるって。貴方達では私のことを倒すことは
壁の向こう側からそう声を放つクレハ。
それもアリアが俺に禁止した無理、不可能という言葉を交えて。
「無理?不可能?そんなのわからないじゃない!人間は不可能だと思われていた空はおろか宇宙まで到達している。人間の可能性は無限大なのよ。あんたを倒すことなんてどってことないわ」
俺と同じく水の矢で左肩を貫かれたアリアはそう反論する。
「そこまでいうなら教えなさい。貴方達がどうやって私に攻撃を届かせるのか。どうやって私の父・シャーロック・ホームズを逮捕するのか」
その言葉にこちらをちらりと見るアリア。
実は俺たちにはこの荊の壁を打ち破る方法が一つだけある。だが、それを使えるのは一度っきりだ。それを使い、その間にクレハを倒さなければ、もう一度壁を張られ俺たちは本当に勝ち目は無くなるだろう。
タイミングが重要なのだ。
そのタイミングを作るために、俺は賭けに出る。
「なあ…クレハ」
「何?」
「お前は本気で戦ってないよな?」
「………」
「お前は弓でも水を使った攻撃もなるべく危なくない場所を狙った。どっちも仕留められたはずなのに」
足を狙った矢は一見機動力を削ぐためと見ることもできるが、別に頭を射貫けば俺は死ぬ。
水の攻撃だって狙うなら利き手の右肩を狙うべきだ。それはクレハが俺たちに手加減してるということであって……
「もうやめよう--