誰も内容覚えてないと思うので、先に同時投稿のキャラ紹介だけざっと読んでもらえればと思います…
5年ぶりなのに説明回、なんで。
9月1日。
日本では2学期が始まることが多いのその日から、(一応)教育機関である武偵高も2学期がスタートした。
RPGのキャラのように後ろを付いてきていたレキは始業式後のマーチングバンドに駆り出され、束の間の自由を味わっている。まあ逃げないように
あと今日は武偵高の悪しき風習『水投げ』の日だ。
『水投げ』とは元々、緑松校長の母校で行われていた「始業式の日には誰にでも水をかけていい」という少し変わった喧嘩祭りのようなものだ。普通は水の掛け合いだから安全だろうなと思うんだろうが、ここは武偵高。「徒手なら誰が誰に喧嘩をふっかけてもいい」という本当の意味での喧嘩祭りとして進化してしまった。
銀華やアリア関係などでいろいろ敵が多い俺は始業式の帰り、表通りを歩くと『水投げ』の被害にあう可能性があるので裏路地を通ろうと、レキが出ているはずのパレードの遠ざかる音の中を歩いていると、
ガシッ
襟首を掴まれ、裏路地にできたビルとビルの狭い隙間に連れ込まれた。
「静かに」
いきなりのことで慌てる俺に声を掛けたのは銀華。銀華がこの隙間に連れ込んだようだ。
「……」
いろいろ聞きたいことがあったがいつになく真剣な表情で口を閉じるように言ってくるので、言うことを聞く。
すると…
「…さっきまでここにいたネ。遠くには行ってないはずヨ」
変わったイントネーションの声が隙間の先から聞こえてきた。このイントネーション、多分始業式の時に言っていた香港武偵校からの留学生だろうか。だが、なぜ銀華はそんなに警戒する?
「せっかく
ポツポツとそんな独り言を発しながら、俺たちの側、先程まで俺がいた所を通過する。そんな声の主の女の子は往年の映画『霊幻道士』に出てきたキョンシーのような、昔の中国の民族衣装の正装をアレンジした妙なちんちくりんの格好をしていた。今日は水投げの日なのでもしかしたらあのままだと戦闘になっていたかもしれない。
声がしなくなり、十分遠ざかってから俺と銀華は狭い隙間から脱出した。
「さっきのやつは、もしかして……」
肩についた埃を払いながら、隙間にいた時考えていたことを問いかけると
「そう、
今の俺は、銀華が発した昔からの知り合いという言葉の裏の意味を完全に理解できる。
銀華が本当にいいたかったことはこうだろう。
『彼女は元イ・ウー。気をつけろ』と
もしあのまま歩いていたら戦闘になっていただろう。イ・ウーをぶっ潰したことでイ・ウーの連中に恨まれてそうだし、銀華が助けてくれなければどうなってたかわからない。
「私は
俺も行くと言いたいところだが、今の俺が行っても足手まといになるだけだ。それにお互いイ・ウーの仲間ならただ本当に挨拶だけかもしれない。
「ああ…お前も気をつけろよ」
「うん」
そう一言だけ言葉をかけると、銀華は先ほどの留学生が歩いて行った方を追いかけて行った。
留学生が言っていた『姫』の本当の意味を俺が知るのは少し先の未来のことだ。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
「
「誰ネ、
私が後ろから声を掛けるとココは驚いたようで勢いよく振り向いた。自分が背後を取られるとは思ってもいなかったらしい。相変わらず大した自信家だね。
「どうもお久しぶり、それよりもこんな極東の地にどうしているのかな?」
「それはこっちのセリフヨ、『
久しぶりの再会で言葉上は気軽に挨拶しているが、裏では互いに互いのことを警戒している。
それもそのはず、私と藍幇…特にココ達とは仲が良いわけではない。
社会的に弱者を救うことが私の信条である。
ヒーローではないが弱者を助け、強者を挫くことを使命としている。今も行なっている孤児院への寄付や人命救助、小さい時に行っていたテロリストや奴隷商人の排除はその一環である。
しかしココ達は違う。
ココ達は弱者を使い容赦なく彼らを切り捨てる。中国お得意の人海戦術は弱者で強者に対抗することができる有効な手段ではあるが、使用される弱者のことは何も考えていない。
私とココはその点でソリが合わない。
その点に関しては貧困者を救うために動いている『颱風のセーラ』が一番価値観を共有できているだろう。
「そう、今の私は北条銀華。紅華じゃない」
「きひっ、私としてはクレハじゃないなら助かるネ。やりやすいヨ」
「何がやりやすいかってことは」
「お得意の推理で丸わかりってことカ」
会って早々だが、互いに徒手格闘の構えを取る。
彼女は言外にこう言ったのだ。
『紅華じゃないなら
完全に
確かに私は今までココ達を彼女達が持たない力、『超能力』で封殺してきた。彼女達は私の超能力を恐れていた。
だが、
どうせ藍幇は私を手駒にしたいのだろう。ここはそのための勧誘ってところかな。
だからここでココは叩かなくてはいけない。誘拐されないためにも、そして
念には念を入れてHSSも使っておこう。完封なきまでに叩きのめすためにも……
………
……
…
なんで…?
千鳥足で倒れるような動作から側転に繋げ飛びかかってくる酔拳のようなステップで近づいてくるココを迎撃しながら心中は戸惑いを隠せない。
ココの酔拳にではない。ココの酔拳は今までに何度も見たことがあり驚くべきことではない。
なれないのだ。
昔からずっと使いこなしてきたHSSのベルセに。
初めての経験だ。なんで?なんで?
またキンジが一枚噛んでいるの?推理できないのがもどかしい。
そしてその迷いは顔には出なくても動きには出てしまう。
「きひっ、迷いがあるヨ」
私の心の中を察したのか、動揺させるためなのかわからないが私はその言葉で反応が一瞬遅れた。
一瞬の隙。だが、その一瞬の隙で戦闘は決してしまう。
反射的に防御するために突き出した私の腕にここの足が蛇のように絡みついていく。
しまった…!
ココは私の体の表面を蛇のように這って、こちらの背に張り付く。そして左右からロープのようなツインテールを私の首に巻き付けてきた。
「きひっ」
勝ち誇ったかのように笑うココは更に両腕までクビに絡ませてくる。腕に加え髪を併用するという変則技ではあるが、これは柔道でいう裸絞め。裸絞めは一度決められると早々外すことはできない。HSSの私ならどうにかなりそうだけど…今の私だと外すのは大変。
「きひっ、
この技は頚椎を外し相手を絞め殺す技。バリツに同じような技があるけど私はツインテールじゃないし、カウンターで同じ技を使うことはできない。
「銀華は弱いネ。でも紅華は強いヨ。弱い内に落として連れて帰るヨ」
息ができずに気が遠くなってきた私の体内で、異常な鼓動が始まる。
(きた…!)
「……何勘違いしてるの?」
「ひ?」
ここまで追い詰められたのは反省せざる得ない。
HSSになれない程度で動揺しすぎた。こんな簡単に絞め技を決められるのは間抜けと言われるだろう。
だが、私はここで負ける訳にはいかない。
私には待ってる人がいるのだから。
(ヒステリアアゴニザンテ…!)
死に際に発動するHSS。発動条件から、女の私でも強化版HSSになると推理して初めて使ったけど、間違ってなくてよかった…
「こっからは私のターンだよ」
私は気合を1つ入れひざ蹴り上げで猛妹のオシリを強打。脚によるロックが外れるないなやキンジの技『桜花』を使い亜音速で上半身揺らし、猛妹を振り払う。
「どう?まだやる?」
壁に叩きつけられた猛妹は頭を回し、伸びている。見た感じ、もう戦うことを続けることは無理そう。まあ猛妹たちに取っても、私に取っても良い薬になっただろう。
「……流石にバリツの使い手ホームズ一族ネ。今日のところはここまでにしてやるネ」
バリツというより遠山家の技で撃退したのだが、言葉を否定する前に逃げるように退却していく。
取り残された私はそっと一息つきながら反省。
ベルセになれないことで慌てすぎた。
というよりベルセになれない事を推理できないということは確実にキンジが絡んでいる。
本当に私たちの常軌を逸する存在だよキンジは…。
というか私の弱点が『キンジ』すぎる。惚れてしまったのは仕方ないが、HSS抜きにしてもあまりにもだ。戦ってもHSSの仕様上絶対勝てないし……
こんな大きな弱点ではこの後起こる「極東戦役」はまだしも、その後の戦いで私は生き残ることができないだろう。
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生徒同士が当たり前のように銃やナイフを振り回す武偵高では殺人未遂なんてしょっちゅう起こることで軽く流されるのが現状だ。そして今日は水投げの日。あの子は武偵高の制服を着てた。武偵高でいうと『下負け』。下級生に喧嘩で負けるという極めて不名誉なことで、もし俺があいつと戦って負けたら相手は中学生の女、先生は疎か友人にも話すことができないほどの不名誉の役満状態だ。
そう考えるとイ・ウーの奴らが襲ってくるにはうってつけの日ということがわかる。
(イ・ウーを倒したが残党はまだいる…紅華のこともあるし気をつけないとな…)
とパレードが終わってセーラー服姿に戻ったレキを横目で見つつ、台場の街をブラブラ歩いていた。
なぜこんな事をしているかというと飯を食うためであった。俺は飯を食おうと学食に行ったらレキを女神様と崇めている奴らに「レキ様の日常について教えてください」「寝顔は可愛かったですか」「ていうか死ね」と揉みくちゃにされた。どうやら、今日銀華の部屋から三人で出てきたのを見られていたらしい。
また銀華の信者連中にも「浮気か死ね」「銀華さんを悲しませるな死ね」「羨ましい死ね」と更に揉みくちゃにされる始末。
俺はそいつらをいなしつつ逃げ、いつものファミレスやコンビニなどに信者共が張ってると考えられたのでレキを連れ、台場までわざわざ飯を食いに来ていたわけだ。ちなみにレキは巨大壺ラーメンと呼ばれる超々大盛りラーメンを10分で完食した。胃にブラックホールでも飼ってるのかお前。
今日は始業式だけで授業もない。今日本に迫ってきている台風のせいで少し風も強いが天気もいい。
ところで
「…………」
今日のレキは全然喋らない。昨日の夜は「リマ症候群」人間関係を作って監禁を解いてもらう作戦を実行するために銀華にも少し協力してもらって食事中に結構しゃべったのだが……やはりレキは風とやらに命じられて俺にプロポーズしたらしい。
お前の意思はないのかと聞くと
『私は一発の銃弾。銃弾は人の心を持たない。故に何も考えない』
いつものが出て俺はともかく銀華もお手上げ。
レキは20:45に風呂に入り、21:00ぴったりに就寝。それもドラグノフを持って座りながら。
「………」
「……セーラと同じタイプかなぁ。まあファイトだよキンジ!」
言葉の通り今回銀華の協力はほとんど望めない。
というのも銀華はイ・ウー崩壊後、紅華=銀華とバレてしまった。そのため今、日本政府とイギリス政府の二つと揉めてるらしい。
まず日本政府は武偵でありながら裏の顔で非合法なことをしていたこと。それを聞いた俺は武偵三倍法があるがあるため、死刑にならないか震え上がったものだが、銀華曰く日本では非合法なことをやっていても
そしてイギリス政府はアリアと同じく犯罪者を震え上がらせる『ホームズ』の名を持つものとして欲しがっている。しかしこれは日本政府も紅華の力を知っていてそれを日本政府も欲しがり守ってくれる立場ではあるらしい。
「モテモテだね私」
と言っていましたが俺も紅華について調べましたよ。
イタリアでは思いっきりお尋ね者じゃねえかお前…
まあ、ともかく今は立場的にあんまりトラブルと関わると良くないらしく、狙撃拘禁を1人で解かなくてはいけなくなった俺。
ネクラと無口でどうしろってんだよまったく……
台場からモノレールで学園島に帰ると降り立ったホームには強い風が吹いていた。
人けのないホームで、ひらっと、レキのスカートが風に煽られたので慌てて目を逸らす。
お前……手で押さえるとか長いスカートを穿くとかしろよな。女子なんだから。
後ろに立たれるとヒステリア的に危険なので前を歩かせて、レキ、俺、ハイマキと列になって階段を降りていると、ぴた。
レキがいきなり立ち止まった。
「ッ……?」
レキの背中にぶつかりそうになった俺も急停止するが、うしろからついてきたハイマキが追突。玉突き事故のように歩みを止めれず、階段の途中で振り返ったレキを押すように階段を降りざる得ない。そのまま、レキは階段を降り、踊り場の壁際に背中をつけた。咄嗟にレキが両腕を胸の前に立てて俺が壁に頭をぶつけないよう押さえてくれたおかげで壁との衝突は防げたが…
「---!」
い、今の姿勢、まずすぎる。
俺の手は、レキを転倒から守ろうとしたらしく、両肩を抱くように掴んでいる。そのせいでレキは少し身体をこわばらせたような姿勢になっており、まるで人けのないところでいちゃついているカップルにしか見えない。
銀華だったら「す、推理できなかったよ」と言ってヒスってるところだし、アリアだったら「風穴!!!!」と言って蹴飛ばされるところだったが、レキは俺を抵抗せず見ているだけだ。
レキのちっこくて柔らかい肩。
彫刻のように綺麗な顔。
(け、血流……!)
レキがチクるとは思えないがヒステリアモードになったのがバレたら、荊で体中を引き裂かれ荊人間になる日も近いが……?あ、あれ?なんか大丈夫だ。銀華だけでヒスるわけではないのに(過去アリア白雪理子でもヒスり済み)レキは何故かヒスりにくいらしい。よかった……
と密かに安心していると…べちゃっ。
何かが床に落ちる音がした。
音源を見てみるとクレープ。と中にこし餡を詰めた白くて小さな饅頭が巻かれている。桃型の。
すなわち、ももまんだろう、それは。
「初歩的な推理だよ、キンジ」
と脳内銀華が警報を鳴らす。ももまんクレープなんて世にも奇妙なものを食う人間はこの世に1人しかいない。
一気に血の気が引いた俺がそーっと視線を上げるとそこには…
「………!」
クレープを食べていた姿勢のまま、石化したと思われる、この世で2番目に(1番はいうまでもない)この光景を見られたくなかった神崎・H・アリアがいた!
おおよそ俺たちの光景が脳をメモリー不足に陥らせフリーズさせたらしい。
フリーズしているのは俺も同様だ。なんでこんなところをこいつに見られるのか。
アリア、俺、元から不動のレキ。
三人とも黙ってその姿勢のまま固まっていると、
「でもさあ、アリアと拳銃戦で互角なJCなんてほんとにいたのー?」
などと喋りながら理子が登場。
そして俺とレキに気付き、
「うををおおおむぐむぐ」
食べかけのクレープを両手で口に押し込みながら、ツインテールを一斉に飛び上がらせて驚いている。驚きながら食うって器用なやつだ。
「や、やるじゃん。キーくん。レキュは2周目からじゃないとルートに入れない超無理ゲーキャラなのに!あのしろろんだけじゃなくてレキュも攻略するなんて!キーくんはギャルゲーの天才だ!天才だ!」
大興奮の理子は飛んだり跳ねたりしている。
レキはレキュって呼んでるしギャルゲーの天才ってなんだよ…と思った俺が、理子のおかげで自分の硬直が解けていると気付いた時、ばたーん!
暴れ回る理子がアリアにぶつかって盛大にすっ転んだ。それでようやく石化が解けたらしいアリアが、がばっ!と起きて鬼のような形相でこっちを睨んできた!
こ、怖え!
「アリ」
「あんたはいい!」
アリアのどかーんって感じの声にセリフを中断させられてしまった。アリアとすら言わせてもらえないぞ俺。
「あ、ああんたはいい!よ、良くないけど!!し、銀華はレキのこと許可してるって言ってたけど、すぐそういうことする!そうよね、そうよね!あ、あんたは!そ、そういう銀華みたいな子が大好きだもんねッ!!」
なんで銀華が出てくるんだよ。
銀華とレキが似てるのって髪がちょっと青っぽいぐらいだろ。
と異議を唱えようとした俺からアリアは真下に目を逸らし、
「そんなやつ、そんなヤツを……!」………ゴニョゴニョ……「あたしが悪い!だからあんたはいい!黙ってなさい!」
キッ!俺を睨んで金縛りにかけた。メデューサですかあなたは。
「そんなことよりレキ!あんた…やってくれたわね…!?校内ネットで見たわよ!あんたあたしに断りもなく…キンジと銀華三人のチームの申請をするなんて…!」
何…?俺と銀華とレキのチームをレキがもう申請していただって…?聞いてないぞそんなの。
武偵高におけるチーム登録とは2年の9月末までに2〜8人のチームを組んで登録しなくちゃいけない代物だ。このチーム制度は意外と重要で、登録したチームは国際武偵連盟にも登録される。
通常9月下旬ー修学旅行Iの後に申請する決まりだが、実際のところ生徒間ではそのかなり前になんとなくのチームができているものだ。なので、俺とアリアのように組んで戦っていた生徒同士についてその片方を勝手に誰かがチーム登録するのは暗黙のタブーとされている。それをやったみたいだなどうやらレキは。
「あたしは、あんたたち3人が、ど、どういう関係、レキはキンジのあ、愛人みたいな関係とかど、、どうでもいい!ほんとに、ほんとにどうでもいい!ほんとだからね!?だからあんたたちがどういった関係でも知らない!知らない知らない!知ったことじゃないわ!でも奴隷の横取りは許さないッ!」
発言の前半にとんでもないことを言ってた気がするが、目をつむ、つ……つむりきれねえ!
な、なんだ愛人って!
「アリアさんはーー」
俺の横でレキが抑揚がなくしかし割と強い口調で声を発した。
「キンジさんの、なんなのですか?」
やばい、言い方…じゃないか?
なんか知らんが『宣戦布告』みたいな空気が流れ始めたし。
「なっなっなっ、な、何なに何って、これはその……」
どう受け止めたか知らないがアリアはわたわたと震える指で俺を指す。
「別にこれとはそう、そうただのパートナーでバカよ!」
おい、アリア。お前興奮しすぎて言ってることがよくわからなくなってるぞ。
「ーー私は婚約者です」
しれっと言い返したレキに、理子は「えええええええ」と声をあげアリアはがくーんと後ろから頭を叩かれたように上半身を折り曲げる。
「し、銀華が許すわけないわ!そんなの!!」
「アリアさん自分で言ってたじゃないですか。『銀華はレキのことを許可している』と。実際、昨日銀華さんも何も言ってませんでした。つまり認可されています。アリアさん。あなたは今後キンジさんに近づかないようしてください。キンジさんは昨晩と同じように一緒に寝てもらい、昼もできるだけ私のそばで過ごしてもらいます」
『昨晩と同じように』『一緒に寝る』などと繰り出されるレキの言葉にアリアは『あわわ』『やめて』という顔をいちいちする。
ていうかレキもそんな語弊を生みそうな言い方をするなよ。アリア、もう完全な妙な思い込みをしてしまった顔で顔を真っ赤にしてるじゃねえか。
「アリアさんと銀華さんは似てます」
レキは追い討ちをかけるように呟く。
「でもアリアさんは銀華さんと違い、恋してはならない」
「こ、こ、こっこっこっこ!?」
ニワトリになってしまったアリアは『い』が言えない状態だ。
「キンジ!あ、あんたはどうなの!レキと組むの?そのつもりなの!?」
先程まで何も言わせてもらえずいつもみたいにガキみたいな癇癪を爆発されて、俺は、
「そんなことお前には関係ないだろ」
何言ってるんだ。
火に油を注ぐようなことを。
「そもそも銀華と俺は来年から武偵高にはいない。どうでもいいんだよ、チームとかパートナーとか」
アリアの母さん、かなえさんの裁判が終わったらロンドンに帰るんだろ。そしたら別々の道を歩くことになる。
「違うバラバラになってもチームはチームよ!国際武偵連盟に登録すればお互いずっと制約なしに助け合うことができる。解散しても一生仲間だった証が残ってーー」
「そんなものどうだっていい!」
俺はつい声を荒げてしまう。
一緒に戦った仲間ということは認める。だが、そんなことをして『思い出づくり』しても、別々の道に行く俺たちには重荷にしかならないんだ。
「お前と一緒に戦ったことだって過去のことだ」
「〜〜〜〜〜〜〜〜!」
自分の思い通りならない俺に、アリアは怒りのメーターが吹っ切れたらしく、こちらに歩いてきて暴力を振るおうとしている。
俺が反射的に身体を引きアリアがつかみかかってきた時。
ーーパシィッ!
「ーー!」
アリアが、理子が、俺が。全員目を丸くした。
レキがーーアリアにビンタしたのだ。
不意を突かれカウンターを入れられたアリアは跳ね返されるように後退し、崩れた正座で尻餅をついた。
「キンジさん、下がっていてください。危険です」
いつも通りの口調で俺の前に出るレキ。
「…………!」
友達だと思っていたレキにパートナーを横取りされ危険人物呼ばわりまでされたアリアは叩かれたほっぺたをを押さえる手を離し、
「もう…何もかもどうでもいいわ……レキ…よかったわね。今日が水投げの日で。格闘術で闘ってあげるーー」
アリアが両腕を上段に構えた。まるで威嚇する虎のような攻撃的な構えだ。や、闘る気だぞこいつ。
「もう………いい加減にしなさい!」
階段に凛とした声が響くと同時に、銀色の流星が現れる。その流星はアリア、そしてレキの頭に軽くチョップをする。
「まったく…
暴力の権化・強襲科のSランク銀華が現れる。た、助かったぜ………このままだったらアリアとレキで戦いが必ず起こった。アリアはもちろんのこと、レキは何をやらかすかわからない爆弾みたいな存在だ。こんな2人が戦ったらどうなるかわからんかったからな。
「し、銀華はいいの?レキとキンジが結婚しても!?」
「レ、レキさんとキンジが、けっ、結婚っ!?」
そこまでの凛々しい登場シーンは跡形もなく、ちょっと前のアリアのようにあわあわする銀華。
「レキは婚約者って言ってたわよキンジの」
「私は第二夫人です。正妻は銀華さんです」
「せ、正妻って気が早いよ・・・」
今度はレキの言葉に恥ずかしそうに身をクネクネさせる銀華。あの……銀華さん、何しにきたんですかあなたは。
「と、とりあえず喧嘩はダメ。レキさんとキンジは私と一緒に帰る!アリアと理子はまたね!」
グイグイ俺とレキを後ろから押すようにして退場させていく。
一触即発の雰囲気をどうにか脱した…
「絶交よ、絶交」と騒ぐアリアと理子が見えなくなった辺りで、
「助かったぜ銀華。協力できないって言っていたのにありがとうな」
「別にこれぐらいだったら問題ないよキンジ。あとレキさんも人を殺しちゃダメだよ。武偵法で禁じられてるから」
「わかりました」
「あ、あのままだったら、レキお前、アリアを殺すつもりだったのかよ」
「はい」
しれっと答えやがる。困ったな。
「はい……ってなんでだよ」
「風が命じたのです。アリアさんとキンジさんを近づけてはならない、と」
また風か………
この風さんをどうにかしないとレキに対してリマ症候群を狙うのは厳しそうだな…
「正妻って言われちゃった♪」
5年半の間に起こった事
キンちゃん様が本当に人間ではなくなっていた
今年中は週一月曜19:00投稿です。