あと11(GⅢ)、16(リサ)、26(社長)、28(無人島)、29(クロちゃん)、35(ネモ)、36(ネモ)、37(ワンダー)、40(セーラ)巻も
紅華たちの戦いを止めた後…
「SSRに網を張らせといて正解だったわ!あたしの目の届くところに出てくるとはね。その勇気だけは認めてあげるッ!そこにいるのでしょ!?パトラ!ヒルダ!」
聞き覚えしかない甲高いアニメ声、
んしょ!と空き地島のふちによじ登ってきたのはアリアじゃねえか!
「イ・ウーの残党全員逮捕よ!今月のママの高裁に手土産ができたわ!」
「アリア!今はまずい!」
せっかく俺とカナで、バチカンのメーヤvsカツェ・パトラ・紅華を止めたのに結局アリアが来たら戦闘になっちまうぞ…!
しかしアリアがイ・ウーの残党を見て止まるはずがない。
揃いも揃ってる怪人どもに「!?」という目をしながらもしゃきしゃき!と白銀と漆黒のガバメントを二丁とも抜いている。
「ーーLOOーー」
駆動音を上げ振り返った巨大機械女・LOOに
「機械の護衛を連れてきたのねッ!?キンジ!援護しなさい!」
アリアはいきなりばきゅばきゅばきゅ!問答無用で撃ち始めた。LOO本体ではなくその上にある、壊れた風力発電機のプロペラを狙った弾丸はビシバシ当たり、錆びついて脆くなっていただろう一枚が……バキッ!
根本からブチ折れた。
「LOO…っ!?」
その下にいたLOO一瞬上を見上げるような動きをしたが、ゴスン!
数トンの羽を避ける暇もなかったLOOはその場で押し潰され、這いつくばるような姿勢になる。抜け出そうともがいてはいるが、起き上がれずにいる。
あいつは敵か味方かまだわからないのに、アリアが喧嘩を打ってしまった。
もう引き返せないかもね。
「あは!あははは!来た!来た!」
振り返ると300kgはあろう鉄塊斧を軽々振り上げ楽しそうに踊っているのはハビ。
「………あー私帰ろうかな。逃げるが勝ちってね」
「そうじゃの…またのトオヤマキンジ」
先ほどの目が光る攻撃を俺にキャンセルされ、戦闘モードを解除した様子の紅華と同じく兄さんに籠絡されていたパトラは撤退ムードだ。
ヒルダ、コートの男も玉藻もいなくなっている。
どうやらメーヤと3人の魔女が戦っている間にいち早く逃げたらしい。
「キンジ!銀華もジャンヌもいるの!?どういう事!?」
「アリア撤退だ。ここは危険だ」
「最初は霧でよくわからなかったけどそうみたいね…」
ヒステリアモードの俺を見たアリアは勘で普段と違う俺と感じとったのか、俺のいうことをよく聞いてくれる。いつもこうだと嬉しいのだけど。ちなみにヒステリアモードにはこの前の紅華との行為を思い出してならしてもらった。
「パトラはあんたのお兄ちゃんと一緒みたいだし、ヒルダは逃げたみたいだし」
霧の中、誰かが動いたと思ったらさっきアリアに潰されたLOOから操縦者がはいはいで出てくるところだった。
潰れたロボットをみて、るぅ、るぅと悲しそうに嘆いたスクール水着みたいなコスチュームを着た女の子は裸足でそのまま逃げていった。胸元に一瞬見えた荒鷲の徽章ーー米陸軍の陸軍大佐か。世の中には小さくても強い子がいっぱいいるね。
「なぜ来たアリア!気をつけろ!ヒルダはおそらくまだいるぞ!逃げるぞ!奴はイ・ウーから『緋色の研究』を盗んでいる!危険だ!」
そうアイスブルーの瞳で警告したジャンヌは、霧の中に……ぱき、ぱき、という音と共に氷の結晶が現れる。
ダイヤモンドダスト。
ダイヤモンドの様に文字通り輝く氷の結晶を空気中に舞わせるジャンヌの魔術だ。
漂う氷は次第に数を増やし、俺たちを隠しつつある。
このダイヤモンドダストに隠れて逃げるつもりなのだろう。ジャンヌが氷粒を広げていくことに集中するーーその時。
「……!?」
アリアの自分自身の影から、ずずっとヒルダが半笑いで浮き出てきた!
「| Ar fi trebuit să verificați cu atenție înainte să veniți.《よく確かめてから来ればよかったのにねえ》」
真後ろからアリアの首筋を真っ赤なマニキュアをした左手で掴むヒルダ。アリアはそれに対して動けずにいる。
ーーパァン!
というドラグノフの銃声とともにビシュ!
7.62mm×54R弾がヒルダの頭部を貫通し、縦ロールのツインテールを跳ねさせたが
「Baang♪」
アリアの首を離さない。なんなら右手で自分のこめかみを撃つ仕草をする余裕まである。
コイツもブラドと同じで銃弾が効かないんだ。
「愚かな娘にはお仕置きよ」
とヒルダは真っ赤な口を開き、二本の牙ーー先端に緋色の金属を被せた歯がーーアリアの白い首にがぶぅ!と突き立った。
「〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!」
痛みに目を見開いたアリアの顔のすぐ脇をジャンヌのデュランダルが翔ける。
すっとそれを読んでいたようにアリアから離れたヒルダは
「嬉しい誤算だわ。もう殻を外せるなんて。おほほほほほほほほ」
レキに撃たれた銃槍はすでに治り、手の甲を頬に当て、耳に残る超音波みたいな高笑いをした。
耳を塞ぎたくなるような嬌笑が続く中、アリアは噛まれた左耳の下、首の出血量を確かめている。そして、頸動脈を切られていないことを確かめ、チャキッーー
振り返ってヒルダを攻撃しようとするが
「ッ……?」
ガクッとその場に片膝をついた。
「まさかーー毒か?」
「まずいぞ、遠山の。毒よりまずいことになりそうじゃ」
誰も触ってないのに俺の方に転がってきた手鞠から玉藻の声がする。
毒よりまずい?どういうことだ?
とアリアを見るうちにその発言の意味がわかる。
アリアの体がぼんやり光り始めているのだ。
目の錯覚じゃない。
「…ッ!」
この光を俺は見たことがある。しかも3度。
「おお……」
アリアを見て驚く声をあげている、そこのパトラと戦った時。
「…………」
そして興味深そうに、しかしどこか申し訳なさそうに見てる紅華とシャーロックが戦っている時にもう一回。そしてさっきの目からの光の3回だ。
おそらくこの光が出ると艦砲射撃のような光弾をはなてるのだろう。
でもこの光り方は……明らかに前三つと何か違う!
光が外側にどんどん出てくるというよりは、内側にこもっている光が隙間から僅かに漏れ出てきているような感じだ。
「アリア…大丈夫か?」
両手でアリアの肩を揺すると、アリアはマバタキを何度かしてから…無言のまま俺の方を見上げた。
「……?」
アリアの赤紫色の瞳が俺を捉える。
ーー誰?
というように。
これは……
この目つき、表情。
何ヶ月も一緒に戦ってきたからわかる。
ヒステリアモードじゃない俺でもわかるだろう。これはアリアではない。
誰なんだい、君は……?
「ヒルダめ。お主『殻金七星』破りまでしっておったか」
「光栄に思いなさい。史上初よ。殻分裂を人類が目にするのは」
ヒルダと俺の足元の手鞠が言葉を交わすと
「遠山の。アリアが来てしまったのが運の尽きじゃ。一つは儂が戻すから安心せい。アリアを動かさぬようにしろ」
などと言ってから、ばしゅっーー!と白煙をあげて元の玉藻の姿に戻った。
まるでアニメの変幻の術のような変身を見せた玉藻は耳や尻尾の毛を逆立て、その小さな手には、御幣を持っている。
そしてアリアの方に御幣の両端を握って向き合った。
緋色の光が一際強まったので、俺はアリアの両肩を、掴んだまま言葉を失う。
光はそのままーーぱっ!
とアリアの体から弾けるように、前方、後方、左右、あちこちに緋色の光球が飛び散った。
バチっ!
というような音に振り向くと玉藻が光球の一つを御幣を使いキャッチしているところだった。
「よしよし、よい子じゃ……戻れ戻れ」
玉藻は光球の中心に話しかけながら、アリアの方へ押し返した。すると光は御幣から跳ね返るようにアリアの左胸に返っていく。
(一体何が起こっているんだ…!)
ヒステリアモードの頭でもついていけない。この超常的な現象に。わからないまま周囲を見渡すと残りの光球はヒルダ、カツェ、ハビ、諸葛、パトラの『眷属』の5人と紅華にそれぞれキャッチされていた。
「………」
紅華は無言でキャッチした光球を投げ返してきて、それもアリアの胸に戻った。
「あら、紅華。いらないの?」
「……私はもう研究済みだからね。あとさっきはカツェ、つまり『眷属』に味方したから今度は『師団』に味方しただけ」
「そう…それならいいのだけど。それじゃあその殻、みんなにあげるわ。『眷属』についたご褒美よ。それにこれはお父様の仇どもへの嫌がらせ。私が1人で持つより、いやらしくていいでしょ」
コウモリ女のヒルダが上から目線でパトラたちにそう言うと、光の球ーーー極々小さい宝石のような固体になっていったそれを胸元に収める。
「きゃははははははは!」
光をお手玉したハビはそれを口に放り込む。
そして四つん這いになり霧の向こうに素早く去った。
「メーヤ、またな」
魔女・カツェも、にやっと頬をひきつらせるような笑みを作り、霧の濃い方へ駆けていく。
「これはありがたい。計画以上の土産です。すぐ藍幇城で分析させていただきます」
「あらもう帰るの?レキを殺すのなら加勢してあげるわよ。あの子私の顔撃ったし」
「いえいえ、私は後方担当ですから。君子危うきに近寄らずとも言いますしね」
穏やかな口調でそう言いつつ、諸葛は足元にいつのまにか置いていた煙幕缶から噴出された煙幕によって見えなくなっていく。
「ほほっ。ヒルダ。お前たち親子には峰理子の居場所を教えてやった貸しがあるでの。遠慮なく貰っておくぞ」
ざあっと砂嵐を起こしそれに隠れるようにパトラも消えた。
「ふうーん。じゃあ私も今夜はこれぐらいにしておくわ。じゃあね紅華」
自分以外の『眷属』が消えたのを見て、ヒルダも紅華にバイバイと手を振りながら、ずずず…と自分の影の中に沈んでいく。
緋色の宝石を取ったのを合図にみんな消えていく。
俺はベレッタをヒルダに向けるが撃てない。ヒステリアモードの俺でも勝機が見えない。
ヒルダの目玉模様はもう沈んでしまったし、アリアの身に起きたことがわからない以上、それが致命的なものでヒルダしか治す方法がわからない場合、発砲は悪手の可能性すらある。
ヒルダの消えた影はみるみる薄くなって、消滅する。
残されたのは師団の俺らと、ヒルダにバイバイと手を振りかえしていた紅華だけだ。
「紅華」
「…何?」
「君の力でアリアを治すことはできないのかい?」
「ダメ。私の力じゃ治せないよ。……それに私は『中立』。アリアの問題は『師団』の中でどうにかしてね。バイバイ、キンジ」
そういう紅華の周りを金色の粒のようなものが舞う。2つ4つ、8……128、256と増えていき、その光の粒が紅華の姿を隠す。それが晴れた後、紅華はもうそこにはいなかった。
もうなんでもありだな、この人たちは。
「視界内瞬間移動じゃと……北条とはいえあの歳であそこまで法結びが進んでおるとは…」
玉藻はびっくりしながらアリアを診ているが……アリアは気を失っていた。
「アリア…!」
「ジャンヌ…」
声に振り向くとジャンヌは魔剣を鞘に納めこちらに駆け寄ってきた。
「ジャンヌ。お主を責めたりはせぬ。多少の小競り合いにはなるかと思っておったが、北条の法結びの進み具合、この小娘が来たこと、ヒルダが『殻金七星』破りまで使いおった事。どれも予想外じゃ」
悔しそうに俯くジャンヌを玉藻は励ます。
「彼女が『緋弾のアリア』なのですね」
重そうな剣を背負い直したメーヤもやってきた。
「どう見る、メーヤ。アリアの容態を」
「気を失っているだけ………のように見えます」
「儂の見立ても同じじゃ。殻金は2枚でも機能せんことはないからな。弱まりはするが、しばらくは大丈夫じゃろ」
と言って、ぴこぴこと耳を動かした玉藻は
「ジャンヌ、お主も奴らを追え。
「はい」
とずっと年下に見える玉藻に礼儀正しく頷き、自分のボートがあるらしい空き地島の東側へ駆けていく。
いつのまにか霧は晴れ、プロペラにはレキはもうおらず、残っているのは俺・アリア・メーヤ・玉藻の4人しかいない。
他はもう影も形もない。
まるで悪夢を見たようだが、これは現実だ。
一体この後何が起こるっていうんだ…!
玉藻とかいうアリアや雪花も救う有能キャラ。