哿と婚約者   作:ホーラ

80 / 98
5年経って投稿したのに読んでくれる人いるのありがたすぎる


第10話:過去・今・未来

ヒステリアモードが解けた俺はアリアを背負って男子寮に戻る道中、『眷属』の連中が戻ってきて襲ってこないか気が気じゃなかったが……

 

「ヤツらは所詮使者に過ぎぬ。この一帯には前から式神を放って見張らせておる。この長四角の浮島のどちらかに『眷属』が入ったら式神が報せてくるから安心しろ。それに儂の耳によれば北条の姫以外はどいつもこいつも海や空を渡って去っておるわ」

 

と俺の不安を一笑に付した。

修道女のメーヤは俺の家の住所を聞くなり「買い物をしたいので先に行っててください」とコンビニに行ってしまった。

ああいうバケモノの行動パターンはわからないが…専門家ぽい2人が警戒を解いているのだから多分大丈夫なのだろう。

というか、ヒステリアモードならまだしも普通の俺には何にもわからん。

となると、次に気になるのはアリアの容態だ。

自室に戻りアリアをソファーに横たわらせると……

 

「……ももまんの家……」

 

などと意味不明な寝言を呟きながら、寝たままにへーっと笑ってやがる。

アリアは確かに気を失っているだけのように見える。寝息も普通に立ててるし脈拍もおかしいところはない。

 

「ふんふん…神棚もないとは。信心が足らんぞ、遠山の」

 

なんか鼻を鳴らしながら俺の部屋に入りつつ文句を垂れ、『理子の』って書いてあるプリンを勝手に冷蔵庫から出して食べ始めてる。なにしてくれる。

 

「遠山、これはなかなか美味だぞ。褒めて遣わす」

 

と天真爛漫な笑顔で褒めてきた。ていうかなんでこいつ俺にそう親しげなんだ。

 

「ふむー、これが今代の遠山か。かつて那須野で会った遠山と瓜二つじゃ。初顔合わせとは思えんの。ちょっとネクラそうな感じもするがの」

 

なにやら俺の縁者と知り合いのようなことを言いつつ、俺と共にアリアを寝かせたソファーに腰掛ける。

 

「アリアが心配か?」

「当たり前だろ」

「案ずるでない。すぐには緋緋神にはならぬ」

「…ヒヒガミ?」

 

と聞きなれない単語に俺が眉を寄せると、

 

「……今代は北条と婚姻を結んでおるのに知らんのか。まあやむえん。遠山侍も北条も絶えつつあるからの」

 

玉藻はぺたんと崩れ気味の正座に直した。勘違いしているが、ちなみにまだ婚姻は結んでいない。

 

「遠山家で引き継がれておらんのなら、儂が教えるしかないの。儂は玉藻。白面金毛の天狐じゃ。お主らの言葉で言う、妖怪じゃ」

 

でた。

超能力者、魔女や吸血鬼ときて今度は妖怪だ。

そのうち宇宙人とかも来るんじゃないかマジで。

 

「儂の一族は昔から人間と色金の間柄を見張り、濫用悪用を防いできた。その色金じゃが、この小娘の心臓にも埋められておるのじゃ。それも史上稀に見る大質量の緋緋色金がな」

「あ…ああ。それは俺もアリアも一応知ってる」

「色金と人は繋がることができる。その繋がりには二種類あっての。『法結び』、お主らが言う超能力の力を供給する繋がりと、『心結び』、感情の繋がりじゃ。質量の多い色金は法も心も人と過剰に繋がってしまう。特に『心結び』、つまり人の心と色金が繋がりすぎると心が混ざってしまい、次第に取り憑かれてしまうのじゃ」

「それじゃあ、色金に憑かれるとどうなるんだ?」

「緋緋神になる。そうなったら殺せ」

 

…!

 

「こ、殺せって!」

「慌てるでない。すぐにはならん。とはいえ、なったらためわらず殺せ。幸いにも法結びが進んだ北条の姫と星伽巫女も同じ世代におる。まあ、やれるじゃろ」

「やめろよ、殺す殺さないだの」

「この世に戦が起きても良いのか?」

「戦だって…?」

「緋緋色金は戦と恋を好む厄介な色金での。それに憑かれた者は、闘争心と恋心、その二つの心を激しく荒ぶらす、祟り神となるのじゃ。七〇〇年前ほど昔、なったものもおる。その者は帝を蠱惑し、戦を起こし……ついには遠山侍と星伽巫女、そして北条の姫に討たれたのじゃ」

「……ッ…!」

「案ずるでないと言ったはずじゃ。アリアはすぐにはそうはならぬ」

「で、でもそれじゃあ紅華はどうなんだ?あいつも体に緋緋色金が埋まってて…お前の言う『法結び』…ってやつが進んでいる状態なんだろ?今すぐに、その緋緋神になる可能性はないのか?」

 

そんな素人みたいなこと聞くと玉藻は首を横に振った。

 

「アリアと同じように『殻金』を破られなければならぬ。緋緋色金には戦乱を起こした者を見た星伽の巫女が、『殻金』というものを編み出しての。北条もこの小娘の色金にもしっかりと殻金が被せてあった」

「カラガネ?」

「殻じゃ、殻。緋緋色金に特殊な殻を鍍金(メッキ)のように被せて、『法結び』だけを結ばせ、『心結び』は絶縁する。そういった都合のいい殻を作りだしたのじゃ。殻は7枚あれば心結びを断絶できるとわかったので『殻金七星』ともいうがの。その殻金をヒルダのやつはアリアから外す術を使ったのじゃ。奴がそこまで研究してるとは知らんかったのう。ただ上手くはなかった。おかげで7枚中2枚は戻すことができた」

「2枚だと足りないのか…?」

「そうじゃの…この小娘は緩やかに色金に取り憑かれていく。いずれ緋緋神にもなるじゃろうが、しばらくは大丈夫じゃ。その間に『殻金』を眷属から取り戻せば良い。どうせ戦う相手じゃからの。後で7枚集めれば心結びは絶たれ元に戻る」

「どれくらいなんだ?その2枚で抑えられる期間は」

「わからぬ、そんなこと。試した者はおらんからな。ただ儂の見立てでは数年は持つじゃろ」

「数年か…」

 

それが短いのか長いのか俺にはわからない。でもそれだけの猶予があるならなんとかできるかもしれない。

 

「とはいえ、『心結び』は少しずつ始まる。まずこれから、戦と恋についてこの小娘は本心をあまり隠さないようになるかもしれん。それが最初の症状じゃ。お主は慌てずそれに応じろ。良いな」

 

戦と恋…?

 

「ああ、わかった」

 

戦については…アリアは戦闘狂だし、恋もまあアリアだし大丈夫だろうたぶん。どうでもいいってよくいってるしな。

 

「それと今代の北条には気をつけるのじゃ。『華の一族』、そしてあそこまで『法結び』を進めているとは、お主と婚姻を結んでいるとは油断できん」

「??」

「……お主は知らんのか『華の一族』の逸話を」

「知らない。銀華も北条についてはよく知らないらしいんだ」

「それなら軽く教えてやるがの。北条の名に『華』が付く者、この者たちは必ず争いの火種になるのじゃ。今回のイ・ウーの崩壊もそれの一つといえるの」

「銀華が悪いっていうのか…?」

「悪いとは言わん。どちらかというと彼女らは被害者なのじゃ。星伽巫女から聞いておらぬのか。北条の姫は『奪われる』と」

「……!」

 

そういえば、白雪が銀華を占った時に俺に対し『守ってあげてね』といっていた。ジャンヌでその件は終わったと思っていたが…

 

「彼女らのことを時の権力者はまるで財宝のように欲しがるでの。そして、緋緋神との親和性も高い。『法結び』だけだったらいいんじゃが……」

「もしかして過去に……」

「お主の想像してる通りじゃ。先ほど言った過去に緋緋神になった者は……『帝の妻』となった北条の姫。遠山侍、星伽巫女と共に戦った彼女の北条の娘によって討ち取られたがの」

 

☆★☆

 

「あーっ、トオヤマさん。よかった。お部屋ここだったんですね。私、力が足りなくてフラフラしてたら迷子になっちゃって。うふふふ」

 

玉藻と会話をしてたらコンビニに行ってたメーヤが俺の部屋にたどり着いた。なんか…さっきカツェとかに斬りかかってた時と全然違う……のほほんとほんわかとした態度だな。どこかの巫女さんを彷彿させて、怖いぞ。

と、さっきはあまりにも好戦的だったメーヤのビニール袋を何気なく見ると……なんだ。

洋酒の瓶が大量に詰まってるぞ。

菓子パンが幾つかとほぼ買い占めたかのような酒の数々。

少々引いてしまった俺に、にこやかな微笑みを向けたメーヤは……

 

「トオヤマさん。よくあの害虫達の攻撃を止めてくれました。やはり噂通りの立派な聖騎士(パラティーノ)です」

 

と来客用のスリッパをパタパタと鳴らしビニール袋を両手に持ちリビングに向かう。

なんか…ムードは団地の若奥様みたいだな。

…ってちょっと待て。戦ってる時にも思ったけど、紅華たちのこと害虫扱いしてませんかこの人。

 

「タマモさん。アリアさんは?」

「無事じゃ、しかしやはり殻金は足りぬ。『眷属』の連中から取り戻さねばならぬ」

「まあまぁ…くぴ」

 

話しながらメーヤが飲んだ。甘ったるい匂いのするカクテルぽい果実酒をストレートで飲んでるけど、それそんな飲み方をするものなの?

 

「とはいえ、遠山1人にやらせるのは荷が重そうじゃ。メーヤ、カツェ=グラッセを迅速に討ち取り、一枚取り戻してこい。やつは独逸に帰るじゃろう」

「はい」

 

強そうな酒を一気飲みで飲み干したメーヤが頷く。そして空き瓶をそばに置きつつ、つまみと思われる菓子パンと次の酒瓶を取り出したぞ。

今度は砂糖菓子みたいな匂いのする高カロリーそうで強そうな酒だ。

その酒をまたもや一気飲みしたメーヤは次にバーボンウイスキーの口を開けている。みてるだけで気持ちが悪いんだが…

 

「あの……それ」

「仰りたいことはわかります。確かに修道女はお酒を飲んではなりません」

「いや…そうじゃなくて」

 

体に悪いと思うみたいなことを言おうとしたら何かメーヤは勘違いしたようで…

 

「しかし、私の他にもこういった修道女はいます。私たちは特例なのです。Ⅰ種超能力者は自分の体を削って能力を消費するので戦った後は大量に何かを経口摂取しないと死んでしまうのです。物質は人それぞれですが、私の場合はアルコールです。でもご心配なく、イタリアでは16歳から飲酒が大丈夫なので。それに私は一切酔いません。暴飲の罪お見苦しくてすみません」

 

神よ赦したまえと言いながらまた飲むメーヤ。

まあこの人は白雪よりでかい胸以外はスラリとしてるし、高カロリーな酒を飲んでも大丈夫なのだろう。確かに酔ってないし。酒臭いけど。

 

「玉藻さん。あの魔女どもは必ず仕留めます。宣戦会議の和議にも失敗しましたし、このままでは宗教裁判で破門され、八つ裂きの刑にされ、十字架もない無縁墓地に捨てられ……私、あ、あの魔女どもと共に地獄へ…!せめて魔女狩りは完遂してみせます!殲魔科の単位も足りませんし!」

 

殲魔科…?それはローマ武偵高のこっちでいう超能力捜査研究所(SSR)みたいなもんだぞ。

この人もしかして、ローマ武偵高生?

となると世界中どこの武偵高も同じだな。変人ばかり。

 

「あ……あと聞きにくいことなんだが、なんか紅華とメーヤさん仲悪いよな。俺は紅華のことは知っているんだが……あいつが毛嫌いするやつはそんなにいない。メーヤさん、何かしたのか?」

「あの害ち…紅華・イステルとトオヤマさんは婚約者でしたね」

「ああ…」

「バチカン市国で祓魔師(エクソシスター)として叙階を受けた私は中等部のころ、殲魔科の単位が足りずにカツェ=グラッセと共にいた紅華・イステルの使い魔の猫を滅したのです。その件から彼女に恨まれ敵対関係にあります。トオヤマさんの婚約者だとしても戦いでは手は抜きませんのでご心配なく」

 

何がご心配なくなのかはわからないが…紅華のバチカン嫌いは魔女のペットみたいなものの使い魔を殺されたことかららしい。確かに白雪はホトギアゲハ、パトラはスカラベのように使い魔はいるのに、紅華の使い魔はみたことがない。そりゃ嫌いになるわ。

もしかしてこの人ものすごい危険人物なのでは…?

 

「そうなのか…玉藻もパトラといきなり話してたし、お前らはみんな知り合いなのか?」

「うむ、パトラとは会ったことがある。前回の戦で儂は『眷属』での。その時パトラの曽祖母と仲間だったのじゃ。そいつに日本語を教えたのが儂での。そいつは戦後、今後に備え子孫に日本語を教えたようじゃ。じゃから、パトラの喋り方は訛りはあれど、儂に似ておろう」

 

確かにパトラは古風な喋り方をするとは思っていたが……

それは彼女に日本語を教えた曽祖母が、玉藻に古い日本語を習っていたからだったんだな。

 

「前回って…お前86年ぶりの大戦とか言ってたよな?一体お前何歳なんだよ?」

 

ブラドやシャーロックの経験からその子供じみた見た目で100歳とか言われても驚かないつもりだったが…

 

「儂は建仁2年生まれじゃから、数えで802歳じゃ」

「は?」

 

8‥802歳!?鎌倉時代からこいつ生きてるのかよ。

 

「そもそも女神に年齢を聞くとは何事じゃ!信心が足りぬ!」

 

と俺を叩く玉藻はどうみても小学生、それも低学年、紅華と同じ(あいつも17歳だが)ぐらいにしか見えない。

 

「だったらもっとばあちゃんの格好すれば良いだろ!」

「儂はもともと大狐じゃ。それが変化してこの姿になっておる。人間に変化するとなると質量はさほど変えられん。こんな小さな老婆がおったら不思議がられて都におれんようになる。じゃから幼子になるのじゃ。聞かんでもそれぐらい分かれ!」

 

聞いても意味わからん理論を返してくる玉藻。

 

「それなら耳と尻尾を隠せよな。そっちの方が問題だろ」

 

と俺の指摘は図星でどうすることもできないのか、ぐぬぬといった顔になり、

 

「そんなことお前の与り知ることではないわ!」

 

逆鱗に触れたように怒ってくる。

 

「お前が子供の格好するなら子供として扱うからな。俺だって、外でお前に敬語使ってたら怪しまれる。今の日本ではそんなことしてたら通報されちまうんだぞ」

「新人のくせに今代の遠山は生意気じゃ!いいか、遠山の。儂はリピーターじゃ!何度も戦役を経験しておる!どうやって戦えば良いかよう知っておる!じゃから年上を敬え!信心を見せよ!」

 

とじゃらっ、と音を鳴らし賽銭箱を向けてくる。

こいつも結局金かよ……

しつこいので百円ぐらい入れてやっても良かったが、子供相手には多すぎる。

俺はこいつと遠縁になれるよう十円玉を取り出して

 

「はいはい、おばあちゃんごめんよ」

 

と賽銭箱に入れてやった。

 

「きっとご利益がありますよ」

 

パチパチとメーヤがその光景に拍手してくれるが……この2人が数少ない味方だと思うと不安が増すな。まじで。

 

メーヤは成田最終便で帰るらしく、そそくさと俺の家を後にし、玉藻は2時ごろ『北条を師団に引き入れよ』とだけ言い残し姿を消した。

残ったのは俺とアリアとメーヤが残した酒瓶だけだ。

アリアの様子が落ち着いたことで考えることは先ほどの宣戦会議のこと。『師団』のこと。『眷属』のこと。そして……

 

(銀華とも敵…?なのか)

 

ヒステリアモードで軽い『呼蕩』を使って『師団』に誘ったが、『中立』の立場を取ってしまった。実際その後『師団』のメーヤに目を光らせて、何か攻撃を仕掛けようとしていた。またバランスを取るようにアリアの殻金の一枚も返してくれた。

銀華が何をしたいのか、今の普通の俺にはわからない。

銀華/紅華にはシャーロックと同じ未来を推理する『条理予知』がある。

……もしかして、あいつにはこの極東戦役の結果まで見えているんじゃないか?そしてアリアがどうなるかまでも……

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

自室に瞬間移動で戻った私は、紅華から銀華に戻る。

私は『中立』で『師団』のお膝元の学園島の家にいるわけだが、()()()()大丈夫だろう。師団も中立の私にあんまり攻撃したくないはずだし。

色金の力を使って疲れた私は、ベッドで横になる。考えるのは先ほどの宣戦会議のこと。

 

(あ、危なかった……)

 

危うくキンジに籠絡されるところだったよ。

キンジには悪いけど、ほんとーーーにバチカンとは手を組むことはできない。ああいうどっちつかずみたいなことをやる組織は下らない。

…………まあ中立と宣言した私もだけど。

あとメーヤは殺し損ねた。運のいい女。

 

「まあ、いいよね」

 

誰にも聞かれない呟き。

 

「アリアの『緋弾』、私の『2つの色金』。一体どうなちゃうんだろうね。アリアが死ぬ?アリアに続いて私も緋緋神になっちゃう?それとも『緋弾のアリア』が完成したり、私の『二重の超々能力(デュアル・ハイパーステルス)』が完成する?」

 

 

 

「ねえ、父さん。父さんには推理できてたのかな?私には………()()()()()。わからないことは………面白いよ」

 

ニヤリと笑って私は眠りにつく。明日以降の未来を自分の目で見るために。

 




メーヤとカツェ34巻でも仲悪かった
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。