哿と婚約者   作:ホーラ

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謎回


第12話:宣誓

しばらくの間武偵高は短縮授業となり、できた時間を使ってくじ引きで決まった『変装食堂』用の衣装を自分で用意するのがルールだ。そしてその準備の締め切りは文化祭よりだいぶ前に設定されている。この締め切りに間に合わないと教務科の体罰フルコースを食らってしまう。これは本気で命に関わるので、締め切り前夜にはみんなで夜の教室に集まり、徹夜で仕上げするのが伝統行事になっている。

その『仕上げ会』が行われる夜9時過ぎ。

俺が特殊捜査研究科(CVR)からぼったくられた値段で買った警察の衣装を手に入った教室では、みんなだべりつつ衣装の仕上げをしていた。

机は教室の後ろに下げ、皆でチームごとにピクニックシートを敷いて座って作業している。

ほぼ完成した衣装を着てるやつもいるので仮装パーティーみたいな雰囲気だ。

 

「あ、キンちゃん。衣装どれくらい出来ましたか?」

 

女教師の姿ーーブラウスに濃紺のタイトスカートを穿いた白雪が、自分の隣を片付けて俺の座るスペースを作ってくれた。

口調も気持ち先生ぽい。役作りにも余念がないな。

教務科から出てる『1時間程度はその役らしく振る舞って練習すること』を忠実に守ってるらしい。流石優等生だよ。

 

「ほぼ完成してる。後で違和感ないか見てくれ」

「うふふ、キンちゃんの警官姿楽しみ」

 

と言う白雪はめっちゃ先生ぽい。母性みたいなのが溢れ出してるから小学生の先生だけどな。

俺はそんな白雪の横に座り、新品の警官制服を揉んで使用感を出したり、バッジを下に引っ張ってピンの穴を広げたり、細かい作業を開始する。

しかし俺はこう言う単純作業が苦手で……すぐに飽きてしまった。

なので単純作業に全然飽きないタイプの正面に座るレキを見る。『研究所職員』という博士を演じる予定のレキはセーラー服の上に白衣を羽織り、萌葱色のブラウスをチクチクと縫っている。仕上がりを見ると、工業ミシンで縫ったみたいに精密だ。すげえな、レキは。

そんな完璧主義のレキの足元にはレキなりに工夫しようとしたのかダテ眼鏡が置いてある。

それを手に取りレキにそっとかけるとそれでも微動だにしない。

少しは反応しろよな、と思ったら、チラッと眼鏡の上に開いた空間から俺を上目遣いに見てきた。

う……。

銀華は眼鏡をかけないから知らなかったが、なんかヒス的な血流を微妙に感じるアイテムだ。外しておこう。今後眼鏡には警戒だな。

 

そんなこんなしてるうちに「みんな、おはっよー」とガンマン姿の理子がやってきた。今、夜10時だぞ。おはようってなんだ。

と思ったが、理子の奇行は銀華ですら推理無理だろうから一般人の俺は考えないでおく。

理子の衣装は完成しており、テンガロンハットを被り、おへそはまるだし。

革のチョッキとブーツをちゃんと着て、デニムのミニスカートの裾には短い麺みたいな革紐がびっしり並んでヒラヒラしている。流石理子だな。

そんなニコニコな理子は教室のドアの前で

 

「ほら、早く!絶対ウケるって!可愛いは正義!」

 

ドアの後ろにいて見えない誰かを引っ張ってくる。

 

「や、や、やっぱり!いや〜〜〜〜〜!」

 

引っ張られてる人物は髪と同じ色のピンクのランドセルを背負っており、とても小学生ぽい服をしており、とても胸も平坦。

つまりどう見ても小学生のアリアがそこにいた。

衣装は多分この感じ理子が作ったな。

風穴対策として小学生アリアを1週間イメトレして、笑いを堪えれるようにしていた俺は、

 

「アリア、諦めろ。それより衣装の細部を作り込んでおかないと後で蘭豹にボコられるぞ」

 

真顔でそう言い放つと、アリアはぶしゅううううとショートしたような湯気を上げつつ、俺の横にあぐらをかいた。

 

「ヘイ!アリアちゃん!お裁縫箱はこっちでちゅよ!アリアちゃん!」

 

アリアの横に座った理子は白雪の裁縫箱を勝手にアリアの足の上に載せる。アリアはぐぬぬぬという顔をして、自分のスカートをぎゅうううう。両手で思いきっり握って、悔しさを我慢している。

 

「あんたそれ……絶対、『アリアちゃん』言いたいだけでしょうが……ッ!」

 

ドスの聞いた声で言ったアリアの額を、人差し指でつん。おもいっきり温かな笑顔で白雪先生が突いた。

 

「ダメでしょ、アリアちゃん?小学生がそんな口調で喋っちゃ」

 

教務科の命令の1時間は役作りしろってこと言ってるな、これ。

 

「うぐぅ………!」

 

今にも羞恥心と怒りのマグマが爆発しそうになっていたが…アリアのその火山は爆発することはなかった。何故なら……

 

「キンジ」

 

教室の入り口に純白のドレスを着た銀髪の少女が降臨したからである。

 

「うぐっ」

「北条様ッ!」

「うぐあわわうぐ」

「…………!」

 

多種多様な反応をするバスカービルの面々だが、俺も驚きだ。ここまで似合っているとは。

 

「ど、どうかな?」

 

頭にはベールを被り、ドレスは銀華にしては珍しく肩を大きく露出し胸の近くまでの生白い肌が露出してる。足元まで丈はあるが後ろは踏んづけて歩きにくくならないように短く纏めてある。しかも普段は銃を撃つ時に邪魔になるためつけていない俺があげた指輪まで左手の薬指につけてある。

 

「し、しろろん。理子たちに教えてくれなかったのびっくりさせるため!?可愛すぎる、可愛すぎるよ、しろろん!理子と結婚しよ!」

 

とデコった携帯で写真を撮りながら器用に銀華に抱きつく理子。お、おい!勝手に俺の銀華盗るな!

 

「……どこでこの服を?」

「CVRの後輩に頼んだんだ。そしたらちょっと肌の露出が多くなっちゃって…キンジ似合ってる?」

「あ、ああ。とても似合ってるよ」

 

普段HSSを発動させないため、肌を隠しがちな銀華とのギャップがすごいが、とても似合っている。点数をつけるとしたら100点だろう。

……ヒス的には0点だが。

 

 

そんなこんなしながら警官の服を試着したり、近くにいた平賀さんに『オロチ』の片方を貰うなどしてるうちに、みんなが帰ってしまい、残ったのは俺と銀華だけになってしまった。

 

机と椅子はまだ後ろに下がりっぱなしのものが半分ほどある。

これを片付けなくちゃいけないのか…とため息をついていると、

 

「ねえ、キンジ。ここでミニ結婚式しよう」

「……今ここでか?」

 

とんでもないことを言い始める銀華。

汚い教室。参列者無し。いるのは警察官の格好した俺とウェディング姿の銀華のみ。

 

「うん」

「こんな汚いところじゃなくて、そういうのは実際の時のために取っておくもんじゃないのか…?」

「いいじゃん。私がしたいんだから」

 

そう言って銀華はドレスを着ているということを感じさせない軽い動きで、教室をセットしていく。

 

「まずここが参列者の座る場所で」

 

その指した場所に2人で机と椅子を並べる。

 

「これがお花で」

 

黒板の白と赤のチョークで花を描く。

 

「これが祭壇」

 

教壇をバンと叩く。

そんなご機嫌な銀華の笑顔に俺も自然と笑顔になる。まあそんなにやりたいなら付き合ってやるさ。

 

「で、場所のセットはいいとして、どんな感じで進行するんだ?」

「うーーん、私も結婚式についてはよく知らないんだよね。とりあえず腕組んで一緒に入場しよう」

 

そう言った銀華は俺を教室の外に連行する。

お、おい。教室はもう誰もいないが他のクラスにはまだ残ってる人がいるかもしれないのに。

警察官の服を着ているのに何故か逆に銀華に連行された俺は、教室の入り口で銀華と腕を組む。

腕を組んでくる銀華を至近距離で見ると、本当に珍しく肩丸出しの服(ドレスだが)を着てるので年頃の女子にしては大きい胸の上部分が見えてしまっている。匂いもとんでもなくいい匂いですしヒス的にやばいですよこれ。

 

「パラパパーン」

 

と自分で結婚式のイメージBGMを奏でる銀華と共に教室に一緒に入る。

汚い教室に入るのは警官の姿をした俺とウェディングドレスの銀華。しまらないなあ。

俺たちは、腕を組みながら教室の真ん中まで言ってターン。

祭壇に見立てた教壇の前まで歩いていく。

………

ごっこ遊びなのに本当に銀華と結婚したみたいに感じてきた。しかも一歩一歩歩くごとにこっちを見てくる銀華すげえ可愛いし。

 

「パチパチー」

 

と祭壇に見立てた教壇の前まできた銀華はまた声で拍手をする。そこで腕を離して俺たちは向かい合った

 

「…で、ここからどうすればいいんだ?」

「うーん、私の推理によるとなんか愛の宣誓みたいなことをするらしいよ」

「愛の宣誓…?」

「たぶん幸せにしまーすとかみたいなことを言うんだと思う。ちょっとキンジ言ってみてよ。かっこよかったらカードのお花あげるよ」

 

銀華が師団に入る条件の『Sシステム』のポイントを出汁にしてくる銀華。ポイントは欲しいが、結婚式をほぼ何も知らん俺は何を言えばいいか全くわからんぞ。

 

「幸せにするよ、銀華」

「……うーん、もう一声!」

 

もう一声って…オークションじゃねえんだから。

 

「何よりも大事な君を命をかけて守るよ、銀華」

「……………!」

 

ヒス俺が言いそうな臭いセリフを銀華に言ってあげるとワタワタ慌て始めた。え、こんなのでいいの?

 

「ず、ずるいなあ……もう。お花あげちゃいます」

 

俺に要求したくせに何故かずるいと言ってきた銀華は俺が差し出したカードに赤いペンで花丸を一個書いた。

銀華さん的には本当にこんなんでいいの?これなら早晩10個貯まるけど。

 

「楽勝みたいな顔してるけど…私が不機嫌になるとその分『眷属』に味方するからよろしくね。これで『中立』の均等を保つことにしたの」

 

しまった。にやけ顔が出てたのか新ルールを追加してきやがった。

つまり俺が銀華に対していいことをすれば『師団』が有利になり、悪いことをすれば『眷属』が有利になる。

…………もしかして俺が極東戦役の戦局を握ってないか?

 

「銀華は愛の宣誓しないのか?」

「私の愛の宣誓は本物の結婚式のお楽しみ。ほらあ、私と結婚したくなってきたでしょキンジ」

 

俺にだけ言わせといてこいつずるいぞ。

 

「この前ロメオされかけたからね。今度は私がハニートラップしちゃうもんね」

 

先日のロメオのこと気にしていたらしい。でも別にハニートラップにもなってない。そのウェディングドレスの方がよほどハニートラップだぞマジで。

 

「じゃあ最後キスしちゃおっか」

「は?」

「結婚式といえば誓いのキスじゃない?ちなみに私はHSSを耐える自信がある」

 

何故かすごいドヤ顔でとんでもないことに言ってきた銀華。

そんな銀華に

 

「………ッ!」

 

顎を持ち上げて急にキスしてやる。馬鹿め銀華、俺も匂いと押し付けられた胸の感覚で我慢の限界だったんだ。

いきなりキスしてくるとは思いもよらなかったらしい銀華は最初はあわあわ慌てていたが、次第に弱々しくなっていき、自分の口内に入ってきた俺の舌を舐め返す程度になってくる。

 

「キンジ……結婚しよ」

「ああ、君の願いは僕の願い。必ず叶えてあげるよ」

 

弱々しい姿になった銀華を転ばないよう抱きしめてあげる。

こんな美しい花のような女性を誰にも渡しはしない。

 

 

☆★☆★☆★

 

もしかして……私ってアホ?

最近銀華()はHSS耐えてるからキスされても大丈夫でしょ!とか高を括っていたけど、あっちの紅華()はキンジ見るだけでちょっとヒスってたの忘れてたし!

キンジもチュー上手くなってきたのもあるけどさ!

なんでプロポーズみたいなこと言うかなあ…私は。しかも武偵高(あんなところ)で。

もっといいところで言いたかったよね。例えば夜景が見えるレストランとかで。でもあんなところだともし他の女の子がキンジに告ったら負けちゃう気もするよ…

キンジには指輪ももらったしプロポーズされてると言っても過言じゃないし、私は婚約者っていう最強の立場があるから他の女の子には負けないと思うけども……

例えば『無人島の花園で脱出も救出も不可能』みたいな状況でとっても可愛い子にプロポーズされたら……………うん、取られちゃう気する。

絶対とられない状況は……

………

…こ、子供を作って人質に取るとか?

で、で、でもキンジに卒業までそういう行為を禁止されてるし………うーーーん。

 

惚れてしまった女の子は辛いよ本当に。

 




銀華君、君はアホや

結婚式ネタ絶対本編でもそのうちやる。多分カナとパトラとの結婚式のタイミングで
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