哿と婚約者   作:ホーラ

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ヒルダ戦後半


第18話:雷嵐

 

「4世……!」

 

ヒルダはあたしをキッと睨みつける。

それだけで私の捻り出した勇気はどこかに吹っ飛んでしまいそうだけど…

 

「キーくん、下がってて」

 

私の裏切りを許してくれた、キーくんの名前を呼ぶことでどうにか保持する。

いつもより近い空から雨が降り始め、私を濡らす。

 

「あーっ、そうだそうだ!理子忘れてた!忘れちゃってたぁ!キーくんとアリアは元々、理子の獲物でしたぁーー!なのに、誰かな?勝手に獲ろうとした空気の読めない女は?くふふふふ」

 

私ははしゃぎながらその場でとてとて、と回ってみせる。

いつもの陽気な態度を演技して、私自身を鼓舞する。

 

「変圧器だったんだろそれは。お前は電気を使う。でも、その能力はジムナーカス・アロワナから遺伝子をコピーして身につけたものだ。あの魚はそんなに長く、大量の電気を放つことができない。せいぜい1度か2度しか使えない」

「4世…どこでそれをッ!」

「なあにびっくりしてんのぉ?こんぐらいググれば一発じゃん!」

 

私がヒルダについて調べた情報だけど、そんなことで驚くなんて馬鹿なやつだ。

 

「だからお前は、自分の体から放電しないようにして…外から()った電気を使う。でも、発生させられる電圧が低い割に、超高電圧の電気しか取り込めない弱点がある。だからその大型の変圧器が必要だったんだろ?」

 

私が壊した棺に指を指すが、ヒルダは押し黙ったままだ。

 

「ヒルダ、あんたはどこからも電気をもう取れない。さっき雷球を使ったからな。素粒子を操るための大電力も無い。だから陰になって逃げ回ることもできない」

 

私は催眠術にかかって動けないアリア(オルメス)の手から銀でできた十字箔剣を奪い右手に構える。

 

「ヒルダここで私はお前を殺す。私自身の証明を自身での手でしてみせる」

 

そう私が宣言すると………

 

 

 

バチッ!

 

 

 

鋭い痛みが走り、私の右耳のイヤリング、10分で人を死に至らしめる猛毒が入ったイヤリングが弾ける。

 

「理子!」

「キーくん。ありがとう。キーくんのおかげで私はたった10分だけど自由になれる。キーくんのおかげで理子は本当の理子になれたんだよ。本当の理子を見ててね」

 

私は空いた左手に自分の小太刀。左右の髪にワルサーを持たせ構える。

これが本当の『双剣双銃(カドラ)』。

 

「いいわ、戦ってあげる。お前ごとき電気がなくても敵じゃ無いわ。光栄に思いなさい。竜悴公(ドラキュラ)の一族と2度も戦った人間は歴史上ほぼ存在しないのよ」

 

ヒルダは私の髪に対抗するかのよう、背中の翼を広げ、足元から跳ね上がった武器『金色の三叉槍(トライデント)』を構える。

 

「でも、四世忘れたのかしら。私にはいかなる傷も一瞬で治す魔臓が4つあるのよ。その位置をお前は知らない。知っているのはこの太ももの二つだけでしょ?」

「大丈夫。理子にはキーくんがいるから。マイナスから0にしてくれたのは紅華だけど、今0をプラスにしてくれたのはキーくん」

 

私はキーくんからパクった銀弾を自分ワルサーに装填する。

 

「『法化銀弾』『十字剣箔』、これに弱いだろ、ヒルダ」

「すぐにはなおならないというだけのことよ。当たらなければ関係ないわ。さあ、お前たち3人は今夜死ぬ」

 

棺から降り、三叉槍を構えたヒルダに対して

 

「今夜死ぬのは2人だけだ!お前を含めてな!」

 

私は吠えるように叫びかけ出した。

左手に持つ小太刀で迎撃してこようとしたヒルダの突き出した槍をガッチリ受け止める。

これでヒルダの動きは止まった。

私の本命は右手の十字箔剣。

スパンッ!

銀の剣はヒルダの羽を気持ちよく切り裂いた。

 

「う…!」

 

よろめくヒルダにワルサーを連射。これも面白いように当たる。

法化銃弾はヒルダにはやはり特攻作用があり、撃たれた銃創が不自然に広がっていく。

 

「ヒルダ!お前は魔臓頼りの戦い方だ!」

 

私の挑発に怒ったヒルダは私の首を狙って槍を薙ぎ払う。

見え見えだ。そんなのは。

私は両足を前後に広げ、ストンと体を落として槍を躱す。

そのまま銀の剣でヒルダの膝から下の左足を切断した。

いける、いけるぞ!

 

「ヒルダ、お前は下手なんだよ!格闘戦がな!」

 

私の今までの技が

イ・ウーで培った技が

武偵高で培った技が

ヒルダを追い詰めていく。

 

「このネズミの分際で!」

「ネズミ?それは自分でしょ。羽も脚ももがれた蝙蝠さん。もしかしたらネズミより醜いんじゃない?」

 

もうすぐ弾切れのワルサーではなく2振りの刀でヒルダの服を切り裂き、突き刺し魔臓の位置を探す。

 

「やめ…やめなさいッ!やめろ!」

「お前がそうやってやめたことがあったかよ!」

 

持っていた槍すら奪い取った私は、片足をもがれバランスを崩し地にふしたヒルダをめった刺しにする。積年の恨みを晴らすために。

 

「ぶ、無礼者!」

 

最後の力を振り絞るか如く、さっきよりずっと弱くなった電気を身に纏うように放った。

おそらく自分の生命力を削った捨て身の攻撃。

 

「おっと」

 

バックステップでそれをかわした際、見えた。

魔臓全ての場所が。

両太もも、右胸の下、臍の下。

 

「四世許さない!許さないわよ!」

 

ヒルダは魔臓で傷を回復させているが、その回復スピードは遅い。放電しながらだと時間がかかるみたいだ。

隠れようとしたのか、体を影の箇所に溶け込ませようとしたが、電力不足かそれもできずにいる。倒すなら今だ!

 

ふらっ………

 

毒が回り始め、平衡感覚を少しずつ失ってきた。

 

「大丈夫か、理子」

「あんた、なかなかやるわね」

 

催眠術が解けたらしい2人が私の肩を支える。

 

「魔臓の位置は」

「理子のおかげで4つとも全部わかったよ。理子は強い子だ」

「ブラドの時と同じでみんなで撃ち抜くわよ!キンジが両腿、あたしが右胸。あんたが臍の魔臓をやりなさい」

「…わかった」

 

1人でも魔臓4つともやりきれるように散弾銃を持ってきてはいるが、ここはキンジたちの力を借りた方がいいだろう。

切り札は最後まで取っておくべきだ。

 

ヒルダは翼以外の傷を完治させたようで三叉槍を手に立ち上がろうとしている。

体を覆う電流は大したことないが、剣などの直接攻撃をしたら感電してしまうだろう。

 

ここで決めるべきだ。

 

「いくわよ!合図をしたら撃ちなさい!」

 

アリアが合図し、私たちはヒルダに向かって駆ける。ああ、ご先祖になんて言おう。最後の戦いに宿敵・ホームズ家の娘の力を借りたって。

でも、私が今あるのも紅華(ホームズ)のおかげだから許してくれるよね。

私たちは目標の部位が見やすいところまでそれぞれ展開した。

 

「キンジ!理子!今よ!」

 

私のワルサー、キンジのベレッタ・DE、アリアのガバメントが火を吹く。

バシュバシュバシュバシュ!

ほぼ同時に4回銃弾が当たった音がヒルダの体から発生する。

これで勝ったんだ。私たちは。

 

 

 

 

 

 

☆★☆

 

おかしい。

俺たちは確かにほぼ同時に4つの魔臓の位置を撃った。それはスーパースローの世界で確認済みだ。

なのに

 

「ほほほ、ご気分はどう?4世」

 

なんで倒れていないんだ、ヒルダは!

撃った四箇所とももう治りつつあるぞ。

 

「どうして……!?4つの魔臓を撃ったのに!」

「ああ、いいわ。とってもいい表情よ。特に理子。無念でしょうね。命を捨てて戦ったのに、私はご覧の通り平気。ねえ今どんな気分かしら?」

 

手の甲を口元に寄せて笑うヒルダは雷雲に向けて槍を揺らすような仕草を見せた。

 

「私は生まれつき、見えにくい場所に魔臓があるわけではなかった。その上この忌々しい目玉模様をつけられてしまったの。だから、紅華に頼んで外科手術で変えちゃったのよ。魔臓の位置を。魔臓の位置を知ってるのは紅華だけ。紅華は一生話さないと約束してくれたし、私すら全部の位置は知らない。お前たちは私の全ての魔臓を壊さないと勝てないのだから、お前たちに勝ち目はないわ、おーっほほほほほほほほ!」

 

なるほど、どうやら初めっから惜しげもなく太ももを丸出しにしていたわけだ。

理子に目玉の位置がバレていたのに焦っていなかった違和感。

それは見られても平気だったからだ。

目玉の下に魔臓がなかったからなんだ。

 

「紅華が俺に教えてくれたかもしれないぞ」

「バカね、お前。紅華が約束を違えるはずないでしょ。それに私の目玉に対して攻撃したのがお前たちは知らなかったという証拠よ。ああ、なんて、いい天気なのかしら」

 

ガガーン!

すぐそばに落雷したらしい音を心地良さそうにヒルダは聞いている。

雷が苦手なアリアは縮こまり、理子はただ悔しそうにヒルダを睨む。

 

「4世。121年前、建造中だったエッフェル塔で、私のお父様はお前の曽祖父『アルセーヌリュパン1世』と戦った。奇遇なものね。双方の子孫が戦ったこの塔もまた、作りかけ。でもいい塔よ。とても高くて、気に入ったわ」

 

ヒルダが愛でるように雷雲を見渡す。

 

「私はこの好天の日を待ってたの。だから、ワトソンも今夜呼んだわ。なぜ私達一族が塔で戦うのか教えてあげるッ!」

 

そう言ったヒルダは雲を見上げ、稲光と同時に三叉槍を頭上に掲げる。

まるで避雷針のように。

閃光で目の前が真っ白になり

 

ガガァーーーーンッッッ!

 

落雷の音がほぼ同時に聞こえてくる。

 

「きゃあああああ」

 

雷が苦手なアリアがパニックの悲鳴を上げる。

 

「生まれて四度目だわ。第3態(テルツア)になるのは」

 

高熱で蒸発した雨粒が水蒸気となり、その白煙の向こうにヒルダが心地良さそうに立っている。

その全身を覆う雷光は黄金色ではなく、青白い、ただ近づくだけで丸焦げにはなってしまいそうな勢いがある。

帯電性の下着とハイヒールは残っているが、金色の巻毛を留めていたリボンは燃え、長い髪が強風に暴れている。

まるで悪魔だ。

この世のものとは思えない…!

 

「この第3態は紅華との戦いの時に見せたけれども。奇妙なものね。紅華と契りを結びお父様を倒したお前に見せることになるなんて。さあ、遊びましょ?」

 

がすん!と足元に三叉槍の石突きを突いただけで、コンクリートは割れ蜘蛛の巣のようなヒビが走る。なんて怪力だ…!

 

「第1態が人。第2態が鬼なら、この第3態は神。帯電能力と無限の回復力を持ってなす竜悴公の奇跡。神の力を得た私は人間の電気なんかいらないの!おっほほほほほ!ほらほらご覧なさい!恐れなさい!涙を流して!命乞いするのよ!」

 

力を誇示するかのように展望台そのものを壊すヒルダの隙を見て、状況を整理するが……状況は最悪だ。

理子は毒が回って柩に背をもたれさせたままだし、アリアは闘争心は失っていないが先ほどの落雷でほぼ戦意喪失。体が萎縮しきっている。

 

「私と長時間戦ったご褒美に見せて上げる。私たち一族の奥伝『雷星(ステルラ)』。まずアリア、理子を丸焦げにして、最後は遠山キンジお前をじっくり焼いてやるわ」

 

雷球。

三叉槍の先端に先ほどの雷球のように黄金色ではなく、セルリアンブルーの雷球が生成される。

有り余るエネルギーが不安定な光を放ち、球というより星の形をなしていく。

 

考えろ。あれをどうしたらいいか…!

 

「人生の角、角は花で飾るのがいい。あたしのお母様の言葉だ…」

 

背後から柩にもたれかかっていたはずの理子の声が聞こえる。

目の端で見ると、理子は柩を飾っていた大きな花束の一つを抱えていた。

理子にとっても似合うひまわりの花束を。

 

「だから、やるよ。お前に、お別れの花」

「はは、四世にしては殊勝な心がけだけど謹んでお断りするわ。私はひまわり太陽みたいで嫌いなの。私は暗いところが好き」

「じゃあ、暗いところが好きなお前に一つ。日本語の諺を教えてやるよ。『灯台もと暗し』ってね」

 

不敵に笑いながら理子はひまわりの花束をガサゴソと解いていく。

 

「これは近すぎても遠すぎてもダメだった。ベストな距離が必要だった」

 

花束から出てきたのは、銃身を短く切り詰めた

ウィンチェスター・M1887、

 

「散弾銃…!」

「なるほど、理子!お前は天才だ!」

 

ヒルダがそれに気づいた瞬間。

 

ガウン!

 

稲妻にも似た銃声が第二展望台に響いた。

一発しか飛ばないその散弾は無数の弾子となり、空中で散開。

ヒステリアモードの眼で捉えたその数は100発以上。超小型の軟鉄弾だ。

 

ビシビシビシッ!

 

散弾がヒルダの全身を捉える。

そう。ショットガンなら魔臓がどこにあろうとお構いなしにやつの全身をくまなく撃てる!

 

「あ……う、ううっ………!」

 

無数の弾を体中に浴びたヒルダがふらついてその場に片膝をついた時、蒼い『雷星』が解けるように槍に戻り、ヒルダの体を通過する。

 

瞬時にヒルダの全身を炎が包み込む。

ヒルダの皮膚が燃え、崩れ落ちるが…

しかし瞬時に回復される。

まさか……!

 

「あは、おほ……おほほほほほほっ!四世、残念だったわね!隠し玉でも私を殺せないなんて!お前が散弾銃(それ)を隠していたように、私も切り札を隠していたのよ!」

 

炎を纏ったヒルダが高笑いをする。

いや、おかしい!理子の放った散弾銃の弾はヒルダの全身をくまなく捉えていた。

魔臓に当たらないことなんて、とても運が良かったと片付けられるだろうか!?

 

「お前たちが私を殺すためにはそれしかないと『推理』できないわけないじゃない。ここまでの展開は私の推理通り。お前たちは私の掌で踊っていただけなの!私はあえて銃弾を受けた。その意味がわかるかしら、トオヤマ」

 

炎を振り払ったヒルダのオーラがさっきとは別レベルで大きくなる。

おいおい、嘘だろ…!

これは………ヒステリアモード!?

 

「お前たちのHSS(この力)を、私はお父様のように自分で上手く使えなかったけど、自身が追い込まれることで使えることは推理できていたわ」

 

ブラドもヒステリアモードを使っていた。

シャーロックも同様にだ。おそらくヒルダも紅華の血を吸うことで推理力も含め、ヒステリアモードを獲得していたのだろう。

そして死にかけたことでヒステリア・アゴニザンテを発動したってことか…!

 

「第3態とHSS。二つ合わせれば神をも超える力。これを使えばお前を倒して紅華の横に立てるかしら」

「一つ質問してもいいかな。どうやって散弾銃を受けても死ななかったんだい?」

「気分がいいし、冥土の土産に教えて上げるわ。どうせどうすることもできないのだし」

 

ヒルダは三叉槍を再びコンクリートに叩きつけ気分がよさそうにニヤリと笑う。

 

「私は魔臓を4つ撃たれたら治せなくなるのはお前たちも知っての通り。だから……撃たれる直前、私が地面を粒子化する要領で、自分自身の魔臓の一つを粒子化したのよ!粒子化するのは膨大な魔力が必要なのだけど、私は『条理予知』でお前たちの攻撃を完璧に予知できるのだからそのタイミングで粒子化すればいいだけ。つまりお前たちが私を倒すことはどうやっても『不可能』なのよ!おほほほほほっ!」

 

勝ち誇ったように高笑いするヒルダ。

くそ……ワトソンも言っていたが、こいつも紅華やシャーロックと同じ未来を見通す力の『条理予知』持ちかよ。

しかもその予知を使って自身を粒子化して魔臓への攻撃無効化って、ズルすぎるだろ。

第3態とヒステリアモード。

悪魔を超え、まるで神のようなオーラだ。

 

「トオヤマ、絶望したかしら?お前にはチャンスをあげるわ」

「チャンス?」

「紅華を私によこしなさい。そうすればアリアとお前は見逃してあげる。彼女はお前ごときが留めていていい存在ではなくてよ」

 

やはりそうきたか…

まあ俺の答えは決まっているが

 

「俺の紅華を君にはあげないよ」

 

答えとともに俺はベレッタを4連射の奇襲。

先ほどの散弾銃の銃創が他の部位より治るのが遅かったから分かった右膝・左肩・中央腹部の三箇所の魔臓の位置に加え、先ほど銃弾が不可解に貫通したおおよそ粒子化した魔臓があるだろう左胸に向かって撃つ。

 

「下賤な男ね。お前は」

 

見下すような目をするヒルダの周囲で、バシュっ!

という風を切る音と共に、蒸発した水蒸気が弾け飛んだ。

 

「ーーー!」

 

見えた……今やつが、交叉された両腕を瞬時に開きながら、左胸に飛んだ俺の撃った弾を右手の指で減速させ、左手の指で逸らす光景が。

 

(あの技は…!)

 

東京駅でココ・狙狙に狙撃された時に編み出した、俺の『銃弾逸らし』とそっくりだ!

 

「動画で見ただけじゃ、再現は難しいわね…これを魔臓とかなしにやるのだからお前本当にナニモノなのかしら?」

 

銃弾を逸らして怪我をした両指を再生しながらヒルダは呆れたように言ってくる。

発言から、どうやら俺の銃弾逸らしの動画を見て今初めて試してみたみたいだが…同じヒステリアモード。

魔臓や条理予知を抜きにしても、普通の銃弾や刀も効かないと考えるのがいいだろう。

 

「普通の高校生だよ。荒っぽい学校のね。それにその技は俺の専売だよ。だから俺も他の人の武器を使わせてもらおうかな」

 

理子借りるね、と意識が朦朧としている理子からウィンチェスターm1887を借りる。

 

「いいわよ、なんでも使いなさい。それももう私には効かない。今の私に勝つことは()()()なのよ」

 

少し嫉妬してしまうね。

俺以外の誰かが紅華の(HSS)を使っていると考えるのは。

紅華の力は俺だけのものなのに。

それに君は2回も言った、不可能と。

でも俺は不可能を可能にしてきた。

絶対無敵と言われていたシャーロックや紅華を倒し、イ・ウーを崩壊させた。

君を倒すことが『不可能』なのだったら、それは『可能』だ。

この技はチャンスは今油断している一度しかない。もし、失敗したら地面に潜り逃げられてしまうだろう

 

「月は叢雲、花に風。この遠山桜、今夜は自分で散らしてやるぜ」

 

チャンスっていうのは大抵一度しか来ない。

だから時が来たなら、実力が足りないとか、失敗したら破滅とか言い訳したらいけないんだ。やるんだ。男なら。

放つ技は

 

「『鉄風(テンペスト)』」

 

風の中で作り上げろ。

俺は散弾銃を右手に、ベレッタを左手に構える。双銃スタイルだ

通常散弾銃は拳銃と違い両手で撃たないと威力が殺しきれない。こんな構えはあり得ない。

そして、この技は一瞬で放つものではない。数瞬の時間をかけて放つものだ。

数秒のアニメを構成するよう無数の動画を全て把握するように、一コマ一コマ切り分け、全空間で起きる全事象を上手くいくようにアドリブで起こすことが要求される。

 

ーーーシュン!

 

敢えてヒルダは三叉槍を構えて近づいてきた。

散弾銃の弾が全部当たる位置というのは遠すぎても近すぎてもダメだ。

俺に位置調整をされる前に主導権を取る作戦だろう。そして接近された時点でヒルダの身に纏う高圧電流で負けだ。

それでもやるしかない!

 

(唸れ、橘花、鉄風!)

 

スーパースローになった世界でショットガン・ベレッタの順に銃弾が発射される。

ショットガン片手撃ちの反動は『橘花』、桜花の逆向きに手を動かす減速防御の技で相殺する。

 

「フッ!」

 

自分に向かう散弾を見て不敵に笑うヒルダは、三叉槍を超高速で回しまずショットガンの弾を弾き返す。弾丸を弾き、弾き、弾き返す。まるで俺の『銃弾斬り』のように攻撃が当たらない。数弾それでも貫通してヒルダの元に届いてはいるが、先ほどと同じように致命傷は与えられていない。

 

しかしそれが狙いだ。

無数に飛ぶ弾とその破片はヒルダを中心に3次元的に囲っている。

それはまるでヒルダを中心に弾け飛ぶ金属の嵐。俺はベレッタで弾け飛ぶ弾を撃ち調整する。

ベレッタの銃弾と当たった散弾は再び跳弾し、ヒルダの周りを飛び交う。

俺は散弾銃をとベレッタの弾をどんどん追加して嵐を大きく濃くしていく。

ヒルダはとうとう歩くことができなくなり三叉槍で防御一辺倒になっている。

 

ヒルダ、君はミスをした。

初めての力を手に入れ調子に乗っていたのだろう。

魔臓の粒子化には膨大な魔力が必要ということを俺に教えてしまった。

銃弾の発砲のタイミングを条理予知し、魔臓を粒子化するのであるならば、タイミングをわからなくすれば、粒子化をずっと行わなくてはならない。

しかしそれは魔力が無駄になってしまう行為だ。

そしてタイミングがわからないなら……

 

ズズズっ…

 

影に潜るよな。

それがこの嵐から逃れられる唯一の方法だから。

だか…それを待っていたぜ!

 

鉄の嵐を飛ぶ銃弾が跳ね返り、まるでヒルダが潜ると分かっていたかのように左右背後から、4つの魔臓に向かって飛ぶ。

分かった時にはもう遅い。

驚愕に目を見開くヒルダの4つの魔臓を….

 

ビシビシビシビシッ!

 

4つの弾丸が貫いた。

 

「きゃああああああああああ」

 

ヒルダが悲鳴を上げ崩れ落ちる。

やはり地面の粒子化と魔臓の粒子化という難しい超能力を同時並行で行うことはできなかったようで、ヒルダの無限の回復力が失われている、つまり魔臓を全て撃ち抜いたようだ。

 

「あう…!そんな…こんな未来知らない…だっておかしい……私の…推理が……違うなんて」

「君が自分のことを教えてくれた代わりに教えてあげるよ。俺はただの高校生だけど、紅華のことになると本気になっちゃうから、次からは注意してね」

 

散弾銃で何度も撃たれ無惨な姿になったヒルダに対し対超能力用の手錠をかける。

 

 

「キーくん……」

 

呟くような理子の声。

 

「ヒルダを倒してくれてありがとう」

「理子のおかげでヒルダの魔臓の位置がわかったんだ。俺の方こそ感謝しているよ。理子はやっぱり強い子だ」

 

理子は雨に打たれながら空を見ている目はもう焦点があっていない。

 

「ブラドとヒルダを倒して、自由には……なれた。でも、キーくんとアリアは結局倒せなかった……本当の理子になれたのかな…?」

「いいんだよ、それでいいんだ理子。『本当の自分』なんて時と共に変わっていくものだ。今の理子は1人じゃない。仲間と助け合うのが本当の理子なんだ」

「キーくん……」

 

俺の名前を呼ぶ声は小さくて、

 

「キーくんと紅華……理子はどっちもにも救われちゃったね……」

 

理子は目を閉じた。まるで王子様に救われて満足したかのように。




原作キンちゃんですら攻略できなかったカーバンクルの粒子化を持ったヒルダ。
実際、ヒルダって瞬間的にならカーバンクルの粒子化使えそう。

次回エピローグ
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