哿と婚約者   作:ホーラ

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しばらく

ちょこっと銀華の視点→メインのキンジの視点

という風に進みます。


第21話:ジーサード同盟

まったく…

 

アリアの携帯から送られてきた画像を見る。

携帯の画面の中では、アリア、白雪、理子、レキさんの4人が血を流して倒れている。

 

「それで一体どういうことかしら?」

『学園島の横、空き地島へその姿で来い。もし来なかったり、別の姿できたらこいつらを1人ずつ殺す』

 

テレビ電話で脅すジーサードとその後ろで親の仇かと思うぐらい睨みつけてくる獣耳の美形。

なんか初対面なのにすごい嫌われてる…

 

ということで、私は空き地島に来た。ご所望通り銀華の姿で。

天気が良く見通しが利く空き地島には誰もいないように見える。

まあそうではないのは推理しているのだけど。

 

「おせえよ」

 

そんな声が私の正面からかけられる。

さっきテレビ電話で聞いた声だ。

 

()()で来いって言われたから、来るの大変だったんだよ。後輩に船とか借りないといけなかったし」

 

と先ほどまで誰もいなかったはずの虚空に答えると、一斉に気配が感じ取れた。

私の答えに対し、透明化を解除したのだろう。

それまでわからなかった、強靭で、重厚で、鋭敏な存在感。それも複数。

 

「1人で来る豪快な度胸、見上げた物であるな」

 

スピーカーから聞こえてきたそんな声。私の左に立つのは、鋼鉄の巨躯。凡そ全高240cm。

ブルーブラックに着色されたメタリックボディはさほどスマートではなく、一目見るだけで陸専用兵器ということがわかる。背には先ほど機能停止しただろう光屈折迷彩(メタマテリアル・ギリー)と思われる黒いマントを着装している。

だがこれはロボットじゃない。関節の位置が人体と同じ点、また先ほど声がスピーカーから聞こえたのから推理するに中に人間が入っている。

ロボットというよりは先端科学兵装の甲冑を纏った戦士だろう。この人は。

 

「サード気をつけて。この人、何考えてるのが読めない」

 

右から聞こえるのは右と左で瞳の色が違う、ぱっつん前髪の銀髪の少女。

長い後ろ髪もワンレングスに切り揃えていて、蝶の形の髪飾りを頭の左右につけている。

片方が青で、片方が赤って…私と似てるね、彼女。

その横にはテレビ電話から変わらず私を親の仇かと思うぐらい睨みつけてくる少年か少女かわからない美形。

その子の耳には玉藻さんと同じキツネのような尖った耳がついている。

おそらく玉藻さんと同種族の仲間だろう。

 

「…………」

 

後ろから微かにエンジン音がする。

いつのまにか私の後ろにいた車。

実物大のミニ四駆みたいな黒いスーパーカー。

中には気配がしない。おそらくこれ、私の持ってる車と同じ自動運転か。

 

そして目の前に現れるマッドブラックのプロテクターをつけたジーサード。

 

ジーサード軍団は私を完全に包囲するように囲んでいる。

 

「か弱い女の子1人にちょっと大層すぎない?」

「ハッ、何がか弱いだ。テメェはか弱い女から一番程遠い存在だろうが」

 

鼻でジーサードに笑われるけど…まったく失礼だ。

 

「それで私のためにアリアとかをボコボコにして何がしたかったの?」

 

私の言葉を聞いて、少し言いにくそうにしたジーサードから、私の推理とは全く別の回答が返ってきた。

 

「北条銀華。お前を……俺の女にする」

「は?」

 

は?????

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

ジーサードが文字通り消えた後、ジーフォースの目にようやく光が戻り、倒れたままのアリアたちの側に立った。

 

「車呼んだから…お兄ちゃんについた悪い虫たちは病院に閉じ込めちゃう」

 

無理にニコッって笑うジーフォースは、もう戦う意志はないようだ。

刀を破壊したとはいえ、俺は警戒心を解ける訳がない。

 

「君がいかに可憐な薔薇であろうと、棘は嫌なものさ。そんな可憐な薔薇にもっと俺は触れたいから、棘を脱いでくれないかい?」

 

ヒステリアモードなので遠山家の技を使って武装解除させることは可能だが、女の子に対して乱暴をしたくない俺はそう言うと…

 

「んー、そうだね、はい」

 

バシュっ━━

彼女のプロテクターの各所から水蒸気のようなものが噴き出した。

次の瞬間、ジーフォースの装備は、バラバラッ。全て外れてしまう。

その体に残ったのはスキー用のブーツ見たいな靴と黒いアンダーウェアだけだ。

そのウェアは防弾性だがストッキングのように薄く、未成熟なボディーラインがくっきり浮き出てしまっている。

腰回りには下着の線がくっきり見えてしまっていて、上は………つ、つけていないみたいだぞ!

ヒステリアモードなのに驚いて目を見開いてしまった俺の後ろから

 

「み、見るな!トオヤマ!」

 

ガバっ。

両手で目を塞いできた。ナ、ナイスだワトソン!

 

「トオヤマ、君には妹がいたのか?」

「こんな可愛い子と一度でも会っていたら俺の辞書に載っているはずさ。もちろん君は載っているけどね」

 

ワトソンも口説きつつ、そう答えると、ワトソンはポカっとちょっと強めに殴ってきた。微妙に痛い。

 

「ああ……HSSのお兄ちゃん……背徳ぅ……さっさとこいつら運んじゃおう。武偵病院ってところでいいよね?」

 

などと可愛いって言われて喜んでいるジーフォースはぐい。

アリアとレキをネコ掴みして、両肩に担いでいる。

俺に負けたからか知らないが、この子は本気で自分で倒した4人を自分で救助するつもりみたいだ。

 

「見た目ほど重症じゃないね」

 

銀華を助け出したいが、手がかりは目の前のジーフォースしかない。それならば、彼女の機嫌を損ねるべきではないのとアリア達の救助の優先度も高いことから、真似るように白雪をおぶった俺に、理子を背負ったワトソンがそう耳打ちしてくる。

 

「この4人には手抜きしたから。本気を出してもお兄ちゃんには歯が立たず負けちゃったけどね」

 

戦闘時の手抜きは危険な行為だ。言うのは簡単だが実際には難しい。特に武装した者が相手の場合、よほどの実力差がない限りまずできない。

そう……わざと体を傷付けず刀だけを破壊した俺とジーフォースの差のように。

 

「君はジーサードの命令を聞いているみたいだな。彼の方が君より強いのかい?」

 

ワトソンは探りを入れると、ジーフォースは流し目をするような視線を向けて、俺もワトソンも推理できていた答えを返すのだった。

 

「そうだよ。サードも私よりずっと強い。お兄ちゃんよりも。あたしは自分より強い人に逆らわない」

 

 

 

ビルの車寄せにはジープのように大きな黒塗りのハマーが停車しており、横でスーツを着た白髪の男が深いお辞儀の姿勢をとっていた。

 

「フォース様、お見事でしたよ」

 

男が顔を上げる。

その顔付きはひきつるように歪んでいた。背筋もどこか神経に障害があるかのように歪んでいる。

 

「お兄ちゃんには負けちゃったけどね。ありがと、アンガス。サードは?」

 

アリアとレキをポイと車に放り込んだジーフォースは老人アンガスに偉そうな口を利いている。

 

「ツクモの御するグンペルト・アポロにてガリオンに向かわれておりますよ。()()もそこでお待ちなので」

「サード、ガルウィング好きだなあ」

「左様ですな。あの形を美しいと感じるようで。コリンズとロカもガリオンに待機させておりますよ」

 

古めかしい日本語を話すこの老人は俺たちの知らない人名を出した。

老人を含め、ジーサードとジーフォースには仲間がいるようだ。それも複数。

 

「遠山様と…そちらの殿方は、ご自分のお車でご自宅に戻られますかな?これより、女性のご一同を武偵病院までお送りしますが━━」

「君たちにはもう戦う意志がない事は理解したが、彼の婚約者(フィアンセ)が君たちに拘束されたままだ。ジーフォースは僕の車に乗れ。トオヤマはそっちの車に乗るんだ」

 

アリア達をワトソンの車に乗せて、俺はヒステリアモードでパルクールしながら武偵病院に向かおうと思っていたが、ワトソンがいう通り丸腰のジーフォースを人質にとりつつ、ここの2台に分乗して行った方がいいかもしれない。

この老人から何か情報が取れる可能性もあるだろう。

 

「お兄ちゃんとドライブデートしたかったのに。非合理ぃ」

「いいから君はこっちに乗れ。言っておくが僕のポルシェは自爆ができる。不審な事はしない事だ」

 

自爆機能付きなのかよそのポルシェ。2度と乗りたくないな。

 

「ワトソンって可愛い顔をしてるよね。さっきお兄ちゃんにも褒められてたし。まるで女の子みたい」

 

ぎろり。

ワトソンの実際可愛い顔を覗き込んだ。

 

「し、し、失敬だぞキミは!ボクは男だ!ボ・ク・は・男・だ!」

 

すまん。ワトソン。

揶揄われたワトソンが可愛いからちょっと揶揄うのが癖になってしまったのだが、ジーフォースに不思議に思われたらしい。

唾がかかる距離でジーフォースにがなり立てているワトソンに対して心の中で謝りつつ放っておいて、理子と白雪をハマーの中に運びつつ埃一つ落ちてない助手席に自分も座った。

足が悪いのかヒョコヒョコと回り込んで運転席に座った老人、アンガスを信用できずに横目でちらっと見てしまう。

 

「ご心配めされるな、遠山様。私はサード様のただの執事にございますよ。あと北条様は傷一つついておりません」

「でもあの写真は」

「遠山様をここにお呼びするための写真ですよ。実際は北条様にサード様は手を出しておりません。北条様は客人として丁重にもてなおしております」

 

そう言ったアンガスはまるで王族を乗せるかのように車を出すのであった。

学園島に向かうアンガスの運転は道路標識すら的確に守ってるぐらい丁寧であり、その横顔は瞼が引き攣ってはいるが、その瞳は草食動物のように穏やかだ。

悪人には見えない。

が、彼は自分でジーサードの執事を名乗った。

そうであればここで俺が何か言えばジーサードに伝わり後々不利に働くかもしれない。

ヒステリアモードが切れた俺はそう考え、沈黙を通し、何の問題もなく武偵病院に到着した。

アリア達を夜間入口から院内に搬送した後、医師免許をもつワトソンは自分も院内に入り、残されたのは俺とジーフォースだけだ。

ジーフォースの体には見たことがある(おそらくワトソンのもの)ロングコートを重ね着しており、あのあられもないアンダーウェアを隠している。

 

「これで、二人っきりだね」

 

というジーフォースは妙にウットリした目で俺の顔を見上げている。

風に乗って、髪からはキャラメルみたいな甘い香りがしてくる。

 

「あまり近づくなよ。俺に妹はいない。あと銀華を返せ」

「妹はいるんだよここに。あいつのことは気にしないで」

「だから近づくなって」

「いいよ、お兄ちゃんがそういうなら。一晩ぐらい別々でも我慢する。あたしも準備があるしね」

「準備?何のだ?」

「ナ・イ・ショ。とりあえず今宵は…これにて一件落着ってことで」

 

はてなマークを浮かべる俺にイタズラぽくウィンクしてきた。

そしてこっちに背を向け、ご機嫌なスキップで並木道を去って行く。

まるで機嫌がいい時の銀華のように。




原作のここ、なぜかツクモだけウラジオストックに待機させられてるの可哀想。
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