哿と婚約者   作:ホーラ

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ロミオもいるからややこしい


第22話:ロメオ

 

「俺の女になれ」

「は?」

 

は?????

何を言ってるんだこの男は。

私とキンジが男女の関係にあるのは、今や裏の世界では誰もが知る情報だ。

つまり私は全世界公認のキンジの彼女。

それをジーサードが知らないわけない。

 

「私には決めた殿方がいるんですけど」

「そんなこたァ関係ない。俺は欲しいものは自分のものにする。それはモノでも人でも関係ねェ」

 

て、天上天下唯我独尊すぎる…

 

「私がそんなこと呑むとでも?」

「呑ませるためにフォースにあの女達を襲わせたんだろうが。ホームズの名は飾りか?」

 

私を挑発するように言ってくる。

仕方ないなあ。

 

「簡単な推理だよ、ジーサード。私はここに貴方が来ることを前から推理していたのだから。そしたら私をどうやって誘き寄せるかっていうのは推理するまでもない」

 

彼の『目的』には私が必要である。

『俺の女になれ』という言葉は本音を隠した建前。

 

「この姿で来いと要求したのは、紅華には勝てないから。でも困るなあ、銀華()を舐めてもらっちゃ」

「ハッ。そうなると思ったぜ」

 

私は腰を落とし、右拳を大きく振りかぶり、右足を後ろに引く。

緩めに開いた左手は銃の照星のように、自分の利き目とジーサードを結ぶ直線上に据える。

仲間の邪魔が入る前に1発で決める。

使わせてもらうよキンジ。

 

「桜花━━」

 

バンッ!と踏み切った足から地雷のような土煙を上げて飛び出す。

キンジは拳だけど私は蹴り。

秋水で全体重を乗せた亜音速の蹴りをジーサードは余裕の顔で━━

ぱし。

とプロテクターで止められた。

プロテクターごと破壊するつもりだったのに。

 

日蝕(エクリプス)……ってそんなに驚いてない顔じゃねェか」

「まあね」

 

キンジが最近開発した防御の技『橘花』にそっくりだ。

橘花とは桜花を通常と逆ベクトルに放つ技。

簡単にいうと桜花のカウンター技なのだけど、ジーサードもおそらく桜花に準ずる技を使えるのだろう。

推理はしていたけど、銀華()の最大火力を普通に受け止められて凹むなあ……

 

「ねえ、ジーサード」

「何だァ?」

「ゲームの時間だよ」

「ゲームだと…」

 

私は後方宙返りして、再びジーサードと向き合う。

 

「貴方は私を自分の女にしたい。私はなりたくない。でも、私は逃げられない状況」

「………」

「ジーサード、貴方は私を自分の女にしたいなら条件が一つある」

「何だ…?」

 

私は一拍溜めて右人差し指でジーサードを指し、言い放った。

 

「私をHSSにして見せなさい!」

「は?」

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

深夜になってワトソンからの電話で聞いたところによると、アリア達の怪我は大したことはなかった。

瓦礫の下敷きになったり、手榴弾を喰らったりしてたのに軽傷で済んでるあたり流石のタフさだ。

とはいえ一応1週間ほど入院することになったらしい(ハイマキも)。

そして翌日━━

息をつく暇もなく、ジャンヌから『ジーサード・ジーフォースの一件について師団のメンバーを招集して会議をする』との連絡が入った。

ちなみにこの日はハロウィンの催しを武偵高全体でやるという通達が出ており、もし普通に歩いてると顔がお化けみたいになるまで教師達にボコられる。

銀華が拉致されてそんな気分にはなれない俺だが、仕方なく黒いフード付きローブを借りてハリー・ポッターのディメンターのような姿で会議に向かう。

会議場となったファミレス・ロキシーは楓並木の道にオープンテラスがありそこで『師団』の面子が集まっていた。

衣装のせいであまりにも歩きにくかった俺は少し遅刻してしまった。

 

「遅くなったな。わからんかもだが俺だ」

 

死人のような黒いフードのまま、バスカービルの生き残りの俺が席につくと……

 

「遠山、遅刻だぞ。お前は、普段から暗いのにまた一層暗い格好してきたな」

 

ジャンヌがコーヒーカップを手に振り返った。

ジャンヌは目の下に雪の結晶のシール、黒いトンガリ帽子、星のついたステッキという超わかりやすい魔女のコスプレをしている。

ちなみに去年の銀華も魔女のコスプレをしていたけど、リアル魔女の人たちって魔女のコスプレが好きなの?

 

「おう遠山の。遠山侍は昔から落武者のような格好が好きじゃの」

 

丸出しの尻尾を『?』の形にして聞いてくる玉藻。これは赤いミニスカート風の和服を着ただけで化けギツネを演じている。というかこいつは化けギツネなんだから演じてすらいない。

 

「トオヤマ。ボクも誰かわからないかもしれないけどボクだよ」

 

逆にめっちゃ気合いを入れているのは、大きなカボチャをくり抜いて作ったジャック・オー・ランタンをかぶっているワトソン。

首から下は雨ガッパみたいなの被ってて、喋らなかったら誰かマジでわからなかった。

 

『みなさん可愛らしいですよ。ふふふ』

 

ゆるふわな声が聞こえてきたのでテーブルの上にあるノートPCを見ると、画面にはスカイプで映像通信をしているらしいメーヤが映っていた。

メーヤの背後の教会の窓は外が暗く、時差がある。朝早くにありがたいことだ。

 

「少々性急ではあるが、師団会議を始める。先日『師団』のバスカービルの4人が無所属だったジーサードとジーフォースに討たれた」

 

宣戦会議でも司会進行を務めていたジャンヌに

 

「昨日帰りながらジーフォースから聞き出したんだが、ヤツらがジオ品川を拠点にしていたのは単にそこでレキを見つけたかららしい。レキを含め、アリア達は皆襲われるまで一切ジーサード達にコンタクトされていない。つまり全て奇襲だ」

 

カボチャ頭(ワトソン)が補足する。

 

「彼らは卑怯な手を恥だと思っていないみたいだ。勝てばいいという思考の持ち主らしい」

 

自分のことを棚に上げるワトソン。

 

「どうする。ジーサードとジーフォースは今別々に動いている。お前達には関係ないかもしれないが、銀華も拉致されたままだ。()るか?」

 

さっそく、俺が核心に迫ると、

ん?

何故か目をみんな逸らすぞ。メーヤまで。

一体どうしたんだ?

 

「仲間をやられ、北条の姫を盗られて焦る気持ちはわかるがの。あまり儂を失望させるでない。では、遠山の。おぬし勝てるのか?」

 

玉藻が人外特有の超越的な光を携えた目をこちらに向けてきた。

 

「ジーフォースには勝った。ジーサードにも勝てるはずだ」

「お主が勝てるとしてもそれはお主とジーサードが一騎打ちした場合じゃ。さきほどワトソンから聞いたが……バスカービルの娘たちはジーフォースに手も足も出なかったのじゃろ?それに奴らには他の仲間がいることもわかっておる。ジーフォースやその仲間を掻い潜りどうやって一騎打ちをするのか申してみよ」

 

具体案を求める玉藻に俺はくちごもる。

 

「それはその…お前らが協力してくれれば……」

「遠山の。掟を忘れるでない。『戦役』ではいつ何時、誰が誰に挑戦することも許される。奴らの手口は別に間違っておらんのじゃ」

「じゃあ戦うなってかのかよ。銀華は拉致されたままで、仲間が闇討ちされたんだぞ」

「闇討ち?これは戦ぞ。それがなんじゃ」

「何…ッ?」

「戦とは元来そういうモノじゃ。フェアプレーのスポーツとは違う。それに北条の姫をお主が盗られたからといっても『師団』の不利益にはなりえん。何せ北条は『師団』ではなく『中立』なのじゃから。眷属ならまだしも中立のジーサードならば、すぐにどうこういうことにならん。だから師団の問題ではなく、お主の問題じゃ」

 

ぐぬぬ…

小学生みたいな姿の玉藻に論破される。

 

「遠山の。ヤツらは使者兼人質としてジーフォースを置いていった。北条と入れ替わる形でな」

「だがアイツらは敵だ。野放しにしていいのかよ?」

「敵?ではジーフォースは今、敵意を剥き出しにしておるかの?ヤツは甲冑を脱いだというではないか。ヤツらは今、師団に敵対しておらぬ。交渉の余地を残しておるのじゃ。それをみすみす、こちらから台無しにしてはならぬ」

「それは…まあそうかもしれないが…」

「ヤツらは『科学』を御する。得体がしれん存在じゃ」

 

お前の方が得体の知れん存在だと喉元まで声が出かかるが俺は飲み込む。

 

「科学の使徒とは儂らは相性が悪いのじゃ」

 

玉藻がいうには、魔術は科学と相性が悪いのに加え、どうやら超能力を邪魔する璃璃色金粒子も濃いらしく今戦えば全滅しかねない状況らしい。

 

「じゃあどうするんだよ玉藻」

「取り込む」

「は?」

「まずはジーフォース、そしてジーサードを『師団』に取り込むのじゃ」

「何だって…?」

「北条のにお主がやっていたようにヤツらを仲間に引き込む」

「ば、バカ言うな。あいつらをどうやって仲間にするってんだ」

「取り込む方法は対話だけではない。そのために金銀財宝、権力、異性、ありとあらゆる手が使われてきた。お主が北条の姫にしかけていたのはその中の異性じゃ」

「トオヤマ。それで何だが」

 

玉藻とずっと喋っていた俺だがワトソンが急に会話に参加してきた。

 

「なんだよ」

「そのえっとだね……ジーフォースという女は…昨日の車でも聞いてるこっちが恥ずかしくなるぐらい……君と会えて嬉しくて仕方ないと語っていたんだ。つまり、キミに気を許している雰囲気がある」

「だから…なんだ?」

 

なんか嫌な予感がする。

 

「ボクが言いたいのは……そのつまり………ロメオだ」

「ロメオッ!?」

 

ロメオとは男版ハニートラップのことであり、銀華にも仕掛けたこともある。

しかし俺のロメオは、ヒステリアモードを持つ銀華にしかおそらく効かなく、他の女性にやる方法知らないしもやる気も一切起きない。

というか、他の女にロメオ仕掛けたら銀華が怖すぎる。

 

「おいカボチャ頭。ふざけるな。バスカービルはジーフォースに襲われた直接の被害者だぞ。それでなくても俺には銀華が」

「じゃあ他に手はあるのかい?ボクらはそれぐらいしか打つ手がないんだ。それにキミはジーフォースに勝っているし、何よりキミにはロメオでイ・ウーを崩壊させた実績も有る」

 

紅華が俺に惚れたことでイ・ウーの崩壊を招いたということを言ってくるワトソン。

いやまあ…そうなんだけどさ。

 

「では遠山の。任せたぞ」

「では、って何がではだよ。俺に何をしろってんだよ!」

「ジーフォースと仲睦まじくすれば良い。北条の姫で経験があるのじゃし、やりやすいじゃろ。師団の興亡この一作戦にあり、奮励努力するのじゃ」

「頑張れ遠山。後で詳しく報告するのだぞ」

「トオヤマ、あとは任せた。ボクはアリアたちを看護する」

 

畳み掛けるかのように玉藻、ジャンヌ、ワトソンが小芝居っぽい演技をするのを見るに、

こ、こいつら…!

俺がくる前に大体の打ち合わせを終えてやがったな。

はなっからジーフォースを俺に押し付けるつもりだったらしいぞ。

心底遅刻したことが悔やまれるぜ。

遅刻は本当に良くない。何せアリアに出会ってこんな日々を送ることになったのもバスに遅刻したことから始まったんだからな。




原作のキンちゃんのロメオ、世界で一番強い技の可能性がある
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