哿と婚約者   作:ホーラ

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銀華の話をコツコツ出したいから話が短くなってしまう。


第23話:恋愛は合法

 

私はロカさんの運転する真っ赤なフェラーリに乗せられて空き地島を後にした。

 

「思ったよりすんなり引いたわね、あんた」

 

フェラーリがただのカタギの車じゃないのもあって近くの車が避けるのもあるが、それでも日本に来たことないだろうにすいすいと首都高を走るロカさんがそんな声をかけてくる。

 

「意外だった?」

「そりゃもう。考えが読み取れないのなんて初めて。それどうやってるの?」

 

ロカさんはおそらく超能力研究課(SSR)の時任先輩みたいに思考を読み取る能力があるのだろう。先輩と違って遠距離でもできるのは、便利でも、不便でもありそうだけど。

 

「企業秘密……って言いたいところだけど、ロカさんはカワイイし教えてあげようかな〜」

 

と私に似てる銀髪の先を撫でながらいうと、びっくりしたような顔を一瞬した後に顔を赤くした。

ふふ、思考が読み取れるだけに、こういうちょっとした不意打ちにも弱いみたいだね。

 

「お世辞はいいから…」

「私の推理ではロカさんは近くの人の考えが読み取れるんでしょ?」

「そうよ。あんた━━銀華はサードの女、つまりもうほぼ私たちの仲間だから教えてあげる。あたしはモスクワ総合大学の超心理学アカデミー出身で相手の考えが読める。12歳の頃にロシア連邦保安庁━━旧KGBの命令でサードと戦った」

 

12歳で大学ってことは飛び級だ。ロカさんは賢いんだな。

……というか、私はサードの女ではない。

 

「12歳…ってロカさん今何歳?」

「14歳、ちなみに銀華…っていうかクレハ・イステルもあたしのターゲットだったけど、見つからなかったからサードに回されたわけ」

 

私が銀華だったから見つからなかったわけで、もし昔みたいに紅華で暴れ回ってたら殺し屋としてロカさんが私のところに来てたわけか。世間は狭い。

 

「あたしのこと話したんだから、早く教えなさいよ」

「簡単なことだよ、ロカさん。私は常に多数のことを考えてる。例えば、こうしてロカさんと何を話そうかと考えつつも、私が今どこに連れて行かれているか、このあとジーサードが何をしてくるか、みたいなことを常にいっぱい考えてるだけ。だからロカさんは私の考えの本質を読み取れない」

「そんなことで…?」

「今ロカさんは車を運転しながら、能力を使って、私と喋っているでしょ。私はそのマルチタスクの思考の能力が桁違いに高いだけ」

「………さすがシャーロック・ホームズの娘なだけあるわね」

「ありがと」

 

ロカさんはジーサード軍団の超能力担当ってところだろう。

思考が読まれないとはいえ、他にも技があるに違いない。超偵用の手錠をした状態じゃ逃げることは難しそうだね。腕力じゃジーサードには勝てないし。

 

あと……ロカさんは私のことをすでにジーサードの女認識してるけど、私はそんなに軽い女じゃありませんよ!

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

自称も公称も共に妹となってしまった『遠山かなめ』を連れて、男子寮に帰ると……

 

「…?」

 

散らかっていたはずの自室が、片付いている。

いや片付きすぎている。

まず下駄箱の靴が俺の靴以外なくなっている。

リビングや小部屋からも俺以外の荷物が全て消えている。

かつてアリアが押しかけてくる前の様子に戻ったみたいだ。

 

「おい、その……かなめ。お前、俺の部屋に不法侵入したみたいなことを言っていたが…」

「ここは遠山家。遠山()()()が入るのは普通侵入です」

 

よほど『かなめ』の名が気に入ったらしく(さっきまで泣いて喜んでいた)、わざわざ強調して言ってくる。

 

「何か色々物がなくなってるんだが…」

「あいつらのニオイのするものは全部箱詰めして病院に送りつけました」

「また、火に油を注ぐようなマネをしやがって…」

「もうすぐつくんじゃないかな?あのピンク頭共、開けてびっくりしてるんだろうねー。ふふ。考えるだけで心躍っちゃう」

 

ダークな顔でそんなことを言い、根暗な笑いを浮かべるかなめ。

なんちゅう陰湿さだ。アリアをイビる白雪を超えている。

これは年長者として注意しなくちゃいけないだろう。

 

「かなめ、お前なぁ」

 

俺が強くいうとかなめは「?」という感じで全く罪がない顔で見上げてきた。

 

「アリアたちが気に食わないのがわかったが、やり方が汚いぞ。奇襲したり、不在時を狙ったり」

「え……なんで怒ってるの?」

「成り行きとはいえ、遠山を名乗るなら卑怯なことは金輪際やめろ」

 

遠山家には死んだフリをして奇襲みたいな卑怯な技がいっぱいあることをスルーして、問答無用って感じで言うと、かなめはコクリ。

割と素直に頷いた。

 

「わ、わかったよ。じゃあ卑怯っていうことを勉強してもう二度としないようにする」

 

俺に嫌われることをひどく恐れているようで、小さく震えてすらいる。

 

「で、でもお兄ちゃんにはその代わり私から注意があるよ!」

 

気を取り直してキッ!と俺を意思の強そうな目で見てくるかなめは

 

「お兄ちゃんは女の趣味が悪すぎます!チビ、カマトト、ブリッコ、ダンマリ、それに……二重人格!あんなイロモノばっかり飼ってるなんて!」

 

プリプリ怒るかなめに俺は少したじろぐ。

5人の蔑称で全員思いついてしまう俺も俺だが、一つ訂正しよう。

銀華は銀華/紅華・通常/ヒス/ベルセの2×3、六重人格だ。もっとひどい。

 

「あんなのがお兄ちゃんの彼女とかありえないから。この辺の女は全部ダメ」

「アリアたちはまあいいが…銀華を悪くいうのは許さんぞ」

「くっ……お兄ちゃんはあの二重人格のどこが好きなの!」

 

そう真正面から聞かれると確かに……

俺銀華のどこが好きなんだ?

この世の美を集めたような顔?

世界最高の頭脳?

意外と子供っぽい性格?

ヒステリアモードを理解してくれる唯一の異性なところ?

 

「たぶん……全部」

 

俺がそう答えると、がーん。かなめはこの世が終わるかのような絶望した顔になったが…

 

「で、でもあいつは今、サードのものだもん!あたしがあの二重人格の代わりになる!」

 

すぐに対抗心の炎を燃やす顔になった。

……ていうか、今こいつすごいこと言わなかったか?

 

「サードのもの…?」

「そう、サードの目的のためにあの女は必要なの。だからサードは今、あの女とゲームをしている。サードが勝ったらサードの女になるっていう条件で。まあサードが勝つのは時間の問題だけどね」

 

銀華は恐らく、アリア達を助けるために捕まってしまったのだろう。

魔術は科学と相性が悪いらしいから、自力で逃げることはできなくてジーサードと交渉したって感じか。

 

「ゲームの内容とはなんだ?」

「あたしも実は知らない。あの女が苦し紛れに言い出したらしいよ」

 

なら安心。

銀華が言い出したゲームなら銀華が必勝であるからだ。

未来が見える銀華に敗北はありえない。

…………と思ったけど、あいつ未来見えるくせにゲーム下手だった。

銀華さんその作戦本当に大丈夫なんですか…?

 

「もし、お兄ちゃんと一緒にいる女がいたら滅多刺しにして殺してやるから」

「お、おい。殺すとか気安く言うな。俺の側にいたいなら何があっても他人への乱暴は禁止だ。いいな?」

「じゃあ、お兄ちゃん代わりに約束して。あたし以外の女子のことは触ったり抱きしめたりしないって、約束して」

 

銀華がいない間にそんなことしたら完全な浮気だ。バレたら死ぬし。

 

「誰がするか、そんなこと」

「じゃあ約束して。誓って。あたし以外の女には触れないって」

「ああ誓ってやるよ」

 

銀華が帰ってきたら、かなめと揉めそうだがそこは銀華になんとかしてもらおう。

と考えながら、かなめを見ていると…

 

「……ぁ……」

 

かなめは至近距離から自分を見る眼をマジマジ見上げて、

かぁ…

と顔を赤くした。

 

「お兄ちゃん」

「今度はなんだよ」

「か、かっこいい」

「は?」

「かっこいい。そういう鋭い顔。胸がキュっとなっちゃう。それに、二人っきりだと思ったら…なんかヒスれちゃうかも。どうだろう?いけるのかな」

「何を…」

「やばい」

「何がだよ」

「本気で好き」

「お、おい…」

「好き好き大好き」

 

こ、これは……

大ピンチだ。

この感じ、紅華が俺を見るだけで軽くヒステリアモードになっていた時によく似ている。

かなめではなぜかヒステリアモードになりにくいとはいえ、銀華とは別の子のヒステリアモードに耐えれるかはわからんぞ。

 

「あ、あのなあ。そもそも矛盾してるぞ。お前はさっきから。俺は認めんが、お前は俺の妹を自称してるんだろ?」

「自称じゃなくて本物の妹なんだよ」

 

かなめはそこだけは譲れないらしく、力強く返してくる。

 

「そういうんなら好きとかいうのはおかしいだろ」

「え、なんで?」

「妹が兄を好きとかどこの世界だよ」

「????」

 

俺の反論が、かなめは心の底から理解できないようなので

 

「だから、血が繋がったもの同士だって主張するなら問題だろって話だ」

 

俺は仕方なく、恥ずかしい一般常識を年下の女に話すハメになる。なんでこんなこと言わなくちゃならんのや。

 

「血の繋がりなんて些細な問題だよ!」

「根本的な問題だろ!世界に兄妹で結婚できる国がどこにある!」

「スウェーデンだったら、片親が違えば結婚できますよーだ。それに日本でも結婚は違法だけど恋愛は合法です!」

「この…」

「それに二重人格だってあたし達と血が近いじゃん」

「…………」

こいつらは知らんが銀華と俺は実際「はとこ」である。こいつよく調べてやがるな。

逆に言いくるめられてしまった俺はぐぬぬぬと、言葉が詰まっていると、

 

「お兄ちゃんっ!好き好き!大好き!」

 

かなめはごろにゃーんって感じで猫みたいに甘えてきた。

このトランス状態まで銀華にそっくりだ。

もしかして俺の体からヒステリアモードを持つものにしか反応しないマタタビでてるのか?

 

「おい、抱きつくな。大体そもそも、俺のどこが好きなんだよ」

「あのね、あのね、いっぱいあるけど、まずは見た目…とか?」

 

ま、まずい。

ネクラと言われている俺の見た目が好きっていうやつは2/2、100%の確率でイカれてることが俺調べでわかっている(名探偵と巫女さん)。

しかもそいつらの特徴として……

 

「あとは、優しいところとか。厳しいフリして実際は優しいし」

「…………」

 

礼賛、賞賛、絶賛の嵐。

今までの例に漏れず、その後にも延々と『お兄ちゃんのどこが好きか』を語り続けるかなめ。

かなめの世界から想いが溢れて止まらないらしい。

2/2が3/3になっちゃったよ、イカれてるやつ。

 




かなめ卑怯なことするなって言われた後に、AAでめっちゃ卑怯なことしてておもろい
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