真面目な彼女の家に居候することになった   作:グリーンやまこう

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 さぁーて、二人の仲は進展するのかな?


13話 真面目な彼女に恋心を抱いた

 前回のあらすじ。自分の気持ちを自覚しないまま、和希が海未にプロポーズまがいの事を言いました。おしまい。

 

 

 

 

☆ ★ ☆

 

 

 

 

(やばいやばいやばいやばい!!)

 

 俺は海未を胸に抱きながら、ひたすら焦っていた。

 どうして焦っているのかって? 当たり前じゃねぇか! 

 俺は、誰が聞いてもプロポーズにしか思えないような言葉を口走ったんだぞ!? これを焦らずにしていつ焦るというんだ? 

 

 と、取り敢えず、今の言葉を早く撤回しないと……。でも、あんな言葉を口走っておいて、すぐに撤回とか俺ってなかなか酷いやつじゃね? とんだクソ野郎じゃないか! まともな思考すら回らずに俺がテンパっていると、

 

「和希……」

「ひゃ、ひゃい!」

 

 胸の中にいる海未が、小さな声で俺を呼ぶ。びっくりしすぎて声が裏がってしまった。

 

「ど、どうした?」

「……いいんですか?」

「えっ?」

 

 ま、まさか、俺のプロポーズを本気にした!? こ、これは非常にまずい……。

 冷や汗をダラダラと流す俺に、抱き締められていた海未が顔を上げる。

 

 

 

「いいんですか? これからもずっと一緒にいて? 隣にいてもいいんですか?」

 

 

 

「…………」

 

 

 

 あ、あれっ? 俺は海未の言葉にしばしの間、固まってしまう。

 どう考えても、今の反応はプロポーズとか、そういうことを何も考えていないよな? もうちょっと、話を聞いてみよう。

 

 

 

「……私、和希と離れるのなんて、本当は絶対に嫌です。ずっと一緒に居たいです」

 

 

 

「………………」

 

 

 

 そ、その事を言ってたのか。純粋すぎる彼女の言葉に、俺は顔を真っ赤にして俯くしかない。

 

(うわぁ……一人で勝手にプロポーズとか考えてた俺、すげぇ恥ずかしいやつじゃん!!)

 

 その場をゴロゴロと転げまわりたい衝動に襲われる。そういえば、海未って恋愛とかにものすごく疎いやつだった。

 そんな海未が、今の言葉をプロポーズと思うのにはきっと無理があるだろう。

 

(なんだよ。じゃあ海未は、ただ純粋に俺と離れるのが嫌で、一緒に居れることが嬉しくて、泣いたり、笑ったりしてたって事なのか?)

 

 もちろん、自分自身に責任を感じて流していた涙もあるはずだ。でも、俺と一緒に居たいからこそ流した涙も、きっとあるはずで……。

 

 

 

(っ!?///)

 

 

 

 俺の為に泣いてくれたのだと思った瞬間、とても嬉しくなった。そして、今、胸の中にいる海未のことを、ものすごく可愛いと感じてしまった。

 

 いや、元々美人で可愛んだけど、何というか、芸能人を見て思う可愛さとはまた違う。えっと、この可愛さはまるで、

 

 

 

(本当に、好きになった人だけにしか感じない可愛さだ)

 

 

 

 誰かから聞いたことがある。

 本当に好きになった人は、どんな芸能人よりも、どんなモデルよりも、可愛く見えるものだと。

 

 今の海未はまさにその通りだった。……あれ、好き?

 

 

 

(えっ……えぇっ!? お、俺、今好きだって……)

 

 

 

 そんな訳がない。今のは気の迷いだ。自分にそう言い聞かせ、もう一度海未の顔を確認する。

 

 

 

「? どうしたんですか?」

 

 

 

 俺の視線を感じた海未が、可愛く首をかしげる。

 涙で濡れた瞳。少しだけ赤く、上気した頬。全てが彼女の魅力を引き出す、スパイスのように感じられた。

 

 これ以上見ていられなくなった俺は、急いで視線を逸らす。

 

 

 

(な、なんだよ……なんだよ。今、海未の事を誰よりも可愛いって、そう思ったんだけど!?)

 

 

 

 周りにキラキラと演出がなされているのでは? と疑うほど、彼女は瞳の中で魅力的に映った。世界一、可愛いと思った。

 

 そして、海未の事を……誰よりも好きだと思った。

 

(んぉおおおおおおお!?)

 

 心の中だけで叫び声をあげる。もう、何が何だかわからなかった。

 

 一つだけ分かるのは、海未の事を好きになってしまったという事実だけ。まぁ、これが全ての元凶なんだけど……。

 

 そこで海未が若干、不満げな顔をしていることに気付く。不満げな顔ですら可愛く映ってしまうというのは、完全に恋の病なのだろう。

 

 

 

「ど、どど、どうしたんだよ?」

 

 

 

「ねぇ、和希。……私は、和希と一緒に居てもいいんですよね?」

 

 

 

 不安げな声を上げ、俺の胸に顔を埋めてくる海未。

 

 思わず、叫び声をあげそうになった。

 なんだ、今の!? 本当に、なんだ今の!? 俺の背中に腕をまわして、胸に顔を埋めてきて……悶え苦しむほどに可愛かった。

 彼女の体温がダイレクトに伝わってくる。後、どことは言わないけど、やわらかい彼女の一部分も……。

 やっぱり、小さくない。むしろ丁度いい……何を考えてるんだ俺は。

 

「も、もちろんだ。これからも、俺と海未は、ずっと一緒だ」

 

 取り敢えず、彼女を不安にさせておくわけにもいかないので、途切れ途切れに言葉を絞り出す。

 海未の事を好きだと自覚してしまったため、顔を見るのも恥ずかしい。言葉を口にするだけで身体が熱くなり、身悶えしたくなる。

 しかし、俺の気持ちなんて知る由もない海未は、ずっと一緒という言葉に目を輝かせ、

 

 

 

「はいっ! これからもずっと、私の傍に居てください。約束ですよ?」

 

 

 

 幸せそうな表情で微笑むのだった。

 

 その笑顔に、信じられないくらい鼓動が早くなる。多分、今までで一番鼓動が早いと思う。

 やばい、海未ってこんなに可愛かったっけ? 最後の「約束ですよ?」とか可愛すぎだろ……。

 

 彼女から目を逸らすことができない。しばらく、お互い無言で見つめ合う。……というよりは、一方的に俺が海未の事を見つめていた。

 

 

 

「か、和希。そんなに見つめられると、その、恥ずかしいです……」

 

 

 

 真っ赤な顔で目を逸らした海未を見て、俺もようやく現実世界へと戻ってくる。

 

 

 

「それで、私から抱き付いておいてなんなんですけど……少し、苦しいです」

 

 

 

「へっ?」

 

 気付くと俺は、自分から海未の身体を抱き締めていたらしい。完全に無意識だった。

 

 海未も抱き付いているのだが、俺の力に比べればはるかに弱い。きっと、俺よりもずっと前に、我に返っていたのだろう。

 

「わ、悪いっ!!」

 

 すぐに抱き締めている腕を離し、彼女と一定の距離を取る。

 しかし、腕の中には海未の温もりがしっかりと残っていて……。

 

 

 

「…………」

「…………」

 

 

 

 お互い、真っ赤な顔をして俯く。

 

 海未はどうだか知らないけど、俺は彼女の事を完璧に好きだと自覚してしまったのだ。まともに話せないのも無理はない……と思ってほしい。

 唯一の救いは、プロポーズまがいの言葉を、海未自身が自覚していないということだろう。これで自覚していたら目も当てられない。

 

「……そ、それじゃあ私は一度部屋に戻りますね」

「そ、そうだな。着がえもしてないし、夕食もまだだから」

「は、はい。じゃあ、和希は先にリビングの方に行っていてください。私も着替えてから向かいます」

 

 ギクシャクしながら部屋を出ていく海未。どうでもいいけど、右手と右足が同時に動いてたな。

 そんな彼女を見送った後、俺は一足先にリビングへ。リビングの机には既に、睦未さんが料理を並べて待っているところだった。

 

「……話は済みましたか?」

「まぁ、一応」

「その様子だと、うまくいったみたいですね」

「……ま、まぁ、一応」

 

 そこで鋭い睦未さんの瞳がキラリと光る。

 

「和希さん、何かあったんですか?」

「……何もないです」

「一瞬の沈黙、とても怪しいですね。まさか、遂に海未と付き合うことになったのですか!?」

「遂にって何ですか!? 俺たちは、『まだ』、そんなことになっていません!」

「まだ?」

「あっ!」

 

 やばい。海未の事を好きになった影響で、恋人になりたいという欲望を隠しきれなかった。

 慌てて口を押さえるものの、時すでに遅し。睦未さんがニヤニヤと近寄ってくる。

 大人とは思えない、とても悪い顔。ゲスの極みである。

 

「もしかして和希さん。海未さんの事を本気で好きになっちゃいましたか?」

「は、はぁっ!? べ、別に好きになんてなっちゃいませんよ。いつも通りです、いつも通り!!」

「海未さんの事を可愛く思うのもいつも通りですか?」

「それに関しては、今日が一番可愛いと……って、ちがーう!!」

「うふふ……今日が一番可愛い、ですか」

 

 この野郎。図ったな……。

 

「隠さなくたっていいんですよ。自分の心には素直になりましょう! 海未さんのことが、とっても可愛く感じるんですよね?」

 

 うわぁ、この人すごく楽しそうだよ……。そのくせ、妙に鋭いとかやめてほしい。

 睦未さんに翻弄され、どんどんとボロを出していく俺。

 

 

 

「これは遂にきましたね。海未さんが和希さんの事を好きなのは知ってましたけど……やっとです。やっと、和希さんも海未さんの事を……」

 

 

 

「何を一人でぶつぶつと言っているんですか?」

「いえ、なんでもありませんよ。それよりも、海未さんにいつ告白するんですか?」

 

 脳裏に先ほどの言葉がよぎる。一瞬で顔が熱くなった。

 その反応を見過ごしてくれるほど、睦未さんは甘くない。

 

「そ、その反応……まさか、もう告白済みですか!? 告白、しちゃったんですか!?」

「お前、ほんとうるせぇよ!!」

 

 あまりのウザさに、勢い余ってお前とか言ってしまった。

 しかし、今回ばかりは許してほしい。目の前にいる、男子中学生みたいな反応をする睦未さんが全て悪いのである。

 

「和希さん、別に教えてくれたっていいじゃないですか。ほらほら~」

「それ以上言ったら、頭引っ叩くぞ!?」

 

 もう、居候させてもらっている相手とは思えないくらい、全力でツッコむ俺だった。

 

 

 

 

☆ ★ ☆

 

 

 

 

「…………」

 

 和希の部屋から一度部屋に戻った私は、部屋着に着がえ……る前に、ベッドへ。ベッドの上で足をバタバタさせたり、ゴロゴロしたり、悶えるだけ悶えた後、枕を膝に抱え「うぅ……」と唸っていた。

 

 心臓がドクンドクンと早いリズムを刻んでいる。だけど、今のドキドキは凄く心地がいい。

 

「和希、すごく優しかったです……」

 

 彼の過去を聞き終えた時、私の心は絶望感で埋め尽くされていた。

 なにより辛かったのは、自分が何も知らないうちに大好きな人を傷つけてしまっていたということ。

 和希が不良化したのにはわけがあって……それなのに、私は和希の大切なものを踏みにじってしまった。

 だからもう私は、和希の傍には居られない。一緒に話すこともできない。本気でそう思った。

 

 そして、自分はきっと和希に嫌われている。和希に好かれることは絶対にありえない。

 それが一番悲しかった。涙が止まらなかった。だけど和希はどこまでも優しくて……。

 

「少し恥ずかしかったですけど、抱き締めてくれてとても嬉しかったです」

 

 今でも、抱き締められた時の感触が残っている。お化け屋敷でも抱き締められたのだが、あんなのとは比べ物にならない。そもそも、比べちゃいけない。

 

 和希の胸の中は温かくて、和希の匂いがして、すごく安心できた。

 

(好きな人に抱き締められるのが、こんなにいいものだなんて思わなかったです……)

 

 思い出すだけでも顔が熱くなり、枕に顔を埋める。だけど、嫌じゃないから困る。

 

 あの時は恥ずかしさがピークに達して、自分から苦しいと言ってしまったが、本当はもっと和希に抱き付いていたかった。大好きな人に、くっついていたかった。

 

 そこまで考えた私は恥ずかしくなって、再びベッドの上をゴロゴロと転がる。

 

(うぅ……ずっと抱き付いていたいだなんて、私は何時からこんなに破廉恥な人になってしまったのでしょうか?)

 

 だけど、和希から私の身体を抱き締めてきてくれた時は、すごく嬉しくて……。

 ひとしきりニマニマした後、三度ベッドの上をゴロゴロと転がった。

 

 そして、あまりお母様と和希を待たせるわけにはいかないと思い、立ち上がって着がえを済ませる。

 

(そういえば、和希が最初に私の事を抱き締めてきた時、何かもの凄いことを言われた気がするんですけど……)

 

 あの時は、彼の言葉をしっかり理解する余裕もなかったですから。

 私は記憶を遡り、抱き締められた時の事を思い出す。

 

 

 

『海未、お前はずっと俺の隣にいろ!!』

 

 

 

「………………」

 

 

 

 ぼふんっ!!←海未の頭から湯気が出た音。

 

 

 

(あ、ああ、あの言葉は、ま、まさか……ぷ、プロポーズ!? はわわわわっ!!)

 

 い、いやいや、あの和希に限ってそんな事はあり得ません。落ち着くのです、園田海未! 

 きっとこの言葉も、私を励ますために言ってくれたんだと思います。そうに違いありません! 

 

 ……でも、もしもです。この言葉がプロポーズじゃないにしても、和希が私の事を女の子として好きになってくれて、恋人になりたくて言ってくれた言葉だったら?

 

 

 

『海未、好きだ! 俺と付き合ってくれ!』

 

 

 

(◎△$♪×¥●&%#!?///)←色々と想像してしまい、声にならない叫び声をあげる海未。

 

 

 

 私は両手で頬を押さえる。抱き締められた時よりも熱くなっています……。

 

(だから、もう少し冷静になりなさい、園田海未!! 物事を楽観的に考えすぎです! 和希は元々、私の事を嫌っていたじゃないですか! 観覧車の時も、友達として好きと言っていましたし……)

 

 そう思ったら、少し頬の熱も引いてきた。

 

 ふぅ、やっぱり私の考えすぎでしたね。あのまま、和希の元に行っていたら大変なことになっていました。

 最悪、お母様にもいじられたかもしれません……本当に良かったです。そして私は自分の部屋を後にし、廊下を歩いていく。

 

(だけど、最後の方の和希はやけに顔が赤くて、ぽーっと私を見ていた気がしますね……)

 

 あれは、たまに和希の事を無意識に見てしまう、私の視線とよく似ていた。それに和希は、私の事を無意識に抱き締めたりしてきました。後、私が苦しいというまでずっと……。

 

 ………………。

 

 

 

(……あ、あれっ? 和希ってやっぱり私のことを!?)

 

 

 

 思考が再び元の場所に戻ってくる。もう何度目だろうか? 

 

 そんなこと、あるはずがない。あるわけないのに……どうして自分本位にばかり考えてしまうのでしょう? 

 都合のいいことだってわかってる。まだ、和希に何も聞いていないというのに……。

 

 でも少しだけ、ほんの僅かだけ期待してしまっている自分がいた。思わず、廊下のど真ん中で頭を抱えてしまう。すると、

 

 

 

「な、何やってるんだ、海未?」

 

 

 

 頭上からの声に顔を上げると、今一番会いたくなかった人が私の事を見下ろしていた。

 

 

 

「か、和希!?」

「お、おぅ、その和希だけど……どうしたんだ? なんか、ニヤニヤしたり、難しい顔になったりと、かなり忙しそうだったけど?」

 

 和希が、変な人を見る様な視線を私に向けている。でも今はどんな視線であれ、見つめられるだけでどうにかなりそうだった。

 

「ど、どうしてこんなところにいるんですか!?」

「いや、お前が来るまで待ってたんだけど、いつまでたっても来ないから、心配になって見に来たんだよ」

 

 頬をかきながら理由を伝える和希。心配してくれたのは凄く嬉しいです。

 

 でも、彼の頬は少しだけ赤く染まり、私とは決して視線を合わせようとしない。やっぱり和希がいつもと違う。

 

 

 

『海未、お前はずっと俺の隣にいろ!!』

 

 

 

 頭の中にまたしても和希の言葉が出てきて、私の心をかき乱す。

 

 

 

「お、おいっ、海未。大丈夫か?」

 

 

 

 挙動のおかしい私の元へ和希が心配そうに近寄ってくる。

 

 さっきも言った通り、心配してくれるのは本当に嬉しい。私の事をちゃんと見てくれていると、すごく幸せに感じる。

 しかし、今はそれが完全に逆効果だった。

 

 

 

「海未?」

 

 

 

 整った和希の顔が目の前にある。少しでも動いたら……触れてしまいそうだ。

 心臓が狂ったように早鐘をうっている。

 

 

 

「か、かずき、近いです……」

 

 

 

 絞り出すようにして声を出す。

 

 

 

「えっ? あっ! わ、悪い……」

 

 

 

 和希もそこで自分が、かなり顔を近づけていたことに気づいたらしい。飛びのく様にして私と距離を取った。

 そこからしばらく、私たちの間には痛いほどの沈黙が流れる。しかし、その沈黙を破ったのは、意外なことに私だった。

 

「あの、和希!」

「は、はいっ! なんでしょうか?」

 

 何度も何度も深呼吸を繰り返す。そして私は口を開いた。

 

 

 

「さ、先ほどの言葉なんですけど……」

「っ!?」

 

 

 

 これだけで全てを察したらしい和希の顔が、今まで見たことないくらい赤く染まる。そんな和希の反応を見た私の顔もきっと、真っ赤になっているだろう。

 

「い、いや、さっきのあれは、何というか、言葉のあやというか……」

 

 弁明の声が聞こえてくるものの、内容が全く入ってこない。

 

 

 

「海未が勘違いをしたのなら謝るけど、さっきのは本当に――」

「きょ……」

「えっ? きょ?」

 

 

 

「……きょ、今日の晩御飯はいらないと、お母様に行っておいてください!! 私は部屋に戻りますぅうううう!!」

 

 

 

「あっ、おいっ! 海未!!」

 

 

 

 和希の制止を振り切って私は自室に戻る。そして、ベッドの中に飛び込んだ。

 様々なことが頭の中を埋め尽くしているが、取り合えずの心配事は一つだけ。

 

(明日から私は、どんな顔をして和希と会えばいいのでしょうか?)

 

 それがある意味、一番の問題だった。

 

 

 

 

☆ ★ ☆

 

 

 

 

 その場に残された和希はしばらく放心状態で立ち尽くしていたのだが、

 

 

 

「あぁ~~~~~~~、もう!」

 

 

 

 大きなため息とともに、頭を抱えて俯く。

 

 最悪だった。海未のことだから、きっと意味なんて深く考えるわけないと思っていたのに……。本当に迂闊だった。

 あの質問は完全に、意味を分かったうえで聞いてきたものだろう。というか、聞いてきた時の表情とか動きとかを見てれば全部わかる。

 

「これから、どんな顔して海未と会えばいいんだよ……」

 

 俺は平気でも(いや、まったく平気じゃないんだけど)、海未が大丈夫な気がしない。これはあんなプロポーズまがいのことを言った自分に責任があるんだけど、一体どうすれば……。

 

 いや、答えなんてもう決まっている。

 

 

 

「告白、するしかないんだよな」

 

 

 

 本当は自分の気持ちを一度整理したうえで、告白する予定だった。そのため、告白するにしてももう少し後になる予定だったのだ。

 しかし、こうなってしまった以上、のんびりしてもいられない。タイミングが遅れれば遅れるほど、俺と海未の仲はもっとギクシャクしてしまうだろう。

 

 ただ、問題は告白のタイミングで……、

 

「最適なタイミングって言ったら……文化祭か」

 

 俺たちの学校は来週から文化祭の準備期間に突入し、再来週に本番を迎えるという日程になっている。告白するには、もってこいのイベントだろう。

 そこまで海未が平静を保っていられるというのは不確実だが、ここ以外によい場面もないので仕方がない。

 俺は覚悟を決めると言った意味で頬をパンッと叩く。

 

 

 

「よしっ。……取り敢えず、穂乃果とことりに相談しよう」

 

 

 

 気合を入れても心配なものは心配なので、後日相談にのってもらおう。だって、告白とか人生で初めてだし……。

 

 これでことりから、『えっ、和希君、海未ちゃんの事好きなの? ……脈がなさすぎるから、やめておけば?』と笑顔で言われたら、再起不能になりそうだ。

 そんな心配をしつつ、俺は食卓へ戻る。

 

「あらっ? 海未さんはどうしたんですか?」

「あっ……」

 

 その後、海未がリビングに現れない理由を睦未さんに、根掘り葉掘り聞かれたのだった。

 







 読了ありがとうございます。今回は7500文字くらいですから、私の作品にしては結構少ないですね(もう、基準がおかしくなっている)。
 さて最後に、いつも感想やお気に入り、評価をありがとうございます。励みにして頑張っております。次回から文化祭編です。最後まで頑張りたいと思います。
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