真面目な彼女の家に居候することになった 作:グリーンやまこう
「んんっ……?」
目を開けると、いつもとは違う天井が俺の視界に飛び込んできた。一瞬戸惑うもののすぐにその理由を思い出し、朝からため息をつく。
(……そうか。俺、園田家に居候をすることになったんだ……)
何が楽しくて大嫌いな奴と同じ家で過ごさなくちゃならないんだよ。しかし、文句を言える立場でない事も自覚しているので、今の状況を受け入れるしかない。
(さて、そろそろ起きないと睦未さんに迷惑をかけるな)
布団から起き上がり大きく伸びをすると、関節がパキパキと小気味よい音をたてる。自分のベッド以外で寝たのは久しぶりだが、とてもよく眠れた。
ちなみに聞くところによると、園田の家は日本舞踊の家元らしい。どうりで家が今どき珍しいくらいの和風で大きいわけだよ。
昨日門構えを見て「本当にここなのか?」と、何度も確認してしまったからな。そして当たり前だが家の中も広く、風呂なんかも滅茶苦茶広くて感動してしまった。
いつもは風呂に入るのが面倒で、シャワーで済ませることが多い。しかし昨日の今日で、すっかり風呂好きになってしまいそうだ。旅館のような風呂に毎日入れるのなら、ある意味当然である。
園田家の風呂についてはこの辺にして、俺は朝食をとるためにリビングへ。
「おはようございます、睦未さん」
「おはようございます、和希さん」
ふんわりとした笑顔で迎えてくれたのは、もちろん睦未さん。断じて園田なんかではない。というか園田は俺に、笑顔を向けたことなんて一度もない。向けてくるのはいつも怒っている顔。もしくは、不機嫌そうな顔だけである。
それにしても、睦未さんは普段から和服を着ているんだな。流石、日本舞踊の家本である。
「朝食はできていますが、まずは顔を洗ってきてはどうですか? 寝ぐせも酷いですよ?」
「言われてみれば……。それじゃあ、先に顔を洗ってきます」
そう言って洗面所へと歩いていく。洗面所は風呂場に隣接しているのだが、ここもそれなりに広い。どのくらいかといえば、5人同時に朝の身支度を整えてもお釣りが返ってくるほどの広さ。
(昨日の時点ではどうなることかと思ったけど、男が一人暮らしをするよりはよっぽどましだな。至れり尽くせりの寮に下宿した気分だ)
この時の俺は少し油断していたらしい。
ここには俺と睦未さんだけでなく、もう一人住人がいることをすっかり失念していたのだ。
もう一人の住人に気付くことなく、俺は洗面所の扉をガラッと勢いよく横にスライドさせた。
「えっ?」
「……ん?」
洗面所にいた人物と目が合う。
ブラウンの瞳が大きく見開かれる。そこにいたのは園田だった。
さらに情報を追加しよう。彼女は……裸だった。下着も何もつけていない、生まれたままの姿。
(……はぁ)
恐らく風呂にでも入っていたのだろう。タオルを持つ園田の身体はほんのり桜色に染まり、髪からはお湯の雫がしたたり落ちている。
そして、なぜ俺がため息をついたのか……それはこの後の展開が容易に想像できてしまったからだ。
「あっ……うぅ……」
状況を理解し始めた園田の顔がどんどんと真っ赤に染まっていく。それもそのはずで、現在進行形で自身の裸を、しかも男である俺に見られているのだ。恥ずかしくないわけがない。
(これは言い訳しても無駄だろうな)
仕方がないので俺は……もっと彼女の身体を観察することにした。ここまできて、何も見ないという選択肢はあり得ない。存分に堪能させてもらおう。
きめが細かく、眩いくらいの白い肌。スラっと伸びた美脚。彼女の華奢な体には濡れた髪が張り付き、何とも言えない背徳感を醸し出す。
非常に不本意ではあるが、園田の身体は美しいと言わざるを得ないだろう。脚フェチの俺にとっては程よい肉付きの太ももなんてたまらない。
最後に、彼女の胸へ視線を移した。幸いなことに、彼女は恥ずかしさで隠すという行為を忘れているため、じっくりとその胸を堪能できる。そんなわけで俺は彼女の胸をこれでもかと凝視する。
(これは……少し評価を変えなきゃいけないな)
そう思った俺はゆっくりと顔を上げ、真っ赤になって狼狽えている彼女と視線を合わせた。
「なぁ、園田」
「っ!? な、何ですか?」
俺は大きく息を吸い、思っていたことを口に出す。
「貧乳とばかり思ってたけど、お前って意外と胸あるんだな。わりぃ、俺勘違いしてたよ」
ごめんごめんと、頭をかく俺。一方園田は俺の言葉にポカンと口を開けていた。しかし、それも一瞬のことで、
「…………」
タオルを身体にしっかり巻きなおすと、園田はゆらゆらとこちらに近づいてくる。
ここで逃げると余計に面倒だから、素直に罰を受けるとしよう。そうすれば遺恨を残すことなく……いや、遺恨は間違いなく残るな。この先3ヵ月は裸を見たことでネチネチ言われそうである。
(まぁ、それも仕方のないことか)
どうせ殴られるのなら早いほうがいい。そう覚悟を決めた俺は目を閉じる。
「私の裸を見るだなんて……あなたは最低です! 最低の人間です!! 見たもの全部忘れなさいっ!! この不埒ものぉおおおおおおお!!」
ボコッという鈍い音と共に、彼女の右ストレートが左頬にヒット。正直、ビンタだと思っていた俺の体が情けなく傾く。
(ここでグーとは、流石園田。恐れ入った。そして、俺はお前の身体を忘れたりはしない)
想像の斜め上を行くその姿。そこに痺れない、憧れない。ちなみに俺は殴られた後、10分程度気を失っていた。
☆ ★ ☆
「ったく、グーで殴るなよな。グーで。おかげで腫れがまだ引かねぇじゃねぇ」
殴られた左頬をさすりつつ、俺は園田に恨みのこもった視線を向ける。気絶から回復したのはいいが殴られた左頬は腫れ、痛すぎてまともに朝食を食べられなかった。
俺にも責任があるとはいえ、朝からイライラがマックスである。
「うるさいです!! 原因は真嶋君にあるんですからね!! ノックもせずにいきなり洗面所内に入ってきたりするからです!」
しかし園田も負けじと俺に言い返してきた。全くと言っていいほど、責任を感じていないらしい。畜生、これだから園田は嫌いなんだよ。
「……鍵を閉めなかったお前にそもそもの原因があるんじゃ?」
「し、仕方ないでしょう! 真嶋君がいることをすっかり忘れていたんですから。それよりも、その乱れた制服を何とかしてください!」
「はっ! やなこった。これは俺のアイデンティティだからな!」
朝の登下校から、ギャーギャーと言い争う俺たち。本来なら時間をずらして登校したいところだったのだが、睦未さんの圧力に屈し一緒に登校する羽目になっていた。
あの時の目は、今思い出しても恐ろしい。
「一緒に行きますよね、ふたりとも?」
……これからは睦未さんに逆らわないようにしよう。
「あっ、海未ちゃんだ! おーい!!」
「海未ちゃん、おはよう!」
ぶるぶると震えている俺の耳に元気な声と脳が蕩けそうな声。二つの声が響いてきた。
視線を上げると、二人の女子生徒が園田に向かって手を振っている。
(園田の友達か?)
首をかしげている俺を他所に、園田が二人に駆け寄っていく。
「す、すいません、二人とも。待たせてしまったみたいで」
「全然気にしてないから大丈夫だよ。いつもは穂乃果が二人を待たせてるわけだしね!」
そこで胸を張るのはおかしい。心の中だけでツッコむ。
「うん、私も気にしてないから。それにしても……」
ベージュ色の髪をした女の子と目が合った。その顔はニヤニヤとしていて……嫌な予感しかしない。
「そちらは海未ちゃんの彼氏さん?」
『違います(よ)!!』
うん、そんなとこだろうと思ったよ。楽しそうに笑う彼女に対して俺と園田は同時にツッコむ。
確かに、男女が朝から二人で登校してくればそう勘違いするのも無理はないだろうけど……それでも、俺が園田の彼氏扱いをされるのはまっぴらごめんだ。間違ってもそんな関係だと勘違いしないでほしい。
「えぇっ!? 海未ちゃん、いつの間に彼氏ができたの!? もぅっ! 彼氏がいるならいるで、ちゃんと穂乃果たちにも報告してよ!」
今度はサイドテールの女の子が大きな声を上げる。元気いっぱいなのは構わないが、そんな大声で間違ったことを叫ばないでほしい。一応、ここは住宅街なので。
「ち、違います!! 私がこんな人の彼女だなんて、虫唾が走ります」
「その言葉、そっくりそのままお前に返してやるよ」
バチバチと火花を散らして睨み合う俺たち。すると、状況を見守っていたベージュ色の髪をした女の子がぽんっ、と手を叩く。
「あっ! もしかして、この人があの真嶋君?」
「ま、まぁ、俺があの真嶋ですけど……もしかして、園田から聞いたんですか?」
「うんっ! 海未ちゃん、よく真嶋君の話をしてくれるから♪」
「ちょ、ちょっとことり! その言い方では、ものすごく誤解を招くのでやめて下さい!!」
少しだけ顔を赤くした園田が、ことりと呼ばれた女の子の口を押さえる。しかしことりさん? は「やーん♡」と、全く意に介していない様子。
それにしても可愛い声だな。朝からこんな可愛い声を聞けるだなんて。俺は幸せ者だ。今ここで昇天してもいいかもしれない。
「おい、園田。お小言なら後で聞いてやるから、横にいる二人について紹介してくれないか?」
取り敢えず何一つ状況が分からない俺は、目の前で百合百合している園田に声をかける。
「どうしてあなたはそんなに偉そうなんですか……まぁいいです。えっと、その話は歩きながらでもいいですか? このままだと学校に遅刻してしまいます」
スマホで時刻を確認すると、確かに予想以上の時間が経過していた。園田の言う通り、のんびりしていたら遅刻してしまうだろう。
不本意だがここは彼女に従うほかない。不良なのに真面目だなぁ俺。
歩き出した俺たちはまず自己紹介から始める……その前に、俺はちょいちょいと園田を手招きした。
「どうしたんですか?」
「なぁ、俺がお前の家で居候している件についてはどうするんだ?」
「そ、そういえば、穂乃果たちはまだ知りませんでしたね。……話して構いませんよ。どうせ、隠してもいずればれてしまうことですから」
「了解」
確認を終えた俺は、改めて二人に向き合った。
「俺の名前は真嶋和希。園田と同じクラスな。知り合った経緯については……園田から聞いていると思うけど」
「うん! 海未ちゃんからはよく聞いてるよ! クラスに、どうしようもない不良がいるから困ってるって!」
困っているのはこっちなんだけど……その言葉を何とか飲み込む。
「それで君たち二人は?」
「はいっ! 私は海未ちゃんの幼馴染兼親友の、高坂穂乃果です! よろしくね、和希君!」
サイドテールの女の子は高坂穂乃果というのか。
はじける様な笑顔を見せる彼女は、天真爛漫という言葉を現実に表したかのようである。あと、どことなく犬っぽい。
それにしてもいきなり名前呼びとは……。ちょろい男子なら勘違いするぞ。俺はしないけどね!
「私も海未ちゃんの幼馴染兼親友の南ことりです♪ これからよろしくお願いします、和希君!」
ベージュ色の髪をした女の子は南ことりというらしい。おっとりとした雰囲気に、可愛らしい容姿。なによりも、脳が蕩けそうになるその甘々な声。
どこをとっても非常に女の子らしい。まるで天使の様である。園田もちょっとは見習ってほしい。名前を呼ばれた瞬間、文字通り昇天しそうになったのは内緒。
「えっと、高坂に南、これからよろしくな」
「穂乃果でいいよ! こっちも和希君って呼んでるわけだし」
「えっ!? い、いや、名前はちょっと……」
名前で呼び合うなんて、見る人が見れば勘違いしそうだ。その為、俺は断ろうとしたのだが、
「穂乃果は気にしないからいいの! ほらっ、名前で呼んでみてっ!」
とても断れそうな雰囲気ではない。というか、人の話を聞いてくれない。
しかも悪気がないから余計に断りずらいんだよな……。仕方がないので俺は、彼女の事を名前で呼ぶことにする。
「それじゃ、これからよろしくな。……穂乃果」
思ったよりもかなり恥ずかしかった。すると、南が何かを期待するような目で俺を見つめていることに気付く。
もしかしなくても、あれをご所望なのだろう。
「あぁ……まぁ、なんだ。ことりも、これからよろしくな」
視線を逸らしながらそういうと、ことりは嬉しそうに「うんっ!」と頷いた。なんかもう可愛すぎ。抱き締めて持ち帰りたいくらいだ。
ことりを見てニヤニヤしていると、わき腹に鋭い痛みが走る。見ると、なぜか園田が不機嫌そうな顔をして俺の脇腹をつねっていた。
「何だよ?」
「……別に。ただ、ニヤニヤしているあなたを見たらイラッとしたので」
ふんっ、と顔を逸らす園田。な、何なんだこいつは? ……ところでことりさん。どうしてあなたは、俺たちを見てニマニマしているんですか? 何か裏がありそうで怖いです。
「それよりも、どうして海未ちゃんと和希君は一緒に登校してきたの?」
穂乃果が最もな疑問をぶつけてくる。まぁ、普通は気になるよね。
「えっと、それについてなんだけど……俺、昨日から園田の家に居候してるんだ」
事情を知らなかった穂乃果とことりの目がまん丸に見開かれた。そりゃいきなり親友の家に居候が、しかも男と一緒に住むことになれば、誰だって驚くだろう。
「ほぇ~。なんだか穂乃果の知らないうちに、凄いことになってたんだね! ところで、どうして和希君は海未ちゃんの家に居候することになったの?」
「……両親が海外出張するのに伴って、って感じかな。親が心配症でさ。俺一人だと心配みたいなんだ。だからこうして園田家に厄介になったってわけだよ」
取り敢えず、離婚云々の件は誤魔化しておくことにした。朝からこんな気の重い話、聞かせたくないし言いたくもない。言ったところでどうにもならないしな。
「ちなみに和希君は、一日海未ちゃんちで過ごしてどう思いましたかっ?」
いちいち仕草が可愛いすぎだろ、ことりは。
「うーん……園田がうるさい」
「あっ! それ、穂乃果もよく分かるよ!!」
「ちょっと穂乃果!!」
なんと……。穂乃果とは結構気が合いそうだ。
「海未ちゃんってさ、穂乃果が宿題忘れても見せてくれないんだよ~」
「当たり前じゃないですか! 宿題は普通、自分がやってくるからこそ意味があって――」
「うんうん、それは本当に酷いな。人間のすることじゃない」
よしよしと穂乃果の頭を撫でると、甘えるようにすり寄ってくる。益々犬っぽい。
彼女に尻尾があるとすれば、今頃パタパタとせわしなく動いていることだろう。お菓子をあげたい気分になってくるな。
「……真嶋君、また殴られたいんですか?」
「いえ、それだけは結構です」
ニッコリと笑顔を浮かべた園田に、俺もニッコリと微笑み返す。笑顔なのに笑顔じゃないのが一番怖いな。特に園田がやると元が美人だけあって、迫力が段違いである。
「まぁまぁ、二人とも落ち着いて。海未ちゃんも女の子が殴るなんて言っちゃだめだよ?」
ことりが俺たちの間を取り持つ。そして園田に対して「めっ!」と怒っていた。
いいなぁ、俺もことりからあんな風に怒られたい。
「それにしても、和希君ってピアス着けてるの? 見せて、見せて!」
「ん? これか?」
穂乃果が興味津々という顔で「見せて!」とせがんできたため、俺は耳にかかっていた髪を後ろにながす。
「俺の付けてるピアスは普通の奴だよ。ブランドは結構、有名なところらしいけど。そんなに珍しいか?」
「うんっ! だって穂乃果の周りにピアスをつけてる人なんていないから」
本当に興味があるらしく、しげしげと眺めたり、時折ちょんちょんと触ったりしている。
「穴をあけるときって痛くなかったの?」
「どうだったかな……開けたのが中2の頃だし、もう忘れちまったよ」
「そんな早くからつけてるの!? 和希君ってその頃から、不良さんだったんだね!」
「どうだ? 怖くなったか? それとも幻滅したか?」
少し意地悪な質問。しかし穂乃果は、俺の質問に屈託のない笑顔で答えた。
「ううん、ぜんっぜん! だって和希君、見た目は不良だけど、すごく優しいもん!」
「……そ、そうかよ」
裏表のない素直すぎる言葉をぶつけられ、俺は思わずどぎまぎしてしまう。いやねぇ、まさかこんな風に言われるとは思ってもいなかったから。
「あれあれ? 和希君ってば、照れてる? ことりも和希君の事、怖いなんて思っていないから安心して♪」
いち早く俺の顔色を察したことりが、つんつんと頬をつついてくる。
「て、照れてねぇよ!! というか、頬をつんつんするな!」
「あっ、穂乃果もやるー!!」
「穂乃果もやるー、じゃねぇ!!」
歩きながら両頬をつんつんされるとか、もう意味が分からん。しかも美少女に……。誰でもいいから助けてくれぇ!!
「穂乃果、それにことり。周りの目もありますからその辺にしてください」
冷静な声と共に、穂乃果とことりが俺から引き剥がされる。ふぅ、朝から美少女二人に両頬ツンツンとか、危うくラノベ主人公に仕立て上げられるところだったぜ。
「ふぅ……ありがとう、園田。助かったよ」
今回ばかりは、素直にお礼の言葉を園田に伝える。
「……どういたしましてっ! それじゃ学校も近いですし、私は先に行きますから!! あなたは穂乃果とことりと、仲良く登校してください!!」
しかし、園田はなぜか怒ったような言葉視線を俺にぶつけ、そのままずんずんと歩いて行ってしまった。
思わずその背中をポカンと見つめる俺たち。
「何であいつ、あんなに怒ってたんだ?」「海未ちゃん、どうかしたのかな?」
俺と穂乃果が首をかしげる中ことりだけは、
「……海未ちゃんってば、素直じゃないんだから♪」
と意味深な発言をして、ニマニマ微笑んでいたのだった。
(素直じゃないってどういう意味だ?)
言葉の意味はよく分からない。まぁ、きっと深い意味はないのだろう。そのまま二人と登校し、クラスの前で別れる。その直前、
「和希君、今日は頑張ってね!」
そうことりから声をかけられた。頑張るも何も、今日だって普段と変わらない一日を過ごす予定なんだけど……。
はてな? と思いつつクラスに入っていくと、
「真嶋君!! 制服が乱れています! そういうのは風紀を乱すと、何度言えばわかるんですか?」
仁王立ちしていた園田に、いきなり注意を受ける。それに普段より強い口調。
別に怒るのは構わないのだが、なんか怒り過ぎじゃね? 生理でもきてんのか? ……我ながら今のは最低だな。謹んで謝罪します。
「い、いやだから、この服装は俺のアイデンティティであって―――」
「いいから、早く直してください!!」
うーん、服装のことについて怒っているというよりは、別のことに対して怒っている気がする……。
結局この日、俺はいつもの三倍増しで園田に怒られたのだった。学校でも、家でも。
読了ありがとうございます。