真面目な彼女の家に居候することになった 作:グリーンやまこう
忙しさが取り敢えずひと段落したので投稿しました。あぁ、就活したくない……。
次は多分また一か月後かもしれませんが、変わらずよろしくお願いします。
「和希の選んでくれたお店、すごく良かったですね! 料理もおいしかったですし、雰囲気も良かったです」
「喜んでくれたみたいで何よりだよ。俺も入ったことなかったから少し心配だったし」
二人並んで電車を待ちながら、先ほどまで晩御飯を食べていたお店の感想を言い合う。
予約をしていた店はことり、穂乃果と一緒に選んだものだ。レビュー等を参考したのだが、レビュー通りのお店で俺と海未は大満足だった。
「それでこの後はどこに行くのですか?」
「電車で移動した先でイルミネーションの綺麗なところがあるんだ。今日はそこに行こうと思って」
この場所はことりたちと選んだというよりは、二人と出かける前日に調べていたものを提案したものだった。俺の提案したものにしては珍しくことりと穂乃果から好評だったため、デートプランに採用となったのである。
まぁ、クリスマスデートにイルミネーションは定番だしな。この時期は至る所でイルミネーションが行われているため、ある意味場所選びには困らなかった。
「イルミネーションですか。楽しみですっ!」
「俺もイルミネーションに行くのは初めて見たいなもんだから楽しみだよ。……おっ、電車が来た」
駅のホームにやってきた電車に二人で乗り込む。
電車内は流石クリスマスというだけあって、それなりに混んでいた。空いている席はないかと視線を巡らせるも、生憎一つも空いていない。
「どこも空いてないし、邪魔にならないとこで立ってるか」
「そうですね。私もこんなに混んでるとは思いませんでした」
扉付近に並んで話していると、次の駅に到着したらしくお客さんがドッと乗ってきた。
「うおっ! 結構乗ってきたな。海未、もっとこっちに」
「は、はいっ……わっ!」
こちらに来ようとしていた海未が誰かに背中を押され、倒れ込むようにして俺の胸に飛び込んできた。
「…………だ、大丈夫か?」
「だ、大丈夫です……」
意図せずに抱き締めあうような形になってしまった俺たち。漫画やラノベのような展開に、一瞬で体温が急上昇する。
『………………』
お互い完全に油断していたため、顔を真っ赤にして俯きあう。心臓が狂ったように早鐘をうっているが、それは海未も同じらしい。さっきから、ドクンドクンと早いリズムを刻む彼女の心音が俺にまで伝わってきていた。
そのままの状態を維持すること約3分。
「うわっ、また人が……」
先ほどの駅よりも少ないがそこそこの人数が乗車してきたため、電車内は更に狭くなる。しかし、これ以上引っ付くのは色々とまずい。
そう考えていたのだが、海未が背中に腕をまわし俺との距離をさらに近づけてきた。
「う、海未!?」
「し、仕方なくです……こうすれば邪魔にならないでしょうし。仕方なく何ですからね!」
口ではそう言ってるけど、髪の間から覗く彼女の耳は真っ赤に染まっている。
「た、確かにそうだけど……」
「……問題ないです」
俺の胸に顔を埋めてそう答える海未。彼女の言う通り、邪魔にはならないだろうけどこれはこれで問題である。例えば、
『…………』
周りの視線とか。好奇の視線に耐え切れず俺は目を瞑る。唯一の救いは、周りがカップルばかりだということくらいである。これでカップル以外が多かったら目も当てられない。
そのままの姿勢で周りからの視線に耐え続けること約10分。ようやく目的の駅に到着し、俺と海未はいろんな意味でへとへとになりながら電車を降りる。
「ふぅ……海未、生きてるか?」
「……生きてます。生きてますけど……ちょっと疲れちゃいました」
海未はそう言って苦笑いを浮かべる。まぁ、俺ですら結構疲れたので無理はない。
「ちょっと休んでから行こうか」
近くにあったベンチを指差すと、海未の手を握って歩いていく。彼女をベンチに座らせ、俺は飲み物を買いに自販機へ。
「ほいっ。緑茶でよかったか?」
「あっ、ありがとうございます」
海未に緑茶の入ったペットボトルを手渡し、俺はその横に腰掛ける。
「いやー、それにしてもクリスマスの電車があれだけ混んでるとは思わなかったよ」
「本当ですね。私も少し驚きました。混むとはわかってたつもりだったんですけど、まさかここまでとは……」
緑茶を飲みつつ海未が答える。その後、少しだけ休み、
「さて、取り敢えずこの辺りをぶらぶらしてみないか? イルミネーション自体は夜遅くまでやってるみたいだから」
「私もこの辺りはあまり来たことがないですから、少し楽しみです」
海未の手を取って駅周辺を歩き始める。俺自身もあまり来たことのない場所だったので目に映る景色は少し新鮮だ。目についたお店から二人一緒に入って行く。
本屋から様々な専門店。そして、最後にお洒落な雑貨店に入った後、いい時間になったので俺たちはイルミネーションを見に歩き始める。
「良かったのですか和希?」
「ん、何が?」
「このスノードームを買ってもらって」
申し訳なさそうに眉を寄せる海未の手元には、先ほどの雑貨店で買ったスノードームの袋が握られていた。
「だって物欲しそうに見つめてたじゃん」
「それはそうですけど……結構いい値段しましたし」
「気にしなくていいよ。俺もいいなって思ってたし、見に行こうと思えばいつでも見に行けるだろ? だから俺が見せてほしいって言ったら見せてくれよな」
そういうと海未がようやく笑顔を見せる。
「どうしましょうか?」
「いやいや、そこは『わかりました』って頷くところだろ?」
「ふふっ、冗談ですよ。ありがとうございます和希。大切にしますね」
スノードームの入った袋を海未はギュッと抱き締める。
「じゃあそろそろ良い時間だし、今日の目的でもあるイルミネーションを見に行こうか」
「はいっ!」
時間にも余裕があり、二人揃ってのんびり歩いていく。俺たちの他にもカップルらしき人たちがちらほらと見える。恐らく目的地は同じだろう。
「どうかしたんですか?」
「……いや、俺たちの他にもカップルがたくさんいるなって」
「そう言われてみればそうですね。……私たちはちゃんとカップルに見えてるでしょうか?」
「多分見えてるだろ。少なくとも手をつないで歩いてるわけだし。それに他人からどう見られようが俺たちは俺たちだろ?」
俺がそう言って笑うと、海未もつられて笑みをこぼす。
「やっぱり和希は和希ですね。安心しました」
「褒められてる気がしないけど、取り敢えずありがと」
いつもより強めに海未の頭を撫でると、俺たちは改めて歩き出す。そして、
「すげぇ……」
「綺麗ですね……」
目的地に辿り着いた俺たちは思わず声をもらす。遠目から見えていたのだが、近くに来るとより圧巻だ。
周りの木が全て青色のLEDで装飾され、その光景はさながら青の洞窟といっても過言ではないだろう。そんなイルミネーションに視線を映しながらゆっくり歩いていく。
「去年まではテレビで見る程度でしたけど、やっぱり実物は違いますね」
「俺も同じ事思ってた。穂乃果たちとは来たことないの?」
「クリスマスはむしろ誰かの家で過ごすことが多かったので、こうしてイルミネーションを見るのは和希が初めてです」
そこで言葉を区切ると、海未は上目遣いで俺を見つめる。
「……だから、和希が初めてでよかったなって」
「…………」
セリフも相まって鼻血を噴き出すところだった。多分、自分の中で可愛いことを言った自覚なんて全くないんだろう。そこが海未の魅力的なところなんだけどね。
「海未はずっとこのままでいてくれよ」
「? 別に私はずっとこのままですけど?」
首を傾げる海未の頭をそっと撫で、俺たちは青の洞窟を歩き続ける。
そして青の洞窟が終わったところで、俺は用意しておいた紙袋を鞄の中から取り出す。
「はい、海未」
「……これは?」
「ベタだけどクリスマスのプレゼント」
「ありがとうございます! 開けてもいいですか?」
「いいよ」
海未がガサゴソと紙袋を漁り、中から取り出したのは、
「これは……ピアス?」
「そう。ノンホールのタイプだけどな」
今言った通り、俺がプレゼントしたのはノンホールタイプのピアスだった。海未は取り出したピアスを珍しそうに眺めている。
これはプレゼントを探しているとき偶然お店で見つけたものだったのだが、海未に似合うと思ったので即決して買ってしまった。
「どうしてこれを?」
「いや、特に理由はないんだけど、海未に似合うと思ってさ。それに俺がつけてるやつは穴をあけなきゃだけど、それだったら穴をあける必要もないし」
ノンホールなら体に傷もつかないし、海未もつけやすいだろう。普段はつけなくてもいいけど、デートとかの時につけてほしいという願望も込めている。
一方海未は、しばらくノンホールピアスを眺めていたのだが、
「……和希、プレゼントしてくれたピアス。今私につけてくれませんか?」
「えっ、いま?」
「はい、今です」
そう言って海未が髪を耳にかける。海未の事だからつけるにしても帰ってからだと思ったんだけど……。しかし断る理由もないので、俺はノンホールのピアスを袋から取り出す。
「じゃ、じゃあ失礼します」
「どうして緊張してるんですか?」
海未は笑っているが、こっちは結構緊張するのだ。ノンホールとはいえ、人にピアスをつけるのは初めてなわけだし。
そんなわけで、手を緊張でプルプルさせながら海未の耳に触れる。
「んっ……か、和希、くすぐったいです」
「……も、もうしわけない。あと、変な声出さないで」
変な気分になりつつ俺は右耳にピアスをとりつけ、ほっと息をつく。これで俺の任務は終わり――――
「それじゃあ反対側もお願いします」
「…………」
反対側があることをすっかり忘れていた。いや、忘れてたってのもどうかと思うけど……。
終わった気分になっていた俺はもう一度気合を入れ直す。そして、
「どうですか?」
はじめてピアスをつけたらしい海未は、少しだけ恥ずかしそうな笑みを浮かべる。
青色を基調としたピアスが光に照らされて美しく煌めく。
「もちろん、すごく似合ってるよ。流石、俺が選んだだけあるな」
「そこで調子にのったりしなければもっと良かったです」
「冗談だって。……本当にすごく似合ってる」
「……最初からそう言って下さい」
口ではそう言っているものの口元は緩み、左手でピアスをしきりにいじっていた。気に入ってくれて何よりです。
「それじゃあ私からもお返しです」
今度は海未が鞄からプレゼントらしき包みを取り出す。
「開けても大丈夫か?」
「はいっ!」
許可をとって開けると中からは長財布が出てきた。俺には財布の良し悪しなんてわからないけどお洒落で、かなりいいものだと思う。
「ありがとう海未。でもいいのか? 結構高そうに見えるけど」
「高そうに見えて、意外とリーズナブルだったので気にしないで下さい。それに、和希の財布が結構痛んでいたように見えたので丁度良かったです」
言われてみると今使っている財布は使い込んだせいか痛んでおり、変えようかなと思っていたのである。
ただ口には出していなかったので、まさか気付いているとは思ってもいなかった。
「……気付いてくれてありがとな。嬉しいよ。これ、大切に使うから」
「べ、別に、これくらいなら誰でも気付きますって……」
髪をくるくるといじる海未。お礼を言われて嬉しいのだろう。
「……さて、プレゼントも渡しましたしそろそろ帰ろうか。あんまり遅くなると睦未さんが余計な事を考えそうだし」
「それもそうですね」
俺たちはもう一度手を握り締め……おっと、恒例のセリフを言ってなかった。
「海未」
「何ですか?」
「メリークリスマス」
「……ふふっ、メリークリスマス!」
☆ ★ ☆
「ふぅ、今日は疲れたな」
クリスマスデートから帰宅した俺はベッドに寝転がっていた。既に風呂にも入り、いつでも眠れるような状態である。
しかし、心地よい幸福感とデートでも興奮が入り混じったおかげで、眠気はそれほどではない。そんなタイミングだった。
トントントン
部屋の扉がノックされる。こんな時間に珍しいなと思いつつ扉を開けると、そこにいたのはやっぱり海未だった。
「すいません、こんな時間に」
「それはいいけど、どうかしたのか?」
「ちょ、ちょっと渡したいものがありまして……」
もじもじしている海未の手元には何やら紙袋らしきものが。
あれっ? だけど俺はデート中にプレゼントは貰ったけど……。取り敢えず海未を部屋に招き入れベッドに座らせる。
「えっと、渡したいものって?」
俺からの問いかけに海未は持っていた紙袋をごそごそと漁り、とあるものを取り出した。
「これは……マフラー?」
「は、はい……」
彼女が取り出したのは紺色のマフラーだった。しかも、手編みっぽい。
「ことりに編み方を教わって自分で編んだものなんですけど……」
せわしなくマフラーと俺の顔に視線をいったり来たりさせる海未。
「その、初めて作ったものですから、うまくできてないかもしれないですけど、そこは許してほしいです」
「いやいや、パッと見ただけでも普通にうまいし、大丈夫だよ。ただ、マフラーにしては少しだけ大きい気が……。少なくとも二人が巻けるくらい長さがあって……これは普通にミスしたのか?」
「っ!!」
気付かれた! と言わんばかりに海未が顔を赤くする。しばらく言いかけてはやめ、言いかけてはやめを繰り返した後、
「……それはミスというわけではないんです」
「ミスじゃない? それじゃあ――」
「最初から二人でまこうと思って編んでました」
思いがけない海未の言葉に俺は数秒の間思考が止まってしまう。その後、復活した俺は確認のために口を開く。
「え、えっと、それはことりの案とかそういうのだよね」
海未の言葉がにわかに信じられなかったためあんな聞き方をしたのだが、彼女はふるふると首を横に振る。……取り敢えず頬をつねった。うん、痛い。
「そ、それで、このマフラー……二人でまきませんか?」
「お、おう……」
震える海未の声。断る理由はなかった。そのまま海未と二人でベッドの淵に腰掛ける。
「じゃ、じゃあまきますね」
「お、おう……」
俺はオットセイかよ……って言うくらい間抜けな返事しかできない俺。未だに夢の中ではないかと疑ってしまう。
しかし、ぴったりとくっつけた肩からは夢では感じることのない温かさが広がっていた。
するすると海未がマフラーを巻いていく。彼女が動くたびにふわっと甘い香りが漂い、二人の体温が言い訳できないくらいに上がっていく。
『…………』
そしてマフラーを巻き終えた時、俺と海未の身体はピタッと密着し、お互いの時が分かる程の距離となっていた。
「……あ、温かいな」
「……あ、温かいですね」
緊張からかうまく言葉が出てこない。
少しでも首を横に向けたら、唇が触れそうな距離に恋人の顔がある。横を向かなくても彼女の体温と香りを感じる。
さっきから心臓がドクンドクンと壊れそうなくらい早鐘をうっていた。
「ところで、これを作るのにどれくらいかかったんだ?」
沈黙が辛くなった俺は気になっていたことを海未に尋ねる。これほど大きいと、それなりに時間がかかったと思うんだけど。
「これですか? えっと、大体一か月くらいかかりましたかね」
「そんなに……」
「時間はかかりましたけど、作ってるときは意外と楽しかったですよ。その……和希とこうしたかったですし。なにより和希の喜ぶ顔が見たかったですから」
最後の方の声は小さかったけど、しっかりと聞こえた。自分の部屋であることから海未の身体を優しく抱き締める。
「ありがと海未。すげー嬉しい」
「……もう、急に抱き締めないで下さい」
そう言いつつも海未は俺の背中に腕をまわす。多分照れ隠しなのだろう。そのまま一分ほど抱き合い続け、どちらからともなく視線を上げる。
「…………」
「…………」
熱っぽい視線が絡まり合った。二人の距離は10センチもない。
「……海未」
俺が名前を呼ぶと返事をする代わりに、彼女の瞳がスッと閉じられた。
俺は首を少しだけ傾けながら残り10センチ未満の距離を詰めていく。
ゆっくり、ゆっくりと……。
そして二人の距離がゼロになった。
「んっ……」
海未の口からくぐもった声が漏れる。信じられないくらいに柔らかい感触。30秒ほどキスをしてから一度唇を離す。
『…………』
再びお互いの視線が絡まり合う。海未は頬を赤く染め、ポーっとした瞳で俺を見つめる。
無意識なのだろうが、唇に人差し指と中指を当てている姿は何とも艶っぽい。そんな彼女の姿に欲情した俺はそっと海未の頬に右手を添える。
「……もう一回したい」
「っ!?」
驚いたように目を見開く海未。しかし、すぐに瞳が閉じられた。今度はさっきよりも深く、時間をかけてキスをする。
キスを終えて目を開けると、瞳を潤ませ顔を真っ赤にした海未と目が合う。
それだけで歯止めがきかなくなりそうになった俺は、さっと視線を逸らした。すると、
「……もっとしなくていいんですか?」
思わぬ彼女の言葉。流されそうになる気持ちをぐっと堪える。
「いや、もっとしたいけど……これ以上は多分まずい気がする。止められなくなりそうで」
海未の髪を優しく梳きながら答える。
「その、俺は海未の事を大事にするって決めてるから。だから、えっと、雰囲気に流されてやりたくないって言うか……もちろんしたくないわけじゃないんだけど」
頭をかきながら必死で言葉を探す。
「でも、欲求だけで行動するのは駄目だなって思ったんだ。俺は良くても、もしかしたら海未を怖がらせるかもしれないし、傷つけるかもしれない。ちゃんと海未を見て動かなきゃ駄目だなって。怖がらせたり、傷つけたりしたらきっと、今みたいに海未と笑い合えないから。……そんなの俺は絶対に嫌だから」
聞く人によっては言い訳がましい言葉を並べているだけかもしれない。でも海未は黙って俺の言葉に耳を傾けてくれている。
そして俺の言葉を聞き終えた海未は、
「ふふっ、和希はやっぱり破廉恥ですね」
「んなぁっ!?」
海未の言葉にショックを受ける俺。しかし、
「破廉恥ですけど……やっぱり優しいです」
ギュッと抱き付きながら言葉を紡ぐ。
「ほんとの事を言いますね。私、実はこれ以上進むのがすごく怖かったんです。さっきは『もっと……』なんて言ったんですけど」
胸の中にいる海未は苦笑いを浮かべるも、身体は少しだけ震えていた。
「和希とその……そういうことをしたくないわけではないです。和希のためならなんだって……そう思ってました。でも、いざそういう場面になってみたら、全然心の準備ができてなくて……すごく不安でした。すごく怖かったです。でも……」
そこで海未は俺をしっかりと見つめ――
「今日で再確認できました。和希は私の事をちゃんと見てくれて、大事にしてくれてるだなって。……私、改めて思いました。和希を好きになってよかったなって」
幸せそうな表情ではにかむ海未。たまらなくなった俺は、思わず胸の中にいる海未を力いっぱい抱き締める。
「海未……俺も、海未の事を好きになって本当に良かった」
「……もう、力が強いです。もっと優しく抱き締めてください」
「ごめん。だけどもう少しだけ」
「……全く。仕方ないですね」
そう言いつつ海未も抱き付く力が強くなっていた。しばらく抱き締めあっていると、
「えっと、それでですね……」
「うん、どうした?」
「だ、だから、えっと、その……そ、そそ、そういうこともしたくないわけではないので、少しずつ段階を踏んでいけば大丈夫です……」
とんでもないことをカミングアウトした海未に俺は思わず呟く。
「……俺より海未の方が絶対に破廉恥だと思うぞ」
「っ!? そ、そんな事ありません!!」
プンプン怒る海未の頭を優しく撫で、俺たちは笑いあったのだった。
☆ ★ ☆
ちなみに、
「そういえば、あのマフラーってどんな時に使うんだ? 流石に外でまくのは勇気がいると思うけど」
「っ!? え、えっと、その……私が、和希に甘えたいと思った時につ、使いたいです……」
「…………海未、今のセリフ可愛すぎ」
「へっ!? 別に可愛いことを言った自覚なんて……ほ、微笑みながら頭を撫でないで下さい!!」
今回も読了ありがとうございました。少し駆け足気味になってしまったのが申し訳ないです。
次もいつになるか分かりませんが読んでいただければ幸いです。それでは。