真面目な彼女の家に居候することになった   作:グリーンやまこう

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 今回はちょっと真面目に。


3話 真面目な彼女の過去を少しだけ知った

「なぁ、ことり」

「ん? どうしたの和希君」

「園田ってさ、昔からあんな感じだったの?」

 

 居候を始めてから早いもので、既に2週間が経過していた。今日も変わらない授業(園田に怒られていた記憶しかない)を乗り越え、今は学校から帰る途中。

 俺は、校門でたまたま出会ったことりと並んで帰り道を歩いていた。ちなみに園田は、先に帰ってしまって一緒ではない。

 

 そして、口からこんな質問が出たのも、ほんとたまたま。ただ、どうしてあそこまで俺を目の敵にするのかなと思って。

 穂乃果は? と聞いたら今日は宿題を忘れて補習なのだと。今度勉強でも見てやろうかな。

 

「うーん、昔はもう少し大人しかったかな。私もだけど、普段は穂乃果ちゃんの後ろに隠れているような子だったし。それに今だってかなりの恥ずかしがり屋さんだよ?」

「とても信じられんな……」

 

 あの鬼のような姿からは到底想像ができない。穂乃果が元気いっぱいなのは言うまでもないが、園田が恥ずかしがりやねえ……。

 本当に恥ずかしがり屋なら授業中、大声で俺を叱ったりしないと思うんだけど……。

 

「いつからあんな風になったんだ?」

「……多分、お姉ちゃんが家を出ていってからだと思う」

 

 園田にはお姉ちゃんもいたのか。てっきり一人っ子だとばかり思っていた。

 

「これは私の想像なんだけどね、多分海未ちゃんは、日本舞踊の家本の娘として厳しい教育を受けてきたと思うんだ。それこそ日本舞踊から、礼儀作法に至るまで。本来なら、海未ちゃんのお姉ちゃんがやるべきだったことを子供時代からずっとね」

 

 なるほど……。推測でしかないが、今までよく分からなかった園田のことが、何となくつかめてきた。

 

「小学生の頃も恥ずかしがり屋だったけど、ダメなことをしている子には、いつも厳しく注意してたんだ。それも多分、家で厳しく育てられてきたからだと思う」

 

 別に俺は園田家の人間に、どうこう言うつもりは全くない。その家にはその家なりの事情というものがあるからだ。

 それでも……本来なら長女が負うべき責任を、まだ幼い園田が負うことになってしまった。

 幼いころから園田は、俺が知る由もないプレッシャーと戦ってきていたのである。

 

「……結果として責任感が強くなって、礼儀のなっていないやつが許せなくなった。園田の性格があそこまで頑ななのは、恐らくこんな所だろうな」

 

 ことりがこくんと頷く。このままいけば、園田が次期当主なのはほぼ間違いない。だからこそ、余計に自分にも相手にも厳しくなってしまったのだろう。

 

「でも私ね、和希君が海未ちゃんと一緒のクラスでよかったと思ってるんだ」

「……ことり、お前熱でもあるのか?」

 

 彼女のオデコに手を当てて、熱があるかどうかを確認する。……というのは建前で、本当は「ね、熱なんてないよぉ……」と、少し困ることりの声を聞きたかっただけ。

 

「まぁ、熱についてはおいといて、どうして俺が園田と一緒のクラスでよかったんだ?」

「海未ちゃんって、あんな感じの性格でしょ? それが災いして一度、クラスで浮いちゃったことがあるんだ」

 

 確かに……それは容易に想像がつく。あんな性格でくどくど言われれば、誰だって嫌になるだろう。現時点で俺はくどくど言われ過ぎて、頭がおかしくなりそうだ。

 

「だからこそ、和希君でよかったんだよ」

「……ごめん、だからこその意味が全く分からないんだが?」

「今まではね、海未ちゃんに注意された子は、その場では何も言わないの。大人しく従っている。でも、影でこそこそ言い合って、そこから海未ちゃんを避けるようになるんだ。クラスで浮いた時もそうだったから……」

 

 ことりの顔が悲し気に伏せられる。恐らく幼馴染で親友でもある自分が、その時どうにもできなくて悔しかったのだろう。

 

「多分、和希君が初めてだと思う。その場でちゃんと、海未ちゃんに言い返したのは」

「褒められたことではないと思うんだけどな。それに俺も、売り言葉に買い言葉って感じだったし」

 

 俺が苦笑いを浮かべると、ことりは「それでも」と首を振る。

 

「陰でこそこそ言い合って避け始めるよりは、和希君の方がよっぽど男らしいよ。だって言い方は悪くても、ちゃんと海未ちゃんと向き合ってくれてるんだもん」

「だけど、園田にとっては大迷惑だと思うぞ。俺は何言っても屁理屈を並べて、園田に従おうとはしないし」

「でも、海未ちゃんのこと、無視しないでしょ?」

 

 痛いところをつかれた俺は、にっこり微笑むことりから目を逸らす。

 

 ことりの言う通り、俺は園田のお小言に反論こそするものの、無視したことは一度もない。

 なぜ彼女を無視しないのか。理由は俺にもよく分からなかった。しいて言えば、

 

「だって、あいつも俺の反論に対して無視しないだろ? だから、お互い様だよ」

「……ふふっ♪ 海未ちゃんもだけど、和希君も素直じゃないなぁ」

 

 だから、頬をつつくのやめて。近づいてきたからか、甘い香りが鼻腔を刺激して、思考まで蕩けそうになるから。

 

「和希君がいてくれたおかげで、海未ちゃんは今のクラスで浮かずに済んだ。私は本当に感謝してるんだよ? あの時、私は何もできなかったから……」

 

 愛らしい彼女の瞳が少しだけ潤む。ほんと、それだけでうっかり惚れてしまいそうだ。

 

「その上目遣いはやめてくれ。反応に困る。それに園田からしてみれば、きっと親友がそう思ってくれるだけで十分だと思うぞ?」

 

 俺の言葉に、ことりの目が大きく見開かれる。彼女のためとはいえ、我ながらキザなことを言ったもんだ。あぁ、頬が熱い。

 

「…………」

「……頼むから、何か言ってくれ」

 

 ことりが何も言わないお蔭で、めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど……。

 

「ふふっ……やっぱり和希君は不良っぽくないね。穂乃果ちゃんの言う通り、すごく優しいよ♪」

「ことり……お前絶対からかってるだろ?」

 

 俺が非難の視線を向けるも、彼女は微笑むばかり。多分だが、このまま彼女と友達を続けていく限り、俺は一生頭が上がらない気がする。

 

「はぁ……ったく、お前には敵わないな。ほんと、ずるい」

「いえいえ、それほどでも♪」

 駄目だ。さっきからことりのこと、可愛いとしか思ってない。いや、でもこれはしょうがないことである。だって可愛いんだもん。

 ことり=天使。これ、今度テストに出しますよ?

 

「だからね、これからも海未ちゃんをよろしくお願いします!」

 

 彼女から「おねがぁい!」を受けた俺は、仕方ねぇなという表情を作る。

 

「本当は嫌なんだけどな。俺は園田のこと大嫌いだし……。だけど、海未ちゃんのことが大好きで、大好きで仕方のない、ことりからのお願いだ。とてもじゃないけど、断れないよ」

 

 彼女に頭は上がらないけど、これからもっと良い友達になれそうだ。もちろん、今日この場にいない穂乃果も同じである。

 

「まぁでも、よろしくと言われたところで俺が園田に嫌われて、無視されるようになったらどうしようもないけどな」

「大丈夫。それは絶対にありえないから♪」

「だ、断定ですか……」

 

 その自信はどこから来るのだろう? 

 

 だけど、まだしばらくの間は園田家に居候するわけだし、もうしばらくは一緒にいれそうだな。……まさかこんなことを考えてしまうなんて。俺もすっかりことりに毒されてしまったらしい。

 

「あっ! 私の家、このあたりなんだ!」

「おう、そうか。それじゃあ、また明日」

「うん、また明日!」

 

 手を振り振りしながら、途中で俺の方を振り返ったりしながら、ことりは自分の家へと帰っていった。そんな可愛い彼女の後ろ姿が見えなくなるまで俺は見送る。

 

(何というか、園田のイメージが少しだけ変わったな)

 

 帰り道を歩きながら、思わず空を見上げる。

 本人に聞いたわけでもないので推測の域を出ないのだが、彼女も彼女なりに苦労を重ねてきていたのだ。

 今までは理不尽に怒られているとしか思えなかった彼女の言葉が、今になって少しだけ意味のあるものに聞こえてくる。

 

(園田が俺の事を嫌いになるわけだよ)

 

 彼女から見た俺という存在は、学校という一つの社会からあぶれた半端者。ルールも守らず、自由気ままに過ごすその姿が許せなかったのだろう。

 

「……少し謝る必要があるのかもな」

 

 悪気がなかったとはいえ、俺は園田の神経を逆なでするようなことをしてきてしまったのだ。今後もルールを守らない可能性は十分にあり得るのだが、一度謝っておいた方がいいだろう。

 いつの間にか家に辿り着いていた俺は、自分の部屋に鞄を置くとそのまま園田の部屋に。

 

「なぁ、園田」

 

 俺はガラッと部屋の扉を開ける。そう、またノックもせずに開けてしまったのだ。風呂場で殴られた経験をすっかり忘れて……。

 

 

 

 

 

「ラブアローシュート!!」

 

 

 

 

 

 目の前に飛び込んできた園田の奇行に、俺はあんぐりと口を開いてしまった。ぞわわっ、と得体のしれない感覚が俺の体を駆け巡る。

 えっ、こいつ弓道の弓と矢を持って何やってるの? ら、ラブアローシュート? バカなの? 

 いつもの凛々しい姿からは想像もつかない彼女の様子を見て、俺が固まっていると、

 

「……はっ!」

 

 我に返った園田と目が合った。

 

「…………」

「…………」

 

 痛いほどの沈黙。どうしていいのか、全く分からない。しかし、耐え切れなくなった俺が「まぁ、なんだ」と言って、園田の肩をポンポンと叩いた。

 

「俺はさ、園田の事嫌いだけど……悩みがあるんなら遠慮なく言えよな。穂乃果やことりに言えないような悩みだって、俺相談にのるよ」

 

 かっこつけたいとか、よく見られたいとか、そんな事はどうだっていい。俺は優しい声、優しい瞳で園田を見つめる。

 俺はただ単純に彼女の事を、というか精神状況を心配していた。

 

「……じゃ、俺は部屋に戻るわ。くどいようだけど……疲れとか、悩みを溜め込みすぎんなよ?」

 

 そう言って俺は園田の部屋を後に――。

 

「ち、違うんですぅうううううう!!」

 

 しようと思ったけど、涙目の園田が俺に抱き付いてきたため、それが出来なくなってしまった。何気に家族以外の女に抱き付かれたのは、生まれて初めてである。ほっぺツンツンならあるけどな。

 だけど、状況が状況の為、素直に喜べない。ましてや、園田だしなぁ……。

 

「ま、真嶋君! さっきのは、その、とにかく違うんです!! 忘れてください!!」

「……疲れてるのなら、今日は風呂に入ってゆっくり休め。睦未さんには俺から伝えておく。早く寝ればきっとゆっくり体を休められるぞ」

 

 忘れてと連呼する園田に、俺は優しく微笑む。きっとこいつは、普段の稽古やら部活やらで、想像以上に疲れているんだ。そうに違いない。

 じゃなければ、あんな頭のおかしいことしないもの。

 

「どうしてこんな時ばかり優しいんですかぁああああ!!」

 

 園田の絶叫が、広い園田家に響き渡る。こんなに取り乱す彼女の姿も珍しい。取り敢えず動画に収めておこう。

 結局彼女が落ち着いたのは「分かった、分かった。忘れるから、俺から離れろぉおおお!!」と、俺が叫んでからだった。

 落ち着くまでにかかった時間は実に30分。ことりと話していた時の雰囲気を返してほしい……切に願う俺だった。

 

 

 

 

☆ ★ ☆

 

 

 

 

「お前って、本当にパンが好きだよな。いつも食ってないか?」

「えぇ~? そんなことないよ! お昼前と、お昼と、放課後にしか食べてないもん!」

「いやいや、十分だろ……」

 

 園田海未ラブアローシュート事件(勝手に命名)から、一週間ほどが経過していた。最初こそ、心に傷を負っていた園田だったが、流石は次期当主ともいうべきである。一日ほどで回復し、無事元気になっていた。

 おかげで、お説教もいつも通りである。ことりとはあんな風に話したものの、うるさいものはどうやったってうるさい。結局、今日も授業中に言い争いを繰り広げていた。

 最近では先生すら、気にせず見守るようになってしまい……ちゃんと注意しろよ!

 

「ちょっと、和希君! 穂乃果の話、ちゃんと聞いてる?」

 

 隣で歩く穂乃果が、ぷくっとほっぺを膨らませる。うん、構ってもらえないとプンスカ怒る辺り、やっぱり犬みたいだ。

 ちなみに今日は、穂乃果と一緒に帰っている。その理由はさっきまで穂乃果の宿題を必死に片づけていたからだ。

 しかし、穂乃果のため込んでいた宿題の量が思っていたよりも多くて……。現在の時刻は、既に6時を回っていた。

 ほんと、終わった時には無駄な達成感に満ち溢れていましたよ。

 

「ごめんごめん。で、何の話をしてたんだっけ?」

「むぅ、やっぱり聞いてないじゃん! 今は最近のランチパック動向について話してたのに」

 

 ほんと、なんの話してんだよ……。経済の動向ならともかく、ランチパック動向なんて正直どうでもいい。普段からちゃんと宿題をやってくれ。

 しかし、話を聞かないと今度は拗ねてしまいそうなので、機械の如く首を上下に動かし、聞いているふりをする。

 そして同じ話を二回ほどループしたところで、穂乃果が「あれっ?」と声をあげた。

 

「ねぇ、和希君。あそこにいるのって海未ちゃんじゃない?」

「ん? どこに……って、確かにあれは園田だな」

 

 視線の先には腰に手を当て、何やら不機嫌そうな顔の園田。その横には同じく不機嫌そうな顔をした男子生徒が三人。その三人は、めんどくさそうに園田から視線を逸らしていた。

 

「あの人たち、ネクタイの色的に三年生だと思うんだけど……海未ちゃんの知り合いなのかな?」

「……いや、多分違うと思う」

 

 注意深く目を凝らすと、彼ら三人の服はだらしなく着崩され、髪色も派手(俺と違って染めたものだ)。更にはピアスをつけているなど、俺とほぼ変わらない格好となっていた。

 これは嫌な予感がする。

 

「海未ちゃん、大丈夫かな?」

「俺が見に行ってくるから、穂乃果はちょっと待ってろ」

 

 心配そうな穂乃果をその場に残し、俺は園田たちの元へ。近くに行くと案の定、俺にするものと変わらない言い争いが繰り広げられていた。

 

「あなた達、どうして制服をそんな風に着崩しているのですか? ここは学校なんですよ!」

「……ちっ、うるせぇやつだな」

「それにピアスまで着けて、早く外してください!!」

 

 先輩たちにも臆することなく、彼女はいつも通り服装の乱れを注意している。そう、ここまではいつも通りだ。クラスで俺に注意するのと、何ら変わりはない。

 問題は相手の方である。注意された先輩たちは、皆揃ってめんどくさそうなオーラを隠そうともしていない。

 恐らくその態度が、余計に園田の気に障っているのだろう。彼女の語気がいつもより強い。一触即発とは、まさに今の状況を指し示すはずだ。

 

(……あぁ、もう!!)

 

 俺は頭をガシガシとかく。そして、そのまま園田と先輩たちの間に割り込んだ。いきなり現れた俺に、先輩たちはギョッとしているがむしろ好都合である。

 だって俺、不良だけど喧嘩は全く強くないからな。三対一とか勝てる気がしない。なのでここは波風を立てず、やり過ごすしかないのである。

 

「いやー、すいません、先輩方。うちのクラスメイトが迷惑をかけたみたいで」

 

 へこへこと頭を下げつつ、俺は園田を腕をガシッとつかんだ。

 

「ちょ!? 真嶋君!」

「こいつには後で、よーく言っておきますから、ここは取り敢えず穏便にいきませんか? 先輩たちも面倒ごとを起こしたくないですよね?」

「ま、まぁ、そうだけど……」

「はい、交渉成立です。それじゃあ、俺たちはこのへんで!」

 

 呆気にとられる先輩たちをその場に残し、俺は園田を無理やり引っ張っていく。後ろからギャーギャーとうるさい声が聞こえてくるも、今は無視するほかない。

 

「海未ちゃん、和希君!!」

 

 帰ってきた俺たちに、穂乃果が勢いよく駆け寄ってきた。

 

「悪いな、穂乃果。心配させて。取り合えず、俺も海未も無事だから安心しろ」

 

 よしよしと穂乃果の頭を撫でると、安心したような笑みをこぼす。一方、無理やり引っ張られてきた園田は、不機嫌そうな表情で俺を睨む。

 

「どうして止めたんですか? あの人たちはあなたと同じように、風紀を乱していたんですよ!? 注意するのは当たり前です!!」

 

 彼女からしたら当然の言い分だ。でも、やっぱり時と場合、更には相手を気にしなくちゃいけないと思う。

 

「お前の考えというか、行動力は素直にすごいと思う。だけど、もう少し相手を考えろ。女一人に男三人だ。下手したらお前、怪我してたかもしれないんだぞ?」

 

 いや、怪我だけで済むなら全然そのほうがいい。下手すると襲われていた可能性だってある。

 精神的な傷は、どうしたって治りにくい。今回は運よく穂乃果が見つけたからよかったものの、もし見つけられなかった時は……。

 

「とにかく、無駄な心配をかけんな。俺じゃなくて、お前の大切な親友が心配するだろ?」

「…………」

 

 大切な親友という言葉に、園田がばつの悪そうな顔で俯く。

 

 彼女が怪我をして、心に傷を負った時、誰よりも傷つくのは穂乃果やことりだろう。今の穂乃果の表情が何よりの証拠だ。

 いつも元気いっぱいの彼女が、心配そうな顔で園田を見つめている。だからこそ、俺は親友という言葉を口に出した。

 

「……申し訳ありません、穂乃果。心配をおかけして」

 

 今回ばかりは素直に頭を下げる。これでまだ御託を並べるなら引っ叩いてやろうと思ったが、そんなことにならなくてよかった。

 やっぱり園田も、穂乃果たちのことが大切で、大好きらしい。

 

「ううん、大丈夫だよ。海未ちゃんに怪我がなくて本当に良かった」

 

 穂乃果がそう言ってニッコリと微笑む。その太陽のような笑顔につられて、園田もようやく笑顔になった。

 

「そんじゃ、今日はもう帰りますか。穂乃果、もう暗くなってきたし、家まで送ってくよ。園田もいいだろ?」

「もちろんです。今回は私のせいで、穂乃果に迷惑をかけたのですから」

「えぇ~、でもそれじゃあ和希君たちに悪いよ。帰るのも遅くなっちゃうし……だから大丈夫!」

 

 そう言ってグッと親指を立てる。

 穂乃果って一見何も考えてなさそうに見えて、意外と考えているんだよな。別にそんなこと気にしなくてもいいのに……。

 

「いいからいいから。穂乃果も一応、女の子なんだしな」

「一応って、酷いよ和希君!! 穂乃果だって、ちゃんと女の子なんだからね」

 

 ぷくっと頬を膨らませる。そして、なぜか俺の右腕に抱き付いてきた。いきなりの事すぎて俺の顔が赤くなる。

 

「どうどう? 女の子の身体って意外とやわらかいでしょ?」

「う、うん、そうだな……って、違う違う! オイコラ、何やってんだよ!?」

 

 一瞬、本音が漏れてしまったじゃないか! 穂乃果は突然、こんなことをやってくるから困る。というか、さっきから穂乃果のが、その、当たって……。

 

「和希君ってば、顔真っ赤だよ! これでもまだ穂乃果のこと、『一応女の子』だなんて言えるのかな~?」

 

 楽しそうに笑う穂乃果に、俺の顔が益々真っ赤になる。ことりにいじられるのはいいけど、穂乃果にいじられるのはなんか屈辱だ……。

 後、人が少ないとはいえ、ここはまだ学校の敷地内である。さっきからチラチラ見られて、恥ずかしいのなんの……。

 

「…………」

 

 俺が視線を右往左往させていると、何やら不機嫌そうに口を尖らせる園田と目が合った。

 

「なんだよ、園田?」

「……別にっ! なんでもありません」

 

 なんなんだこいつは? いつにもまして意味が分からん。取り敢えず、思った事だけ言っておこう。

 

「怒ってるのか知らないけど、顔がいつにもましてブサイクになってるぞ?」

「ぶ、ぶさっ!?」

「はぁ……和希君、いくら海未ちゃんが嫌いだからって、流石にそれはどうかと思うよ……」

 

 俺の腕に抱き付いたまま穂乃果がジト―、と俺に非難の視線を向ける。確かに今の言葉は、女の子に対する気遣いにかけていたのかもしれない。

 なので俺はコホンと咳払いをする。

 

「悪い、さっきのは訂正して……園田さん、いつもより10倍増しでお顔が崩れていらっしゃいますよ?」

「もっと酷いじゃないですか!!」

 

 バチンッ、と俺の頭を園田が力いっぱい叩く。そのおかげで目の前にお星さまがチカチカと……。ボウリョクダメゼッタイ。

 

「どうしてこの二人ってこうなっちゃうのかなぁ?」

 

 横ではあの穂乃果が、珍しくため息をつくのだった。




 今回は少しまじめすぎましたね。申し訳なかったです。
 海未ちゃんにラブアローシュートされたい人生でした。
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