真面目な彼女の家に居候することになった   作:グリーンやまこう

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4話 真面目な彼女がピンチに陥った

「真嶋君!! 授業中に教科書以外の物を読むなとあれほど言っているじゃありませんか!!」

「……ただいま真嶋は忙しく、口うるさい園田の相手をしている暇はありません。つきましてはこちらの連絡先にご用件を――」

「ま、じ、め、に、聞いてください!!」

 

 もの凄い形相。これには閻魔大王様もびっくりである。

 

「なんだよ、園田。そこまで怒ることはないだろ? いいじゃねぇか別に。今日はいつも月曜日に読んでるジャ〇プじゃなくて、普通の小説を読んでるんだから」

 

 ちなみにジャ〇プを読んでいない理由は単純で、今週は土曜日発売だったからだ。

 

「そもそも、授業中に何かを読むという事が間違っているんです!! だから早く教科書を机の上に出してください」

「今日は、書道の教科書しか持っていませーん」

「逆に何でそれだけ持っているんですか!?」

 

 真っ赤になってフーフー言ってる園田は、怒った猫みたいである。なかなか素直になってくれないところなんてそっくりだ。

 いや、こいつに限って素直になったらそれはそれで気持ち悪い。

 

「おーい、園田に真嶋。仲がいいのは結構だけど、程ほどにな~」

「すいません、先生。うちの園田が」

「だから、どうして真嶋君がえらそうなんですか!!」

「大丈夫だ真嶋。先生も園田の五月蠅さにはもう慣れたから」

「先生も、悪ノリしないで下さい!」

 

 ナイスだ先生。この人はノリがいいので、お気に入りの先生である。不良である俺にも、差別的なことをすることなく接してくれるし。将来の校長先生候補だな。

 そんなノリのいい先生に、クラスからドッと笑いが起こる。園田は「何なんですかもぅ……」と不満顔。

 しかしそれもいつものことだし、気にしない。と、ここで授業終了のチャイムが鳴り響く。

 

「チャイムも鳴ったことだし、今日はここまでな。……あっ、そうだ。真嶋~」

「なんすか先生?」

「今日、資料室の整理をお願いしたいんだけど、時間空いてるか?」

 

 うぐっ……先生が実に良い笑顔で笑っている。これは暗に「いつも授業でさんざんやってるんだから、手伝うよな?」と言っているに等しい。

 まぁ、どうせ暇だから断らないんだけど。

 

「暇なんで大丈夫ですよ。だからその笑顔、やめて下さい」

「よしよし。じゃあやる事を説明したいからHR後、職員室に来てくれ」

 

 先生の言葉に頷いた俺は、そのまま園田の元へ。

 

「聞いててわかる通り、俺今日帰るの遅くなるかもだから、睦未さんに連絡しておいてくれ」

 

 小声で用件を伝える。どうして小声なのかって? 居候の件は、穂乃果たちにしか伝えてないからだよ。知られたら問い詰められる気しかしない。

 

「分かりました。それじゃあ、お母さまにもそう伝えておきます」

 

 相変わらず愛想のない返事だ。もう少し、というかことりみたいに、愛想よくしてほしいものである。

 

「園田は今日部活だっけ?」

「そうです。大会も近いですし、練習をしないといけませんから」

 

 へぇ~、弓道部は大会が近いのか。まぁ、興味ないけど。それに、応援なら穂乃果とことりが行ってくれるだろう。どっちにせよ、俺は事後報告で十分だ。

 

「まっ、練習もほどほどにしろよ。この前みたいに、頭がおかしくなられても困るし」

「っ!! あの事は忘れろと――」

「それじゃあ、俺は先生のところに行ってくるから」

「は、話を聞きなさい!! ちょっと、真嶋君!! まだHRも終わっていませんよ!」

「HRは園田が代わりに受けといてくれ」

 

 園田とHRを放っておき、俺は職員室へと向かう。

 

「おぉ、真嶋。随分早かったな。HRはどうした?」

「園田にうけといてもらうことにして、俺は抜け出してきました。さっさと終わらせたいんでね」

「お前は不良なんだか、不良じゃないんだかよくわからんやつだな」

 

 あっはっはと笑う先生。この人は本当にいい人だよ。ちなみに俺らの学年主任でもある。この人のお蔭で、俺の成績が保証されていると言っても過言ではない。ほんと、マジで助かってます。

 

「それで、俺は何をすればいいんですか?」

「ここの校舎の一階。それも一番右隅の所に資料室があるんだ。そこがあまりに汚くてな。軽くでいいから掃除をしてほしいんだよ」

「掃除ですか……」

 

 うーん、途端に面倒になってきた。これはもう、適当な理由を付けて――。

 

「成績は弾むぞ?」

「まっかせてください! 掃除でも何でもやりますよぉ!! テンション上がってきたぁああ!」

「現金な奴だな……」

 

 呆れる先生を他所に、俺は箒と塵取り、それに雑巾を持っていざ資料室へ。しかし、入って2秒で後悔することになる。

 

「き、きたねぇ……」

 

 資料室の中は、様々な教科の資料や資材が散乱し、足の踏み場もない状態となっていた。

 更にはめちゃくちゃ埃っぽい。マスクを持ってくるべきだったな。

 

「……しかし、成績の為だ。最後までやり通そう」

 

 俺はまず、散らばっているプリントや資材の整理から始めることにする。そして始めてみると意外に楽しく(実は俺、綺麗好きなんです)、結局俺は二時間ほど集中して資料室の掃除をしていたのだった。

 

 

 

 

☆ ★ ☆

 

 

 

 

「先生、資料室の整理終わりました」

「おっ! お疲れ真嶋。随分、時間がかかってたみたいだけど?」

「いやー、始めてみたらこれが楽しかったんすよ。おかげですごく綺麗になりましたから……成績の方、期待してますよ?」

「はいはい、わかったわかった。ちゃんと上げといてやるから期待して待っとけ」

「あざっす!」

 

 先生に頭を下げた俺は、職員室を後にする。そのまま昇降口まで歩いていくと、

 

「あれ、ことりから着信が入ってる」

 

 何気なく確認したスマホに、ことりからの連絡が入っていた。

 家に帰ってからでもいいかなと一瞬躊躇したが、天使の着信にはやっぱり早めに返さなければいけない。これは国民の義務である。そんなわけでことりに向けて電話をかけた。すると、

 

「あっ、和希君!」

 

 切羽詰まったような彼女の声。それだけで、何かあったのだという事を悟る。しかし、ここで焦ってはいけない。

 

「どうした、ことり?」

「今まだ学校にいる!?」

「まだ残ってるけど、取り敢えず少し落ち着け。焦ってもいいことはないぞ」

 

 まずは彼女を落ち着かせるために、努めて冷静な声で返事をする。

 

「あっ……ご、ごめんね和希君。ことり、少し焦り過ぎてたみたい」

「まぁ、緊急事態みたいだし、気にすんな。それより、学校に残ってるのなら一度合流しよう。多分スマホ越しで話すよりは、ちゃんと状況が伝わるだろ?」

 

 聞くと、ことりは校門前にいるらしい。なので俺は急いで彼女の元へと走っていく。

 

「ことり!」

 

 校門で待っていたことりに声をかける。そわそわしていた彼女は俺の顔を見ると、涙目になって駆け寄ってきた。

 

「和希君っ! あのね、海未ちゃんがね――」

「まてまて、落ち着けことり。まずは深呼吸をして」

 

 彼女の肩に手を置き、とにかく落ち着かせるように宥める。するとことりは、ようやく落ち着いてきたようだ。目の端の涙を拭い、顔を上げる。

 

「あのね、海未ちゃんと……連絡が取れないの」

「連絡が取れない?」

 

 ことりの話をまとめるとこうだ。

 

 今日はことりも学校で用事があったらしく、部活帰りの園田と一緒に帰る予定だったらしい。しかし、それが30分たっても園田が現れず、気になったことりは弓道部の友人に連絡。

 すると、その友人はとっくに練習は終わり、園田も既に帰宅したと言ってきたのだ。

 

「その後ね、海未ちゃんに何度も連絡を取ったり、家に連絡を入れたりしたの。でも海未ちゃんから返事はないし、睦未さんもまだ帰ってきてないっていうし……。どうしよう、和希君!? 海未ちゃんが、海未ちゃんが……」

 

 再びことりの瞳に涙が溜まり始める。

 

「ことり、大丈夫。大丈夫だから!」

 

 今度は少しだけ強い力で呼びかける。多分、彼女は今ちょっとした錯乱状態に陥っているのだろう。

 まぁ、親友と全く連絡が取れていないのだ。無理もない。

 

「待ってろ、今穂乃果に連絡とってみるから」

 

 ワンコール、ツーコール目で彼女は出てくれた。

 

『はいはーい! 和希君? どうしたの?』

「ごめんな、穂乃果。急に電話なんかしちゃって。それで、穂乃果の家に園田って来てないか?」

『海未ちゃん? ううん、来てないけど』

「そうか……」

 

 穂乃果の家にも来ていないとなると、これはいよいよまずくなってきた。

 学校内にいるにしろ、学校外にいるにしろ、友達といるならば電話くらい出れるはずである。

 それが出来ないという事はつまり……園田は電話にも出れない状況に陥っていると考えたほうがいい。

 

『……海未ちゃんに何かあったの?』

 

 心配そうな穂乃果の声。恐らく俺が黙っているのを聞いて、心配になったのだろう。

 

「いや、実はな――」

 

 彼女に現在、園田が行方不明だという事を伝えると、

 

『穂乃果も一緒に探すよ!!』

「ちょっと落ち着け。多分そう言いだすだろうとは思ったけど、やみくもに動いても仕方ないだろ? まだ学校内外、どっちにいるのかもわからないわけだし」

『うぅ……で、でも、それじゃあ海未ちゃんが』

 

 全く、ことりも、穂乃果も園田のこと好きすぎるだろ。ちょっと嫉妬しちまうぜ。

 

「大丈夫、園田なら大丈夫だから。それよりも、まずはどこにいるかの見当をつけないと……」

 

 賢い園田のことだ。男に連れられて、ホイホイと外に出ていくとは考えにくい。なので彼女はまだ学校内にいるだろう。

 問題はどこにいるのかだ。

 

「ことりか、穂乃果、どっちでもいい。学校内で人目につかず、先生にも見つかりずらい場所ってあるか?」

「うーん……」『どこかにあるかなぁ?』

 

 むしろ、ありすぎて困ると思う。時間もかなり遅い影響で、辺りはかなり暗い。だからこそ、隠れようと思えばどこにでも隠れられるのだ。

 

(だめだ、焦れば焦る程、どんどん思考が鈍ってくる。このままじゃ園田が……)

 

「あっ!」『あっ!!』

 

 ここで穂乃果とことりが同時に声を上げる。

 

『体育器具庫じゃない?』「ことりもそう思った!」

「……どうして体育器具庫なんだ?」

 

 体育器具庫って、普段は開いてないはずじゃ……。

 

「今日と明日にかけてなんだけど、体育器具庫の整理が行われてて、その時だけは体育器具とは開いてるんだよ!」

「それでも、やっぱりそこに園田を連れ込むにはリスクがあるんじゃ?」

『もしも、海未ちゃんを連れてった人が、体育器具庫の掃除を担当していたら? それでその人たちが最後まで残っていたら、連れ込むのだって可能じゃない? 相手が一人であるとは限らないし』

 

 穂乃果の言葉にハッとなる。そして続けざまにことりが口を開いた。

 

「和希君、確か体育器具庫と弓道場って近いはずだよ!」

 

 無茶苦茶理屈付けかもしれないが、もう体育器具庫に行くしかない。

 

「ことり、俺は今から体育器具庫に行ってくる」

「私も一緒に――」『穂乃果も一緒に――』

「ダメだ。言い方は悪いけど、ことりがきたら園田を助けられなくなるかもしれない。穂乃果はそもそも間に合わないだろ?」

 

 電話越しで穂乃果が『うぐっ』と呻く。

 

「それに、ただでさえ俺は喧嘩が弱いのに、ことりまで一緒に居ると、もっと酷い事になっちまう」

「で、でも、海未ちゃんが困ってるのに、また何もできないなんて嫌だよ!」

 

 ことりの気持ちは痛いほどよく分かる。それでも、一緒に行かせられないものは行かせられない。

 ただでさえ何が起こるか分からないのだ。これ以上、誰かを危険にさらすわけにはいかない。

 

「ことり、分かってくれ。俺だって、お前のことが嫌いでこんな事を言ってないんだ。それに」

 

 こんな時だからこそ、俺はことりに向けてグッと親指を立てた。

 

「園田を絶対に助けてくる。俺に任せろ!!」

 

 何度だっていう。俺は園田のことが嫌いだ。だけど、あいつの悲しい顔を見るのはもっと嫌いだ。理由は知らん。ただ、本能的にそう思っただけである。

 

『……ことりちゃん。ここは和希君に任せようよ』

「穂乃果ちゃん……」

 

 穂乃果の言葉に、ことりは大分迷っているようだった。

 

『大丈夫だよ。和希君なら、絶対に海未ちゃんを助けられる!』

 

 ほんと、どこからそんな期待が出てくるのだろう? でも、俺の事を信じてくれてすごく嬉しかった。ことりも、穂乃果の言葉に背中を押されたらしい。

 

「……和希君、お願い。海未ちゃんを助けてあげて」『和希君、穂乃果からもお願い!!』

 

 こんな美少女二人にお願いされて、断らないわけにはいかないな。

 

 本来なら、こんな面倒ごとに首を突っ込みたくない。園田が何をされようと全部彼女の自業自得である。

 それでも、俺は断れなかった。何でって? そんな事、改めて聞くんじゃねぇ。

 

 俺はことりと穂乃果の言葉に「もちろん」と頷く。そしてそのまま体育器具庫へと走り出した。

 

 

 

 

☆ ★ ☆

 

 

 

 

「んー! んんー!!」

 

 私の身体は恐怖に支配されていた。

 ここがどこだか全く分からない。目隠しをされ、口にはガムテープ。悲鳴をあげようにも「んー、んー!」と、くぐもった声を出すことしかできない。

 

(ことりぃ……穂乃果ぁ)

 

 私は今日部活が若干遅くなり、急いでことりの元に向かおうとしていた。そんな時に私は何者かに連れ去られたのだ。

 背後から口と身体を押さえつけられ、目を塞がれ……。気付くとこんなことになっている。すると、

 

「そろそろ目隠しとガムテープを外してやれ」

 

 その声と共に、付けられていた目隠しとガムテープが外される。しかし、手に巻かれていた紐までは解いてくれない。

 

「うっ……」

 

 あまりの眩しさに私は目を細める。そして目が慣れ始めると、三人の男が私を見つめていることに気付いた。

 それに、どうやらここは体育器具庫の中らしい。

 

「こうしてみると、口うるさいのを抜きにすれば意外と上玉だな」

「こいつ、顔だけは校内でもいい方だし。胸は小さいけど」

「あ、あなた達は一体……」

 

 あまりに汚い言葉。私は声の主をキッと睨みつける。すると三人のうち一人が私の元に近づいてきた。

 

「お前、俺たちを覚えているか?」

「覚えているかって、そもそも私とあなた達は初対面……っ!!」

 

 私は思わず目を見開く。なぜならここにいた三人は以前、私が服装等を注意した三人だったのである。

 

「どうやら覚えてくれていたみたいだな」

「……どうしてこんなことを」

「どうしてって……ただ単に、お前がうざかったからだよ。俺たちが先輩であるにもかかわらず、色々言ってきてくれたよな? それがほんっと、うざかったの。だから一回、先輩の威厳ってものを見せてあげようと思って」

 

 余りに身勝手な理由。ゲスのような笑みが先輩の口から零れる。それを見た瞬間、私の身体に悪寒が走った。

 

 怖い……目の前にいる三人が怖くてしょうがない。私は真嶋君の言葉を思い出す。

 

 

 

『もう少し相手を考えろ』

 

 

 

 あの時は言っている意味が分からなかった。注意をしてきた真嶋君にイラッとした。だけど今は違う。

 

(真嶋君は、私の事を心配して……)

 

 彼の言った事は正しかった。でも理解するのがあまりにも遅かった。

 

 今までの私は、ただ運が良かっただけ。注意しても無視されるだけで済んだ。言い返されるだけで済んだ。

 真嶋君からは悪意なんて感じなかったが、目の前にいる先輩からは悪意しか感じない。

 

「おいおいこいつ、滅茶苦茶震えてんぞ。この前、俺たちに注意してきた時は大違いだな」

 

 ぎゃはははと、品のない笑い声をあげる。そんな彼らに、私はますます恐怖を感じていた。

 

「や、やだ……助けてください」

 

 叫ぼうとしてもか細い声しか出ない。そんな私を見て、再び笑い声をあげる先輩たち。

 

「助けてくださいだって。可愛いねぇ~」

 

 にやにやとしながら、先輩が私の顎に手を添える。触れられた瞬間、またしても全身に悪寒が走る。

 

 気持ち悪い……すごく、気持ち悪い。

 

「い、やぁ……」

 

 身体を必死に捩る。見られたくない、触られたくない……。だけどその仕草が、逆に先輩たちの興奮を煽ってしまう。

 

「いいねぇ。元々強気な女の子が、ここまで弱々しくなるなんて。益々興奮してくる」

 

 顎に添えられた手が頬に移り、そして唇に移った。私の唇をなぞるようにしていやらしく指が動く。

 

「や、めて……下さい。おねがい、します……」

 

 いつの間にか、目からは涙が溢れてきていた。

 

「おいおい、泣いちゃったよこいつ」「こんな姿見ると、もっと泣かせたくなるよなぁ」

 

 今までになく、下劣な表情を先輩方が浮かべる。何を……そう思った時にはもう遅かった。

 

「どうせこのあとやるんだし、取り敢えず服を脱がせちゃおうぜ」

「……えっ?」

 

 私が言葉の意味を理解したときには既に先輩たちが私の周りを取り囲み、ブレザーを脱がし始めていた。

 

「いやっ! 何をしてっ!!」

「動かれると面倒だな。おいっ! 取り敢えずブレザーを脱がした後は、こいつの身体を動けないように抑えとけ」

 

 そう言って、私のブレザーはあっという間に脱がされ、雑に放り投げられる。そして宣言通り、一人が私の身体を動けないよう、押さえつけてきた。

 

「ちっ、ベストも着てるのか」「それならハサミで切っちゃおうぜ」「それもそうだな」

 

 無情にも私の着ていたベストがハサミによって、じょきじょきと切られていく。

 

 何とかして抵抗を図るものの、二人がかりで押さえつけられているため、抵抗らしい抵抗もできない。そして私の上半身を守るのは、白い制服のみとなっていた。

 

「さーて、こいつはどんな下着をつけているのかな?」

 

 制服のボタンに先輩の指がゆっくりと近づいていく。

 

「嫌ッ……いやぁっ!! むぐっ!?」

 

 口を塞がれ、声を上げるどころか呼吸もままならない。そんな私を満足そうに眺めた後、改めてボタンが外されていく。

 

(もぅ、やめて……穂乃果、ことり)

 

 心の中で親友の名前を呼ぶも、その声は決して届くことはない。

 一つ、二つと、ボタンが外されていくたびに素肌があらわになっていく。

 

 そして、最後のボタンが残酷にも外されてしまった。

 淡い水色の下着があらわになり、私はキュッと唇をかみしめる。あまりの屈辱と羞恥に、瞳からは涙がとめどなく零れていた。

 

「なかなか可愛い下着をつけてんじゃん」

 

 舐めまわすかのような視線。好きでも何でもない人たちに、自分の下着を見られている。気持ちが悪くてたまらない。

 

「やぁ……っ」

 

 耐え切れなくなった私が俯く様にして下を向く。

 

「おいおい、勝手に視線を下げんじゃねぇよ」

 

 グイッと無理やり視線を上に引き上げられる。再び向けられる、下劣で無遠慮な視線。

 せめてもの抵抗として、私は視線だけ横に逸らす。

 

「いいねぇ、その表情。ほんと、たまらない。大丈夫、これからたっぷり犯してやるから」

 

 犯すという具体的な単語が先輩の口から飛び出し、私の恐怖はますます高まっていく。だけど私の身体には、もう抵抗するだけの力が残っていなかった。

 全身が恐怖で震え、絶望が心を支配する。

 

(来ないで……お願いだから、こっちに来ないでくださいっ!!)

 

 心の声とは裏腹に、身体は震えるだけで全く動かない。抵抗を止めたのを諦めたと感じ取ったのか、相手の顔が愉悦に歪んだ。

 

(やだっ、こんなことで私は……)

 

 涙が止まらない。相手の手がスカートのファスナーに迫っている。

 屈辱、羞恥、恐怖と様々な感情が私の身体に渦巻く。

 

 そんな中、一人の顔が心の中に浮かんだ。

 

 つい最近、私の家に居候をしてきて、目の前にいる人たちと同じようにだらしのない格好をして……。

 だからこそ、私は頼りたくなかった。でも、今はもう――。

 

 

 

「助けて……真嶋君」

 

 

 

「はいはい、ちょっとごめんなさーい」

 

 

 

 おおよそ、この場に最も適さない間延びした声が、体育器具庫内に響く。私は驚いて、視線を声のした方に向けた。

 こんな状況であんな声を出せる人。私は少なくとも一人しか知らない。先輩たちも驚いたように、体育器具庫に入ってきた彼を見つめていた。




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