「いや、すまないな皆。手伝わせて」
放課後の教室で、南が申し訳なさそうに言うと、その周囲の机を合わせて作業をしていた専用機持ちがそれぞれ笑みを浮かべた。
一夏はその中にいない。
「ちょうど暇だったんだ。気にしないでくれ」
「クラス代表として、お手伝いするのは当然ですわっ」
「ま、こういう単純作業は嫌いじゃないしね~」
「僕に手伝えることなら、いつでも言ってくれていいからね、南」
「嫁にだけ家事を任せる夫は良くないからな。夫婦が助け合うのは当然だ」
「私もこういうのは、好きだから……」
皆それぞれがそう言うと、南も助かる、と小さく笑った。
明日の授業で一年の全クラスが合同で行うIS演習の授業で配布されるプリント四種類を、それぞれホッチキスで止めていく作業。
千冬にまた余計なことを口走った南は、その作業を一人でするよう命じられたが、見かねた箒とセシリア、シャル、ラウラが声をかけ、放課後に一組に寄った鈴と簪も手伝うことになったのだ。
「あれ、そう言えば一夏は?」
鈴が教室を見渡す。
放課後とはいえ数名の生徒が残っており、高校生らしく談笑していた。
「それは言わなくても察してやれ」
「そうだよ、鈴。一夏にはもう彼女さんがいるんだから」
箒とシャルが冷静に返した。
それを聞いて鈴も大げさに頷く。
「ああ、なるほどね」
「南、寂しくなったら、またゲームに誘ってね」
「お前ら、俺を見捨てて織斑先生から逃げたの忘れてないからな」
簪が言うと、少し前に、同じメンバーでゲームをした時のことを思い出した南は、顔を顰めた。
「僕のマシンガン、役に立った?」
シャルもその時のことを思い出したのか、楽しそうに聞いた。
南がゆっくり首を振る。
「まるで歯が立たなかったぞ」
冗談を適当に言いながら、次々とプリントを纏めていく。
優に百を超える生徒がいる一年生だが、七人で作業すればそんなに時間のかかるものではない。
「それにしても、織斑一夏は布仏のどこを好きになったのだ?」
ラウラがホッチキスの心地いい音を立てながら首を傾げた。
そう言えば、と全員が考え込む。
すっかり手が止まってしまった。
「ま、まぁ、好きになった人がタイプ、とも言うし……あのおっとりした感じが好きなんじゃないかな」
シャルの答えに、納得したような出来ないような表情でラウラが頷く。
「ラウラは、どういう人がタイプなんだ?」
南が何でもないように聞いた。
すると、ラウラを含めた全員がビクッと肩を震わせる。
「わ、わわ、私か……」
一気に顔を赤くしたラウラは、もじもじと体を揺すりながら俯いてしまう。
ホッチキスで同じ四枚を何度も綴じてしまい、針で凄いことになったプリントを見て、隣の鈴の顔が引き攣る。
「それは、もちろん……嫁だ、お前だ、南だ。どうだ、これで満足か? これで答えになっただろう!?」
途中で吹っ切れたのか、ラウラは徐々に胸を張りながら声高らかに叫んだ。
セシリアが苦笑する。
南は、困惑しながらも頷き、ありがとうと小さな声で言った。
「そうか、俺か……まぁ、背も低いわけじゃないし、容姿だってそこそこイケてるはずだ」
「自分で言うのか」
箒が困ったように笑うが、簪は勢いよく頭を縦に振った。
「特にこの荒々しい髪は、女性受けしてるだろう」
南が誇らしげに自分の髪を触った。
くせ毛を惜しみなく伸ばしたクリンクリンな髪型は、日によってその形を変えているが、この日は珍しく簡単にセットしてきたのか全体的にナチュラルに流れている。
酷いときは、クラスの女子から「チリチリ」「もじゃもじゃ」「カール・ウェーブ・スパイキー」と好き放題言われ、いじくり回されている。
「それにISの専用機持ちだからな。経緯はアレだが、職にだって困らない」
誇らしげに言った南に、シャルは頷いた。
「ISの専用機を持ってるっていうのは、確かに凄くアドバンテージになるよ。それこそ職も安定するし、会社によっては、終身雇用だって保証されるんじゃないかな」
「それはいいな。俺の頑張りは太陽のように輝き続ける……それが決まれば、母ちゃんに電話してやりたいな」
「きっと喜んでくれるね」
「電話に出てくれたらな」
そう言いながらまたホッチキスで、プリントを挟む。
「……そういうアンタはどうなのよ?」
「ん?」
鈴が尋ねる。
「だから、アンタのタイプ。好みの女の人とか、教えなさいよ」
「ぜ、是非っ! わたくしもお聞きしたいですわ!」
鈴に続くようにセシリアが緊張気味に答えた。
同じく全員の視線がまた、南に向く。
南はしばらく考え込むように顎元に手をやった。
「それは……難しい質問だ」
更に目線を忙しく動かす南だったが、その間も、専用機持ちは作業を忘れて彼の方を見る。
「よく笑う人、かな」
「ふ、普通……」
「普通ってなんだよ」
満を持して言った南の答えに、鈴が肩を落とした。
しびれを切らして箒が前のめりになる。
「じゃ、じゃあ、例えば髪型は? さっき髪の話をしただろう。どんな髪型の女性が好きなんだ?」
「その人に似合っていれば、長くても短くても……」
「あああああああ!」
苛立った箒の声に、簪が怯えたように肩を振るわせた。
「で、では、わたくしたちの中で好きな髪型を選んでくださいな」
「そうだな、それがいい。当然、私だろうが」
セシリアが言うと、ラウラは自信満々にふんぞり返った。
南はゆっくりとした動作で、皆を見渡していく。
視線が向けられるたびに、専用機持ちは俯くか、恥ずかし気に視線を逸らす。
「皆、似合ってるが……強いて言うなら……」
「言うなら……?」
鈴が催促した。
「簪」
「よしっ……よしよし、よしっ!」
肩にぽんと手が置かれた、隣の簪はいつもでは考えられないような俊敏な動きでガッツポーズを繰り返す。
ラウラは項垂れた。
「僕、ちょっと髪切ってくるね」
「待て待て待て待て」
立ち上がったシャルを箒が慌てて抑えつけた。
「まだだ。まだ、考えているぞ」
「それか……」
箒に言われるまま南の方を見ると、確かにまたゆっくりと視線を動かし始めた。
選ばれなければ死ぬかのような緊張感が漂う。
簪は微笑を浮かべてその様子を観察していた。
「セシリア」
「やりました! やりましたわ、皆さん! どうも、ありがとう。セシリア・オルコットですわ!」
何故か自己紹介しながら、セシリアは飛び跳ねた。
隣で鈴が舌打ちをしている。
「わ、私は好みでないと言うのか! 嫁失格だぞ!」
「私だって、ちゃんと手入れもしているし、割と自慢の髪なんだが、ダメか……?」
ラウラは怒りながら、箒はしおらしく南に詰め寄った。
「いや、強いて言えば、だ。皆、綺麗だからこんなに悩んだんだぞ」
両手を向けて言った南に、二人は落ち着きを取り戻したのか、ゆっくり席についた。
鈴とシャルも一応、納得した様子である。
「ここまで来ると、やっぱり、気になる。南の好みの女性……」
「そうですわね。髪だけ好みと言うのは、悔しいですし」
簪とセシリアが言った。
「調子に乗りよって……」
ラウラが歯ぎしりをするが、南はどうしたものかと頬を掻く。
「でも、それもそうね。やっぱり好みのタイプよ……私たちの中から選んで!」
「僕だよね、南!」
鈴が言うと、シャルは胸に手を当てた。
それを聞いた鈴は鼻で笑う。
「アンタはないでしょ」
「何でさ」
「シャルロットは……なんか腹黒そう」
「なっ!? そんなことないよね、南!」
シャルが目を見開いた。
南はしばらく固まっていたが、やがて口を開く。
「……お前のことは好きだ」
「そんな!」
南の答えに、シャルが悲し気に眉を顰めた。
目を反らされたのも、心に効いたのかもしれない。
「冗談だ。ほら、作業に戻るぞ」
そう言って強引に話を切り上げた南は、またホッチキスを手にした。
作業も終わり、職員室の真耶に綴じ終えたプリントの山を届け終え、再び一組に戻って来た頃には、すっかり日が沈んでいた。
「飯、行くか」
鞄の中を整理しながら、南が言う。
「そうだな」
箒が頷くと、それに続くように皆が頷き、ゾロゾロといつものように廊下を歩く。
先頭で、箒と鈴、シャルが何を食べるか話し合い、セシリアと簪は互いの髪を自慢げに披露しあっていた。
南とラウラは一番後ろ、少し離れた位置で並んで歩く。
「ラウラ」
「どうした」
「お前が俺を慕ってくれてるのは凄く嬉しいぞ。これは本当だ」
「そ、そうか……」
ラウラは少しだけ顔を赤くした。
前を向いたままだった為、その様子がよく分かる。
「まぁ、相変わらず嫁ってのはよく分からんがな。たまにお前が言う、間違った日本の知識を教えてる奴を……俺は絶対に許さない」
南は芝居掛かったように言った。
するとラウラが目を丸くする。
「何を言う。我が『黒うさぎ隊』の副官、クラリッサの言っていることが間違っているというのか」
「仮に正しかったとしてもな、俺はお前に嫁って呼ばれるよりは、ちゃんと名前で呼んでほしいんだ」
「なぁっ!?」
ラウラが大きくのけ反った。
「まぁ、すぐには無理だろうが、徐々にでいい。なんなら、たまにでいいから名前で呼んでくれ」
「わ、分かった……み、南……」
小さな声で呟くように言ったラウラだったが、南は満面の笑みでその頭に手をそっと置いた。
軽く撫でるようにしてから手を離す。それから、歩幅を大きくして一歩前に出た。
前を歩くその背中に、ラウラは笑みを浮かべる。
食堂に着き、それぞれの注文を済ませ、料理を待つ。
南と箒は和食を選んだため、同じカウンターだった。
セシリアとシャル、ラウラは洋食を、鈴と簪は中華なので、別のカウンターになる。
「明日は稽古か?」
南が聞くと、箒は頷いた。
「うむ。最近、ISの整備やらで忙しかったからな。明日は道場に行くつもりだ」
「忙しくても、毎日竹刀を振ってるだろ?」
何でもないような南の言葉に、箒が目を見開いた。
声を震わせながら、指をさす。
「な、なぜそれを……」
「お前が真面目で、何事にも真剣に取り組んでるのは分かってる。その姿は、手入れされた髪以上に綺麗に見えてるぞ」
それだけ言って、照れたように笑った南は、食堂のおばちゃんから盆を受け取りテーブルに向かった。
「格好つけたなぁ」
照れ隠しで言うが、上手く隠せていない。それでも、箒には関係なかった。
しばらく動けずにいた箒は、遅れて後を追う。
その足取りはどこか軽かった。
南達が共に食事をすると、八回に一回ほどの割合で、食器を片付けるじゃんけんが行われる。
この日、白熱の食器片しじゃんけんを制したのは、南と箒、鈴、ラウラであり、セシリア、シャル、簪が歯ぎしりをしながら七人分の食器を片付けに行った。
先程の南の言葉に、箒とラウラは気味が悪いくらいニヤケていたが、鈴はため息をついて肘をついた。
そんな鈴を見て、機嫌が良いラウラは鈴の頭部を覗き込んだ。
「どーしたのー」
鈴の間延びした声がする。
「いや、ため息なんてついて様子が変だから宇宙人に乗っ取られたのかと思ってな」
「宇宙人?」
ラウラの突拍子のない言葉に、箒が眉を顰めた。
「昨日のテレビでやっていたぞ。宇宙人は人間を操作する時、つむじに小さな装置を埋め込むらしい」
「どう、あった?」
「いや、大丈夫だ」
ラウラが頷く。
「上手く隠したんじゃないか?」
鈴の隣で、南が得意げに言った。
すると、鈴は薄目で南を睨んだ後、わき腹に軽く拳を当てる。
「さっきの事、気にしてるのか?」
さっきの、とはもちろん作業をしながら話していたことだ。
それを察した鈴は、少しだけ動きが止まった。
しかし、すぐに首を振る。
「別に……」
「俺がこうやって冗談を言えるのは、お前のお陰でもあるんだぞ」
「え?」
思いもしない事を言われて、鈴は顔を上げた。
箒とラウラは宇宙人の話に夢中になっている。
「皆がいつも反応してくれるから、嬉しくて俺も言えるんだ。特に鈴はよくリアクションしてくれるし、何なら言い返したりもしてくれるからな」
「う、うん……」
「お前のノリの良さには感謝してる。好みのタイプって話を散々してたが、よく笑う人というのは、誰だろうな……」
含みを持たせて言った南だったが、当の鈴はもう聞いておらず、すっかり俯いてしまっている。
南はその肩にポンと手を置いた。
食後と言うこともあり、七人はのんびりと飲み物を片手に話し込んでいた。
すると、食堂の隅でフゥーと煽るような声がして、そちらを見ると、一夏と本音が困った顔でクラスメイトから突かれていた。
女子に囲まれるのにもう慣れてしまった一夏は、本音といても特に関係なく苦笑いをしているが、本音は違った。
真っ赤な顔をオロオロとさせながら、一夏の袖を掴んでいる。
その様子がまた、クラスメイトを盛り上げた。
ふと、南と一夏の視線が交わった。
「あ、南が呼んでる。行こうぜ、ほんちゃん」
「う、うん……」
本音は引っ張られるまま、一夏について行き、南たちの座るテーブルまで駆けてきた。
「別に呼んでないぞ」
南が冷たく言い放つと、一夏は図々しく席に座り込みながら身を寄せた。
「まぁ、そう言うなって。助かったよ、南」
肩を組んでくる勢いの一夏に、南は鬱陶しそうにする。
本音はこちらのテーブルに来ても、セシリアや簪に「今日は何をしたのか」と問い詰められ、また俯いてしまっていた。
「それにしても、今はクラスメイトの一部しか知られてないからいいけど、俺達が付き合ってることが、学校中にバレると困るなぁ」
「まぁ、面倒なことにはなるだろな」
一夏が言うと、箒が頷いた。
「未来のことなら、回避出来るぞ」
南が人差し指を立てた。
「え?」
「有名な話があるだろう。昔、地球に隕石が落ちるとかいうデマが流れた時に、ある宗教団体は全員で飛び跳ねたらしい。地球の位置を隕石から逸らそうとしたんだ。未来は努力で変わる」
「死ぬまでに、南から役に立つ言葉を聞きたい」
シャルが項垂れた。
一夏も乾いた笑みを浮かべた。
すると、セシリアと簪、果ては鈴とラウラまで参加した詰問が、今度は一夏に襲い掛かる。
「二人きりの生徒会室で何をしましたの!?」
「本音が、とてもここでは、言えないことって」
「あ、アンタまさか……」
「ふむ、非常に興味深い。話を聞かせろ」
一夏は言葉を詰まらせながら、頭を働かせる。
興味のないような素振りを見せながらも、箒の耳は完全にそちらに向いていた。
「あはは。一夏と布仏さんは大変だね」
「そうだな……まぁ、大変なのはお前もだが」
「ん? どういうこと?」
「いつも俺達のことを気遣ってくれているじゃないか。七、八人で話していると、どうしても誰かが会話に参加できない流れが出来る……そんな時でも、お前がいつも話を振ってやってるだろ」
「…………」
シャルは黙っていた。
構わず、南は続ける。
「そんな優しい気遣いのお陰で、俺達は円満に過ごせているんだ」
「……そっか。さっきのこと気にしてるんだね」
全てを見透かしたような言い方だった。
南は言葉に詰まる。
「ふふ、気にしなくていいのに……そうやってラウラや鈴、箒にも声かけてたんでしょ」
「……お前には敵わないな」
小さく笑った南に、シャルは誇らしげに胸を張った。
「そう、僕には何でもお見通しなんだから。特に、南の考えてることなんて」
「ほう。なら、お前があっと驚くプレゼントをしてやる」
「ホント? 楽しみだなぁ」
「ああ、任せとけ」
一夏と本音を入れた九人が座るテーブルで、他の七人に聞かれないように話す南とシャルの距離は、一夏と本音より近い。
寮の自室に戻る途中。
廊下の角で、箒と鈴、シャル、ラウラは右に折れた。
南とセシリア、簪は左に曲がる。
一夏と本音は例によって、生徒会室に戻って行った。たまたま夕飯を食べに来ただけだったらしい。
「わたくし、これからもこの髪を、美しいまま保つよう努力しますわ。ですから、南さんもたまにでいいので、褒めてくださいね」
「わ、私もっ……私も、今日、嬉しかったから……だから、頑張るね。南のために」
ふと二人がそう言うと、南はしばらく黙っていた。
寮の廊下をそっと照らす月を一目見て、息を吐く。
「今日はたまたま髪の話になったから、お前ら二人の名前を出したわけだが……」
セシリアと簪の表情がわずかに曇る。
この後に続くかもしれないマイナスな言葉が、無数に浮かび上がってきた。
しかし、南は優しく笑って二人の背中に手を当てた。
「何も髪だけが魅力ってわけじゃない。それはたくさんある内の一つだ」
セシリアと簪が驚いた顔をする。
背中を押されて足を止めることは出来ず、思考は追いつかない。
「まぁ、気にするなってわけじゃないが、二人とも他にも魅力はたくさんあるってことは覚えておいてくれ」
言い終えたそこは、南の部屋の前だった。
ぼーっとしている二人をよそに南は鍵を取り出し、扉を開ける。
「それじゃあ、おやすみ」
南が部屋に入り、扉がガチャ、と音を立てて閉まった。
少しの間、固まっていた二人だったが突然動き出し、扉をバンバンと叩く。
「南さん! 詳しく! 詳しくお願いしますわ!」
「魅力って、他には、どんな……お願い、南、開けて……!」
扉を叩きつけるようにしながら叫ぶ二人の様子はホラー映画のようで、自慢の髪を振り回していた。
「おい、何を騒いでいる」
「南さんが、南さんが!」
「ちょっと、引っ込んでて……」
セシリアと簪は、呼びかけられた声を無視して扉を叩いていたが、五秒後にピタッと動きを止めた。
生唾を飲み込み、ゆっくり声の方を振り返る。
「何を騒いでいるか聞いているんだが?」
千冬だった。
仁王立ちしている千冬の目は確かに怒っている。
「えっと……それは……」
「あの……つまり……」
「神代に課した資料のまとめ、お前たちも手伝ったと聞いて一言声をかけようと思ったんだが……そうか、一言では足りないか」
「いやー……あ、わたくし、用がありましたわ。髪を美しく保たねばなりませんので、おほほほほほほ……」
「そういえば、もうすぐ特撮ヒーロー大集合祭りが始まる。早く帰らないと……」
セシリアと簪は同時に言うと、「それではっ」と頭を下げ、踵を返した。
六歩ほど歩いて、走り出―——そうとして、首根っこを掴まれた。
「髪なら私がセットしてやろう。特撮祭りも、私の部屋で見るといい」
「「は、はい……」」
南に背中を押された後は、千冬に引っ張られていく二人であった。
「あ、もしもし? ちょっとお尋ねしたいんですけれども。赤いバラ百本の花束だと、おいくらになりますかね?……………なるほど……三本だったら?」
シャルへのプレゼントは、赤いバラ三本になった。