異世界転生したけど一周回って冷静になるよね。   作:暁月煌

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遅くなりました!申し訳ないです!


視察員と射撃

ちょこーっとだけキュンッとくる発言をされたせいで、緊張してしまった。いや違う、あれのせいじゃない。違うったら違う!…で、失敗するための試験が待っているとしても、やはり過度な緊張は心臓に悪い。今もバクバクしている。足も震えている気がする。そして、ボク達は扉を開けて部屋に入る。

 

 

「お、来たねツクヨくん。」

「鷹ノ眼学園、第一学年cクラス所属、星河月夜たゃっ...只今参りました。」

 

 

 ああぁあ!?噛んだ!!このタイミングで噛んだよ!?穴があるなら入りたいよぉ...

 

 

「…うん。取り敢えず彼の紹介から始めよう。今回の視察員でガリウス=ミレントラントさんだ。」

「グラン国軍第三大隊副隊長ガリウス=ミレントラント中佐です。早速ですが能力の方を測りたいと思っております。移動しましょう。」

「はっ、はい!」

 

 

 そのまま立ち上がり、歩き出したガリウスさんの後を慌てて追う。エレベーターで地下まで下りガリウスさんを先頭に、学園長、ボク、会長さんの順番で歩いていると会長さんが横に来て色々説明してくれた。

 

 

「この地下通路が出来たのはね、つい最近の事なんだ。言わずもがな、理由は分かるよね。」

「転生者が現れたからですか?」

「せいかーい♪その通り。転生者のスキルはどれも馬鹿みたいに強力なものばかりだったからね。どんな効果のスキルか試そうにも地上だと周りにどれだけ被害が及ぶか分からないから地下で試そうって訳。」

「じゃあこの先にその、確認やら実験やらするところがあるのですか?」

 

 

 ボクは円形で光沢がぼやけた銀色の丈夫そうな扉を指差して聞いた。

 

 

「そうそう、ってもう着いてたのか。そう、ここが入り口。因みにこの扉、ドラゴンを突撃させても壊れない位頑丈だよ。」

「そ、そうなんですか...すっごく硬いんですね...」

 

 

 ボクは硬さ以前にドラゴンが居ること自体に驚いたよ。扉は転がるように開くようだ。こんな具合に会長さんとべらべら話していたら遂に視察が出来そうな広い空間に着いた。床や壁は入り口の扉と同じ素材で作られているようで、全面ぼやけた銀色だ。

 いつの間にか会長さんと二人になっていた。学園長と、ガリウスさんはどこにいったんだろう。床と壁の境目が分からないせいで、平衡感覚が狂いそうだよ。

 

 

「あー、テステス。ホシカワツクヨさん。聞こえてますか?」

 

 

 なんか放送が流れた。ガリウスさんの声だ。ここから叫んだところで放送している部屋には届かないだろうから、頭の上で大きく丸を作ってアピールする。あまりの必死さに隣から笑い声が『クスッ』みたいに聞こえたような気がするけど気のせいだ。物凄く具体的に笑い声が分かったけど気のせいったら気のせいだ。ボクの必死なアピールに気が付いてくれたのか、ガリウスさんから返事があった。

 

 

「問題無いようですね。では、これより視察を始めます。まずは、そうですね...早撃ちをしてみましょうか。」

 

 

 ギルドの試験の時と同じように手に銃が出現する。相変わらずハンドガンだ。...システムが同じなのだろうか。これまた試験の時と同じで、的が次々に出てきた。そして言わずもがな、結果も同じ。しかし新しく知ったことはあった。

 

 

「ふむ。反応速度1.5秒ですか。軍に入るには遅すぎますね。」

 

 

 そう!遅すぎるらしいのです!年齢は考慮されているのでしょうか!?正直、この体ですからね、頭で、目で追えていても体が追い付かないのですよ。いや、まぁ、確かに転生前に学校の実験で人間の反応速度は0.2~0.3秒位って習った気がするけど。そう考えると遅いなぁ。ボクと違って今までの転生者はきっと何かしら即戦力になったんだろなぁ。

 

 

「か、会長さん…お、おお、おそっ、遅いって言われちゃいましたよ?」

「うん、上手く喋れてないよ。緊張してる?」

 

 

 そうじゃない!そうじゃないよ、もぅ…会長さん意外と天然なところがあるなぁ。

 

 

「ちっがぁう!ボクの反応速度は普通だったはず!って話!」

「あ、あぁそう言うことか。大丈夫だよ。来る前に言っただろう?」

「そうですけど…」

「まぁまぁ、落ち込むのは後にして次の実演しようね。」

 

 

 くっ!微笑みが強力過ぎる!!なにも…言えない

 

 

「それでは次です。遠距離射撃をしましょう。的は弾が名著する度に遠くに離れていきます。ある距離で、弾を三発外した場合にこの種目を終了します。因みに、的の端にかすったりしたものも外れになります。」

 

 

 ルール説明が終わった様なので再度大きく分かったアピールをする。すると、手元にスコープの付いたライフル、所謂スナイパーライフルが出現した。よく見るとサイレンサーもついているようだ。

 

 

「今出現させたライフルの装弾数は七発です。では、始めます。」

 

 

 遠くの方、かなり遠くの方に何か点が増えた様だ。ボクはバイポットをたて、銃身を安定させある程度当たりをつけてスコープを覗く。肉眼ではおよそ見えるはずのない距離が見えるようになり、中心に赤い丸が描かれている単純な的を捉えた。きっとあの赤い丸を狙うのだろう。距離はどれくらいだろうか等考えてはみたが、考えていても仕方がないので取り敢えず撃ってみることにした。

 

 

ーーーパスッ。

 

 

 減音された発砲音と共に弾が射出され、的に向かう。そして、的の脇を通りすぎていった。外れだ。その後、また同じ距離で二発外した所で的が消えてしまった。くそう、当たらん…

 

 

「終了です。では、最後に自分の出せる最大出力の攻撃を目の前の柱に当ててください。」

 

 

 目の前の床から四角の柱が出てきた。一見壁や床と同じ色、質感で綺麗に見えるがよくよく観察してみると小さな傷が六つ付いていた。…別に頼んでないのにニコニコしながら会長さんが寄ってくる。

 

 

「ツクヨくん。"傷に気づいたね?"」

「うっわ、面白くない!!つまらないよ!?」

 

 

 すごーい!よく即興で思い付きましたね!面白い!

 

 

「本音でてるから!そっちが隠す方だからね!!僕だって傷つくよ!?」

「あ、え?ご、ごめんなさいぃ?」

「うん、もういいよ。でね、その傷なんだけど初代の勇者様のパーティーはね、六人だったんだよーー」

 

 

 まぁ、長かった長かった。長話は苦手。取り敢えず会長さんの話を纏めると、初代勇者のパーティーは男五人女一人の六人。リーダー格【戦士】の勇者、ライニー・グラット。【盗賊】の勇者、ムッティ・オラシズマ。【弓士】の勇者、ニーグル・ドメト。【錬金】の勇者、シドウ・カイト。【僧侶】の勇者ウォン。そして、紅一点 【魔術】の勇者、ライラ・メルリア。そう、逆ハーレム。羨ま…けしからん。…………で!傷は、その人達が試したときについたんだぞって話。その他にもそれぞれの勇者について詳細を熱く語ってもらったけど今は割愛。

 

 

「それで、今回も?」

「うん。前言った通りでね。」

「と、言われましてもボクまだ自分の《スキル》の効果すら把握してないから何も出来ませんよ?」

「ん?あぁ、そうか!ガリウス様!ツクヨは何も出来ません。自分の事すらいまだあまり分かっていないようです。」

「ふむ…ではこれで全行程を終了としよう。以上で視察を終了する。解散。」

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

 無事に視察は終わり、ボクと会長さんは地上の帰路についていた。気になることが出来た。自分の《スキル》についてだ。まず当面の目標は《スキル》を使いこなせるようになることだね。

 

 

「さーって!明日から頑張るぞー!」

「ツクヨは気合い十分って感じだね。頑張るのは大事だけど休むときはしっかり休むんだよ。ツクヨに倒れられたら僕も困るからね。」

 

 

 そう言って本当に困ったように微笑んで見せる。会長さんはこうゆうときにさらっと優しい言葉を掛けられる。流石の一言だ。一体今までその甘言で何人の女性を勘違いさせてきたのだろうか。全く、困ったイケメンだよ。ボクは…惚れないからな!

 

 

「そうですね。今日は休みます。」

 

 

 出来るだけ素っ気なく対応する。ボクは勘違いしてないからね。

 

 

「ん?大丈夫か!?顔が赤い!しかも額も熱いな…今すぐにでも休んだ方がいい。ちょっと我慢しててくれよっと。《飛遊(フライ)》」

「うぇっ!?わっ、わっ、わああああ!」

 

 

 急に来た浮遊感に驚き思わず叫んでしまった。そして興味本意で下を向いて、後悔した。高い!速い!

 

 

「おちっ、落ちるうぅぅぅぅ!!死んじゃうぅぅぅぅ!!」

 

 

 不覚にも、本日二度目の絶叫を許してしまう月夜であった。

 

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