粒子の狩人 ~Particle Hunter~   作:ピジョンブラッド

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また投稿が空いてしまった・・・
施設からの脱出!
というと何かのゲームみたいだな。

ではでは・・・


オンナノヒト

「HK416!特殊部隊か、逃げろ!」

二人は猛ダッシュで後ろへ走り、元来た通路とは違う通路に駆け込む。

後ろから何発もの弾丸が襲う。

「ひっ!」

左の太ももをかすめる弾丸。

相手は固い防御を重視した装備のようで、移動のスピード自体は大して速くはないが、なんといっても連射性が最大の恐怖源である。

顔からは冷や汗が破裂した水道管のようにドバドバと垂れる。

自分のすぐ横で走り続ける枳殻は、どこからか自動式拳銃を抜き後ろへ威嚇射撃を続ける。

右に曲がり左に曲がり、「東部外周3」と書かれた看板が下がっている場所に出て来る。

「うっわ・・・」

左側がほぼ全てガラス張りになっており、外はほぼ真っ暗になっているが、海底に一定間隔で設置されたライトのおかげでガラスの向こうがヒトの住みえない液体で満たされていることはわかる。

海底基地の外周ということは、最も外側、つまり最も海に近い場所にいるということか。

そこでピタリと銃声が止む。

少し振り返ると、さっきの三人はまだ元気に俺を追いかけていると思いきや、鮮血をとくとくと流して仲良く突っ伏していやがる。

さすがは多分自衛幹部なだけあって、ほぼ後ろ向きなのに拳銃のエイムが完璧だ・・・

と思っていたが、どうやら枳殻氏の表情を見るにそういうことではなさそうである。

「私じゃないぞ、誰だ?」

スライドストップに親指が当たるように左手を添え、腰を少し落として拳銃を構える。

誰か味方がいるなら少し安心できるのだが。

そっと倒れる男を覗き込むと、血液の流れだす源に深々と無色透明なピックが刺さっている。

銃弾ではなくピックが刺さっているというのはどういうことなのか?

よく見てみると一人あたり3、4本も体を撃たれているようだ。

恐る恐る近づいてみる。

「ぎゃあ!!」

バシュッとキレのいい音を立ててピックが全部抜け、上空ちょうど1mあたりに浮遊する。

かなり心臓に悪い。

そして自分が想像以上に変な声をあげていたことに今更ながら気づく。

自由意志エネルギー、ユニファイア。

最近習得した単語が頭をよぎり、まさかと思う。

「ちょっとタチ、これはどういうこと!」

女の声。

若い女の人の声。

通路の陰から現れる華奢なシルエット。

短めのひだスカートに、ワイシャツとVネックベスト。

ありがちな女子高生の姿。

女子というものを女子として意識したのはこれが初めてかもしれない。

これが司朝 悠為、シアサ ユイとのファーストミーティングであった。

枇杷茶の髪をさらりと揺らし、高級そうな革靴をカツンと鳴らし通路の陰から身を出す。

スパリと切れ長な瞳に猜疑と警戒の色を浮かべながら、しかし堂々とした様子で歩み寄ってくる。

思わず気迫に圧されて数歩の後ずさり。

彼女が静かに腕を広げると、浮遊したクリアーな角柱は左右にうねりながら全て一つに融合する。

一本のレイピアに形を変えた角柱たちを右手でむんずと掴み軽く薙ぎ払い、口を開けた。

「タチ!今すぐ説明しなさい。こいつらは何なの?そんでその、となりの、彼は・・・どなた?」

「悠為くん、ああとその・・・」

口籠もりながら言語野を最大速度で回転させ、お互いを紹介する。

「悠為くんはユニファイアなんだ。石英の。で、彼は新しく『発芽』したエタノールのユニファイアだ。」

「で、この武装集団は?」

「国連軍・・・だと思う。」

「思うぅ!?タチ、何であんたが把握できてないのよ!!」

男二人で揃って震え上がる。

「す、すみません!というか、えっと、はいすみません!」

俺が人生で初めて女子と会話した日は、初めて女子に虐げられた日になってしまった。

「あんたが謝る必要ないじゃない。変なの。それより早くポッドに急ぐよ!」

「お、おう」

三人で走り出そうとする。

前傾姿勢になってよし走るぞ、となった時。

「はぁ!?USP?あんた拳銃一丁で行く気?命知らずにもほどがあるわよ!」

再びの怒号。

枳殻は彼女からするとダメ人間のようだ。

俺にとっては頭の切れる自衛官なのだが。

「ほれ、拳銃は腰に。こいつのアサルトライフルでも使って、ほらマガジン。」

平然と遺留品を引きずり出し、枳殻に渡す。

とんでもない精神力をお持ちの方なんだなぁと感心しつつ、後ろについて走り始める。

みし。

明らかに耐え切れない負荷に、ガラスが悲鳴をあげる声。

ぎししし。

鉄骨の歪む音。

彼奴等、数撃ちゃ当たる的思考回路で無差別発砲、乱射したせいで、ガラス張りドームにひびを入れたんじゃないか。

後ろを恐る恐る振り返ると、案の定ドームにヒビが広がり、今、割れた。

「マジかよ!」

大量の水塊の流れが渦を巻き、その足を捥がんと迫り来る。

乳酸だらけの筋肉に負荷をかけつつ全速力でダッシュしているが・・・

間に合えェッ!

突然キョロキョロする悠為さん。

「これね!」

悠為さんは軽くブレーキをかけつつステップを踏んで、身体を捻って回転する。

石英のレイピアをハンマーに変形させ、遠心力にモノを言わせて加速させる。

廊下にある緊急用のリモコンレバーを厳重に覆う強化プラスチックのカバーが、ハンマーで木っ端微塵に粉砕。

重要そうな雰囲気を放つ重いレバーのグリップに体重をかけて、一思いに引き降ろした瞬間、耳障りな警報音とともに固い衝撃がやってきた。

地響きとともに、鉄の隔壁が縦横互い違いにその歯をガッチリと閉める。

「水の次はなんだ扉か!?」

背後から隔壁が噛み合う轟音が近づく。

まるでフィクションのような展開。

そろそろ足も限界だ。

前方に「緊急用脱出浮上ポッド東部第一プラットフォーム」の文字!

あと少しだ。

束の間の安心感。

しかし最後の隔壁が目の前で閉まる・・・

だめだ、これじゃ間に合わない!!

「行~く〜わ〜よ〜!!」

首回りに冷たい感触が走り。

「ぐっえ。」

喉が締め付けられ、空中へ浮遊する感覚。

首を支点に持ち上げられ、もうあと1.5mしか隙間のない隔壁の間に、ポイっと放り込まれ、枳殻に覆いかぶさってアクロバティックに着陸。

首の拘束感が消え失せると、更に俺たちの胴体上に例の彼女が「足から」着陸。

「危なかったわ・・・」

「い、い、痛い。肋骨折れてんじゃねえの・・・?」

「ああ、石英の柱であんたらの首根っこを掴んで放り込んだだけよ。」

「だぁけぇってなんだよ?じゃあさっきのドロップキックはなんだぁ!?もうちょっとマシな方法なかったのかよ?」

「あんたねぇ、その口の聞き方何よ!」

「だあぁらって蹴るこたぁねえだろ・・・」

枳殻が間に入って仲裁に入る。

「まあまあ・・・それよりも脱出ポッドに乗り込むぞ。」

枳殻がパネルを操作し、スライドドアを開ける。

先には、四人乗り程度と思われる紺色の潜水艇のようなものが十数台並んでいる。

一台一台真っ白なナンバーが振っている中で、8〜12番が残っている。

一番近い8番の上に乗り上た枳殻は、取っ手に手をかけて操縦席と思しき部分のフロントをプシューと気の抜ける音と共に跳ね上げる。

『Emergency escape submarine the first of eastern 8』

『Now loading』

『Go to J-18 shaft』

『Nitro tank has been filled』

無機質な機械音声でアナウンスがされる。

「よし、いけるな。乗ろうか。」

三人で搭乗し、フロントを密閉する。

枳殻は素早く表示されているパネルを操作し、エンジンの稼動音を立てて起動が完了する。

艇の下にあるベルトコンベアーで射出口なる場所に出て後扉が開き、潜水艇射出管の中が水で満たされ始めると、率直に疑問と不安を枳殻に尋ねる。

「待ち伏せとかって、ないですよね。あと、ここって太平洋のどの辺りですか?」

「待ち伏せは・・・分からないな。多分ないと思うが。ここは天皇海山群、桓武海山からすぐの場所だ。太平洋の真ん中さ。」

天皇海山群・・・

ハッとする。

「枳殻、今日何日だ!!」

「日曜日・・・」

「じゃあ倒れたのが、11/6、だから11/8?」

「いや、11/22だ。」

に、二週間!?

おかしい。

いくら日本から遠くても、二週間はかからないはずだ。

俺はその間何をしていたんだ?

いや何を「された」んだ?




若干怪しそうですが・・・
大丈夫でしょうか。
場所は天皇海山だそう。
遠いなおい・・・
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