本業は研究者なんだけど   作:NANSAN

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EP13 アーク計画

 

 シオを食事に連れ出すようになってから数日後、シスイがリッカと研究室で仕事していると、突然ペイラーに呼び出された。しかもアナウンスではなくプライベートナンバーで呼び出したのである。取りあえず面倒が絡んでいるのは間違いない。

 だが、ペイラーの口調から早く来いという意図が伝わってきたので、仕方なくペイラーのラボへと行くことにしたのだった。

 そして適当にノックしてから入ると、いつものコンピューターを挟んでペイラーが出迎える。食事にでも連れだしているのか、シオの気配はなかった。

 

 

「どうしたんです博士?」

「じ、実はだね―――」

 

 

 話を聞けば、シオに服を着せようとして逃げ出したのだという。どうやら天然繊維が肌に合わなかったらしく、無理やり着せようとしたら部屋を突き破って逃げてしまったのだとか。

 今は第一部隊のメンバーで捜索しているらしく、すぐに見つかるだろうと思われる。

 

 

「それで僕は何を?」

「シオの服を作って欲しいんだ。アラガミ素材を使ってね」

「僕に出来るのはデザインと偏食因子の組み合わせ計算だけですよ? それにデザインも技術室の人には敵いませんし。どちらにせよ、実際に作ろうと思ったら、技術室の手を借りないと……」

「うむ。リッカ君にも協力して欲しい。何、彼女は既に私の側だよ」

「セリフが完璧に悪役ですね」

「し、辛辣だね。ともかく頼んだよ」

 

 

 やはり面倒事ではあったが、一理ある。

 シオの服装はフェンリルの旗を巻いただけという、女子にあるまじき姿なのだ。彼女を人として育てることを考えるなら、人と同じようにオシャレさせるべきだろう。僅かな期間で言語を習得しつつあるので、そろそろ文化的なことを教えていくべきだ。

 シスイは再び研究室に戻り、リッカに事情を説明する。

 

 

「―――というわけで協力頼むよ」

「面白そうだね。いいんじゃないかな? 丁度息抜きにもなるしね」

「じゃあ、デザインと素材の組み合わせから始めようか。取りあえず、僕が持っている素材を適当に持ってくるから、リッカはデザインをお願いできる?」

「いいよ。とびっきり可愛いのを用意しておくね」

 

 

 シスイがターミナルを操作して素材を引き出している間、リッカは雑誌などを参考にしながら服のデザインを決めていく。サッと書けるあたり、リッカの技術者としての才能が窺えた。

 技術開発室ではデザイン、設計、組み立てを全て行う。

 ゴッドイーターが着る服も技術開発局で制作しているので、彼女にとってはお手の物なのだ。

 

 

「うん。こんな感じかな?」

 

 

 ペンと紙を持って五分もすれば、デザインの二つや三つは描ける。下書きのラフなものだが、どれも女の子らしいデザインだった。

 素材をいくつか持ってきたシスイは、リッカの描いたデザインを見て感想を述べた。

 

 

「カッコイイ系、可愛い系、綺麗系ってところかな? どれも似合いそうだけど……」

「シスイ君はどれがいいと思う?」

「んー。三つめのドレスにしよう。折角だから偏食因子による汚れ防止を組み込んでみたい。あとは形状記憶系の要素も入れて皺にならないように作ってみよう」

「いいね。面白そう」

「取りあえず、偏食因子の配列をコンピューターで計算させて……」

 

 

 シスイは計算ソフトに偏食因子の組み合わせをプログラムし、計算を実行する。偏食因子の作用によってさまざまな効果が得られるので、それを予測するためのソフトがあるのだ。これを使うと開発が楽になる。あくまでも理論なので、新種の偏食因子が見つかると、その度にソフトを更新しなくてはならない。最先端の研究では役に立たないソフトだった。

 だが、服を作る程度なら問題ない。

 

 

「リッカ、こんな感じで成型機にかけて。細かいところは手作業で偏食因子を織り込もう。α相とβ相が干渉しないように気を付けて。γ相は安定しているからΔ相からθ相までを平衡させて」

「わかった。すぐに出来るよ」

 

 

 シスイとリッカは若くてもプロだ。

 この程度ならあっという間に完成させてしまう。

 一時間ほどで粗方の形成を完了し、残りをリッカが織り込んでいく。この辺りが技術者の腕の見せ所だ。極東支部の開発主任を任されているだけあって、手際よくシオの服を完成させた。

 

 

「うん。出来た」

「おー。いい感じだね」

「当然。自信作だよ。早速マネキンに着せてみるね」

 

 

 リッカは部屋の端に置いてあるマネキンを持ってこようとするが、シスイは待ったをかける。

 

 

「どうせならリッカが着てみたら?」

「へ? 私?」

「いつも作業着だし、偶にはどう?」

「え……でも」

「動きやすさとかも確認した方がいいし、マネキンに着せるだけでは分からないこともあるでしょ?」

「そうかもしれないけど……」

「じゃあ、僕は部屋を出るよ。着替えたら声かけて」

「あ、ちょっとシスイ君!?」

 

 

 問答無用で部屋を出るシスイ。

 終始、悪い笑顔を浮かべていたことから、リッカを揶揄っているのは間違いない。

 

 

「……これ、着るの?」

 

 

 リッカは作った服を手に取って呟く。

 作る分には楽しかったが、自分が着るとなると恥ずかしい。

 神機一筋、毎日作業着で生きて来たリッカにはハードルが高すぎた。

 

 

「着るしかないよね……シスイ君の意見も一理あるし」

 

 

 これは試験。

 適切な服が完成しているかの試験。

 リッカはそう考えて完成した服を着てみることにした。

 この後、顔を真っ赤にするリッカと、面白がって写真を撮るシスイが居たとか居なかったとか……

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

「きゃー。可愛いーっ!」

「似合ってますよシオちゃん!」

 

 

 連れ戻したシオに早速服を着せると、サクヤとアリサが嬉しそうに声を上げていた。作った側のシスイも満足そうにその光景を眺める。

 ペイラーを含めたユウたち男性陣もそれぞれ感想を述べていた。

 

 

「うむ。シオも喜んでくれているようだね」

「確かに似合うな」

「うんうん。すっげー似合ってるぜ! なぁソーマ!」

「なんで俺に振る……」

「またまたぁ……正直に言ってみろよ」

「ふん……まぁ、似合ってんじゃねぇか?」

 

 

 ソーマは顔を背けながら褒める。

 それを聞いたシオは嬉しそうに口を開いた。

 

 

「おお? 似合うか? なんか、気分いいな!」

 

 

 ここまで喜ばれるとシスイとしても嬉しい限りだ。

 ついでとばかりにリッカの貴重な写真もゲットしたので、今日はきっと良き日である。

 そんなことを考えていると、急にシオが歌い始めた。

 歌詞はなく、メロディーを口ずさむだけだが、ちゃんと歌になっている。これには皆が口を閉じて聞き入った。そして一通り歌い終わると、シオは改めて口を開く。

 

 

「これ、知ってるか? 歌、っていうんだぞ」

「まぁ……」

「シオちゃん……凄いです」

 

 

 サクヤとアリサは手を口に当てて驚く。

 そんな中で、ユウはふと疑問を口にした。

 

 

「シオ、歌なんてどこで覚えたんだ?」

「んー? ソーマと聞いたっ!」

『えっ?』

「……ちっ!」

 

 

 皆が呆気にとられた顔でソーマを見ると、本人は舌打ちして顔を逸らす。そんなソーマを揶揄い甲斐があると思ったのか、サクヤはニヤニヤしつつ口を開いた。

 

 

「あらあらあら? いつの間に仲良くなっちゃったのかしら?」

「うるせぇ……ったく。一人が一番だぜ……」

 

 

 顔を赤くしているので全く説得力がない。

 そんなソーマをシスイはタブレット端末の撮影機能で写真に収めた。

 カシャリとシャッター音がしたことで、ソーマは撮られたことに気付く。

 

 

「テメェ! シスイ!」

「赤面するソーマの写真。レアだね」

「今すぐ消しやがれ!」

「残念。僕の持つ全てのデバイスでストレージ共有したから」

「~っ!? クソッ!」

 

 

 シオが来たことで一番変わったのはソーマかもしれない。

 第一部隊の心は一つになったのだった。

 長きを経て、またシオのお陰もあってようやく一つになれたのかもしれない。隊長であるユウはそんなことも考えていた。

 だが数日後、再び第一部隊はバラバラになる。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 アーク計画の暴露。

 それによって極東支部はどこもかしこも荒れていた。

 人類すべてを収容することの出来る楽園を創るエイジス計画を隠れ蓑として、選ばれた千人だけを救いだすアーク計画が進められていた事実をリークされたのだ。

 犯人は第一部隊副隊長の橘サクヤ、そして同部隊員のアリサ・イリ―ニチナ・アミエーラである。

 シスイ、コウタ、ソーマはユウの部屋に集まり、テレビ電話で二人と連絡を取っていた。

 

 

『ごめんなさいね。支部長がいない今が最大のチャンスだったの』

『エイジス島を私とサクヤさんで確認してきました。これは事実です』

 

 

 部屋に設置されているターミナルの画面に二人の顔が映っており、背後には逆さになった女性の顔のようなものがある。世界最大のアラガミ、ノヴァだ。

 その事実を知り、コウタは力なく呟いた。

 

 

「そんな……みんなが救われる楽園だって聞いてたのに……」

『選ばれた千人の中にはコウタも入っているわ。そして二親等までの親族も箱舟に乗ることが出来る。リンドウが調べたリストに載っていたわ』

「極東の職員は全員リストに載っているのかな?」

『そうみたいね……シスイ君の名前だけは無かったけど』

「シスイのが無い……?」

 

 

 ユウはそう言ってシスイの方を向く。

 だが、シスイは肩をすくめるだけだった。

 それで仕方なくユウは画面に目を戻すと、サクヤは言葉を続ける。

 

 

『私たちはエイジス島の端末にアクセスして情報を抜き取ったわ。そしてリンドウの調べた分を含めて、アナグラの回線に流した。それが今回の騒動よ』

『既に分かっていると思いますが、私たちはアーク計画を止めるつもりです。リンドウさんが残してくれた……遺志を引き継ぎますから。だからもしも敵対するなら容赦しませんよ』

『ちょっとアリサ!』

『冗談です……ですが、そうならないように祈ってますよ』

 

 

 アリサの言葉を最後に通信は切れる。

 偏食因子と簡易投与機を持ち出しているとのことなので、アナグラへと帰るつもりはないのだろう。例え犯罪者と呼ばれることになったとしても止まるつもりはないようだ。

 静かになったユウの部屋は沈黙に包まれる。

 それを先に破ったのはコウタだった。

 

 

「俺は……俺はアーク計画に乗る。何をしてでも家族を守るって決めたんだ。だから……ごめん。特にシスイ」

「別に構わないよ。家族は大事だからね。ユウ君とソーマはどうするんだい?」

「俺は……正直反対だ。たったの千人救ってどうするんだよ。それに今日を頑張って生きている人だって沢山いる」

「ふん。あの野郎の計画に乗るつもりはねぇよ。俺の体は半分ほどアラガミだ。次の世界とやらに行っても意味がねぇ」

「ソーマもリストには含まれているみたいだけどね」

「うるせぇよシスイ」

 

 

 シスイが揶揄うとソーマは視線を強めて睨み返す。

 だが、ここでコウタがふと疑問を口にした。

 

 

「てか、極東の皆はリストに入っているんだよな? なんでシスイだけ外されているんだ?」

 

 

 純粋な疑問。

 アラガミ化を知っているユウと、察しているソーマは強くコウタを睨みつけた。知らないこととは言え、明らかに地雷を踏んでいるからだ。

 そんなユウとソーマに気付いて『ヤベェ』と顔を引きつらせるコウタ。

 だが、シスイはそんな三人の間に割って入った。

 

 

「まぁまぁ。僕がリストから外されている理由ぐらいなら言っても大丈夫だよ。フェンリルでも最重要機密の類だから、聞いたら戻れなくなるけどね」

「え? いやいやいやいやいやっ! それならいいよ!」

「遠慮しなくてもいいのに」

「要らないって! てか絶対話すよシスイ! 嫌な予感しかしねぇよ!」

「実は僕ってフェンリルで暗殺リストの最上位に入れられているんだよね」

「言っちゃったよっ! 嘘だよね!? 嘘だと言ってくれ!」

「いや、ホントだよ? 僕が極東に異動した本当の理由は、最前線でアラガミと戦わせて、あわよくば戦死させようっていう本部の魂胆があったからだし」

「ぎゃーっ!」

 

 

 コウタが魂からの叫び声を上げる。

 それを見てシスイは腹を抱えながら笑っていた。

 しかし、ソーマは茶化した空気を破って静かに問いただした。

 

 

「どういうことだシスイ? それはお前の中にいる(アラガミ)と関係があるのか?」

「正解だよソーマ。それに表情を見る限り、ユウも知っているみたいだね」

「……」

「ん? え? どゆこと?」

 

 

 真剣な様子のユウとソーマに対して、コウタだけは訳が分からないと言った顔をする。

 

 

「シオのこともあるし、君たちなら見せてもいいかな?」

 

 

 そしてシスイはそう言いながら両手の手袋を外した。

 現れたのは鱗のように張り付いたオラクル細胞が鈍く輝く両手である。さらに包帯を解いていくと、肘の辺りまでそれはビッシリと生えていた。

 

 

「な……なんだよそれ……」

「驚いたコウタ? これはアラガミ化だよ。僕は……まぁ神機適合試験で失敗してこうなった。かなり特殊な試験……というか実験だったからね。それでアラガミ化した以上、本部の奴らは僕を疎んだ。ちゃんと測定で安定していることは証明されているけど、偉い人にはそれが分からなかったんだろうね。いつ暴走するかもわからない爆弾だと思われているのさ。それに人体実験を失敗したから、僕は本来処分される人間だ。学者としての立場がなかったら、秘密裏に消されていただろうね」

 

 

 アーク計画にはフェンリル本部が絡んでいる。故にシスイの席はない。

 つまりはそういうことだった。

 

 

「僕は死にたくないんでね。それなりに足掻くつもりだよ」

 

 

 そう言いながら腕に包帯を巻き、フェンリルロゴ入りの手袋をつける。そしてそのままユウの部屋を出ていったのだった。

 残されたユウ、コウタ、ソーマは沈黙を保ったまま目を合わせる。

 再びバラバラになろうとしている第一部隊に、ユウは不安を感じるのだった。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 極東の騒ぎを受けて戻ってきたヨハネス・フォン・シックザールは、頭を抱えたくなるほどの事態に直面していた。秘密にしてたアーク計画が漏れることは予想していたが、サクヤとアリサがエイジス島にまで侵入するとは思わなかったのである。

 その際にノヴァを育てている配線を幾らか破壊され、その他の設備にも損傷が見られた。

 せめて留守にしてなければ対応できたのだろうが、ヨハネスは本部に出頭していた。さらに特異点と思われるアラガミが発見されたという情報を追って本部に赴けば、それがダミーだと分かり、まさに骨折り損という状態なのである。

 ともかく、極東支部全体にリークされてしまったアーク計画は素直に話すしかない。ヨハネスはそう考えてゴッドイーターたちと面会を行い、説明を行うことにした。

 結果として意見は半々に分かれ、賛同派と反対派で支部内が割れることになる。

 任務には支障が無いようだが、アナグラではかなりの頻度で討論が行われていた。

 そして、箱舟への乗船権利を持たないシスイは、一人で阻止の方法を考えていた。

 

 

(ハッキングを仕掛けてシオの持つ偏食場が特異点らしいということが分かった。榊博士……このこと知ってたみたいだね。僕が取れるのは、シオを支部長に渡さないようにすること。そしてシオに捕喰本能をコントロールさせ、終末捕喰を制止すること。もしくは……シオのコアを僕が喰らうことか)

 

 

 シスイとしても、後者の選択肢を取るつもりはない。

 実験の一環として、シオに簡単な教育を受けさせたのだが、その教師役をしたのはシスイなのだ。四則計算や文字などを教える中で、人に近づいていく彼女の姿を見て来た。ペイラーではないが、共存する可能性を追ってみたいと思うほどに愛着はある。

 

 

(あとはノヴァを喰らう……か。素体を滅ぼせば、少なくともアーク計画は阻止できる)

 

 

 サクヤとアリサのテレビ電話で見た巨大アラガミ。

 ウロヴォロスなど比ではない大きさだった。自分の能力を使っても、喰いきるのは難しいだろう。自分の両腕は無限に喰えるわけではないのだ。ある程度の限界が存在する。ご都合主義の小説のように、都合よく限界を超えられるなどという期待はしない方がいいだろう。

 正直、一人で出来ることには限りがある。

 

 

(ノヴァの素体を解析できれば、アラガミバレットの要領で抗体も作れると思うんだけどね……)

 

 

 やはり自分もエイジスに行ってみるべきか。

 行動を起こすにしても、まずはノヴァの素体を確認した方が良いだろう。既に極東から離反したサクヤとアリサにコンタクトを取るべきかもしれない。

 シスイはそう考え、ヒバリの下へと行くことにした。

 任務のついでにエイジスへと侵入するのである。シスイの腕輪はダミーであるため、適当な場所に置いておけば、エイジスへと侵入したとしてもバレることはない。

 意外と良い案である。

 

 

「ヒバリさん。今日は任務ないかな? というかあるよね?」

「あ、シスイさん。任務は普段より多いくらいですよ。エイジス計画……いえ、アーク計画の完成を急ぐとのことらしく、オラクルリソースの殆どをエイジス島に持っていかれていますからね。おかげで極東支部の対アラガミ装甲壁に使える偏食因子が不足しています。これは前々から不足していたのですが、このままでは一週間と持たずに全装甲が破られる可能性が高いとのことです」

 

 

 極東支部のアラガミは世界最強と言われている。進化の速度も凄まじく、対アラガミ装甲壁もハイペースで更新しなければ、すぐに破られてしまうのだ。ただでさえ、今までもエイジス島に資源を送っていたのだ。そして現在、サクヤとアリサがエイジス島で暴れたので、その修復のためにかなりのオラクルリソースが搾取されているのである。

 これはシスイも知らない事実だった。

 

 

「そうなの?」

「はい。現在も何度か破られていますからね。防衛班の方たちは常時警戒態勢で待機しています。出動回数も増えていますね」

「じゃあ、第一部隊の仕事は偏食因子を持ち帰ること?」

「はい。サクヤさんとアリサさんが居なくなってしまったことは知っていますが……どうかお願いします。ユウさんとソーマさんはエイジス関係、シスイさんとコウタさんは対アラガミ装甲壁関係のコア回収が主な任務です。コウタさんは偵察班の方と協力して、中型以下のアラガミを担当しています。シスイさんは大型種を一人で討伐することになっているみたいですね」

「ハードだね」

「すみません……ですが戦力的には仕方ないんです。第一部隊の主戦力、ユウさん、シスイさん、ソーマさんは個人で大型アラガミを狩れるので、どうしても難易度の高い仕事になってしまうんです」

 

 

 ヒバリは申し訳なさそうに謝るが、これはヒバリのせいではない。

 任務を組んでいる上層部の責任だろう。

 シスイには少し前の大侵攻で、南方に集まってきたアラガミの群れを一人で一掃した実績がある。そういったことを鑑みれば、このような任務を組まれても仕方ないだろう。

 

 

「それで僕にアサインされている任務は?」

「はい、今日は鎮魂の廃寺ですね。ターゲットはプリティヴィ・マータ二体です。周囲にはコンゴウも観測されているので、注意してください」

「なにそれ凄くハード」

「正直、私も一人でこなす任務ではないと思います。無理だと思ったら、撤退してください」

「わかった。今日もオペレート頼むね」

「はい。任せてください」

 

 

 任務としてはキツイが、これはシスイにとって好都合な部分もある。時間がかかりそうな任務であるため、エイジス島に侵入したとしてもバレにくい。そして鎮魂の廃寺は海が近く、エイジス島への緊急用隠し通路の出入り口もこの辺りにあるのだ。

 

 

「じゃあ、行きますか……」

 

 

 シスイは出撃ゲートへと向かって行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 支部長室にて、ヨハネスは誰かと通信をする。

 

 

「そうか。神崎シスイは鎮魂の廃寺に……予定どおり出せ。……そうだ、二つともだ」

 

 

 通信の相手はエイジス島で仕事をする本部の人間である。完全にヨハネスの手駒であり、裏の仕事にも精通している相手だった。

 そんな相手にヨハネスは言葉を続ける。

 

 

「緊急用の通路を使え。扱いには注意しろ。特にメビウスノーヴァにはな。ステラノーヴァも攻撃力に特化している。解き放つのは神崎シスイが現地に入り、プリティヴィ・マータと交戦し始めてからだ。アルダノーヴァはエイジスに置いておけ。あれは少し特殊だ」

 

 

 ノヴァの制作ノウハウから生まれた人工アラガミ、ノヴァシリーズ。

 その内の二体であるメビウスノーヴァとステラノーヴァが放たれたのだった。

 

 

 

 

 




原作乖離要素の一つです。

シスイが集合フェロモンで大量のアラガミを狩ったので、アルダノーヴァ以外にノヴァシリーズと呼ばれる人工アラガミが作られました。

アルダノーヴァ
メビウスノーヴァ
ステラノーヴァ

の三体ですね。
アルダノーヴァは原作通り、エイジスでのボスとします。
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