本業は研究者なんだけど   作:NANSAN

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EP16 メテオライト

 

 川が近くにある廃れた町には人一人残っていないことが多い。物資がなくなるか、アラガミに襲われるかで人が消えるからだ。食料がなければ動物も寄ってこないので、基本的に生物の気配がない。

 だが、その寂れた町には二人の人物が身を隠していた。

 神崎シスイと雨宮リンドウである。

 

 

「グ、グアアアアアアッ!」

「また発作ですか!? くそっ! 間隔が短くなってきた」

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

 

 

 右手のアラガミ化によって浸食を受け、リンドウは痛みに悶える。これ以上のアラガミ化進行を避けるためにオラクル細胞の捕食を止めさせているのだが、それによって生じる捕食本能がこれ以上に無い苦痛を生み出すのだ。

 喰えという本能がリンドウの右腕を痛めつけ、更に精神的にも汚染していく。

 

 

「頑張ってアラガミに勝って下さい。本当に取り込まれてしまう前に」

「グアアアアアアアアアアアアアア!」

 

 

 正直、リンドウは限界に近い。

 侵食は右腕で止まっているが、何かのきっかけで完全アラガミ化を果たしてしまう。ここから先は根性がものを言う精神論の世界だ。

 シスイもノヴァの因子を取り込んだことで進化した両腕を使い、リンドウの右腕に干渉して安定化を図っていく。あらゆる偏食因子を持ったノヴァの力があるからこそ出来るようになった芸当だ。僅かな効力しかないし、シスイも完全に扱えるわけではない。それでも、少しの可能性を信じてシスイは能力を行使する。

 

 

(捕食本能が強すぎて僕の干渉が通じにくくなっているね……そろそろ限界か)

 

 

 状況としてはかなり分が悪い。

 測定機械がないので正確な判断は出来ないが、早ければ今日にでも完全アラガミ化する勢いだ。リンドウは辛うじて意思を保っている。アーク計画を止めなければならないという意思によってどうにか耐えられている状況だ。

 メキメキと嫌な音がしてオラクル細胞の塊がリンドウの右腕から針のように飛び出す。それが苦痛だったのか、リンドウは更に叫び声を高めた。

 

 

「グアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?」

「気合入れてくださいよリンドウさん!」

 

 

 シスイとリンドウの戦いは続く。

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 メビウスノーヴァが呼び寄せた無数のアラガミは鎮魂の廃寺に留まり続け、それを処理するために極東支部はヘリや車を総動員してゴッドイーターを送っていた。

 オペレーション・メテオライト。

 ヘリから特殊バレット『メテオライト』を使ってアラガミを殲滅し、地上部隊が生き残りのトドメとコア回収を一気に済ませる電撃作戦だ。

 そして当然の如く地上部隊に選ばれた神薙ユウとソーマ・シックザールは神機を肩に担ぎつつ、表情を暗くして話し合っていた。

 

 

「シスイ……生きているかな?」

「期待はするなよ。それが大きければ大きいほど――」

「分かっているさソーマ」

「ならいい」

 

 

 フードを深く被り皺を寄せているソーマも、本心ではシスイを心配している。

 これはアーク計画と対アラガミ装甲強化のためだけの作戦ではなく、シスイの安否を確認することも密かに含まれているのだ。勿論、ついでの意味合いの方が強い。しかし、ユウとソーマはそちらにこそ重きを置いていた。

 

 

「それにしても、結局アーク計画は継続されそうだよね」

「ふん。あの野郎が各所に手をまわしているらしいからな。そう簡単には崩れねぇよ。生き残りたい奴は多いからな。確実で楽な道があるなら、人間ってのはそっちに逃げる」

「サクヤさんとアリサも無事だと良いけどね」

「……」

 

 

 サクヤとアリサからの連絡は一度もない。

 消息も全くの不明である。生きているのか死んでいるのかもわからない状態だ。かなり深いところまでアーク計画を暴き、邪魔をしたことでヨハネスに消されたという線すらあり得る。

 情報が無いということは必要以上に不安を煽ることだ。

 ユウとソーマはそう感じていた。

 

 

「なんでこんなことになったのかな……」

 

 

 ユウの呟きは雪の降る空へと消える。

 激変した環境のせいで一年中積雪が止まない鎮魂の廃寺は、今日も灰色の空をしていた。

 雪が降るこの空も、数時間後には特殊バレット『メテオライト』によるオラクルの雨に変わることだろう。

 溜息を吐くユウにソーマは鼻を鳴らしながら口を開く。

 

 

「死ぬんじゃねぇぞ」

「ソーマこそ。愛しのシオが待っているからね」

「ちっ……黙れ」

 

 

 シオについても不安がある。

 最近、エイジス島に呼ばれていると言い始めたのだ。特異点である彼女はノヴァに誘引され、操られるようにしてエイジスに向かおうとすることもしばしばあった。

 ペイラー榊が言うには、かなり危ない状態ということである。

 どうにか人に近づいてきたシオだったが、この土壇場で急に不安定になり始めたのだ。ユウとソーマの周りには面倒しか転がっていない。

 

 

(アーク計画……俺は止めるべきなのか……?)

 

 

 ユウは自分の神機を握りつつ、作戦開始まで自問するのだった。

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 どうにか発作の収まったリンドウは街の中に会った廃家で眠り、シスイは食料を探すために辺りを散策していた。緊急時用のレーションは一週間分だけ保持しているが、それもかなり切り詰めた計算上での話だ。可能な限り、現地調達をしておきたい。自分とリンドウが食べる分を確保するため、街に残された保存食を探していたのである。

 缶詰が残っていれば上等、最低でも飴玉のようなものがあればギリギリでカロリーを確保できる。

 流石にアラガミを食べる訳にはいかないので、食料確保にも一苦労だ。

 

 

「結構遠くまで来たけど……何も残ってないね」

 

 

 このご時世だ。

 あらゆるものがアラガミの腹へと消えてしまい、食料などほとんど残っていない。畑など作れば一夜にして喰らいつくされ、残しておいた保存食も軒並み消える。例外となるのは対アラガミ装甲壁の内部だけだ。

 まだ形の残っている家を探し、中に入って物色。

 かつては犯罪だった行為も、ここでは誰も咎めない。

 それが何となく寂しい気分だった。

 

 

「リンドウさんも心配だし早く戻らないと」

 

 

 シスイだからこそわかるが、リンドウの容体は非常に悪い。それこそ癌の末期症状にも比肩できるほど最悪だ。

 一歩踏み外せば死の谷へと落ちる綱渡り。

 それが今のリンドウである。一瞬でも目を離した隙に奈落へと落ちるかもしれない。

 仮にアラガミ化してしまえば、シスイが殺すしかないのだ。

 リンドウの戦闘術を持ったまま完全アラガミ化など、最悪の展開である。

 

 

「極東が誇る超人ことリンドウさんならきっと何とかなる―――」

 

 

 そんな理屈もつけられない曖昧な感情論すら呟いてしまう。

 だが、まだ全てを言い終わらない内に、遠くで爆発が起こった。

 方向的にはリンドウを休ませている小さな家と一致している。それを見て楽観視する程シスイはボケていないつもりだ。

 

 

「―――なんて都合が良すぎたね!」

 

 

 単なるアラガミの襲撃なら、手負いのリンドウでも対処できるだろう。

 しかし、これは恐らくリンドウのアラガミ化に伴った爆発だ。近くにアラガミがいないのは確認済みだったので、間違いではないはずである。

 シスイはすぐに右腕のオラクル細胞を操作して神機を創り出す。刃がクリスタルのように透けた赤黒いヴァリアントサイズが形成され、綺麗に右手へと収まった。左手はいつでもオラクル弾が撃てるようにして戦闘態勢を整える。

 家の屋根を駆け抜け、ビルの壁を蹴り、可能な限り一直線で爆発の音源を目指す。

 まだ遠くで黒い影が家々を破壊し、土煙を上げていた。

 そしてかなりの速度で移動している。

 

 

「よりにもよって離れる方向に移動しなくてもいいのに……」

 

 

 どんなに頑張っても、人間よりアラガミの方が身体能力的に優れている。小型種や中型種でも、ゴッドイーターを一撃で殺すことの出来る肉体があるのだ。大型種ならなおさらである。

 遠くに見える影は明らかに大型種だ。

 それにヴァジュラ並みの身体能力を持っているらしいと分かる。

 あれが普通のヴァジュラなら極東人にとって猫と一緒だ。しかし、黒い影として見えるあの大型アラガミは人に近い姿を持っている。また格闘に近い動作と身のこなしすらしていた。

 邪魔となる障害物を破壊し、破壊するよりも避けた方が速いと判断すれば迂回。

 明らかに知性を持って走っていた。

 

 

「リンドウさんの意識が……いや記憶が残っているのか? とあるゴッドイーターみたいな変態的機動をアラガミが習得しているとか拙すぎでしょ」

 

 

 冗談どころではなく拙いだろう。

 そしてリンドウが向かっている方向には心当たりがある。

 アラガミを広範囲に誘因する能力を持ったメビウスノーヴァの下へ行くのだ。つまり、鎮魂の廃寺へと向かっているのである。

 

 

「早く追いついて―――」

 

 

 追いついて?

 

 

「リンドウさんを――」

 

 

 リンドウを……

 

 

「――――」

 

 

 殺す?

 

 

「出来るのか……今の僕に……?」

 

 

 これでもフェンリル本部情報管理局特務隊に所属し、アラガミ化したゴッドイーターを狩ってきた経験がある。中には知り合いもいたが、任務だと割り切って、アラガミ化した本人のためにもなると思って介錯してきた。

 

 

「はは、化け物の癖に何を今さら人間ぶっているんだ。仕方ないんだ……アラガミ化してしまったら殺すしかないんだから……」

 

 

 そうは言いつつも、次第にシスイの足は止まっていく。

 追いかけなければならないという意思に反して、身体は言うことを聞かなかった。

 

 

「ぐ……」

 

 

 シスイは鋭い頭痛を覚えてその場に膝をつく。

 思い出すのは自分を化け物と罵るフェンリル本部の職員たちだ。

 M2プロジェクト失敗によって両腕がアラガミ化し、その力を使えるようになった。故に化け物。まだ12歳だったシスイに対してあまりにも酷い仕打ちである。

 それでも人間でありたいと願ったシスイは、天才的な知能で示すことにする。

 自分は化け物ではなく人間だと言いたかった。

 しかし、余りにも天才過ぎた故に送られた言葉は、やはり化け物。役に立つので直接的な処分こそされなかったが、何か人間ではないものを見る目は無くならなかった。

 この時期は周囲の環境によって性格が形成されていく時期である。感情的で不安定な子供らしい部分に理性が構築されていき、その個人たりうるアイデンティティを形成する。

 そしてシスイが築き上げた理性は『傍観』。

 あるいは達観や諦観とも言えるかもしれない。

 理性という自分をもう一人創り上げ、まるで画面の外から世界を眺めているような、傍観者としての視点を創り出すことだった。小説やドラマの登場人物を見るようにすることで、化け物と呼ばれる自分を世界の中に確立させた。

 シスイ自身すらも広い世界に登場する人物の一人としか認識しない理性が、壊れそうになる前に感情を制御した。この場面ではこうした方がいい、そういう時はこうするべきだ、という第三者視点を以て振り切れそうになる感情を抑制してきた。

 ノベルゲームと同じである。

 第三者視点を持つ理性が、各種場面でいくつかの選択肢を提示する。シスイはそれを選んでいるに過ぎなかった。

 

 

「そうだよ……ここは僕が殺さないといけないんだ。仲間なんて所詮は表面上の協力に過ぎないハズだろ!」

 

 

 シスイは自身にそう言い聞かせる。

 しかしそれは大きな矛盾を孕んだ言葉だった。

 いつものシスイなら、リンドウの右腕がアラガミ化しているのを確認した時点で即座に介錯していた。わざわざ制御できるように協力などしなかったはずだった。

 仲間など表面上の付き合いだと考えつつ、リンドウのことは本気で助けようと考えていた。

 それは、シスイにとって極東支部の面々が初めてとも呼べる仲間だったからだろう。本部でシスイの仲間といえば、いつ背中から斬られてもおかしくない任務上の協力者でしかなかった。

 アラガミ化したゴッドイーターを殺す時も、そう考えることで任務を遂行していた。

 それ故にリンドウを殺していいのかと迷ってしまう。

 シスイにとってこの困惑は初めてのことだった。

 まともな善意に触れることなく、研究とアラガミ討伐に明け暮れていたのがシスイだ。表面上はごく普通の少年に見えても、中身はまともではいられない。

 しかし、極東支部ではその価値観を正面から崩された。

 知らなかったとは言え、シスイを普通に仲間として受け入れ、挙句の果てにはアラガミの少女シオを保護してしまったほどだ。

 

 

「くそ……」

 

 

 シスイは神機を消し、アラガミ化した両腕を隠すように包帯を巻く。最後に黒い手袋をつけて、戦闘状態を解除した。

 そしてボロボロになった白衣を風に靡かせつつ、廃れた町を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 オペレーション・メテオライトが実行され、鎮魂の廃寺に無数のオラクル弾が降り注いだ。流星の如きオラクルの光が次々とアラガミを貫き、戦闘不能にしていく。銃タイプの神機使いがヘリから一斉発射した特性バレットの力だった。

 このバレットのためだけに相当なオラクルリソースを消費しているのだが、今回の作戦で倍以上は取り返せる算段である。回収担当の地上部隊は責任重大だ。

 

 

「いくよソーマ」

「テメェこそ遅れるんじゃねぇぞ」

 

 

 ユウとソーマは真っ先に飛び出して息のある大型種にトドメを刺していく。そして流れるように神機の捕食を行い、次々とコアを回収していた。第一部隊のツートップであるユウとソーマに刺激され、他の刀剣タイプ神機使いも後に続く。

 普段なら討伐に数十秒かかる大型種も、手負いの状態なら数秒で足りる。尤も、これはユウとソーマだからこその話だが。

 穴だらけとなったクアドリガの頭部を叩き潰し、プリティヴィ・マータを両断し、サリエルを叩き落す。苦労して倒したディアウス・ピターも二人の一撃で翼を切り落とし、あっという間にトドメを刺す。堕天種や接触禁忌種もメテオライトによって弱っているため、殆ど苦労なくアラガミを薙ぎ倒していた。

 

 

「く……多すぎる!」

 

 

 ユウは縦横無尽に暴れまわるが、数百ものアラガミが壁のように立ち塞がる。アラガミの死体のせいで足場も悪く、体力も余計に消耗してしまう。目に見える範囲だけで数えきれないほどのアラガミがいるので、作戦区域全体で見れば軽く千体は越えているだろう。

 これほどの数を一つの支部で対処できるのは極東ならではである。

 普通の支部なら、メテオライトによって傷を負わせたとしても、これだけのアラガミを相手にすることは出来ない。複数の支部が合同で、さらに本部の支援を受けて初めて成立する作戦レベルだ。極東のレベルがいかに高いかがよく分かる。

 

 

「邪魔だ」

 

 

 ソーマは重いバスターブレードをショートブレードでも扱っているかのように振るい、大型アラガミを簡単に吹き飛ばしてしまう。チャージクラッシュも普通とは桁外れに威力が高いので、余程硬いアラガミでなければ一撃で両断出来てしまっていた。

 そんなソーマでも、この数は対処に苦労する。

 独楽のように回転しつつ、大量のアラガミを薙ぎ払いながらユウと共に眼に映るアラガミを討伐していた。これだけ暴れても被っているフードが外れないのは流石である。

 

 

「おいリーダー。テメェは東から回れ!」

「分かった。じゃあ本堂付近で落ち合おう」

 

 

 鎮魂の廃寺は本堂へ行くために二つのルートが存在している。それぞれのルートにアラガミがいるので、二手に分かれて進むことにしたのだ。相手は手負いなので、極東支部が誇る二人の最強ゴッドイーターならば単独でも充分に突破できる。早くシスイを探すために、効率重視で進むことにしたのだ。

 ソーマと分かれたユウは東ルートの階段を駆け上がりつつ、コアの回収と大型種へのトドメを平衡して行っていく。

 だが、ユウはその途中で奇妙なものを見つけることになった。

 それは東ルートの右手にそびえる岩山の頂上で佇む一体のアラガミである。一見するとクアドリガにも似ているが、よく見れば相違点はかなりある。

 赤い見た目、鍛えられた人型の上半身。

 率直な感想を言えば、かなり気持ち悪い。

 辺り一帯のアラガミを呼び寄せ、広範囲にジャミングを展開しているメビウスノーヴァだった。

 

 

「新種……?」

 

 

 これだけアラガミが集まっていれば、一体ぐらい新種が紛れていてもおかしくはない。だが、残念なことにここは通信ジャミングが発生している地域なのだ。連絡も出来ないので援軍は望めない。倒すならば一人で相手することになってしまう。

 岩山の周囲には大量のアラガミがいるのだが、メテオライトのお陰で手傷を追っている。メビウスノーヴァ自体も少しだけダメージを負っているので、一人でもなんとかなる可能性は高い。

 そう考えたユウの行動は早かった。

 

 

「先手は貰う」

 

 

 銃形態に神機を変えたユウは、スナイパーでメビウスノーヴァを狙う。距離があるほど威力が上がる超長距離弾を使い、メビウスノーヴァの頭部を狙撃した。メビウスノーヴァは司令塔として一か所から動かないアラガミなので、遠距離であっても外したりはしない。この距離で動き回るアラガミを撃ち抜けるとすれば、世界有数の狙撃手であるジーナ・ディキンソンだけだろう。

 弾丸は見事にメビウスノーヴァの頭部へと着弾し、大きくよろめく。

 その隙にユウは周囲のアラガミを薙ぎ倒しつつ、一気に接近を試みた。

 

 

「はああああああああああああ!」

 

 

 手負いのヴァジュラやサリエルが立ち塞がるが、ユウはそれを一撃で切り裂いて道を開く。メテオライトのお陰で中型種以下を殲滅できているため、接近は容易かった。足場の悪い岩山でサリエルを相手にするのは骨が折れるはずだが、常時変態的機動をしているユウには関係ない。アクロバティックな動きでサリエルのレーザー攻撃を躱し、次々と切り裂いてメビウスノーヴァへと迫った。

 メビウスノーヴァはアラガミを誘引して操る能力には長けているが、直接戦闘能力は皆無にも等しい。強いて言えば、質量を利用した突進やプレスが脅威となる程度である。接近さえしてしまえば、ユウの敵ではないのだ。

 

 

「これでどうだぁっ!」

 

 

 ユウは跳び上がりつつ強烈な切り上げでメビウスノーヴァの前面装甲を破壊し、さらに落下時の重力と合わせて頭部に振り下ろしを喰らわせた。ロングブレードがメビウスノーヴァの頭部にめり込んで、そのまま上半身を切り裂いていく。

 メビウスノーヴァはそれで瀕死となったが、ユウはそのまま更に追撃をかけた。不安定な岩山で器用に立ち回り、メビウスノーヴァの両腕を斬り落とす。そして最後に捕食形態でメビウスノーヴァからコアを抜き取り、勝利した。

 崩れたメビウスノーヴァはそのまま岩山を落ちていき、雪煙を上げて地面と激突する。

 途端にジャミングが消失し、通信とレーダーが復帰した。

 

 

『こちらヒバリです。通信とレーダーが復帰しました。これより通常通りのオペレートを開始します』

 

 

 それを聞いてユウはメビウスノーヴァが全ての元凶だったことを悟った。それを伝えるために、ユウはすぐに通信をオンへと変える。

 

 

「こちら神薙ユウ。新種と思しきアラガミを倒したところだ。多分、そいつがジャミングの原因だったんだと思う」

『分かりました。コアは回収済みですか?』

「ああ、大丈夫」

『では、コアを持って一時帰還してください。ここからはレーダーが使えますので、作戦区域を包囲して一気に回収を進めます。ですからユウさんが抜ける負担は考えなくても大丈夫です』

「了解」

 

 

 どちらにせよ、回収した量が量だ。

 そろそろ戻って神機から吐き出させないと、限界になる。神機も無限に捕食できるわけではないので、ヒバリからの提案は丁度良かった。

 ユウが神機を担いで戻ろうとすると、ここで新たな通信が入る。

 

 

『こちらソーマだ。新種の黒いアラガミと交戦中。悪いが援軍を頼む』

 

 

 それは珍しいソーマからの援軍要請だった。

 

 

 

 

 

 

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