EP18 ネモス・ディアナ
ネモス・ディアナでシスイは思いのほか簡単に受け入れられることになった。元フェンリル所属の研究員ということで毛嫌いする者もいたが、決め手となったのは『フェンリルに捨てられた』という事実。このネモス・ディアナに住む者たちは、皆がフェンリルから見捨てられた人々だ。
共通の被害意識があれば、意外と受け入れることが出来るのである。
総統である葦原那智もフェンリル研究者の知恵と知識が得られるということで、働くことを条件に神崎シスイの居住を認めた。
「偏食因子の組み立てはこうです……え? この手法ですか? それは数年前に効率が悪いからと使用されなくなった手法ですね」
「なるほど。勉強になります」
「あ、ここの計算式が間違っていますよ。前提条件と誤差計算に誤りがあります」
「何っ!? しまった……」
シスイはネモス・ディアナを守る対アラガミ装甲壁の補修や強化を手伝っている。専門ではないが、シスイの父親はこの手の研究をしていたので、知識は充分にある。最新の知識を披露しつつ、可能な限り装甲壁を強化していた。
ただ、ネモス・ディアナ全てを守れる程の資源はないので、対アラガミ装甲壁は一部分にしか適応されていない。資源が無いことには限界があるので、これだけはシスイでも対応できなかった。
(僕がアラガミを狩って、オラクルリソースを確保するべきか……)
実は、まだ両腕のアラガミ化については何も言っていない。フェンリルの闇ついて調べているサツキには事情を説明したが、葦原那智総統には黙ったままだった。
正直に言って受け入れられるかどうか分からないからである。
「取りあえず、今のところはこれが限界でしょう。新たなオラクルリソースが入手出来たら呼んでください」
「どうも助かりました。いや、専門家の方がいるだけで全然違いますな!」
「それはどーも。僕はこれから畑の方に行くので」
「ええ、では私もそうします。では」
「はい。さようなら八塚さん」
シスイは共に作業していた八塚という男と分かれ、毎日作業している畑へと向かう。このネモス・ディアナは自給自足が基本であり、品種改良した作物を育てて生計を立てている。フェンリルでもよく見たジャイアント野菜が主な作物であり、これらもフェンリルから苗を拝借したのだろうと予想できた。
このジャイアント野菜はコストパフォーマンスこそ最高だが、味は微妙だ。ただ、栄養価は基準以上なので文句は言えない。
不味いレーションにも慣れているシスイとしては、別に気にすることでもなかったが。
しばらく歩いて畑へと辿り着くと、何人かの人が既に作業していた。ジャイアントトウモロコシ、ジャイアントナスを収穫しているらしく、シスイもすぐに監督者の所へと向かう。
「こんにちは西郷さん。手伝いに来ました」
「おお、神崎君か。とりあえず今日は収穫後に雑草の除去だ。手伝ってくれ」
「はい」
かなり重たいジャイアントトウモロコシやジャイアントナスを軽々と持ち上げ、収穫物を乗せるトラックへと積み込んでいく。これは一か所に集積されたのち、各家庭に配布されるのだ。このご時世なので、食べ物を含めた生活物資は全て配給が頼りである。
配給を貰いたければ働くべし。
大人も子供も、食べるために必死に働いている。
一応、一部の知識人は暇を見つけて子供たちに教育を施している。知識人も人なので寿命という時間制限に縛られている。後継となる人材を育成しなければネモス・ディアナも立ち行かなくなるからだ。
シスイは元フェンリルの学者ということもあって、この教育にも参加していた。
朝は対アラガミ装甲壁を弄り、昼からは畑、夕方から夜にかけて子供たちを教育する。フェンリルに努めていた時よりも遥かにブラックな匂いのする毎日だった。
「よし。今日はここまでだ! みんな帰っていいぞ!」
夕方まで働き、監督の西郷が号令をかける。
すると疲れ切った表情で皆がそれぞれの家へと戻っていった。あまり十分に食べることが出来ない環境で働いているので、大人であっても体力が尽きてしまっている。流石に子供をここまで働かせる訳にはいかないので、子供の労働時間は大人の半分以下だ。
それに、子供たちはこれから勉強の時間でもある。
疲れて授業を眠ってしまっては元も子もないので、当然の措置だった。
ただ、教える側はそうもいかない。朝から夕方まで働いた上に、夕方からは授業も担当する。シスイもオラクル細胞を取り込んでいなければ過労死していたかもしれない。
シスイは帰路へ着く代わりに子供たちに勉強を教える集会所へと向かう。ネモス・ディアナの住民が話し合いに利用する場所で、普段は学校のように扱われている。
「どうもこんばんわー」
「あら? 来たのね神崎君」
「ええ、今日も宜しくお願いします木崎さん」
「こちらこそよろしくね」
シスイは木崎を始めとした勉強を教える大人たちに挨拶しつつ、集会所へと上がり込む。日によって差はあるが、基本的に百近い子供が集まってくる。当然、教える側も人数が必要だ。
大抵、ここでは基礎を教え、見込みがあれば対アラガミ装甲についての研究など、専門的な仕事をしている大人たちと一緒に働くことになる。教える内容は四則計算と文字、そしてアラガミに関する基本的な知識といった初等部分から、微分積分外国語といった高等部分まで幅広い。フェンリル本部にいた経験のあるシスイは四か国語以上をマスターしているので、主に言語を教えていた。
論文などは基本的に外国語なので、最先端知識を得るためには外国語も必須なのである。
「言語は会話しなくては身につきません。一日机に向かっているより、一時間会話する方がためになります。文法など気にせず、伝えるということを意識すれば上達しますよ。Are you ready?」
『Yes!』
シスイが担当しているのは十二歳以上の子供たちだ。その中には当然、ユノも含まれている。外国語は普段の生活で必要ないので、真面目に取り組む子供は少ない。だが、専門的な知識を身に着ける上では必須の学問だ。
以外にもユノはかなり真面目に取り組んでいるようだった。
どうやら海外の歌について興味があるらしい。
こうして二時間ほど勉強を教えた後、ようやくシスイは住居へと戻っていったのだった。家は既に明かりが付けられており、同居人は帰宅済みだと分かる。鍵は開いているだろうと判断して、シスイはそのまま扉を開けた。
「戻りましたよサツキさん」
「あら、おかえりなさいシスイ君。ご飯が出来ているわよ」
「頂きますよ」
シスイは現在、高峰サツキと同居している。元はサツキに割り振られた住居だったのだが、今はシスイが居候する形で一緒に暮らしていた。シスイはサツキが連れてきた人物であるため、責任もって住居を提供するようにと葦原総統から言われたからである。
サツキとしてもシスイの話をじっくり聞けるので、願ったり叶ったりだった。
シスイがネモス・ディアナで働く一方、サツキはフェンリルの闇を調べつつ、資源を横流しするために裏仕事をこなしている。シスイもサツキからフェンリルに関する新しい情報を聞けるので、丁度良かった。
「……サツキさん。塩と砂糖を間違えてますよ」
「あれ? やっちゃった?」
「こっちは半生なんですが……」
「あららー。ごめんね? でもシスイ君なら大丈夫よね!」
「何を根拠に……」
今日もシスイの一日は平和だった。
この数日後、世界中が大騒ぎとなる月の緑化現象が発生することになる。
◆◆◆
フェンリル極東支部では大きな転換期が迎えられようとしていた。
エイジス計画……改めアーク計画は第一部隊によって阻止され、これによってヨハネス・フォン・シックザール支部長は死亡した。シオはノヴァを連れ去って月へと向かい、再生によって月の緑化現象が引き起こされたのである。
尤も、真実を知るのは極東支部の一部のみだ。
公にはエイジス計画は事故で失敗し、ヨハネス支部長も事故に巻き込まれて死亡したことになっている。アーク計画で自分たちだけ生き残ろうとしたフェンリル上層部は、面子を守るために真実を必死で隠したのである。
それと引き換えに、極東支部はとある部隊を設立することにした。
フェンリル極東支部所属独立支援部隊クレイドル。
独立部隊など、本来は反逆を恐れられて許可されない部隊だ。しかし、上層部は極東支部に大きな借りを作ってしまったので、この独立支援部隊クレイドルの設立に関する初期支援を行うと同時に、設立を大々的に許可することを発表させられた。
「―――ということで纏まったみたいだよユウ君」
「ありがとうございます榊博士」
極東支部の新たな支部長となったペイラー榊は頑張った。それはもう頑張ったのだ。
裏から手をまわしつつフェンリル上層部に脅しをかけ、様々な利権を奪い取ってようやくクレイドル設立へと至った。さらにクレイドルに移籍することで減ってしまう人員を確保するため、人事異動までやってのけたのだ。
ユウとしては頭が上がらない思いである。
「で、クレイドルの部隊長はユウ君で問題ないね?」
「はい、しばらくは第一部隊と兼任しますけど、リンドウさんもサポートしてくれますし」
「おう、おっさんに任せてくれたまえー」
そう言って胸を張るリンドウ。
右腕にはゴテゴテとした籠手が嵌められているが、寸分たがわず行方不明となっていたリンドウだ。完全なアラガミ化へと至ったリンドウだったが、ユウの尽力によって人へと戻ることが出来た。
その際にリンドウの神機が意思を持ったレンという存在も関わっているのだが、これも一部の人々の間だけに知られる極秘事項となっている。
ちなみに、復帰したリンドウはサクヤと結婚した。
クレイドル設立もあって忙しく、なかなか二人の時間が取れない中でも幸せそうにしているのを頻繁に目撃されている。それを見た大森タツミがヒバリにアタックを仕掛けたのだが、見事に玉砕していた。
「しかし寂しくなるね。君たち第一部隊には退屈しなかったんだけど、半年もしない内に飛び立とうとしている。いやー、若者のパワーには恐れ入るよ」
「そういう博士も大概フリーダムですよね」
「それは言わない約束だぜユウ。博士は研究員だからな」
「うむ、リンドウ君の言う通りだよ」
つい先日には初恋ジュースなるものを開発した博士だ。
そこそこの歳にもかかわらず、フリーダム過ぎである。
凄まじく不評だったが、神機の意思レンいわく、アラガミよりは美味しいとのことだった。勿論、食べ比べたいなどとは微塵にも思わないが。
「さて、真面目な話に戻そうか。ようやく設立に至ったクレイドルだけど、その目標を明確にしておきたい。活動内容は大まかに決まっているけど、それを端的に表すスローガンが欲しいね」
「そうですね……俺たちは全ての人が安心して暮らせる揺り籠を目指しています。それはフェンリルから拒否されてしまった人にも手を差し伸べて、活動を広げることも視野に入れています。独自にサテライト拠点を作る試みもそこからきていますからね」
「だが俺たちが掲げる目標はもっとシンプルだ。この絶望の世界でも、誰もが希望を持てるように……俺たちはそんな手助けをしたい」
フェンリルに受け入れられず、捨てられてしまった人々がいることは分かっている。そう言った人々が身を寄せ合ってコミュニティを形成しているという報告書もあるからだ。
だが、彼らは対アラガミ装甲壁に守られているわけではないので、いつアラガミに殺されるかもわからない日々を送っている。
救われなかった人に手を差し伸べる。
明日を生きる可能性と希望を差し出す。
全ての人が安心して暮らせるようにと考え出された、エイジス計画を転用した計画だった。アーク計画の隠れ蓑として扱われていたエイジス計画だが、骨組みは意外としっかりされている。それを転用してサテライト拠点を創り出す計画を立ち上げたのだ。
「『生きることを諦めるな』。俺たちの行動理念はこの一言で済みますよ」
この日から独立支援部隊クレイドルは始動したのだった。
◆◆◆
シスイがネモス・ディアナへと住み始めて半年がたった。
彼はすっかりなくてはならない人材となっていた。
知識があり、体力も大人以上、礼儀もあり、更にはアラガミが出現したときに戦ってくれる。出ていこうとすれば逆に止められるほどにその地位を確立させていた。
少し前に大型種が偶然にもネモス・ディアナへと接近し、シスイは仕方なく応戦した。その際にアラガミ化した両腕を公開することになり、葦原那智総統にも知られることになったのだ。
だが、意外にも咎められることはなかった。
フェンリルによる実験体だったという事実があったからだろう。危険視もされたが、被害者だから仕方ないということで落ち着いたのだった。そこでシスイはアラガミの力を存分に使い、各地でオラクルリソースをかき集めて対アラガミ装甲壁を強化するに至った。
結果としてネモス・ディアナは少しはましな装甲壁に囲まれることになり、偶に接近してくる小型アラガミ程度なら問題にならなくなったのだ。
そんなネモス・ディアナに三人の人物が訪れて来た。
「ここがネモス・ディアナ……」
「装甲壁があんなに。これは凄いです」
「確かに、民間で組み立てたって考えりゃすげぇな」
フェンリル極東支部所属独立支援部隊クレイドル隊長、神薙ユウ。そしてアリサ・イリ―ニチナ・アミエーラ、ソーマ・シックザールの三人だ。外部に住む人々のコロニーでもネモス・ディアナは最も大きく、勢力が強い。
そのため、クレイドルの活動として一番初めにここへと赴いたのだった。
「どうです? なかなかのものでしょう?」
そして三人をここまで案内したサツキは胸を張りつつ自慢する。
フェンリルのゴッドイーターであるこの三人をサツキが案内しているのは、ある種の裏取引があったからだった。フェンリルの外に住む人々の実態を見せる代わりに、資材を融通する。そのためにコッソリと三人をネモス・ディアナへと連れ込んだのである。
もちろん、これは葦原総統にも内緒の取引だった。
「あの対アラガミ装甲壁は自分たちで組み上げたのか?」
「そうですよソーマさん。元フェンリルの方が協力してくれましてね。流石に知識もなくあんなものは組み立てられないですよ」
「資材はどうした?」
「そこは……ちょこちょこっと……ね?」
「ふん……バレねぇように気を付けろよ」
「お気遣いなく。充分に留意していますよ」
民間で対アラガミ装甲壁を組み上げていることに驚いたソーマの質問に、サツキは可能な限りぼかしながら答えていく。サツキにとってこの三人は絶対的な味方ではないため、与える情報にも気を使っているのだ。
サツキは人の少ない場所を通りつつ、自宅を目指す。
いつもなら同居しているシスイもいるのだが、今日は対アラガミ装甲壁用のコアを回収するために少し遠くまで出かけている。そのため、三人を泊めたとしても問題ない。
そういうわけで、ユウたちとシスイは擦れ違ったままになったのだった。
「ここが私の家です。どうぞ遠慮なく入ってください。普段は同居人がいるんですけど、明後日辺りまでは出かけているので大丈夫ですよ」
「どうもすみません」
「いえいえ~。あ、その辺の椅子にでも座ってください」
ユウたちはサツキの言葉に従い、持ってきた神機を壁に立てかけてから椅子に腰を下ろす。
サツキは戸棚から四つのコップを取り出し、水を注いでからテーブルに置いた。
「すみませんねー。ここにはフェンリル内部と違って嗜好品なんてものは無いですから、水で勘弁してくださいねー」
「い、いえ、お気遣いなく……」
笑顔で嫌味を吐くサツキに、頬を引き攣らせながらアリサが答える。友好的にことを進めるのは難しそうだと悟った瞬間だった。
しかし、だからと言って諦める訳にはいかない。
そのために設立したクレイドルであり、こういったことも想定している。フェンリルから来た者を、フェンリルに捨てられた者たちが歓迎できるはずないのだから。
まずは挨拶からと考え、ユウが口を開く。
「改めて。俺はフェンリル極東支部所属独立支援部隊クレイドルの部隊長、神薙ユウです」
「アリサ・イリ―ニチナ・アミエーラです」
「……ソーマだ」
「ご丁寧にどうも。私は高峰サツキといいます。元はフェンリル広報部にいたんですけど、クビになったのでここで働いているんですよー」
お大概に挨拶を終え、本題へと入る。
ユウたちがここに来たのは、クレイドルの活動にあたっての調査だ。フェンリルの外部に住む人々の実態をその目で確認し、本当にするべきことが何なのかをハッキリさせることが目的だ。サテライト拠点を作るにしても、勝手に作成して住人を募集する訳ではない。現地人との折衝が必要なのは当然だ。
「まず差し当たって、ここでの生活について教えてくださいますか?」
「そうですねー。基本的には自給自足ですが、物資は皆で共有していますね。食料でも日常品でも、まずは中央に集約して、各家に配分しています。この辺りはフェンリルでも同じじゃないですか?」
「フェンリルの各支部は地下の工場で何でも生産している。それこそ……食料から日用品までな。生産性の違いを除けば確かに大体同じだ」
「ソーマの言った通り、俺たちフェンリルは本部からの支援の他に、自足も行っています。基本的には各支部で生産から消費までを完結できるアーコロジーを確立させたいのですが、極東は色々と厳しいですからね。支援なしには立ち行かないです」
「フェンリルも意外と世知辛いですねー」
などとサツキは言っているが、ジャーナリストである彼女はそれぐらい把握している。それに、彼女も元フェンリル職員なのだ。今更過ぎる情報だった。
話しが逸れかけたので、ユウが再び質問をする。
「ここでの生活で困ったことはありますか?」
「困ったことがないと思っているですかー?」
「で、ですよね……」
「ふふ。すみませんねー。ちょっと言い方が意地悪でした。まぁ、目下困った事態ならありますよ」
「何ですか?」
「『赤い雨』です」
それを聞いたユウたち三人は首をかしげる。
字面はかなり物騒だが何のことかはわからない。比喩的な表現なのかとも考えたが、そうだとすればなお分からない。
そんな三人に対して、サツキは丁寧に説明を始めた。
「二か月ぐらい前のことですかねー。真っ赤な色の雲が現れたんですよ。まぁ、このご時世ですから変な気象は慣れっこです。警戒しつつも楽観視していたんですよね。でも、それが間違いだった」
サツキはスッと立ち上がり、引き出しから何かのレポートを取り出す。
そしてそれをユウに渡した。
「これは私の同居人が纏めてくれたレポートですよ。赤い雨に関する大まかな調査結果が記されていますから読んでみてください」
アリサとソーマも席を立ってユウの後ろに立ち、レポートを読み始めた。
『赤い雨に関する調査レポート①』
〇月〇日
血のように真っ赤な雨が降り始めた。明らかに危険なものだと判断し、すぐに屋内へと非難するように命じられたが、八人が雨を浴びたようである。その結果、恐ろしい事態が起こった。
翌日、六人が体の痛みを訴え始める。体の一部に黒い模様が現れ、主にそこが痛むようだ。
二日目、更にもう一人にも模様が現れた。
雨を浴びた最後の一人も経過観察を行ったが、黒い模様は発生しなかった。どうやら赤い雨に触れると絶対に発症する訳ではないらしい。
新種のウイルスであることを想定し、幾つかの検査を行った。
結果、体液からは病原菌と特定できるものは見つからなかった。
更に詳しい調査が必要だろう。
『赤い雨に関する調査レポート②』
〇月〇日
黒い斑点の出るこの症状を、暫定的に黒珠病と命名。
幾つかの法則性を得た。
・赤い雨に触れると高確率で発生(絶対ではないが少なくとも九割以上)
・酷い痛みがある。
・接触感染する。
・空気感染はしない。
・時間と共に黒い痣は広がっていく。
・病原菌は見つからない(少なくともネモス・ディアナの装置では判別不能)
『赤い雨に関する調査レポート③』
〇月〇日
感染者の調査は難航。治療法も確立できないため、逆の発想を試みた。
赤い雨に触れても発症しなかった人物を対象に調査を行った。以下、対象Aと記す。
・血液検査
・体力測定
・皮膚検査
・毛髪検査
・尿検査
・ゴッドイーター適性検査
これらの結果、対象Aは一般的な体質の人物と分かったが、一点だけ奇妙な結果が現れた。ゴッドイーター適性試験で適正ありという判断になったのだ。
以前に調べた時は不適合とのことであり、これは非常に奇妙なことである。
ゴッドイーター適正は生まれながらの体質であり、後天的に会得できるものではない。
これが赤い雨による結果だとすれば、赤い雨には偏食因子に作用するものだと予想できる。予防接種のように、赤い雨に含まれる偏食因子が対象Aに耐性を与えたとすれば辻褄は合う。
調査の方針はできた。
『赤い雨に関する調査レポート④』
〇月〇日
調査は難航。
やはりネモス・ディアナでは偏食因子を調べることは難しい。フェンリルにある専用の機器が必要になる可能性が高い。
治療も困難で、延命措置すら難しい。
しかし、判明した部分もある。
『赤乱雲』(赤い雨を降らせる雲)は一種のアラガミだと考えると分かりやすい。赤い雨という攻撃によって触れた人類を捕食している。ただ、それが病のように現れているだけだ。偏食特性として生物にのみ作用するらしく、無機物を盾にすれば防ぐことは可能。
また、偏食因子を自在にコントロールできる存在ならば赤い雨も無効化できる。(つまり、基本的にアラガミには無効)
四つのレポートを読み終えたユウたちは顔を見合わせる。
この赤い雨は相当な危険現象だ。まだフェンリルは把握していないが、添付されていた赤い雨の発生ポイントを参考にすると、徐々に極東支部にも接近している。他人事ではない。
三人の中で研究者を目指しているソーマはサツキへと問いかけた。
「このレポートを書いた奴に会うことは出来るか?」
「同居人は明後日までいませんからねー。それまで待って貰えるなら会えるんじゃないですかね?」
ソーマはユウへと視線を向ける。そしてユウはソーマの言いたいことを理解し、サツキへと頭を下げながら口を開いた。
「数日で良いので、ここにいさせてください」
「まぁ、構いませんよ。相応の対価は頂きますけどねー」
まさかここに死んだはずのシスイがいるとは予想もしていないユウたち三人。
再会は近い。
エイジスの決戦
リンドウさん救出
アリウスノーヴァ討伐
バッサリカット
一応補足しておくと、この小説はGE2からがメインです。そっちではガンガン原作にかかわらせていきますので。
(だってラスボスがラケル博士だし)