本業は研究者なんだけど   作:NANSAN

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GE2編
EP24 フライア


 

「あれがフライア……」

 

 

 ヘリに乗るシスイ達は遠くに見える巨大要塞を見て複雑な表情を浮かべる。正直なことを言えば、気に入らない。あんな動く要塞を作れる予算があるなら、もっと他に出来ることがあるだろうと言いたい。

 しかし、それは言っても仕方のないことだ。

 すでにフライアは完成されているし、本部に陳情しても意味はない。

 だからこそクレイドルが活動しているのだから。

 

 

「もうすぐ着くわよユノ。起きなさい」

「ん……サツキ?」

「ほら目を覚まして」

 

 

 疲れたのか、ユノはサツキの膝の上で眠っていた。世界で知られる歌姫とはいえ、まだ十六歳の少女である。各地を飛び回り、狸のようなフェンリルの人間を相手にすれば身体的にも精神的にも疲れる。

 本当はヘリの中でもシスイと話したがっていたのだが、シスイは無理矢理眠らせた。

 しかしそれで正解だったのだろう。

 少しだけ顔色も良くなっていた。

 

 

「ユノ、あれがフライアだよ。恐らくはグレムスロワ局長とも話すことになる。しっかりと目を覚まして、あとはお化粧のチェックでもしておくといいよ」

「うん。分かったわ」

 

 

 ユノはサツキから水入りのペットボトルを受け取り、口をゆすいで目を覚ます。そして手鏡を開き、簡単に化粧のチェックをしていた。

 そうしている間にヘリはフライア上空まで移動し、ヘリポートへと着陸準備に入る。

 ヘリが着陸することには、ユノもすっかり準備を整えていた。

 

 

「さ、行こうか」

 

 

 シスイは先に降りてユノへと手を差し出す。ユノはシスイの手を取って、綺麗に飛び降りた。次にサツキにも手を差し出そうとしたが、彼女は普通に飛び降りる。

 

 

「私は気を使わなくても大丈夫ですよー。ヘリは慣れてるのでねー」

「それもそうだね。サツキさんもジャーナリストなわけだし、色んなところに飛び回っているってことかな」

「そゆこと」

 

 

 そうして三人がフライアへと降りると、出迎えに来たのは一人の女性だった。遠くからでも目立つような深紅の髪が特徴的で、白衣を着ていることから研究員だと分かる。出迎えに来るような上位の人物で研究員とくれば、フライアでは二人しかいない。

 そしてシスイは例の無表情女を調べている一環でこの女性のことも知っていた。

 

 

「初めまして葦原ユノ様。ようこそフライアへ。私はこのフライアで神機兵の研究開発を行っています、レア・クラウディウスと申します」

「ご丁寧に。葦原ユノです。私のような者に様付けは不要です」

「いえいえ。そういう訳にもいきません……さて、ここで立ち話もなんですし、ロビーに向かいましょう。そこで責任者のグレムリー・グレムスロワ局長がお待ちです」

「分かりました」

「それでそちらの方々は……」

 

 

 そう言ってレアが目を向けたのはシスイとサツキだった。

 この質問にはユノが答える。

 

 

「えっと……私のマネージャーをしてくれているサツキ、そして今回の護衛を担当してくださってる極東支部のゴッドイーター、シスイさんです」

 

 

 それを聞いたレアは一瞬だけピクリと反応し、シスイの方へと目を向ける。そしてまじまじと顔を眺めた後、恐る恐ると言った様子で訪ねた。

 

 

「あの、失礼ですがフルネームをお伺いしても?」

「構いませんよ。楠シスイです」

「そうですか。失礼しました」

 

 

 今のやり取りでレアが何を聞きたかったのか理解していた。神崎シスイはラケル・クラウディウスのせいで今のようにアラガミ化してしまった訳で、レアもその被害者を認知している。流石に顔は知らなかったが、シスイと聞いてそれを思い浮かべたのは確かだった。

 ただ、名前が変わっていたお陰で気付かれなかったようだが。

 そしてようやくロビーへと行くことになったが、ここでサツキがストップをかける。

 

 

「あのー、すこーし宜しいですかね?」

「あら? どうかしましたかサツキ様?」

「いえ、ちょっとフライアに興味がありましてですね。私は個人的に見学させていただいて宜しいですか?」

「……まぁ、構わないでしょう。案内人を付けますが宜しいですか?」

「ええ、お願いしますね」

 

 

 レアは少し考えたようだが、案内人をつけるということで妥協した。研究棟などの秘匿されるべき施設もあるので、あまり見学者を入れる訳にはいかない。しかし、案内人がいれば問題ないだろうと判断したのだ。

 サツキには別のスタッフを付けて案内させ、レアはユノとシスイを案内してロビーへと向かう。

 巨大なエレベータで中へと入っていくと、最新鋭の設備をそろえたロビーに繋がっていた。フライアに所属するゴッドイーターもここを利用するらしく、依頼受注用の受付すら存在している。

 その近くにでっぷりと太ったグレムリー・グレムスロワ局長が待っていた。

 

 

「いやぁ、ようこそユノさん! 私がフェンリル極致化技術開発局の責任者、グレムリー・グレムスロワと申します。親しみを込めてグレム局長とでも呼んでください」

「初めまして葦原ユノです。そしてこちらが護衛のシスイさんです」

「どうも」

 

 

 レアがグレム局長の背後へと移動している間に三人で挨拶をする。今回はユノがメインなので、護衛のシスイは軽く一礼するだけだ。

 グレム局長もそれを分かっているのか、シスイのことは無視してユノと話し始める。

 

 

「いやー、私の娘も貴方のファンでして」

「ありがとうございます。拙い歌で恐縮です」

「いえいえ、そんなご謙遜を……」

 

 

 思ってもいないことを笑顔で述べるグレム局長にシスイは内心で呆れる。この男がそんな殊勝なことを考えていないことなど明らかだ。これでもシスイは人の心理を読むことに長けている。そうしなければ生きて来れなかったというのもあるが、このグレム局長は殊更分かりやすかった。

 なにか大きな失敗をすれば、責任を押し付けられて落ちぶれることだろう。有能なのだろうが、本部にいる本物の化け物には敵わない。

 そんなグレム局長に追随するようにしてレアも口を開く。

 

 

「フェンリルの広報活動にも協力してくださり、感謝しています」

「いえ、周辺地域への物資供給はフェンリルの力を借りて辛うじて維持できている状況です。私に出来ることがあれば是非……」

 

 

 この辺りの話も軽い皮肉を含んだものだ。

 フェンリルの力を借りていると言ったが、その殆どはクレイドルと極東支部である。本部からの支援はあることにはあるが、最前線に送るべき量からすれば少なすぎる。ただでさえ、人員不足でありながら強力なアラガミが多数出現する地域なのだ。

 それをやり繰りできているのは、この戦力が高いこと、そしてクレイドルの活動によって自給自足が成り立ちつつあるからだ。各サテライト拠点はまだ建設中のところも多く、生産性は完全とは言えない。物資配給も稀に止まるので、不満を持つ人々だっているのだ。

 それを見ても特に改善しない本部への当てつけである。

 ただ、グレム局長はそれに気付かなかったようだ。歌姫と称されるユノにフェンリルを評価されたとしか考えていない。どうやら調子に乗りやすい性格らしい。

 

 

「もし、よろしければなんですけどね、本部のほうで慰問コンサートなんかは……」

「いえ、申し訳ありません。もう少しサテライト拠点の食糧事情が改善されるまでは離れたくなくて……それが解決できればお伺いしたいと思います」

「なるほど……そのことも含めて本部に掛け合ってみましょう」

 

 

 どうせ無駄だろうけどな、とシスイは思うが口には出さない。

 ユノも表情には出さずに一礼した。

 

 

「助かります。ありがとうございます!」

 

 

 これで大方の挨拶は終わりだ。

 今回はフライアを視察し、その内情を知ることでフェンリルのアピールに役立てるというのがメインの仕事である。これから研究室などを簡単に見学し、軽く話をして終わりとなる。

 そしてフライア側は『極東の歌姫、葦原ユノもフライアを見学。非常に有意義な時を過ごされた』とでも発表するのだろう。やり口が目に見えている。

 

 

「ところで立ち話もなんですから……早速参りましょうか。ユノ様も忙しいでしょうし」

「ええ、お願いします」

 

 

 レアの言葉に従い、ようやく見学へと向かうことになる。そしてロビーの階段を降りると、そこでは談話用エリアで三人の少年少女が何か騒いでいた。

 ニット帽を被った少年が大声で話す。

 

 

「だいたいお前らさー、前に突っ込みすぎなんだよー。敵に動きをちゃんを見極めてさー」

「えー? ロミオ先輩がビビり過ぎなだけなんじゃなぁいー?」

 

 

 それに答えたのはもはや痴女とでも称すべき服装の少女だった。ネコミミのような髪型が特徴的であり、頭にはヘアピンを幾つも付けている。

 そんな露出の多い彼女迫られながら言い返されたからだろう。ロミオは後ずさりながら慌てた。

 

 

「ちょっ! な、ナナ! 近い、近いって!?」

「わっ、ロミオ先輩押さないで!」

 

 

 後ずさったロミオはすぐ側にいた別の少年にぶつかる。それを避けようとしたのか、少年も後ろに下がり、丁度通りかかったユノにぶつかりそうになった。

 当然、護衛のシスイは見逃さない。

 

 

「おっと危ない」

 

 

 さっとユノの肩を引き寄せて回避させる。

 後ろに下がってきた少年は代わりにグレム局長へとぶつかり、ロミオは尻もちをついていた。そして明らかに『やべっ詰んだ!』という世の終わりのような表情を浮かべる。

 

 

「ユノ、大丈夫だったかな?」

「ええ、ありがとうシスイさん」

 

 

 一方、ぶつかられたグレム局長は怒り心頭で怒鳴り散らす。

 

 

「貴様らぁっ! ここで何を騒いでおる!」

「わ、あっ……すみません」

「す、すみません……って、あっ!」

 

 

 頭を下げつつ、ロミオは側にいたユノに気付いた。超有名人と言っても過言ではないので、ロミオは彼女が何者かに気付いたらしい。

 もはや怒るグレム局長など頭から抜けていた。

 そしてユノという大事な客の前で無様を晒すのは良くないの感じたのか、レアが前に出て諫める。

 

 

「ふふ、ロビーではあまりはしゃがないようにね? ここには大事なお客様も来るわけだから」

「ホントにすみません」

「すみませーん」

「次からは気を付けてね」

 

 

 素直に謝る少年とナナを見て微笑みながら話を終わらせるレア。ロミオはユノに見とれて言葉すら出ない。しかし、グレム局長は怒りが収まらなかったのか、最後に嫌味を吐いていた。

 

 

「全く貴様らは……ユノさんすみませんねぇ。戦うことしか能のない連中で」

 

 

 そう言って多少は腹が収まったのか、グレム局長は再び案内を始める。区画移動用エレベータに向かいつつ、これからの予定を簡単に説明し始めた。

 そして残された三人は去って行く彼らを見て深く反省していた。

 一名を除いて。

 

 

「あれ? ロミオ先輩どうしたの?」

 

 

 ボーっとするロミオにナナが尋ねる。

 するとロミオはユノを指さし、興奮した様子で口を開いた。

 

 

「何ってお前馬鹿か! あれ! ユノ!」

「ユノ? ヒカルは知ってる?」

「いや、知らないな……」

「お前らマジかよ!?」

 

 

 ユノを知らないと言った二人にロミオは驚いた。全世界で全ての人がユノを知っているわけではないのは当然だが、彼女を知らない人の方が少ないのも事実だ。

 そんな二人にロミオは言葉足らずに説明を始める。

 

 

「葦原ユノ! ユノ・アシハラだって! 超歌うまいの! 有名人だよ!? あー、カメラ持ってくればよかった! くっそー! てか、さっきユノさんの肩掴んでた奴は何者だよ! 羨ましいなぁくっそー!」

 

 

 何か罵倒された気がして振り返ったシスイは、ヒカルと呼ばれた少年がこちらを見ていることに気付く。長い黒髪をポニーテールにした少年で、黒い制服を着ている。

 ユノもヒカルが見ていることに気付いたのか、振り返って密かに頭を下げた。

 それに倣ってシスイも軽く手を振る。

 これが楠シスイ、葦原ユノと神威ヒカルの出会いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 ユノの護衛が終わってから二週間ほど経った頃、その日も第一部隊は大型種を三体ほど撃破して帰還したのだが、エントランスの情報モニターを見たエミールがいきなり叫んだ。

 

 

「なんと!」

 

 

 なんだなんだ? と注目を集める中、同じ第一部隊の同期であるエリナがエミールへと詰めよる。そして思いっきり眉を顰めて怒鳴った。

 

 

「エミール煩い! いきなりどうしたっていうのよ!」

「エリナか……いや、少し気になる情報を見てしまってね」

「気になる情報? サテライト拠点にアラガミでも出たの?」

「いや、そちらは今日も防衛班がしっかりと守ってくれたようだ。そうではなく、どうやらフライアという本部肝いりの移動要塞が極東付近まで来ているらしい。それを見て気になったのだよエリナ」

「フライアって……確かこの前シスイ隊長が行ってきたってアレのこと?」

「そうだとも」

 

 

 極東でもフライアのことはよく知られている。新たに出現した脅威、感応種を討伐出来るというブラッド隊と呼ばれる部隊を保有しており、フライア自体も神機兵という新しい兵器を開発している。

 まさに次世代を担う可能性を秘めた大施設だ。

 また、それと同時に批判も多い。

 フライア内部は贅をつくした構造となっており、そんなところに資金と資材を割く余裕があるなら、もっとサテライト拠点に支援をして欲しいという声だ。

 良い意味でも悪い意味でも知られているのである。

 

 

「それでフライアがどうしたっていうのよ?」

「いや、僕は思ったのだ。フライア……人々の希望が詰まったあの船にはきっと、怒涛を思わせるアラガミの大軍が待っているのだろう。そして彼らは夜も眠れぬ日々を送っているのだろう……と」

「そう……なのかな?」

「そして僕は思ったのだ! こうしてはいられない! 彼らの助けにならなくては!」

「いや、それは余計なお世話でしょ!」

「止めても無駄だエリナ……僕は行くぞ!」

「あ、ちょっと待ちなさいエミール!」

 

 

 去って行くエミールを見て茫然とするエリナ。

 そこへ一通りの事務作業を終えたシスイとコウタが戻ってきた。そしてエミールが走り去っていくことに疑問を感じつつ、シスイはエリナに話しかける。

 

 

「どうしたのエリナ?」

「あ、シスイ隊長にコウタ隊長! 聞いてください! エミールがフライアに行くって言いだして!」

 

 

 それを聞いたシスイとコウタは首をかしげる。どうしてそうなったのかサッパリ理解できないからだ。かくかくしかじかとエリナが説明すると、二人は納得する。

 

 

「なるほどね。どう思うコウタ?」

「どうって……エミールが本当にフライアに行けるのかってことか?」

「うん」

「行けそうだよな」

「そうなんだよね」

「え? 何でですか!? あのエミールですよ!?」

 

 

 無謀にも思えるエミールの行動だが、援軍としてフライアに赴くことは十分に可能だ。このご時世、どこも戦力不足なのは変わらない。援軍は喜んで受け入れる所ばかりだ。まして、最前線で世界最強が集まると言われる極東支部からの援軍となれば、それもエース部隊である第一部隊からの援軍となれば確実に受け入れられることだろう。

 つまり、申請さえすればいつでも行けてしまうのである。

 それをシスイは懇切丁寧にエリナへと説明した。

 

 

「それじゃあ……」

「うん、まぁ、行けちゃうね」

「あ、ああ……どうしよう……絶対に極東は変な場所だって思われる!」

「心配するのそこなんだ」

「エミールなら大丈夫ですよ隊長。あんなの殺しても死にませんから。絶対に最後まで死なないのは主人公キャラとギャグキャラと相場決まっています!」

「君はそんな情報を何処で仕入れたんだエリナ……」

「え? コウタ副隊長ですよ。この前バガラリーを見せてもらったときに教わりました」

「またお前かバカラリー!」

「シスイはいつでも辛辣だな!?」

 

 

 そうは言うものの、シスイとコウタも大して心配はしていない。ブラッド隊というのは特殊な技能を持つエリート部隊という話を聞いているので、寧ろエミールの方が助けられ、何かを教わって来るに違いないという確信があった。

 今するべきなのはフライアへと連絡してエミールが迷惑をかけるだろうということを先に謝罪しておくことである。

 

 

「エミールはどうせ止まらないよ。もう放っておこう」

「そうだな」

「そうですね」

 

 

 満場一致で放置を決定されたエミールは、シスイの予測通り援軍の申請を出していた。そしてすぐに受諾されて、その日から少しばかり第一部隊は三人だけとなる。

 その間、エリナには隊長と副隊長によるレッスンが行われ、それなりに腕を伸ばしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

『第八サテライト拠点に大型種デミウルゴスが進行中。近くにいるゴッドイーターは応答をお願いします』

「こちら第一部隊、丁度ミッションを終えたところです。向かいましょうか?」

『お願いします』

 

 

 アレから暫くしてエミールが帰って来ると連絡があった日、三人での第一部隊はエミール抜きでミッションに出ていた。任務から帰った頃にはエミールも帰って来るだろうと話していたところで、ヒバリから緊急通信が入ったのである。

 サテライト拠点に大型種が向かっているとなると無視できない。

 近くにいる第一部隊は予定外だが仕事をすることになった。

 

 

「行くよコウタ、エリナ」

「おう!」

「了解ですシスイ隊長!」

 

 

 先程サリエルを倒したばかりでエリナは疲れが見えていたが、シスイとコウタはまだ余裕である。エリナだけを帰すのもアリだ。しかし、それは彼女のプライドが許さないだろう。

 デミウルゴスは堅いだけで動きが遅いので、大丈夫だろうと判断した。

 三人は迎えの輸送ヘリに乗って第八サテライト拠点へと向かい、目標のデミウルゴスを探す。デミウルゴスは鈍いので、サテライト拠点が襲われる前に辿り着くことが出来た。

 その姿を確認したシスイは二人に声をかける。

 

 

「このまま飛び降りるよ。僕が頭部に奇襲をかけ、その後スタングレネードで隙を作る。コウタは直後に顔を狙ってオラクル弾を当てて欲しい。エリナはそれでよろめいたデミウルゴスにチャージグライドをよろしく」

『了解!』

「三、二、一、行くよ!」

 

 

 シスイから順番に飛び降りてそれぞれ神機を構える。不気味な赤い刃のヴァリアントサイズを振りかざしたシスイは、そのまま重力と共にデミウルゴスの頭部を削り取った。神機を当てると同時に開咬状態にして、着地後もガリガリと削り取る。さらにポーチからスタングレネードを取り出して投げた。

 ピカッと光ってデミウルゴスは動きを止める。

 

 

「そこだぁっ!」

 

 

 コウタは旧型の銃神機を構えて、空中でも姿勢を崩さず正確に狙撃する。かれこれ三年近くゴッドイーターをしているコウタは、もう腕前ならトップクラスだ。長く第一部隊に所属しているだけはある。

 デミウルゴスは顔面を結合崩壊させられ、呻いて倒れた。

 四肢の関節部が開き、外殻の下に隠れた柔らかい弱点が露出する。

 そこへエリナが攻撃を仕掛けた。

 

 

「いっけええええ!」

 

 

 強いオラクルを纏ったスピアが放たれ、デミウルゴスに大ダメージを与えた。

 初手から上手くいったことで三人とも笑みを浮かべる。

 

 

「グガアアアアアアアアアア!」

 

 

 空気を震わせるほどの咆哮を放ってデミウルゴスが起き上がった。四肢にある弱点は隠れてしまったので、ここからは上手くダウンさせるか、カウンターを狙うかでしか弱点に攻撃できない。このデミウルゴスは討伐に時間がかかることで有名なので、初手の大ダメージは本当に嬉しい。

 

 

「さ、気を引き締めていくよ。コウタは援護、エリナは一緒に前に出ようか。装甲とカウンターの練習だよ」

「いいぜ。任せろ」

「行きます隊長!」

 

 

 エリナにとってデミウルゴスは初めての相手だが、その動きは資料で勉強している。初見ではあると言っても情報がないわけではないのだ。

 シスイとエリナは神機を構えつつ前に出た。

 

 

「装甲は展開の瞬間にエネルギーが一瞬だけ強くなる。その瞬間にガードすると、アラガミの攻撃を完全に防ぐことが出来るんだ。こんな感じだね」

 

 

 シスイはそう説明してから装甲を展開する。丁度そこへデミウルゴスが前足を振り下ろしてきたので、ジャストガードのタイミングで防いだ。

 一瞬だけ活性化された装甲のオラクル細胞がデミウルゴスの攻撃威力を完全に分散し、本来なら吹き飛ばされてしまうような攻撃を逆に弾き返す。そこを狙ってシスイはヴァリアントサイズの伸ばし、弱点部分を切り裂いた。

 

 

「ガアアアアアッ!?」

「分かったかいエリナ?」

「やってみます!」

 

 

 怖いハズだが、デミウルゴスの巨体へとエリナは向かって行く。そして神機を前に出し、いつでも装甲を使えるように用意した。

 デミウルゴスは前足を伸ばして横なぎに質量攻撃を繰り出す。直撃すれば一撃で致命傷となるほどの威力だが、エリナは逃げなかった。

 

 

「エリナ今だよ!」

「はい!」

 

 

 シスイの掛け声に合わせて装甲を開き、ジャストガードを成功させる。デミウルゴスは腕を弾かれたことで関節が伸びきり、弱点を晒してしまった。エリナはそこを逃さない。

 

 

「やああああっ!」

 

 

 スピアを突き出して弱点部分を貫き、結合崩壊させる。更にコウタがアサルト弾を叩き込み、大きなダメージを与えた。

 このまま行ける。

 そう思ったとき、エリナは空の向こうに異常事態を発見した。

 

 

「そんな! 赤乱雲!?」

「何? 本当かエリナ!」

 

 

 コウタも慌てて確認するが、確かに赤乱雲が確認できた。つまり赤い雨が降る予兆である。これを発見した場合、ゴッドイーターですら逃げることが許される。濡れれば死ぬ雨の中で任務をしろという無茶はない。

 だが、逃げればデミウルゴスはサテライト拠点を襲うだろう。

 しかし、赤い雨が降る前にデミウルゴスを倒して自分たちが逃げ切れる保証はない。

 こうなれば選択肢は一つだった。

 

 

「コウタ、エリナは先にサテライト拠点まで避難してくれ。デミウルゴスは僕が倒しておく」

 

 

 それを聞いたエリナは反論しかけるが、それよりも先にコウタが返事をする。

 

 

「分かった。頼んだぜ!」

「コウタ副隊長!? どうして―――」

「いいから行くぞエリナ。シスイは大丈夫だ!」

 

 

 コウタはエリナの腕を掴んで少し遠くに見えるサテライト拠点の方へと走り始める。それと同時にシスイは手袋を外し、腕に巻き付けていた包帯を外し始めた。

 

 

「本気を出すからね。エリナにはあまり見て欲しくないかな」

 

 

 ボソリと呟いた声はエリナに届かない。

 コウタが全力で離れていったので、二人の姿はもう見えない。

 自分がアラガミ化している事について知っているのは極東でも一部であり、まだエリナやエミールには言ったことがないのだ。

 パキパキと音がしてオラクルが結晶を創り出す。半透明な赤い結晶の槍が形成され、シスイはそれをデミウルゴスへと放った。この槍はノヴァの因子を取り込んだことで作れるようになったものであり、あらゆるものを喰らい貫く性質を受け継いでいる。

 つまり、デミウルゴスのような堅いアラガミでも簡単に貫くことが出来るのだ。

 赤い槍はデミウルゴスの体の中心へと突き刺さり、食い荒らして一気に成長する。そして赤い結晶がデミウルゴスを内部から突き破り、動きを止めた。

 

 

「まったく、この槍は本当にズルいよね」

 

 

 シスイはそう言いつつ左手にオラクルの爪を創り出し、デミウルゴスの首元を切り裂く。そしてコアを露出させ、神機を一気に食い千切った。

 コアを奪われたデミウルゴスは力を失って倒れる。

 濡れても意味はなかったが、赤い雨が降る前に完了させたようだ。

 シスイは通信を入れてヒバリに繋ぐ。

 

 

「デミウルゴスは討伐完了しましたよ。他に反応はありませんか?」

『問題ありません。ありがとうございましたシスイさん』

「分かりました。僕は赤い雨の中でも動けるので、何かあれば遠慮なく言ってくださいね」

『はい。申し訳ありませんが、非常に助かります』

 

 

 そこで通信を切り、シスイも第八サテライト拠点まで歩いていく。そして戻った時にエリナが心配だったと泣きだし、シスイが実は赤い雨の効かない特異体質だと知って『心配して損した』と怒るのは別の話。

 今日もサテライト拠点は守られたのだった。

 

 

 

 

 

 

 ちなみに、第一部隊はサテライト拠点で雨宿りしていたので、戻ってきたエミールには一人寂しく極東支部で待っていたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ユノさんとのぶつかるフラグは圧し折りました。
代わりにグレム局長とぶつかった2の主人公乙。
2の主人公の名前は神威ヒカルとしました。特に意味はありません。

あとはエミールがフライアに援軍として登場した辺りの話ですね。極東支部目線での話なので、2の序盤はバッサリとカットします。ジュリウス、ギル、シエルとかの登場は次回ですね。初感応種討伐の話でシスイと絡ませます。

後半のデミウルゴス討伐も特に意味はありません。尺が余ったのと、久しぶりに戦闘描写を入れること、エリナ強化、それとエミールを最後で残念にさせるためだけのものです。
エリナは2の主人公と会うまでに強化させます。
エミールは……まぁいいでしょう。彼は殴られて強くなるドMですから。ウコンバサラにボコボコにされて騎士道を覚醒させ、そのご主人公に殴られてブラッドアーツを覚醒させます。考えれば考えるほど残念キャラですよねエミールって
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