「バレットがおかしい?」
「はい、そうなんです」
ブラッドが極東にもなじんできたある日、シスイは唐突にシエル・アランソンから相談を受けた。なんでもバレットがいつもと異なる挙動を起こしたらしく、調べて欲しいということである。
エディットのミスではないかとシスイは疑ったが、シエルにそれはないだろう。少なくとも、彼女が考えらえれる原因ではなかった故にシスイの元まで持ってきたのだから。
「分かった。調べよう」
「お願いします」
シエルから受け取ったバレットを解析器にかけてデータを参照していく。構成としてはよくあるスナイパー弾なのだが、確かに通常とは異なる波長も検出された。
それを見てシスイは眉を顰める。
「確かに異常が起きている……」
「やはりそうでしたか」
「ただ、この波形……どこかで見た覚えがあるね」
これと似たものを見たのは割と最近である。
そう思ったシスイはコンピュータの履歴からデータを引っ張り、最近見たデータを比べ始めた。そうして三十分ほど経った頃、ようやく正解を引き当てる。
「なるほど。これか」
「シスイ、これは?」
「ブラッドの偏食因子に関するデータ。特にブラッドアーツ発動時のものだね」
「ブラッドアーツの? それはつまり……?」
「元々、ブラッドアーツは神機の刀剣形態で使える専用技みたいなものだ。でも神機には銃形態もあるよね。要するに、新しいブラッドアーツだよ」
「そんなことが!?」
しかし有り得ないことではない。
剣の形態でブラッドアーツが使えるなら、銃形態専用のブラッドアーツがあってもおかしくはないのだ。寧ろ、これまで判明しなかった方が不思議なくらいである。理由は不明だが、何かの要因があって新しいブラッドアーツが目覚めたらしいとだけ分かった。
「理解はしました。では便宜上、銃形態のブラッドアーツをブラッドバレットと呼ぶことにします」
「いいんじゃない?」
「それでこのブラッドバレットにはどのような特徴が?」
「それはこれからだね。バレットのモジュールを分解して解析するから、すぐには終わらないよ。明日には纏めておくからその時に待て来てくれるかな?」
「分かりました。ありがとうございます博士」
「やめてくれ。シスイでいい」
「ふふ。ではありがとうございますシスイ」
シエルはそう言って研究室を後にする。シスイは早速このブラッドバレットを解析したいところだが、残念ながら今日は別の予定が入っているのだ。
いや、正確にはシエルよりも僅かに早く予定が入ってしまったのである。
「さてと、リンクサポートデバイスの試作品実験……いきますか」
シスイは白衣を翻し、部屋を出たのだった。
◆◆◆
黎明の亡都。
泉が近くにある古い町であり、巨大な教会も近くにある。そんな場所に楠シスイと神威ヒカルは二人でやって来ていた。目的はリンクサポートデバイスの試作品を実験するためである。
『感度も良好、リンクサポートも上手く働いている。神機も機能を失っていないみたいだね!』
「今のところはね」
『もう……分かっているよシスイ君。ちゃんと観測しておくから、危なくなったら助けてあげてね』
「分かっているさリッカ」
リンクサポートとは、使用されていない神機を利用し、作戦区域全体に追加効果をもたらすというシステムなのだが、使用中は神機としての機能が無くなることが問題だった。
三年前と異なり、リンクサポートは安価に運用できるまで実用化されている。
しかし、それでもリンクサポートと神機運用の平行は未だに実験段階だった。
今回は一応の試作品が出来たので、こうして運用しているのである。新型リンクサポートデバイスをあげる代わりに実験を手伝う……そんなこんなで釣れたのがヒカルだったのだ。
「ホントに大丈夫だよな?」
「大丈夫じゃなかったら僕がどうにかするよ」
「不安だ……」
「ま、今のところは動いているし、大丈夫じゃないかな?」
実のところを言えば、シスイすら新型リンクサポートデバイスが動いたことに驚いている。他の神機使いに試してみた時は機能しなかったので諦めていたのだ。偏食因子が異なるブラッドならどうかと思ってダメ元の実験をしてみたのだが、予想を裏切られて見事に機能したのである。
シスイはそんなことを億尾も出さず、隠れて目標を捉えた。
「さてヒカル。あれが今回のターゲット、コンゴウ堕天種だよ」
「実験の割には結構なとこ突いてきましたね」
「……? 何言ってんの? 実験用だからちゃんと雑魚を選んだじゃないか?」
「何言ってんだこの人!?」
極東では勘違いされているが、コンゴウは決して雑魚ではない。
他の支部では、一人の時にコンゴウが現れると死を覚悟することも考えなくてはならないのだ。まして大型種など出現すれば、逃げの一手に限る。
しかし、極東では違う。
中型種以下は基本的に雑魚扱い。ヴァジュラは一人で狩れて当たり前だし、大型種が乱入してくるなど日常茶飯事なのである。極東で一年生き残れば、他の支部では隊長を張れると言われる程、ここは過酷なのだ。
これが極東か……と戦慄するヒカルをよそに、シスイはどこ吹く風でいつでも奇襲できる位置に移動する。
「じゃ、行こうか。リッカはデータ観測宜しくね」
『任せてシスイ君』
「はぁ……わかったよ」
ヒカルはショートブレードを構えて飛び出す。黒い服装と黒い神機、そして彼の長い黒髪のせいで、影が動いているようにも見える。黒い閃光となったヒカルは一瞬でコンゴウへと近寄り、捕食によってバースト状態へと移行した。
「グゴオオオオオ!」
「はっ! 遅い!」
ショート・ブラストの組み合わせであるヒカルはとにかくスピードを重視する。攻撃は回避、隙を突いて反撃……という動きを繰り返し、余裕があればオラクルリザーブでバレット用のオラクルを貯蓄する。
ショートブレードは軽い代わりに攻撃力が低いという欠点を持っているが、それを補うようにブラスト弾を活用しているのだ。
「ぶっ飛べ!」
変形した神機を構え、ヒカルはブラスト弾を撃つ。多少はバレットエディットを利用しているらしく、デフォルトのものよりも高威力弾になっていた。大爆発を引き起こし、コンゴウは背中を結合崩壊してしまう。
そんな彼をシスイは陰で見守るだけだった。
今回、シスイが出て来たのは保険のため。
仮にヒカルの神機が止まってしまった場合、すぐにシスイが助けるのだ。
しかし杞憂だったようで、ヒカルは十分もすればコンゴウ堕天種を討伐してしまった。いろいろ言っていた割にはしっかり一人で討伐している。
「グゥゥゥ……」
最後に呻いて倒れたコンゴウ堕天をヒカルは捕食する。そして無事にコアを抜き取り、ミッションを達成したのだった。
死体となったのを見計らってシスイはヒカルのもとに出てくる。
「どうだった? 違和感とかは感じてないかな?」
「いや、問題なかったな。神機の感覚もいつも通りだった。あ、でもリンクサポートのお陰で攻撃力は上がってたけど!」
「それなら大成功って頃かな? いやー、動いて良かったよ」
そう言って笑うシスイを見て、ヒカルはふと気づく。
「もしかして……ホントは動かないものだったとか……?」
「おっと口が滑ったね。まぁ言ってしまえばその通り。何故か君は動かせたみたいだけど」
「おいコラ!?」
「大丈夫さ。そのために僕が居たんだから。まぁ、極東にいればこんなことも良くあるし、神機が動かない程度で死ぬようだと感応種も相手に出来ないからね。極東の隊長クラスは神機が停止状態でもアラガミを追い返すぐらいは出来るよ」
「何その化け物!?」
極東は末恐ろしい場所である。
ヒカルはそう感じていた。
慣れてしまえばこれが普通なのだが……
ちなみに、人外を育てる魔境とも評される極東は、他の支部から研修として神機使いが送られてくることも珍しくない。かつてはアネット、フェデリコという第二世代神機使いが神薙ユウの下に就いて研修していたのだが、今では彼らの支部で無類の強さを誇っているという。元は当時珍しかった第二世代神機使いがユウに色々と教えてもらうための研修だったのだが、それ以上に極東流の規格外戦闘術を身に着けて帰ったのが何よりの収穫だろう。
(極東じゃジュリウス隊長も霞んで見えるな……)
ジュリウスは強い。
エリート部隊ブラッドで隊長となるほどには強いのだが、極東基準では一般レベルである。ジュリウスも一人で大型種を撃破できるはずなのだが、それは他の地域での話であり、極東に来ると一人で大型種討伐は難しくなっていた。
極東のアラガミは他の地域と比べて強い。
それは同じ種でも
「さて、迎えも来たみたいだし、帰投しようか」
「りょーかーい」
なんだか諦めた表情のヒカルは投げやりな返事を返す。
極東は魔境。
想像の斜め上を宙返りする勢いにこれから慣れなくてはならない。
二人は帰還したのだった。
◆◆◆
戻ったシスイとヒカルは、早速リッカの研究室に向かった。そこで今回のデータ採取をするのである。戦闘中のデータは採取済みなので、戦闘後の影響をこれから調査するのだ。
診察用のベッドに転がったヒカルの横にリッカが座り、逆側にシスイが立つ。
「これから最終チェックをするよ。ヒカル君はそのままね」
「ま、睡眠薬で眠らせてあげるから、気付いた時には終わっているよ。だからゆっくり休んでくれ」
「といっても二時間ぐらいだけどね」
息ピッタリで説明するシスイとリッカの言葉を聞きながらヒカルは意識を落としていく。すぐに睡眠薬が効いたのか、データ上のグラフでも眠っていることを示していた。
これからしばらくデータを取ることになる。
「じゃあ、シスイ君も帰っていいよ。データ採取は一人で十分だから」
「わかったよ。解析は手伝うから、あとで僕の研究室に持ってきて。たぶん、そっちの方が機材が揃っていると思うし」
「そうだね……やっぱり解析はシスイ君の研究室が一番かな? 頼むよ」
「うん。僕も用事があるからそちらをやっておく」
シスイはそう言って部屋を出る。
そして長い廊下を歩き、リッカの研究室からほど近い自分の研究室へと入った。認証カードで鍵を開き、中に入るとブラッドバレットを解析するための装置が中途半端にセットされている。
シエルに頼まれた解析をこれからするつもりなのだ。
「まずはモジュールの分解かな。それをコンピュータ解析にかけて変異した部分を検出、その後は変異部分にブラッドの偏食因子がどう関わっているかを調べる。まずはここか」
シスイはバレットの研究も行うので、専用装置もいくつか持っている。半分以上は自作の機械だが、性能はそこらのものよりも上だ。バレットの解析など一時間もあれば終わる。
「データ検証開始。その間にブラッドバレットに変異した状況の確認をしますかね」
メールボックスを見ると、シエルから状況報告書が届いていた。真面目な彼女らしい、実に丁寧で細かい報告書である。
(場所は嘆きの平原か……あそこは磁場が変質して天候に影響を与え、常に竜巻が発生している。ウロヴォロスを引き寄せやすい場所としても有名だね。となると、ブラッドの力がそれに影響された? ブラッドの偏食因子はそんな簡単に影響されるのか……? となると、はやり注目するべきなのは『血の力』の相互作用の方か)
ブラッドはそれぞれ『血の力』と呼ばれる特殊能力を有している。どれも感応現象を応用したもので、第二世代神機使いでは起こりあえなかった出力を叩きだすことを可能としている。
ジュリウス・ヴィスコンティの『統制』。
神威ヒカルの『喚起』。
シエル・アランソンの『直覚』。
まだ他の三人は目覚めていないが、どれも戦場で大きな効果を発揮する。そしてシエルがバレットに変異を感じたのは、神威ヒカルと二人で任務に出かけた時だった。
歓迎会の時にシスイが話したように、作成した試作品バレットの運用を手伝ってもらっていたという話である。そういう繋がりもあって、シエルはシスイに相談したのだが。
(『喚起』か『直覚』か……考えられるとすれば『喚起』かな。あれは直接的な感応現象というよりも、感応現象に作用する感応現象とも言える。つまり、感応現象を増幅することも可能なわけだ。それはつまり、ブラッドの力の可能性を広げるということを意味する)
ブラッドアーツはブラッドの力だが、正確には感応現象で神機の力を引き上げることが本質である。出力さえあれば、誰でも出来ることだ。理論上は……
それはともかく、ブラッドバレットとは神機の可能性を『喚起』の力で広げたものだと推測できる。ここで問題なのは、可能性が広がったのはヒカルの神機ではなくシエルの神機ということだ。本人を置いて、他人の神機に作用している点である。
「あるいは、二人の間に特別な感情があれば別か……」
感応現象は穿った言い方をすれば『滅茶苦茶強い感情』である。あまりに強すぎるので、他の人にまで記憶や感情が伝わったりするし、神機にも思いは伝わる。
そして人と人との間に強い思いがあれば、それを介することで他人の神機に作用することも理論上は不可能ではない。あくまで理論上は。
以前はこの作用を逆向きに利用してユウはリンドウをアラガミ化から救出した。あの時はシスイもいなかったので、仕組みもよく分からない賭けのようなものだったが。
「となると、ヒカルとシエルのデータが必要だな。榊博士から貰ったデータを参照して……」
シスイは方針が出来たことでコンピュータを操作し始める。バレット解析とは別の画面を立ち上げ、そこにヒカルとシエルのデータを映して比較していく。
通常時と戦闘時のデータをそれぞれ検証した結果、特に関係はなさそうだという結論に至った。
「そう簡単じゃないか。確かに、常時リンクしているのもおかしな話。ヒカルの『喚起』が発動した瞬間のデータがあれば別かもしれないけど……」
ジュリウスやシエルと異なり、ヒカルの『喚起』は自在に発動できるというものでもないらしい。思いが強くなった時に自動で発動するものとなっている。
勿論、今のところは……という注釈がつく。これから練習すれば、意図して『喚起』を引き起こすことも不可能ではない。ただ、ブラッドバレットを目覚めさせるには他者との繋がりが必要になる。『喚起』を意図的に発動させたとしても、相手に受け入れる意思がなければ意味がない。
相手の意思に関係なく作用する力があるとすれば、それはもっと異質で別の力だろう。そんな能力があればアラガミを不活性に追い込むことも可能かもしれないので、使い道としては充分だが。
「っと……こっちの解析は終わったみたいだね」
ヒカルとシエルのデータを並べて四苦八苦していると、いつの間にか一時間経っていたらしい。バレットのモジュール解析が終了していた。
とりあえずの優先はこちらなので、画面を切り替えて結果を眺める。
(このモジュール……ブラッド特有の波形が混じっているね)
やはりブラッドアーツの亜種という考え方は間違っていなかったらしい。バレットを構成するモジュールの一つが変異していると判明した。
(オラクルの収束率が十倍以上になっている。これならバレットがアラガミに直撃した後も、霧散せずに『残留』するってこと。つまりはレーザー系のバレットと同じく貫通効果があるってことだね!)
これが意志の力かとシスイは驚く。
今までの技術ではやりたくても出来なかったバレットが可能となるのである。願いの数だけ可能性が増えるのがブラッドバレットの特徴だ。今回はシエルのスナイパーバレットで調査したが、アサルト、ブラスト、ショットガンでも別のブラッドバレットを発現する可能性は高い。
シスイは分かったことをすぐにレポートにしてまとめる。
あとはブラッドバレットの発現に関する条件だろう。これについては別の検証が必要だ。
「仮説検証のためにまた二人でミッションに出て貰うか……」
そう呟いた時、不意に研究室の扉がノックされた。
どうぞ、と言って鍵を開けるとリッカが入ってくる。時間を見ると、いつの間にか二時間半ほど経っていることが分かった。
「データを持ってきたよシスイ君」
「ありがとうリッカ。早速解析を始めようか」
ブラッドバレットに関するレポートは一通り纏まったので、片付けてリンクサポートデバイスを解析する準備を始める。するとそれを見たリッカがシスイに尋ねた。
「何の解析をしていたの?」
「ちょっとブラッドについてね。バレットが変異したから調べて欲しいって依頼を受けたんだよ。ブラッドアーツみたいに、特別な変化を遂げているみたいなんだ」
「ふーん。で、誰の依頼?」
「だからブラッドからの―――」
「誰の依頼?」
鋭い。
シスイは何故か背中に冷たいものを感じた。これ以上言ってはいけないが、言わなければならない。そんな矛盾を抱えた感情が駆け抜ける。
最終的には……言うことにした。
「シエル・アランソン……だよ?」
「へー、あの子のねー?」
「あの、リッカさん? ちょっと笑顔が怖いですよ?」
「何言っているの? 私の笑顔はいつも素敵だよ?」
「あ、はい」
椅子の上で固まっているシスイに、リッカは後ろから手を回す。そして背後から抱き着くような姿勢になって耳元で囁いた。
「別に私は怒ってなんかいないよ? 私に黙ってあの子の依頼を受けた上に、面白そうなことを独占していたことに怒ってなんかいないよ?」
「えっと、はい」
「でも、今夜は色々とお話ししようね……?」
どうやら機嫌は最悪らしい。
可愛らしい嫉妬である。それにブラッドバレットについて黙っていたのも悪かった。話すつもりではあったのだが、リンクサポートデバイスの件で忙しくしていたことから、後で話そうと思っていたのだ。そんな言い訳をしたところで意味はなさそうだが。
それにリッカが不安がっているのも理解できる。
元々、シスイとリッカの結婚は策略に近い部分があった。シスイが名前を変えて偽の経歴を作り、それによって神崎シスイとは別人であるということにしたのだ。本部もこれを落としどころとしてシスイを狙うことを止めたのである。
そして告白したのはリッカの方であり、シスイは戸惑いが強かった。
今でこそシスイもリッカを妻として愛しているが、リッカには不安が残っていたのである。本当に自分で良かったのか。シスイは仕方なく結婚したのではないのか……と。
いい加減、ハッキリさせた方がいい。
向こうがこれだけ思っているのなら、シスイとしても応えないわけにはいかない。アラガミ化した自分が怖いというのは言い訳にしかならないのだから。
「そうだね……今夜色々と話そうか」
「へ?」
「昔サクヤさんが言ってたんだよね。困った時は取りあえずベッドの中でって。リンドウさんの本音を聞きだしたいときには有効だったらしいよ?」
「シ、シスイ君……」
現在、リッカはシスイの背後から抱き着いている状態だ。直に体温が伝わってくる。
シスイはリッカが真っ赤に染まっているのを容易に想像できた。
「ま、それはともかくリンクサポートデバイスの件を調べようか」
「そそそそうだね!」
リッカはシスイから離れてポケットに手を入れ、データディスクを取り出す。それを受け取ったシスイはコンピュータにセットして早速解析を始めたのだった。
「おー。実際に目で見てたから知っているけど、ホントに動いてたんだね」
「うん。私もびっくりしたよ」
「ま、ヒカルには悪かったけど」
まさか動くとは思わなかったというのが正直なところである。
しかし、何かが作用して新型リンクサポートデバイスは機能したのだ。神機とリンクサポートを両立した状態で。
「データを見る限りだと『血の力』が作用しているね」
「うん。それは私も思ったんだ」
「ここだね。以前のリンクサポートは発動すると神機としての機能が消えていた。そうならないようにブラッドの偏食場で補完している。これは……面白い」
「うーん。これって他のブラッドにも出来るのかな?」
「少なくとも『血の力』を覚醒させている必要はあると思うよ。でも……これはヒカルだからこそ出来たことじゃないかな?」
「『喚起』の力だね?」
「恐らくは」
リッカとも意見が一致したところで、改良点を洗い出していく。
特殊条件下とは言え、実際に機能したというデータが手に入ったのだ。この意味は大きい。
「幾つかの仮説は立つね……となると実証データが欲しい」
「もう一度ヒカル君には協力してもらった方が良さそうだね」
「彼には色々と驚かされる。『喚起』の力……期待できそうだよ」
本人の知らぬところで期待されるヒカルだった。