勝手にアナグラを飛び出してしまったロミオは、休暇だったという扱いになった。ゴッドイーターは軍に近い組織なので、不用意に姿をくらますと脱走兵として処理されることもある。この辺りは柔軟な極東の対応に感謝だ。これが本部なら問答無用で銃殺も有り得ただろう。
後でそれを聞いたロミオは顔を青ざめさせていた。
ロミオは極東の外で住む老夫婦と話すことで悩みも解決したらしく、既に戻ってブラッド隊も問題なく運用している。アレだけ問題を抱えた個性的とも言える隊員が一つに纏まっているのは一種の奇跡だ。そしてその裏で副隊長こと神威ヒカルが尽力していたことは誰もが知る事実である。
そんなブラッドだが、現在はフライアへと戻っていた。
「ここも静かになったね~」
「なにオッサンみたいなこと言っているですかハルさん」
「ハハッ。俺は充分オッサンだよシスイ君。いやいや、若さが羨ましいねぇ」
「それはそれで爺臭ぇセリフだ」
「ソーマも辛辣だねぇ」
久しぶりにソーマが極東へと帰ってきたので、シスイはハルオミを交えてラウンジにいた。三人とも酒の入ったグラスを片手に、最近のことを語り合う。
「そう言えばソーマ。ユウは元気にしてる?」
「ん? ああ。あの野郎が元気じゃ無いところなんて見たことねぇよ」
「ユウっつったら神薙ユウか? 俺は別の支部にいた時に少し話したことがある程度だなぁ。今はクレイドルの隊長さんだっけ?」
「ああ、あいつは主に危険なアラガミの駆除を担当している。他にも危険区の調査、若手ゴッドイーターの指導を各地を回りながらこなしているな」
「相変わらず忙しそうだ。偶には戻ってくればいいのに」
「無茶言うな。クレイドルはこれでギリギリだ。動ける奴は存分に働かねぇとやっていけねぇよ」
ソーマはそう言ってグラスを傾ける。
この三年で随分と気性も落ち着き、大人の貫禄が出始めた。父であり、極東の前支部長であるヨハネス・フォン・シックザールと同じく、研究者の道を進もうとしている。そのため、ソーマはシスイやペイラー榊の意見を聞くために極東へは定期的に戻っていた。今回の帰還もその一環である。
一方でユウは常に実働部隊だ。接触禁忌種と呼ばれるアラガミばかりを狩り、大量のアラガミが巣食う危険地区を単独で調査するという超人的な働きを見せている。
ちなみにリンドウはとあるアラガミを追って各地を回っており、ユウとは別の意味で忙しい。娘のレンに会えないとボヤいていたそうだ。
「しかしクレイドルも大きくなったよね。まだ設立して三年なのに」
「その辺りはサクヤがやってくれている。あとはツバキもな。あの二人は既に一線を引いているゴッドイーターだが、元は極東を生きてきたプロだ。今は教官役になってクレイドルを切り盛りしている。他にもオペレーター指導なんかもしているな」
「縁の下の力持ちって奴かぁ? いい女じゃねぇか」
「あの二人も義理とは言え姉妹だもんね。すごいスパルタなんじゃない?」
「……ノーコメント」
若干目を逸らしたソーマを見て、シスイは苦笑いを浮かべた。リンドウの姉である雨宮ツバキは極東の鬼教官として有名だった。それはクレイドルに移ってからも顕在らしい。そしてリンドウの結婚したサクヤは、娘を生んだ後からゴッドイーターとしての仕事を止めてサポートに回っている。ツバキと同じく教官役をしたり、オペレーターとして働いているようだ。他にも事務作業などを担当しているらしい。サボり癖のあったリンドウに変わって事務作業をしていた経験が生きているということである。
ソーマはそれについて話したくないのか、無理やり話を変えた。
「……ゴホン! それよりも少し前にブラッドの副隊長に会ったぞ」
「ヒカルに?」
「ああ、何と言うか……アレは良いゴッドイーターになるな」
「そりゃ俺も同感だぜ~。アイツには何かを引き付ける力がある。俺はそう思うな」
ハルオミが強く同意したのでシスイも頷く。
シエル、ギルバート、ナナ、そしてロミオ……問題だらけだったブラッド隊を繋ぎ留め、一つの部隊として成立させているのはヒカルの働きが大きい。隊長のジュリウスは実力を以て部隊を率いているが、対する副隊長ヒカルは人望を以て部隊を纏めている。
あのブラッド隊の強さはそこから来ているのだろう。
ソーマは資料でしかブラッドを知らないが、シスイとハルオミは実際に見て来たのでよく分かっていた。ソーマは一口分だけグラスを傾けてから、言葉を続ける。
「アイツはユウに似ている。見た目じゃなく、雰囲気がな」
「うん。僕もそう思うよ」
「ああ、そんな感じがするよなぁ」
ヒカルの評価は極東でも高い。
御人好しなのか、色んな人の悩みを聞いているし、手伝いも進んで行っている。リンクサポートデバイスの件がその例だ。嫌なミッションも進んでクリアしているし、偶に防衛任務に出ている姿も見える。クレイドルでサテライト拠点を担当しているアリサも彼の助けに感謝していた。
「『喚起』の力ね。人と絆を深めれば、感応現象を通して他者の力を開花させることが出来る。ヒカルだからこそ手に入れた血の力ってわけだね」
ヒカルの能力は非常に興味深い。
しかも『喚起』の応用性はオラクル技術においても多くの可能性を見出すだろう。そもそも、血の力と言う現象自体がイレギュラーだ。ブラッド隊を生み出すP66偏食因子を生み出したラケル・クラウディウスも一種の天才ということである。
そんなことを考えていたソーマは、ふと思い出したかのように言葉を漏らした。
「そう言えばラケル・クラウディウスに出会ったな……」
「……どこで?」
「ちょっと榊のおっさんに資材を貰おうと思ったんだが、その時丁度いたってわけだ」
ソーマが今回戻ってくるよりも前にも極東へと立ち寄ったことがある。その時にヒカルと出会い、同時にラケルにも出会ったのだ。その時ラケルから感じた悪寒は今でも忘れられない。
「あの女……俺と同じだな」
「ソーマと同じ? じゃあ体内に偏食因子を?」
「いや、もっとアラガミに近いものだ。性格もアラガミのせいで変質しているかもな。どう考えても馴染んでなかった。ゴッドイーターでもねぇ奴が何で偏食因子なんか宿しているのかは知らねぇが」
「確かに……変だね」
そして二人が専門用語のオンパレードによる学者会話を始めたので、ハルオミは理解不能ながらもグラスを片手に聞き入る。なにやら不穏な単語が偶に聞こえたりもしたが、正直言って彼には理解できなかった。
「オラクル細胞で脳を強化しているとか?」
「いや、それは有り得ねぇな。流石に脳細胞への転化は危険すぎる。意識を侵食されかねない」
「実際に侵食されている可能性はあるんじゃない? 本部の人間なんてどんな黒い実験をしているか分かったものじゃない」
「断定は出来ねぇな。だが、確かに本部の奴らはやりかねないか……シスイはラケルにあったことがあるのか?」
「生憎、僕の両腕はあの女の実験の産物なんだよ」
「な……に……っ!? おい、それは初耳だぞ!」
「初めて言ったからね」
「あの女……裏でそんなことをしてやがったのか。胡散臭さは榊のおっさん以上だな」
「うん。榊博士に狂気を加えたら丁度ラケルになるんじゃないかな?」
「クク……違いねぇ」
途中からペイラー弄りに変わっていたが、新たな事実に二人とも驚いていた。まさかラケルが体内に偏食因子を宿していると思わなかったシスイは、頭の隅で不安な思考を繰り返す。
(まさか……ね)
それは可能性でしかない。
オラクル細胞が人に乗り移り、操っている。ただ捕食することしか考えないオラクル細胞が科学と言う叡智を得た時、どんなことが起こるのかは予想するに難くない。
だが、シスイはすぐにその考えを霧散させたのだった。
◆◆◆
そのころ、ブラッド隊はフライアロビーで寛いでいた。仕事がようやく終わり、今は極東に戻るための手続きをしているところなのである。
今回のブラッドの仕事は二つ。
まずは黒珠病患者の受け入れ手続き、及び医療体制の充実化である。これはラケルとジュリウスが色々と仕事をしていた。以前にサテライト拠点を訪れた際、ブラッド隊は黒珠病患者の実態を知ることになった。ユノとサツキに案内され、自分たちが何も知らなかったと思わされたのだ。特にジュリウスはそれが顕著で、フライアで黒珠病患者を受け入れられないかと提案していたのである。そして今回はその提案者として色々と働いていたのだ。
もう一つの仕事は神機兵開発である。無人型の開発責任者であるクジョウが制御技術を確立したことで、実際のテスト機生産に向けて資材を集めることになったのだ。ジュリウスが抜けていたことで暫定的にヒカルがブラッドを率い、一週間ほどかけて資材を集めきったのである。
「ようやく極東に帰れるね!」
「おいおいナナ……すっかり極東が故郷みたいじゃん」
「アレ? あはは、そうだね~。でも、極東っていい人ばかりだし。ロミオ先輩もそう思うでしょ?」
「ま、まぁ?」
「確かにな。そこはナナに同意だ。それに実力者ぞろいで勉強にもなる」
「ほらぁ。ギルも言っているよ?」
ブラッドもいつの間にか極東に馴染んでいたらしい。そうでなければ『極東に帰る』等という言葉は出て来ないだろう。
それはヒカルとシエルも同様である。
「極東はホントに勉強になったな。グレム局長がアラガミ動物園っていうのも頷けるヤバさだった」
「はい、極東は世界有数の前線地域として有名です。どういうわけか、極東では強力なアラガミが多数出現するということですから」
「まぁ、ヴァジュラを一人で狩れて一人前とかふざけすぎだよな」
「初めて聞いた時は驚愕しましたね」
ブラッドはこれでも特殊部隊なので、一人一人が極東基準で一人前だ。極東支部の荒波に揉まれ、更に実力も伸ばした。
しかし実力としてはまだまだ先がある。
極東の隊長クラスになると、接触禁忌種を相手にすることもあるのだ。特に第一部隊のシスイは同時に複数の接触禁忌種を一人で討伐することだってある。ブラッドアーツや血の力もなくあれほどのポテンシャルを発揮する極東人は、ブラッドからすれば脅威的なのだ。
「極東支部の第一部隊……か。あれが俺たちの目指すものなんだろうな」
「副隊長……」
「特に隊長のシスイさんと副隊長のコウタさんは別格だ。サリエルのレーザーを切ったり撃ち落としたりとか意味わかんねぇし」
「ああ、あれは酷かったな……」
「ギルもそう思うか?」
ヒカルが思い出すのはシスイ、コウタ、ヒカル、ギルバートの四人でサリエル種三体の同時討伐へと出かけた時の話である。サリエル二体に強毒性サリエルという面倒極まりない組み合わせだったが、シスイは飛び交う無数のレーザーを全て斬り伏せ、コウタは援護としてレーザーを撃ち落としつつ完璧なバックアップを果たしていた。
もうこの二人だけでいいんじゃないかと思うほど酷い戦闘だったのである。
開始数秒で始まる弾幕ゲームを潜り抜け、シスイがサリエル一体を真っ二つにする。そして弾幕が減った隙を突いたコウタが残るサリエルと強毒性サリエルの顔面に爆発弾を撃ち込んで視界を封じ込め、シスイが咬刃を伸ばしたヴァリアントサイズで地面に叩きつけた後、クリーヴファングで二体同時に両断した。
ヒカルとギルバートは近くにいたコクーンメイデンとオウガテイルを相手していただけである。
何のことかと首を傾げるシエル、ナナ、ロミオにこのことを話すと、三人もかなり引いていた。
「それは……酷いですね……」
「なんかアラガミが可哀想……」
「マジで人だよな? 人型のアラガミとかじゃないよなあの二人……」
サリエル種が三体……しかも一体は堕天種であるにもかかわらず、一分もかからずに討伐したというのだ。驚き呆れるを越えて体が震えてしまうレベルである。大型種の中でもサリエル種は確かに弱い部類だ。しかしトリッキーな遠距離攻撃と毒攻撃が厄介であり、決して簡単に倒せる相手ではない。それを正面から突破したのだから実力の高さが窺える。
極東の隊長格はもはや理解不能な領域なのだ。
「それに極東は研究分野でも独自の力を持っていますね。榊博士、シスイは特に世界的にも有名な科学者ですから。更に他の技術者たちも非常に優秀です。極東は百年以上前から技術力の高い人材を生み出す魔境と呼ばれていたそうですから」
「やっぱ極東人はすげー……」
「でもロミオ先輩? 私もヒカルも極東人だよ?」
「まぁ、そうだな」
「あ、そう言えば……ってことはナナもヒカルもあんな感じになるのかよ!?」
「ねぇよ」
「それはないかな~」
極東人かどうかというよりも、極東という環境が恐ろしい。人外を容赦なく生み出す魔境の中の魔境というのが総合的な評価だろう。
そんな話をしていると、エレベーターからジュリウスが降りて来た。そしてロビーに集まるブラッドを見つけて歩み寄る。
「こちらは終わったぞヒカル……何か話をしていたのか?」
「まぁ、ちょっとね。極東の恐ろしさについて」
「は?」
この数時間後、ブラッドは極東へと戻ることになる。
◆◆◆
その日、シスイはアリサと共にサテライト拠点の一つへと来ていた。サテライト拠点を運営するために経済の中心となる工場を建設終了し、徐々に家屋の建設も進んでいる。だが、サテライト拠点において最も重要なのは対アラガミ装甲壁だ。シスイは補充材料の入手と、装甲壁の調整も兼ねてアリサと共にやってきたのである。
ウコンバサラ、ヤクシャ・ラージャ、ボルグ・カムラン、そしてクアドリガ堕天種からオラクルリソースを回収し、今は対アラガミ装甲壁に組み込むための準備をしている。
「どうですかシスイ?」
「大丈夫。数時間以内には終わるよ」
「良かった……これで被害なく更新も済みそうですね」
対アラガミ装甲壁はアラガミの攻撃を防いでくれるものではない。アラガミの嫌う因子を組み込むことで、食べたくないと思わせるだけのものだ。つまり、アラガミが嫌う因子を更新し続けなければすぐに破られてしまうのである。
常にアラガミは進化しているので、更新頻度もかなりのものだ。正直言って人手が足りない。専門家でないシスイが駆り出される程だから相当である。
「……よし、計算開始。あとは待つだけだね」
「その計算ソフト……民間でも使えるようになればいいんですけどね」
「それは難しいかな。ある程度の知識は必要だし、計算ソフトも万能じゃない。状況に応じてプログラムを打ち直すこともあるから」
「む……どうにかなりませんか?」
「そうだね……例のアラガミから採取できるレトロオラクル細胞があれば……」
「ああ、確かキュウビですね」
クレイドルは活動の一環として、とあるアラガミを追っている。
それがキュウビだ。
プロジェクトリーダーはリンドウで、補佐としてソーマもいる。何度も調査を繰り返しながらキュウビの移動ルートを確かめ、討伐に向けて準備中だ。
そしてそのキュウビから採取できるのがレトロオラクル細胞である。これは極めて純度の高い、原型に近いオラクル細胞であり、通常のオラクル細胞とは異なる挙動を見せる。マルチコアプロセッサのように並列処理が可能で、オラクル技術に多くの恩恵をもたらすとされているのだ。
例えば、レトロオラクル細胞を複数連結してパターン演算が可能なように調整する。すると与えたオラクルリソースを自動で吸収して組み合わせ、最適な対アラガミ装甲壁が成長するようになるのだ。いちいち計算ソフトで組み合わせを演算しなくても、自動で組み合わせを選択してくれるのである。これなら、民間人でも扱える対アラガミ装甲壁となるだろう。
これを応用してスタングレネードと同じく携帯できる即席対アラガミシェルターなども作れるようになる。
サテライト拠点のためにも必要な技術だった。
「ま、無いものを強請っても仕方ないからね。取りあえずは僕たちが働くしかないよ」
「そうですね。一番苦しいのは壁の中に入れない人たちです。私たちクレイドルの意義は、そんな人たちを救うことにありますから……休んでいる暇はありません」
「いや、休もうよ。この前も倒れたって聞いたよ?」
「勿論です。それぐらいは気を付けます! ヒカルにも注意されましたから」
「ブラッドの副隊長君にね……もしかしユウから乗り換えた?」
「ち、違います! 私にとっての一番はユウです! ……あっ」
ハッキリと宣言したアリサに対してシスイは笑いを堪える。普段は素直じゃないアリサだが、こうして弄ると幾らでもボロが出てくるのだ。それが面白くて仕方ない。
顔を真っ赤にしたアリサは必至に言い訳する。
「ち、違いますよ!? その、一番というのは最も尊敬しているという意味で……」
「うん、そうだね。わかったわかった」
「絶対分かっていません! ほら、その優しい目を止めてください!?」
アリサがユウに恋心を抱いているのは周知の事実である。もはや極東のメンバーでは知らない者の方が少ないぐらいだ。あの天然カノンですら知っているほどである。
残念なことに当のユウは気付いていないので、優しい目をされても仕方なかった。極東に来た当初は自信家のイメージが強かったアリサも、今ではすっかり年頃の乙女である。
そのギャップを知る者たちは陰で爆笑しているのだが、それは知らぬが花だろう。
「ま、いいさ。一応これは独り言だけど、ユウって女性スタッフから人気らしいよ? イケメン、世界最強、そして優しいときた。これで人気が出ないわけがない。もしかしたらどこかに支部で美人さんと劇的な出会いを果たしゴールインするかも―――ね?」
「…………それ、ホントですか?」
「さぁ? コウタが血の涙を流しながら言ってたよ」
「フ……フフフフフ。帰ったらコウタに問い詰めます……フフ」
「ほどほどにね?」
アナグラに帰ったらコウタは犠牲になるのだろう。冥福を祈るばかりである。
冗談は良いとして、ユウとアリサの件は割と真面目に心配されている事案だ。いつになったらくっ付くのかと皆がドキドキワクワクしている。これも殺伐とした極東の戦場における息抜きなのだ。
しかし、既に結婚しているシスイはともかく、ゴッドイーターの婚姻事情というのは結構深刻だ。いつ死ぬかも分からない相手を恋人にするような人は少なく、結局はゴッドイーター同士が一番多くなる。だが、多忙なゴッドイーターは恋愛にかまけている暇もないので、いつまでも同僚止まりなのだ。
(ま、クレイドルはフェンリル内でも特に忙しい部隊だからね。今はユウと会うだけでも難しいみたいだし、恋人になるのはずっと後かもね)
ハイライトを消してブツブツと呟くアリサを見ながらシスイはそんなことを考える。早く平和になって自由に恋の出来る世界が来て欲しいものだ。
だが、世界は人に厳しい。
そして運命は世界に厳しい。
雑談を繰り広げていたシスイとアリサを遮るように、緊急通信が入る。
『緊急事態です! 広域に強力な感応波を確認! 大量のアラガミがサテライト拠点に向かっています!』
ここを含め、まだ幾つかのサテライト拠点は対アラガミ装甲壁のアップデートを終えていない。その状態で多数のアラガミが来るとなると、確実に破られるだろう。シェルターは優先してアップデートされているので大丈夫だと思われるが、早く避難しなければ拙い。
「僕は出るよアリサ。避難誘導をよろしく」
「分かりました。気を付けて!」
二人の行動は早い。
そして極東支部もすぐに動き始める。
運命の歯車は着実に、そしてシナリオ通りに進んでいくのだった。