本業は研究者なんだけど   作:NANSAN

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EP37 朧月の咆哮③

 

 サバイバル特殊ミッション第七ポイント。

 ブラッド隊はこの場所で待ち構えるハンニバル神属感応種スパルタカスと戦っていた。周囲のオラクルを吸引することで一時的に超強化するのが特徴的なアラガミだが、逆に言えば強化さえさせなければハンニバルと大差ない。

 スパルタカスが吸引を開始するごとにスタングレネードを投げることで、ブラッド隊は戦いを有利に進めていた。

 

 

「誓約の選択! 『追撃の誓い』『破壊への衝動』『解き放つ本能』!」

 

 

 ヒカルはブラッドレイジの解放準備をする。スパルタカスの周囲にいるアラガミが鬱陶しいので、一気に殲滅することにしたのだ。幸いにもこれまでのサバイバルミッションで暴走率は充分高まっており、マルドゥーク戦を考えてもここで使用して問題にはならない。

 

 

『誓約の選択を確認しました。履行を開始してください』

「うおおおおおお!」

 

 

 ヒカルはスパルタカスに捕食を実行し、バースト状態の時間を延長化させる。そしてすぐに懐へと飛び込んでいき、無数の連撃を浴びせ始めた。

 それに倣ってシエルがスパルタカスの頭部を撃ち抜いて気を引き、火力担当であるギルバートとナナが一気に左右から頭部を殴り、結合崩壊を引き起こす。

 

 

「やっちまえ隊長!」

「いっけー!」

 

 

 見事な連携で誓約を全て履行し、ブラッドレイジの発動条件が満たされる。

 

 

『誓約の履行を確認。感応制御システムを起動。拘束フレームをパージします。ブラッドレイジ、始動!』

 

 

 ガチャン……とヒカルの神機から封印用フレームが外れ、神機の暴走が開始する。安定した暴走という矛盾を抱えた状態だが、その矛盾を成し得るのが血の力『喚起』だ。

 オラクルの異常活性によって一時的な侵食が進み、ヒカルの右腕から肩にかけて暴力的なオラクルが奔流を見せる。その本流は片翼の翼となり、安定した。

 

 

「行くぜ!」

 

 

 ヒカルがそういった瞬間、スパルタカスはその姿を見失う。そして次の瞬間には、全身を切り刻まれていた。速度が売りのヒカルがブラッドレイジという強化を受けた以上、その速度はあらゆるアラガミを凌駕してしまう。

 僅か十秒でスパルタカスを完全に仕留め、残り二十秒で周囲のアラガミを殆ど倒して見せた。オリジナルであるレイジバーストシステムよりは強化率が低いとは言え、やはりその力は凄まじい。

 

 

『ブラッドレイジ、終了しました。神機を再封印します!』

「これで残りは雑魚だけだ! さっさと終わらせるぞ」

 

 

 ヒカルの言葉は他の三人にも届いたのか、シエル、ナナ、ギルバートも討伐速度を速める。残る中型種以下に後れを取るブラッドではないので、そこから先は一時間と経たずに終わった。

 そしてそれと同時に、少し離れた場所で深紅のオラクルによる流星群が発生する。これはシスイが放った広範囲殲滅用のオラクル攻撃だ。離れた場所にいるアラガミを殲滅したのだろうと誰もが予想する。

 それを補完するようにヒバリの通信も入った。

 

 

『ブラッド隊、及びシスイさんは目標のアラガミを討伐完了しました。これより輸送班によるキャンプ地の組み立てを行います。ブラッド隊とシスイさんは既定の位置にて待機してください』

「こちらブラッド。了解だ」

『シスイです。了解』

 

 

 今回は感応種の割に対したことがないと定評のあるスパルタカスの討伐だったので、ブラッドにもあまり疲労はない。勿論、スパルタカスもアラガミとしては強力な部類だ。しかし、感応種というくくりで見れば大した能力もなく、ただ周囲を弱体化させながら自信を強化する程度のもの。更に、強化中にスタングレネードを使えば中止に追い込むことも出来る。

 正直に言えば隙だらけのハンニバルだ。

 

 

「行くぞ皆」

「了解です隊長」

「今日は楽だったね~」

「思ったより簡単に終わって助かったぜ」

 

 

 ヒカルがブラッドレイジを使ったからというのもあるが、今日はいつもよりミッション終了が早い。明日にマルドゥーク戦を控えているので、早めにキャンプ地を作ることが優先されるからだ。

 今日は早めに休んで英気を養い、明日に全てを出し尽くす。

 極東地域に甚大な被害をもたらし、ジュリウスとロミオが黒蛛病になる原因となったマルドゥーク。超広範囲に感応波を及ぼす得意種と思われ、今回も辿り着くまでに七つの中継地点を経由することになった。

 ヒカルもこの日のためにシスイとブラッドレイジの調整を重ね、シエルは専用のバレットを制作し、ナナはおでんパンを量産し、ギルバートは神機をフルチューンナップしている。

 全てはマルドゥークを倒すためだった。

 目前へと迫った宿敵。最後の夜は刃を研ぎ澄ませながら過ごすことになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 

 

 夜、シスイは一人でキャンプを抜け出し、岩場を登って月を眺めていた。アナグラでは滅多に見られない星空が広がっていたので、天体観測ついでに月見をしていたのである。

 少し離れた場所では神機兵がずらりと並んでおり、アラガミが侵入してこないか見張っている。神機兵は自動で防御してくれるので、寝ずの見張にはピッタリだ。たとえ神機兵で倒せないアラガミで出現したとしても、ゴッドイーターが出撃するまでの時間稼ぎにはなる。

 将来的には人手が不足しているサテライト拠点の防衛にと期待されているだけあって、今回のサバイバルミッションでも利点が生かされていた。

 

 

「あの神機兵……作るのに何人が犠牲になってるのかね……?」

 

 

 ふとシスイはそんなことを口にする。

 ラケル・クラウディウスの持つ技術は多くの人体実験から生み出されている。シスイも実験体の一人だった過去があるので、そこから生み出された技術もあるのだろう。

 なお、シスイは自身で自身を研究し、アラガミバレットなどを開発したが。

 ともかく、あの神機兵もラケルが手を加えている以上、人体実験から得たデータも使用されているのだろう。そう思うと、途端に神機兵が憎くなる。

 だがシスイはその思想を振り払って別のことを考えることにした。

 

 

「ラケルの目的か……」

 

 

 それはずっとシスイが考えてきたことである。ラケルは非道な実験こそしているが、その分だけ結果も残している。フェンリルも役に立つ結果を提出するラケルを追及できず、人体実験がのさばっているのだ。

 勿論、表には人体実験のことなど出ていない。フェンリルは裏でラケルを容認しているのである。

 そしてラケルも科学者である以上、目的があるはずだ。シスイも最終的な目的はあるし、多くの科学者はそれを持っている。しかし、ラケルの研究データを見てもそれが見えてこない。

 ブラッドの偏食因子、アラガミの行動データ、神機兵、最近は黒蛛病とバラバラなのである。ラケルの父であるジェフサが神機兵研究の第一人者だったので、最終目的が神機兵である可能性は高い。しかし、あの不気味な女がそんな殊勝ことをするようには思えなかった。

 

 

「またハッキングでもしてフライアを覗いてみるか? あの厳重なプロテクトを解除したら何か出てくるかもしれないし……」

 

 

 少し前にユノの頼みでフライアのネットワークへと侵入した際、ラケルの者と思われるデータボックスが不審なほど厳重になっていた。研究データが詰まっているとすれば厳重になるのも当然となる。しかし、そのプロテクトの異常さから、疚しいものでも隠されているのではないかと思えるのだ。

 特に人体実験をしていた過去がある以上、その疑いは拭えない。

 そんなことで頭を悩ましていると、不意に誰かが咳込む音が聞こえた。

 岩の上から見下ろすと、見覚えのある影が見える。

 

 

「ジュリウス」

 

 

 シスイは飛び降りて駆け寄った。

 久しぶりに見る元ブラッド隊長。今回はフライアと共にこのミッションに参加しているので、顔を出すこと自体はおかしくない。だが、黒蛛病は前より酷くなっているらしく、腕に広がる痣を抑えながら苦悶の表情を浮かべていた。

 

 

「大丈夫かい?」

「シスイ……俺の後を着けてきたのか?」

「いや、先に僕がここに居たんだよ。そこの岩の上で月を眺めていた」

 

 

 ジュリウスはそれを聞いて安堵したかのように座り込む。

 そんなジュリウスを見てシスイは首を傾げながら訪ねた。

 

 

「それにしてもフライアから出てくるなんてね。かなり体調も悪いんだろう?」

「ああ、だが決戦前にブラッドに会っておきたくてな。特に思い詰めていないようで安心した」

「なるほど。ジュリウスは体調の悪さがバレないようにコソッと逃げてきた訳だ」

「……言い方に悪意を感じるが、大まかにはその通りだ」

 

 

 ジュリウスはこれでも周囲に気を配りながらキャンプ地を離れてきた。黒蛛病は接触感染なので、あまり人の中にいるわけにもいかない。こうして目立たない場所に来るのがジュリウスとしても落ち着く。

 しかし、想定外なことにシスイに見つかってしまった。幸いにも着けられていたのではなく、単に初めからそこにいただけだったが。

 

 

「痛むんだね?」

「ああ、隠しても仕方ないから言うが、俺は進行が早いらしい」

「フライアの黒蛛病研究でも治療の目途が立っていないのか……」

「いや、かなり良いところまでは終わっている。まぁ、俺は間に合いそうにないがな」

「そうだったの? 思ったより進んでいるみたいだね」

 

 

 極東支部での黒蛛病研究は停滞しているのが現状だ。接触感染を恐れて手術による治療は諦め、薬物治療に重きを置いて研究が続けられている。しかし、目立った成果は出ていない。

 その一方でフライアの研究予想以上に進んでいることに驚いた。

 

 

「ぐっ……」

「おいジュリウス!」

 

 

 しかし、その驚きもジュリウスが苦しみだしたことで打ち消される。シスイは急いで駆け寄り、倒れそうになるジュリウスを支えようとした。

 だが、ジュリウスはそれを拒絶する。

 

 

「来るな! 黒蛛病に感染する!」

「いや、僕は大丈夫だよ。黒蛛病に耐性があるからね」

 

 

 シスイは拒絶するジュリウスを無視して黒い痣に触れた。この痣は肉体を侵食するオラクル細胞であり、その際に痛みが生じる。だから、シスイはそれを多少でも取り除くことで痛みを和らげることにした。

 オラクル細胞を自在に操れるシスイにとって多少ならば黒蛛病を除去することも不可能ではない。黒蛛病のオラクル細胞は人体に強く癒着しているので、完全な除去は出来ない。しかし、痛みを和らげる程度なら問題なく可能なのだ。

 触れた指先からジュリウスを蝕むオラクル細胞を吸い出し、幾らか除去する。

 するとジュリウスは徐々に痛みが消えたからか、安堵の表情に変わっていく。

 

 

「これは……どういうことだ?」

「黒蛛病はオラクルの一種。僕の能力で操れば多少は取り除ける。精々、進行を遅らせる程度だよ。これでジュリウスが生き残る可能性も上がったかな?」

「…………まさかこんなことまで出来るとはな」

「完全じゃない。それに黒蛛病治療にも応用できないと既に分かっている。その程度のものさ」

 

 

 簡易的な治療を終えたシスイはジュリウスの隣に座り、再び口を開いた。

 

 

「ブラッドに会った感想はどうだった?」

「ああ……もう、俺は必要なかったよ。ヒカルは隊長として皆を纏めていた。単純な隊長としての技量はアイツの方が上だよ」

「『統制』なんて血の力を持っている割には弱気だね」

「ふ……確かにそうかもしれん」

 

 

 ジュリウスは自重するようにして呟き、空を見上げた。雲一つない夜空には無数の星が煌めいており、緑色の月がより大きく見える。

 そしてその月に向かって手を伸ばすように言葉を続けた。

 

 

「俺の『統制』はもっと大きな軍団に向いている能力だ。だが、ヒカルの『喚起』は少数精鋭の部隊長に向いている。……勿論、性格もな」

「だから神機兵を?」

「ああ、俺に出来ることをする……替えの効く神機兵なら誰も死なない。例え孤独な王になったとしても、俺はこの道を諦めない」

 

 

 ギュッと握りしめた拳からジュリウスの覚悟が窺える。本当なら、命をかけて神機兵開発を完成に導くつもりだったのだろう。シスイの治療で多少は負担も軽減されたので、マシになったと思うが。

 

 

「明日は遂にマルドゥークだ……油断はするなよシスイ」

「それはこちらのセリフ……と言いたいところだけど、ジュリウスは神機兵だからね。言っても無駄かな。有り難く忠告を受け取ることにするよ」

 

 

 シスイとジュリウスはその言葉を最後に分かれる。

 決戦前夜の夜は粛々と明けていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、作戦開始時間となり、高台の上から五人のゴッドイーターがマルドゥークを見下ろしていた。変異マルドゥークは周囲に三十を超えるガルムを従えており、前回から下僕を補充したのだと分かる。

 マルドゥークはブラッドの四名、そして残りのガルムはシスイと神機兵で担当することになっていた。

 

 

「遂にこの時が来たな」

 

 

 ヒカルの呟きに皆が頷く。

 そしてヒカルは神機の切先をマルドゥークに向けて叫んだ。

 

 

「行くぞブラッド!」

『了解』

 

 

 そしてブラッド隊はマルドゥークへと飛び出していく。いち早く気付いたマルドゥークは咆哮を上げつつ強力な感応波を放ち、周囲のガルムに命令を下す。

 

 

「グオオオオオオオオオオオオオオ!」

『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアア!』

『マルドゥークの感応波が上昇! シスイさんはガルムの対処をお願いします』

「任された」

 

 

 そしてシスイも飛び出し、水晶のように半透明な赤いヴァリアントサイズを投げる。回転する凶刃はガルムの一体を両断し、地面に突き刺さった。そして高台から飛び降りたシスイは、地面に突き刺さったヴァリアントサイズを抜きつつ、咬刃を展開する。

 

 

「邪魔」

 

 

 シスイの薙ぎ払いによって三体のガルムが同時に息絶えた。密集状態でいる場所に奇襲を仕掛けたので、速さが売りのガルムも上手く動けない。シスイはその隙を上手に使って次々とガルムを仕留める。

 

 

『シスイさんが六体目のガルムを仕留めました。神機兵の展開が終了、戦場を囲うようにして包囲網を構築しています。これで逃す心配はありませんよ!』

「だったら早速やってやるぜ! 誓約の選択、『追撃の誓い』『解き放つ本能』」

 

 

 ヒカルは早くもブラッドレイジの使用を決意した。そして誓約履行のためにマルドゥークへと果敢な攻めを見せる。それと同意にシエル、ナナ、ギルバートもヒカルの補佐に走り始めた。

 

 

「そこです」

 

 

 シエルのスナイパーがマルドゥークの右ガントレットを穿つ。ここは以前にシスイが結合崩壊させているので、ダメージが大きい。そしてマルドゥークの動きが一瞬止まった隙に、ナナがブラッドアーツで大ダメージを与えた。

 

 

「グゥゥゥ……」

「はっ! 隙だらけだぜ」

 

 

 ギルバートはスピアでマルドゥークの左目を突く。ここは昔にヒカルがつけた傷であり、マルドゥークは大きく仰け反った。動きが止まったので、ヒカルが捕食する。

 バースト状態になり、同時に誓約の履行も完了した。

 

 

『誓約の履行を確認。拘束フレームをパージします。ブラッドレイジ、来ます!』

「はあああああああああああああ!」

 

 

 通常の五倍にもなる力を得たヒカルが縦横無尽にマルドゥークへと斬りかかる。マルドゥークはガントレットから大爆発を引き起こしてヒカルを吹き飛ばそうとするが、そうはさせまいとシエルが特殊バレットを撃ち込んだ。

 

 

「グガッ!?」

「炸裂弾です。撃ち込まれたスナイパー弾が体内で炸裂し、大ダメージを与えますよ」

 

 

 更にこの炸裂弾は封神の効果が込められている。マルドゥークは弱体化を余儀なくされた。これがシスイと協力して実験を重ねつつ生み出した新型バレットである。スナイパーの正確さと威力の高さを生かしつつ、状態異常による補助効果までつけた一つの完成形だ。

 

 

「今日は朝からおでんパンを食べてきたもんね! 元気百倍!」

「俺だって今日のために神機の重心調整を完璧にしたんだ。負けられねぇ!」

 

 

 火力担当のナナとギルバートはマルドゥークの気を引くようにして重い一撃を加えていく。マルドゥークは徐々に動きを鈍くしていた。

 どうにかしようとガルムを呼び寄せても先にシスイが片付けてしまう。近くのガルムを切り刻み、遠くのガルムは的確に撃ち抜くので、ガルムたちはブラッドに近づくことも出来なかった。マルドゥークは感応波を広げて大量のアラガミを呼び寄せようとするが、神機兵が壁となって意味をなさない。

 

 

「この数はそろそろ面倒になってきたね」

 

 

 ガルムを始末していたシスイは、そんなことを言いながら加速してガルムを踏み台にする。そして勢いよく空中に飛び上がり、連続でオラクル槍を形成した。赤い水晶のような槍が次々とガルムに降り注ぎ、一発で一体を仕留めていく。

 動きの速いガルムの行動予測をした上で連射できる辺り、シスイの計算能力の凄まじさが浮き出ていた。

 この完璧なサポートによってブラッドはマルドゥークとの戦闘に集中できるので、流石のマルドゥークも追い詰められる。変異マルドゥークといっても、感応波が強大である以外は大したことないのだ。

 精々、少し強化されたガルムである。

 たった一体ならブラッドの敵ではない。ブラッドレイジによって追い詰められたマルドゥークは、ブラッドレイジ終了後も一方的な防戦を強いられることになる。

 

 

「誓約の選択! 『追撃の誓い』『破壊への衝動』『解き放つ本能』!」

 

 

 そして二度目となるブラッドレイジ。

 勢いに乗ったヒカルは一瞬で誓約を完了させ、活性化オラクルを纏った。黄金に輝くオラクルの奔流が軌跡として残り、マルドゥークを切り刻む。ブラッドアーツ『風斬り陣』が結界のようにマルドゥークを覆っているので、シエル、ナナ、ギルバートも遠距離からの銃撃で援護した。

 

 

「これで最後のガルムだね!」

「くたばれマルドゥーク!」

 

 

 シスイが最後のガルムを両断すると同時に、ヒカルはマルドゥークの胸を十字に斬り割いた。

 マルドゥークは呻きながら倒れる。

 

 

「倒したか……?」

「そのようですね」

「おわったぁ~」

「ったく、面倒な奴だったぜ」

 

 

 ブラッドの四人は神機を降ろして構えを解く。

 だが、それは油断だった。

 

 

『気を付けてください! マルドゥークの反応は止まっていません!』

「なんだって!?」

 

 

 ヒカルたちは慌てて神機をマルドゥークに向ける。すると、マルドゥークは力を振り絞るようにして立ち上がり、不意打ちに突進を仕掛けて来た。速度のあるマルドゥークの突進を避けきれるとは思えず、四人はダメージ覚悟で装甲を展開する。

 だが、突如としてマルドゥークに爆発が襲い、動きを止めた。

 

 

「グルル……グオオ!」

 

 

 連続してマルドゥークに爆発が襲いかかる。

 それは周囲に展開していた神機兵だった。大量の神機兵が物量の力でマルドゥークを抑え込む。その隙にブラッドは立て直し、今度こそトドメをさすために四方から襲いかかった。

 

 

「これでトドメだ!」

 

 

 ヒカルが空中からショートブレードを突き立てるのと同時に、シエルはショートブレードを振りかぶり、ナナはハンマーを叩き付け、ギルバートは槍で貫く。

 今度こそマルドゥークは倒れ、ヒカルたちも神機を降ろした。

 そしてシエルが呟く。

 

 

「やっと……仇を取れました」

 

 

 マルドゥークのせいで傷つくサテライト拠点の住民、ゴッドイーター、そしてロミオ。全ての思いを乗せた刃は遂にマルドゥークに届いた。

 

 

「まったくだぜ」

 

 

 ギルバートは地面に腰を下ろし、息を吐く。

 そこへシスイも近づいていた。

 

 

「お疲れ様、ブラッド」

「シスイさんか。そちらもお疲れ。流石は多対一において世界一と呼ばれる人だな。あの量のガルムを捌き切るなんて」

「神機兵のサポートもあったからね。まだ楽だったよ」

 

 

 シスイが神機兵の方を見ると、そちらも武装解除していた。

 恐らくフライアの中でジュリウスも安堵していることだろう。

 

 

「帰ったら、フライアに行けるように申請してみようぜ。ロミオ先輩のお見舞いに行きたいからな」

「そうですね。賛成です」

「うん。ちゃんと報告はしないとね」

「はっ……仕方ねぇな」

 

 

 こうしてサバイバル特殊ミッション『朧月の咆哮』は終結したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




面倒になって戦闘描写が雑に……
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