本業は研究者なんだけど   作:NANSAN

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EP9 悪意の特務

 プリティヴィ・マータの討伐から数日後、第一部隊全体に招集が掛けられた。指定の時間にユウ、コウタ、アリサ、サクヤ、ソーマがロビーへと集まり、ソファに腰かけている。そして最後に資料を抱えたシスイが登場し、既定の時間通りにブリーフィングが始まった。

 

 

「さて、今日は第一部隊全員に集まって貰いましたが、重大な発表があります」

「なになに? 重大な発表って?」

 

 

 コウタが手を上げて質問したので、シスイは勿体ぶらずに本題を述べる。

 

 

「今日の任務が終わり次第、神薙ユウを第一部隊の隊長に据えることになりました。なお、副隊長は橘サクヤ衛生兵となります。おめでとうユウ君」

「俺が隊長に?」

「おお、すげぇ。大出世じゃん。何て言うんだっけ? 下剋上?」

「それ、裏切りですよ」

「ふふ、頼もしいわね」

「……ふん」

 

 

 接触禁忌種プリティヴィ・マータを討伐したことから、第一部隊の戦力は戻ったと判断された。そしていつまでも隊長不在というのは拙いので、少し前から選出が行われていたのである。他の隊から指揮官として優秀な人材を引き入れることも考えたが、今の第一部隊のチームワークを考えると、余計な要素を入れるのは良くない。そこで副隊長だったサクヤを隊長にする方向で進められていた。

 ところが、最近になって神薙ユウが頭角を現し、隊長としての実力とカリスマを見せ始めたのである。シスイは報告書にこれを記し、報告書を見た支部長は正式にユウを隊長に据えることにしたのだった。

 

 

「まぁ、落ち着いて。ユウの隊長就任も任務後の話だよ。じゃあ、発表も終わったし、次は任務についてのブリーフィングを始めます」

 

 

 騒いでいた第一部隊の面子もシスイの言葉を聞いて静かになる。ここからの話は聞き逃すと命にもかかわることがあるのだ。浮かれてはいられない。

 

 

「今日は黎明の亡都でコンゴウとコンゴウ堕天種を討伐します。聴覚が鋭いアラガミなので、上手く分断して対処に当たって下さい。ユウ、コウタ、アリサの新人三人でコンゴウ堕天種。サクヤさんとソーマでコンゴウを討伐するように。ただ、状況に応じてターゲットは逆転することもあるから注意して欲しいですね。コンゴウの堕天種は氷系統の属性だから、バレットは炎をメインにすること」

『了解』

「では〇九〇〇に出撃ゲート集合。それまでは解散」

 

 

 シスイがそう言うと、ソーマが真っ先に立ち上がって何処かへ行ってしまう。それに続いてサクヤも立ち上がり、バレット変更のためにターミナルの操作をし始めた。

 そして残ってソファに座っている新人三人の内、コウタが口を開く。

 

 

「それにしても、シスイはすっかりサポート要員になっちまったよな。結局、俺たちと任務に出た回数って数える程度だし」

「仕方ないだろう? 僕の神機は完全に破損。修復の見込み無しだからね」

「勿体ねぇよなぁ。シスイもユウ並みに強いのに」

「僕をあの変態的機動と一緒にしないで欲しいな」

「誰が変態的機動だ!」

 

 

 ロングブレードを振った遠心力で加速したり、空中でアラガミを捕食しながら軌道変更したり、大型アラガミの体に登って背中を滅多切りにしたりと、とにかくユウの動きは滅茶苦茶である。適合率が高く、神機とも馴染んだおかげで凄まじい身体能力を発揮しているのだ。

 同じ新型であるアリサが『ドン引きです』と言ったほどである。

 ちなみにスナイパーの腕は極東で一番のスナイパー使いことジーナ・ディキンソンに教わり、恐ろしいまでの精度になっている。また、ユウの使用するバレットはシスイが作成した特別製だ。空気中のオラクルを吸収しながら強化されるので、遠距離であるほど威力が増すという物理法則に喧嘩を売っている仕様となっている。

 ともかく、アラガミ化もしていない普通の神機使いとしては破格の戦闘能力だった。隊長に選ばれるのも当然と言えば当然である。

 

 

「ああ、そうだ。コウタとアリサにもアサルト弾の試作品を渡してたけど、そっちの具合はどう?」

「おお、凄かったぜ。オラクルが回復する弾丸なんて初めてだよ!」

「とても便利ですよ。オラクル回収弾のお陰で、遠距離支援に徹することも出来るようになりました。コストの低いアサルトだからこそと聞きましたが、スナイパーやブラストでもあると便利そうですね」

「んー。ちょっと無理かな」

 

 

 シスイという天才的科学者のお陰で、第一部隊には最先端の技術が詰め込まれている。試験運用の意味も強いのだが、他部隊からすれば羨ましい限りだろう。だが、討伐隊である第一部隊だからこそ、新装備なども試し甲斐があるのだ。様々なアラガミに対して性能が測れるので、シスイとしても万々歳である。

 こうして、日々リッカと共に新しい機能を開発しているのだ。

 そんな風に四人で談笑していると、不意にヒバリが現れてシスイに声をかける。

 

 

「シスイさん。支部長が呼んでいました。すぐに支部長室に来て欲しいそうです」

「僕が? 何かしたっけ?」

「詳しい話は向こうでするとのことですから、私には何とも……」

「分かりました。ありがとうございますヒバリさん」

 

 

 シスイは軽く頭を下げ、ユウたちにも一言別れを告げてから区画移動エレベーターに乗る。そして役員区画まで赴き、一番奥の支部長室の扉をノックした。奥から入る許可をする返事が返ってきたので、シスイは扉を開けて中へと入る。

 

 

「失礼します」

「よく来てくれた神崎シスイ」

 

 

 デスクの上で手を組んだヨハネス・フォン・シックザールの前まで歩き、シスイは次の言葉を待つ。ここに呼ばれると碌なことが無いので、シスイとしてはあまり楽しそうではなかったが。

 そんなシスイの様子など関係なく、ヨハネスは用件を語りだす。

 

 

「君を呼んだのは他でもない。また特務をこなしてもらうためだ」

「お言葉ですが支部長。僕には神機がありませんよ。その気になれば有り合わせの神機を使えますが、そんなことをすれば技術スタッフにバレますし」

「問題ない。本部から未使用の神機を拝借した」

「拝借……ですか?」

「勿論、違法ではない。正式な書類で取引されたものだ。君の事情を知る本部の人間が手回ししたのだよ」

 

 

 それを聞いてシスイは胡散臭げな視線を送る。

 アラガミ化しているシスイは、本部で散々化け物扱いされたのだ。やさしさなどで神機を手配されるとは到底思えない。あるとすれば、何かしらの裏事情によるものだろう。

 

 

(単純に僕を戦場に出す口実かな? どうしても僕をアラガミに喰わせたいってことか)

 

 

 本部にいた時代も、露骨な前線への単騎出撃は多かった。欧州は極東ほどアラガミが強くないので、まだ新人だった時代でも生き残ることは出来た。しかし極東でそれをされるとシャレにならない。少し前の大侵攻のように、未完成のレイジバーストシステムを使ってギリギリだろう。現段階では使用するたびに神機が修復不可能なまで壊れるので、実質使えないと考えた方が良い。

 神機は無限にある訳ではないのだ。大切に使わなくてはならない。

 新しく支給された神機も、簡単に壊すわけにはいかないだろう。

 

 

「この神機の存在は秘匿されなくてはならない。君が回収したコアは、この極東支部ではなくエイジス島へと直接持っていてもらう。非常用地下通路の場所を知らせるので、そこからエイジス島地下物資倉庫へと向かい、コアを提出して欲しい。また、この神機はエイジス島地下にて保管するので、これからは特務の度に島に向かってもらうことになる」

「ざっくりまとめると、バレないように働けってことですね」

「そういうことだ。これが非常通路の認証キーだ。失くしてくれるなよ?」

「了解です」

 

 

 シスイはヨハネスからカードキーを受け取り、白衣の内ポケットに入れる。

 それを見たヨハネスは最後に特務の内容を伝えた。

 

 

「早速君に特務がある。東の海岸線にて第一種接触禁忌種アマテラスを確認した。エイジス島にも近い位置での観測だ。討伐して危機を排除すると同時に、奴のコアを摘出して欲しい。この特務は秘匿性が非常に高いため、オペレーターによる援助は無いと思ってくれ。まずはアナグラの地下にあるエイジス島との直通通路を通って物資倉庫へと向かい、そこに置いてある神機を回収しろ。その後、別の非常用通路を通って海岸線近くに向かってもらう」

「分かりました。ちなみに周囲に極東支部のゴッドイーターは?」

「勿論いない。君が特務をしている間は、離れた作戦地区での任務のみアサインされることになっている」

「つまり、危機に陥っても救援は望めないと」

「そうだ」

 

 

 もしかしなくても殺しにかかっている。

 シスイはそう感じた。

 

 

(やっぱりレイジバーストシステムを早く完成させないとな)

 

 

 そんなことを考えつつ、シスイは支部長室を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 地下通路を通り、エイジス島の物資保管庫で神機を受け取ったシスイは海岸線へと来ていた。ついでにエイジス島の完成具合でも見学したかったところだが、地上部は関係者以外立ち入り禁止らしく、仕方なくそのまま任務地へと赴いたのである。

 ターゲットは接触禁忌種の中でも危険なアマテラス。スサノオとも並ぶ第一種接触禁忌種であり、発生地は不明だが、今のところは極東でしか発見されてないので極東発祥だろうと言われている。大火力のレーザー砲であらゆるものを焼き尽くす太陽の化身であり、単騎での討伐は無謀と言わざるを得ない。

 ウロヴォロスの亜種だけあって山のような大きさを誇る。

 ただ移動するだけで攻撃になる巨体なのだ。

 そんな相手を発見するべく、シスイは周囲を見渡す。

 

 

「最後に確認されたのはこの辺りだっけ?」

 

 

 オペレーターがいないというのは非常に不便だ。レーダーを利用できないし、危険があったとしても知らせて貰えない。作戦エリアに侵入しようとしているアラガミを検知することも不可能だ。

 ひと昔前まではこれが普通だったのだが、現代のゴッドイーターであるシスイには新鮮である。

 

 

「グルルルル……」

「早速ヴァジュラか。極東ではコイツを猫扱い出来て一人前だっけ?」

 

 

 広い海岸線なので遮蔽物もなく、歩いていると簡単に見つかってしまう。唸り声を上げて飛びかかってきたヴァジュラを躱し、胴体に一撃を入れた。

 シスイが今使っている神機は旧型ショートブレードだ。それも初期クロガネ刀身であるため、攻撃力は期待できない。本当はヴァリアントサイズが良かったのだが、本部から送られてきた神機に期待するのが間違っているだろうと諦めた。

 

 

「ま、僕にはこれがあるけどね」

 

 

 シスイはアラガミ化している左手をヴァジュラへと翳し、最大負荷オラクル狙撃弾で牙、前足、尾を同時に結合崩壊させる。三か所を同時に結合崩壊させられたヴァジュラは一気にダウンしてしまった。その間にシスイはヴァジュラへと迫り、左手にオラクルの爪を出現させて引き裂く。下手な神機よりも攻撃力が高いので、この一撃によってコアが大きく露出した。

 

 

「喰らえ」

 

 

 右手に持っていた神機を捕食形態にしてコアを抜き取る。

 僅か十秒ほどでヴァジュラは沈黙したのだった。

 

 

「はぁ……昔を思い出すね」

 

 

 誰かに語る訳でもなくシスイは呟く。アラガミ化した直後は、合法的に処理するべく色々な戦場に送られていたのものだ。最弱の神機を渡され、頼れるのは己の牙のみ。アラガミバレットやオラクル弾、オラクルの爪はそんな中で生まれた産物だった。

 シスイは崩れていくヴァジュラを横目に、再びアマテラスの捜索を再開する。

 海だけあってグボログボロとの遭遇率が高く、途中で何度も交戦を繰り返した。やはり神機は役に立たないので、アラガミの能力を使っている。

 

 

(それにしてもやけに遭遇率が高いね。普段の作戦ではこんなことないのに)

 

 

 既にヴァジュラを五匹、サリエルを二匹、グボログボロを十三匹、シユウを堕天種含めて八匹、コンゴウを堕天種含めて六匹も倒している。これだけで極東以外の支部は窮地に陥るアラガミだ。

 大抵の支部にはエースと呼ばれる強いゴッドイーターが一人はいるのだが、流石に大型種や中型種を一人で捌き続けるのは無理がある。能力的には防衛班の大森タツミと同レベルといったところだ。

 つまり、この時点でシスイは他支部のエース級を遥かに凌駕しているのである。場合によっては、シスイ一人で支部一つ分の戦力になるだろう。

 そんなシスイでも、これだけのアラガミは少し面倒だった。

 

 

「アマテラスはどこかな? 接触禁忌種に早く出てきて欲しいと思う日が来るとは思わなかったけど」

 

 

 不謹慎だが、そんな願いが天に通じたのだろう。

 海岸線からも見える沿岸海域で爆発が起きた。すぐにシスイが目を向けると、海の中から女神像を携えた巨体が姿を覗かせる。目的のアラガミ、アマテラスだった。

 

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

 

 

 絶叫を上げたアマテラスが熱線を放つ。海は蒸発し、周囲は霧に包まれた。

 

 

「拙いね」

 

 

 視界が消え、レーダーも使えない。

 仕方なくシスイは近くの岩陰に隠れる。

 だが、次の瞬間には隠れていた岩が爆散してしまった。

 

 

「がはっ……!」

 

 

 岩の破片がシスイの体を傷つけ、更に落下時に背中を強く打って息が止まる。それでも気力を振り絞って立ち上がり、回復錠を口に含みつつその場から離れた。その数秒後、シスイが居た場所を熱線が焼く。

 

 

「僕の居場所が分かっているのか……?」

 

 

 視界が封じられた濃霧で正確にシスイの居場所を狙っていることから、そんな予想が出来てしまう。アマテラス自体、それほど研究が進んでいるわけではないので、シスイが知らないだけで元から探知能力を持っている可能性はあった。

 

 

(サーモグラフィみたいな目を持っているとか? だとしたら厄介だね)

 

 

 熱線の咆哮からアマテラスの位置を逆算し、最大負荷のオラクル狙撃弾を撃つ。直撃したかの確認は不可能だが、あの巨体なら外れることは無いだろう。シスイは移動をしつつオラクル狙撃弾を放ち、霧が晴れるまで走り続ける。

 アマテラスが発する熱のお陰で、霧はすぐに収束したのだった。

 だが、霧が晴れた瞬間、シスイは驚愕することになる。

 

 

「な……っ! いつの間に囲まれた!?」

 

 

 影も形もなかったアラガミの群れが海岸線を埋め尽くしていたのである。本来は生息地から外れているボルグ・カムランの堕天種や、プリティヴィ・マータまでいる。アラガミの殆どが中型種とは言え、状況としてはかなり拙かった。

 実はシスイに与えられた神機には、集合フェロモンを発する機構が搭載されており、一定時間のみアラガミを呼び寄せ続けることが出来る。広範囲無差別にアラガミを呼び寄せる失敗作だが、こうして事故死を演出するにはピッタリだった。

 実を言えば、アマテラスがシスイの場所を感知できたのはこれのお陰である。

 何もなく本部が神機を寄越すはずがないと予想していたが、まさにその通りだったのである。

 

 

「アマテラスだけでもキツイってのに」

 

 

 そう呟きつつも、シスイは近場のコンゴウを左手で捕喰し、アラガミバレットとして放つ。巨大な気弾が炸裂し、コンゴウは大きく吹き飛んだ。ボルグ・カムランの回転攻撃を跳んでギリギリ躱し、ショートブレードを突き立てながら背中に着地する。そして左手でゴッソリと捕喰し、そのままアラガミバレットを撃ち込んでダウンさせた。大穴が開いたボルグ・カムランを神機の捕食形態で喰らい、コアを摘出する。

 嫌な気配がして飛びのくと、遠くから飛んできたアマテラスの熱線がボルグ・カムランの残骸を消し飛ばしたのだった。

 アマテラスは徐々に海岸へと移動しているが、まだ海中である。

 こちらからは直接攻撃できない。

 

 

「ならまずは周囲の掃討かな」

 

 

 シスイはそう呟くと、左手でシユウを捕食した。そしてアラガミバレットとして爆裂弾を放ち、頭部を吹き飛ばす。流れるような動きでコアを摘出し、次はシユウ堕天種を同様に始末した。基本的にシユウは基本種も堕天種も強さに差がない。シスイにとってはどちらも雑魚だ。

 更に転がりを仕掛けてくるコンゴウだが、起伏の大きな海岸線の岩場では狙いが定まらない。シスイは避けるまでもなかった。擦れ違いざまに最大負荷弾を撃ち込み、終了である。

 大量のザイゴートが突進してきたので、それをオラクル弾で迎撃。正確に目を撃ち抜き、一撃でザイゴートを仕留めていった。そこへサリエルがやって来て毒鱗粉を散布するのだが、シスイは予備動作からそれを見抜いて大きく回避し、狙撃弾で頭、スカート、足を破壊する。ダウンしたサリエルに再び接近し、左手のオラクル爪で引き裂いた。神機でコアを摘出して完全に倒す。

 

 

(アマテラスはまだ上陸していない……か)

 

 

 一瞬だけ確認をした後、目の前に迫っていたシユウをオラクル爪で切り裂き、捕喰してアラガミバレットとして撃ちだす。氷柱を大量に発射してきたプリティヴィ・マータの攻撃を避け、最大負荷弾を三連射で顔に当てた。プリティヴィ・マータが怯んだ隙に接近し、前足を神機で縫い留めつつ左手のオラクル爪で顔を完全破壊する。後はむき出しとなったコアを神機で捕喰し、接触禁忌種も十秒と経たずに始末した。

 だが、次の瞬間、シスイは悪寒を感じて力の限り跳び上がる。

 凡そ十メートルは跳び上がったあたりで、熱線が地面を横なぎにした。勿論、アマテラスの攻撃である。これによって小型種は殆ど消滅し、中型種もかなり減った。大型種も結合崩壊が見られる。

 呆れるほどの火力だった。

 

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

 

 

 絶叫を上げたアマテラスが熱線を乱射し、海岸線に集まっていたアラガミが次々と消滅する。シスイは僅かな予備動作から熱線の軌道を読み切り、先んじて移動することで躱していた。

 この程度なら極東ゴッドイーターの基本技である。シスイでなくとも出来ることだ。

 だがここからはシスイでなくては不可能な領域となる。

 熱線を回避しながらアマテラスへと接近し、浅瀬の辺りまで走ってから大きく跳んだ。偏食因子のお陰で強化された肉体は、まるで空を飛ぶかのようにアマテラスの元まで辿り着く。そして現実離れしたバランス感覚を以てして着地を決め、アマテラスの体をよじ登った。

 

 

「巨体だから喰らいやすいなっと!」

 

 

 シスイは左手でアマテラスの触手を一部捕喰し、アラガミバレットを生成した。まるでビームのような極太熱線がアマテラスの女神像へと直撃する。流石のアマテラスもよろめいた。

 

 

「まだまだ!」

 

 

 移動を繰り返しながら左手と神機で捕喰し、アラガミバレット生成とバースト化を行う。超弩級アラガミのアマテラスも、こうして極端に接近すれば脅威は下がる。

 アマテラスもシスイを振り落とそうとして暴れまわるが、左手と神機で文字通り喰らいついていた。

 

 

「く……」

 

 

 凄まじい遠心力でシスイは身体が引きちぎられるような痛みを覚える。だが、それでも振り落とされないようにしがみ付き、アマテラスが止まるのを待った。

 浅瀬とは言え巨体が暴れたことで海岸線は津波が発生したかのようになり、大型のアラガミさえも海へと流される。第一種接触禁忌種と呼ばれるだけあって、まさに災害のような強さだった。

 一通り暴れまわり、一瞬だけ動きを止めたと同時にシスイは動き出す。

 

 

「ふっ!」

 

 

 力を込めて足場にしていた触手を蹴り、一直線に女神像へと跳ぶ。そして左手のオラクル爪で、女神像を引き裂いたのだった。三条の斬撃が女神像を傷つけ、アマテラスは大きく震える。

 そしてシスイは女神像を蹴りつつ再び空中へと戻り、先の一撃のついでに捕喰したオラクル細胞をアラガミバレットとして射出したのだった。

 熱線が女神像に直撃し、結合崩壊を引き起こす。

 そしてシスイは熱線の噴射によって距離を稼ぎ、海岸線まで戻った。

 

 

「ウロヴォロスよりタフみたいだね、アレ」

 

 

 間髪入れずに最大負荷オラクル狙撃弾を発射し、結合崩壊を起こした女神像を集中的に狙う。流石のアマテラスも、この連撃には耐え切れなかったのだろう。遂にダウンしたのだった。

 大きく水飛沫が上がり、シスイは海水で濡れる。

 しかし、そんなものは関係ないとばかりにアマテラスへと近寄って再び左手と神機で捕喰したのだった。バースト化によって力がみなぎり、更に生成したアラガミバレットで女神像を焼き尽くす。

 立て続けにアラガミバレットの抗体を浴びたせいだろう。アマテラスの反応は一気に弱まり始めていた。

 ところが、とどめを刺そうともう一度捕喰を仕掛けたシスイを邪魔するように、サリエルがレーザーを放ってくる。どうやら、空中を飛んでいるサリエルは海に流されなかったらしい。

 

 

「ちっ……」

 

 

 仕方なくシスイは回避を選択し、先にサリエルを仕留める。左手のオラクル爪で引き裂くついでに捕喰し、アラガミバレットで完膚なきまでに破壊した。

 当然、その間にアマテラスは復帰する。

 再び熱線の嵐を回避する戦いになった。

 既に神機に仕込まれた集合フェロモンの効果は切れている。後は目の前のアマテラスを討伐すれば任務は完了だ。

 地形が変わるほどの戦いはこの後も三十分以上続き、最後にシスイが女神像と角を完全破壊してアマテラスの討伐に成功したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

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