「そこの少年、両手を上げろ!!」
草木のしげる森の中で、気づいたら俺は数人のコスプレ?をした人たちに囲まれ杖を突きつけられていた。
「は!?何がどうなってんだ!?これは夢なのか?」
状況が良くわかっていない俺は現実逃避としてどうしてこうなったのか考えていた。
キーン、コーン、カーン、コーン
「では、これで今日の授業は終わりとする。気をつけて帰るように」
「起立、礼」
号令が終わると同時に、授業から解放された学生達は一転、 放課後に何をするかを話す人や部活に行く人を横目に俺、葛城 蒼真は急いで帰る支度をしていた。
「なあ、蒼真。今からカラオケ行くんだがお前はも行かね??」
「悪い…今日、俺料理当番で今から夕飯の買い物に行かなくちゃならなくてさ。」
カラオケに行くらしい数人のクラスメイトの誘いを断り俺は急いで海鳴東高等学校を後にした。今日はチビッ子らがカレーを食べたいとせがんでいたことから献立はもう決めていた。
突然だが、俺こと葛城蒼真には両親がいない。両親どころか親戚すらいない。俺の両親は親の反対を押しきりいわゆる駆け落ちをし、紆余曲折あって海鳴市へやってきたらしい。そして、その時実家から絶縁されていた、らしい。らしい、というのは両親が亡くなったのは、今から10年以上も前で、俺は全然覚えてないのだ。このことは今の俺の家である施設の院長から聞かされたことである。
俺が両親が亡くなった後に引き取られた施設には現在、俺を含め十人の孤児がおり、院長とともに暮らしている。もちろん、院長一人での作業は到底無理な話で家事は俺たちで分担している、というわけだ。
「っと、確か、じゃがいもとにんじんを切らしてたな。さっさと買って帰りますか。」
30分後
「ただいまー、帰ってきたぞー!」
「わぁ、蒼真兄ちゃんお帰り!」
「今日のご飯はカレーだよね??」
俺が施設に帰るとチビッ子達が群がってきた。
「相変わらず、蒼真は皆になつかれていますね。あなたのお父さんも小さな子供たちによくなつかれていたんですよ?」
「ただいま、博さん。そりゃ、俺がこの中で一番年上だからな。しっかりしないと。でも、なんか父さんからそういう遺伝子でも受け継いでるのかねぇ」
奥から遅れて出てきた初老の院長、博さんに俺は肩をすくめながら答えた。両親の記憶がない俺には博さんの言葉のみが親について教えてもらえることだった。
「ほらほら、さっさと夕飯作っちまうから、お前らも家事すませとけよ。」
「「はーい!」」
俺はこの、血は繋がってはいないけれど、仲良く暮らしている今の生活に何も不満は抱いていなかった。その日常が近いうちに音を立てて崩れ去ることなんてこのときは全く想定していなかった。
夕食後
「「ごちそうさまでしたー!!」」
「ほい、お粗末様っと、後片付けは頼んだぞ」
「「はーい!」」
施設での仕事分担は主に年長の人が食事や掃除など、チビッ子達は洗濯や洗い物中心というわけだ。適材適所ってやつだな。
「よし、じゃあ、俺は少し走ってこようかな」
「少しいいですか??蒼真」
「ん?」
食後の運動と日課の鍛練をかねて俺が外へ向かおうとしている所で博さんが俺を呼び止めた。
俺が振り向くといつも以上に真面目な顔の博さんが立っている。
「蒼真がここに来てからもう10年以上もたち、蒼真ももえ17歳ですね。」
「うん、そうだね。でも、いきなりどうしたの?そんな事聞いて。」
「可愛い子には旅をさせよと言いますし、そろそろ潮時ですかね…両親の遺言の事もありますし…この子ならうまくやるでしょう」
「ん?なんて言った??」
俺に少し質問した博さんはブツブツと呟きながら顎に手を当てていた。
「いえ、時が経つのは早いものだと思いましてね。時に蒼真、少し頼み事を引き受けてもらえませんか??
「なんだよ、博さん。もったいぶって俺と博さんの仲なんだから何でもきくって」
「では、私の部屋の隣の倉庫にある、とある機械を持ってきてくれませんか?少し最近腰を悪くしてましてね。自分で運ぶのがしんどいものでして」
「いいけど、あそこは俺たちは入っちゃダメなんじゃなかったのか??」
俺は首をかしげながら訪ねる。ここの施設には規則がいくつかあるがそのなかに、博さんの部屋とその隣の倉庫には入るべからず、というものがあった。
昔、俺が出来心で忍び込もうとしたときには、博さんに見つかりこっぴどく怒られたんだが…
「今は、もういいんですよ。その中から丸く人が乗れそうな台座を持ってきてください。」
博さんの意味ありげな言葉に内心首をかしげながら、俺は倉庫に向かった。
「しかし、初めて入るけど埃っぽいな」
倉庫の中には俺が見てもよく分からない物が色々おいてあった。
「博さんに骨董品の採集趣味なんてあったのか。しらなかったなぁ。この杖とかアクセサリーとか斧とかハルバード?みたいなものは初めて見るデザインだが」
色々物色していく中、おそらく博さんの言っていた台座を発見した。
「お、これだな。よいっしょっと、、、ん?は!?体が勝手に!?」
台座を運ぼうと持ち上げようとした瞬間台座に何かの紋章のようなものが浮かんできた。と思った瞬間俺は台座の紋章に体がひっぱりこまれ、そしてそのあと体全体が光に包まれた。
光に驚きつむっていた目を開けると、俺は森の中に立っていた。
「ファッ!?」
ただそれだけならまだ良かった?かもしれない。それに加えて明らかに敵意を放っている集団に囲まれているというオプションがなければだが。
「やっぱり夢じゃなさそうだな…」
俺は思わず大きくため息をついてしまった。