僕のヒーローアカデミア PLUS ウルトラマン   作:リューイ

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第10話 デクの迷い。

 信と八百万をはじめ他の者達が帰る中、緑谷は職員室でオールマイトの居場所を聞き、彼が今いるという仮眠室に来ていた。

 

 緑谷が仮眠室のドアをノックすると「どうぞ、鍵は開いているよ。」とオールマイトの声がした。

 

 「失礼します。」と緑谷が入室するとそこには筋骨隆々の世間に知られている通りのマッスルフォームのオールマイトがいた。

 

 「おや、緑谷少年か! どうかしたのかい暗い顔をして。」

 

 オールマイトは来客が緑谷だとわかるとマッスルフォームから本来の世間が知らない病的に痩せているトゥルーフォームへと変わる。

 

 「少しお話したいことがありまして。」

 

 「かまわないよ。 丁度私からも話したいことがあったんだ。 君の話が済んだあと時間貰えるかい?」

 

 「ハイ」と緑谷はいつもより元気なく返事をする。

 

 「まぁ座りなさい。」

 

 オールマイトが緑谷に椅子をすすめると彼はオールマイトの対面の席に座った。

 

「それで話と言うのは何かな?」

 

 オールマイトが緑谷に話の内容を問うと彼は静かに語りだす。

 

「話と言うのはですね、あの東田君からなぜヒーローを目指しているか聞いたんですが……」

 

 緑谷は信から聞いた話をそのままオールマイトに話していった。

 

 その話が終わるまでオールマイトは緑谷を気遣う様に相槌をうちながら聞いている。

 

 緑谷は話終わると何か言いたげにそしてすがるようにオールマイトを見ている。

 

「緑谷少年がモヤモヤする気持ちは私にも分からなくはないよ。 私も無個性だったしね。 まぁ君の世代ほどじゃないが珍しい部類だったよ。」

 

 オールマイトの衝撃の告白に緑谷は俯き気味だった顔をあげる。

 

「そんな話聞いてませんでしたよ!」

「聞かれなかったからね! 聞かれると思ってたのに」

 

 緑谷は驚いた様子でオールマイトの話の真偽を問うがオールマイトは軽い調子で答えた。

 

「オールマイトが無個性だった……」

 

「あぁそうだよ。 だからと言うわけではないが東田少年の話を聞いて彼の無個性や弱個性の人達に夢を与えたいという考えやそのために個性なしに強くなろうと言う行動は尊いものだと思う。」

 

 オールマイトの言葉を聞き緑谷は少しうなだれている様だったがオールマイトが「だが」と話を続けると顔を上げオールマイトの話に聞き入った。

 

 「だが私は君と初めて会った時言ったように『〝個性〟がなくとも成り立つ』とは口にできないといった言葉を経験上、否定する気はない。」

 

「だがそんな話をしたかったのではないんだろう?」

 

 「君は自分がヒーローになる資格があるのかと悩んでいるのだろう?」

 

 オールマイトが緑谷に問いかけると彼は小さく頷き語り始めた。

 

 「はい、僕は恵まれています、オールマイトに出会って個性をもらってヒーローになる道を進めることになりました。でもそのとたん無個性だった時に感じたことを忘れてしまって、他の人も同じ様な事感じているかもしれないって事は考えもしませんでした。」

 

「それにオールマイトに出会って個性をもらえることになるまで口だけで何の努力もしてなかった、そんな僕にヒーローを目指す資格があるのか分からなくなってしまったんです。」

 

 迷いを告白した緑谷にオールマイトは力強く答える。

 

 「今の時代ヒーローをやるには資格が必要だ。しかしヒーローになるために必要な資格などないよ。 努力が足りないと思うならこれからいくらでも頑張ることができる。」

 

 「それに悔しいがヒーローだって人間だ、すべての人を一人で助けられはしない。 君が東田少年の話に出てくる少年に自分を重ねて同情して救いたいと思ったとしても手の届かない場所の人間は救えないのさ……」

 

 「だから緑谷少年!! 君と東田少年を比べて君にヒーローになる資格がないなんてことは絶対ないよ。 だから君は君の思う通りの、彼は彼の思う通りのヒーローに成れば良い。」

 

 オールマイトの話を聞いても緑谷はまだ迷っている様だったのでオールマイトはさらに言葉を重ねる。 

 

 「それでも迷うというのならきっと君はまだ足場が固まっていないんだよ。」

 

 緑谷はその言葉の意味が分からずおうむ返しの様に問い返す。

 

 「『足場が固まっていない』ってどういう意味ですか?」

 

 「私にだって助けられなかったことはたくさんある。今も世界の何処かで誰かが傷つき倒れているのだろうその全てを私一人で助けることなど到底できはしない、それが現実だ。だが私がそれでも平和の象徴として笑って立つのは、そうしていれば必ずいつか皆が笑って幸福に暮らせる世の中が来ると信じているからだ。 そしてそんな世の中ならば私自身もヒーローの重圧や内に湧く恐怖から己を欺くためではなく心の底から笑えると思うからだ。」

 

 オールマイトは一息でここまで語ると緑谷をまっすぐ見つめて優しく諭す。

 

 「緑谷少年、ヒーローなら皆……いやたとえヒーローでなくとも人間だれしも理不尽な、不条理な現実に突き当たることがある。 だがそんな時でも足を踏ん張って何とか堪えて立っている者たちは必ずいる。そう言う者達はしっかり足を踏ん張れる土台があるんだ。」

 

 「私ならば自らの願いの為、東田少年ならば恐らく自責の念からくる贖罪と言う所だろうね。」

 

 「さて、緑谷少年、君の土台はなんだ、なぜヒーローを目指したんだ?」

 

 オールマイトの問いに緑谷はすぐに答えた。

 

 「もちろんオールマイトみたいになりたいからです。」

 

 オールマイトはその答えを聞くと優しくだが有無を言わせぬ速さで質問を重ねていく。

 

 「なぜ私の様になりたかったんだい?」

 

 「かっこよく人助けをする姿にあこがれたからです。僕もオールマイトの様に人助けがしたいと思ったんです。」

 

 緑谷が間髪無くそう答えるとまたオールマイトもまた問い返す。 

 

 「ではなぜ人助けをしたいんだいと思うんだい?」

 

 その質問に緑谷は答えを出せずに戸惑う。

 

 「君は私と最初にあった時、こう言っていた『ずっと馬鹿にされてきて、その所為かは分からないけど人を助けっるってかっこいいと思う』とね。」

 

 「緑谷少年、君はかっこよくなりたくて人助けをしているんじゃないのか?もっと言えば誰かに、もしかしたら自分自身に認められたくてヒーローを目指しているんじゃないのか?」

 

 オールマイトの問いに緑谷は息をのむがその後、すぐに否定をする。

 

 「違います!! 僕はただ単に困っている人を助けるのはいいことだから……」

 

 「緑谷少年、私は承認欲求がわるいとは思わない。誰かに認めてもらいたい、自分を認めたいと思う事は大事なことだし、君の中に誰もが認めるような理想のヒーロー像があるから、それを目指して努力できるのだろうし、己を顧みず誰かを助けにいける。 むろん君の行動のすべてがそれに起因しているとは思わないがな。」

 

 「なぁ、緑谷少年、私も自分のために人助けをしている。それは決して悪いことじゃない。自分の中に根ざすモノがなければ人助けなんてできない。 何故なら人助けは一人ではできないからだ、助ける人がいて助けられる人がいる。本当に他人の事しか考えないそんな人間がいたとして、そんな人間じゃ相手とつながれない、絆を結べない、自分と言うモノがないから、そんな状態じゃ本当の人助けなんかできない、相手の心までは救えない。」

 

 「今、君にとって大事なことはどんな人を助けたいかを考える事ではないかな。 東田少年は無個性の人たちを救いたくて個性を使わないヒーローを目指している。 君はどんな人を助けたい、そのためにどんなヒーローになりたいか、それが分かれば君の心に気づくことができるかもしれないよ。」

 

 緑谷はオールマイトの話を聞き少しは塞ぎこんだ気持ちが楽になったのか「よく考えてみます。」と言って立とうとしたがオールマイトが、話があると言っていたのを思い出してとどまった。

 

 「あの、オールマイトの方のお話と言うのはなんだったんでしょうか?」

 

 「体育祭の事について話そうと思っていたんだが今はやめておこう、今日は帰ってじっくりと考えてみると良い。」

 

 オールマイトにそう言われると緑谷は「ありがとうございました。」とあいさつして部屋を出て帰路に着いた。

 

 緑谷がオールマイトにいわれたことを反芻しながら帰っていると校門に麗日の姿があった。

 

 緑谷が校門にさしかかると麗日は元気よく手を振り緑谷を呼ぶ。

 

 「おーい! デク君、こっちだよ!!」

 

 麗日に気づいた緑谷は彼女が待っていたことに驚き彼女のもとにまで小走りで行く。

 

 「どうしたの麗日さん、わざわざ待っててくれたの?」

 

 「そう!! 一緒に帰ろうと思って。」

 

 緑谷と麗日は駅までの道を二人で歩き出し他愛のない話をしながら帰っていった。

 

 駅への道のりも半分が過ぎたころ麗日は緑谷に唐突に切り出す。

 

 「デク君、東田君の話を聞いてから少し変だったけど大丈夫?」

 

 緑谷はその時初めて麗日が心配して待っていてくれたことに気づき申し訳なく思った。なので緑谷は信の話を聞いた後自分にヒーローになる資格があるのか分からなくなり、オールマイトに相談に行ったことを話した。

 

 緑谷の話を聞いた麗日は小走りに緑谷の数歩先に行くと軽やかに回転し緑谷の方を向く。

 

 「デク君がなんでそんな風に思うのか私には全然わかんないけど、入試の時転んだ私に迫ってきた巨大ヴィランロボットをぶっとばして助けてくれた時からずぅーと、デク君は私にとって一番かっこいいヒーローだよ。」

 

 そう言ってまた歩き出す麗日の笑顔に緑谷は彼女の優しさを感じたのか気が楽になっている様だった。

 

(オールマイトの言っていた事すべて解った分けじゃないけど、せめて自分をかっこいいヒーローだと言ってくれる麗日や個性を与えヒーローへの道筋を作ってくれたオールマイトに恥じることのないヒーローになろう)

 

 思いを新たにした緑谷は顔を上げ、笑顔を作り、先を歩く麗日を追って行った。

 

 

 





 読んでいただいてありがとうございました。

 今回ほとんど会話ばかりで動きがなくすいませんでした。
 
 次回は体育祭編に入って行こうと思います。
 
 また頑張って書くので感想&批判、何卒よろしくお願いいたします。
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