僕のヒーローアカデミア PLUS ウルトラマン   作:リューイ

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第12話 マコトノナマエ

 雄英体育祭が怪獣騒ぎで滅茶苦茶になった日の夜、オールマイトはトゥルーフォームのまま彼が良く密談に使う仮眠室で塚内の訪れを待っていた。

 その表情はいつにもまして優れない。

 まるで死にかけの重病人の様だった。

 

 しばらくして塚内が仮眠室を訪れるとオールマイトは早速彼を部屋に招き入れ、電話で話していた事を聞いた。

 

 「塚内君、早速で悪いんだが何があったのか最初から話してもらえるか?」

 

 塚内は話を急かすオールマイトにいつもの余裕と笑顔が無いことに気づくが事が事だけに仕方がないことは分かったので自分が冷静に話を進めようと決めた。

 

 「あぁ、かまわない。」

 

 塚内は椅子に座り一息ついて語りだす。

 

 「まず今日雄英で怪獣が現れた時、関係各所からヒーローたちに雄英に応援に駆け付ける様に指示がでた。」

 

 「まぁそれは当然と言えば当然の判断だろう。あれほどの怪獣が大勢の人が集まっていたスタジアムに現れたのだから。」

 

 オールマイトもヒーローが救援に雄英に集まろうとしていたのは分かっている様だった。

 

 塚内はオールマイトの言葉に頷くと話をつづけた。

 

 「そしてその知らせは当然特別拘置所にも伝わった。 むろん特別拘置所にいる警備の人員は誰一人持ち場を離れなかったがそれでもやはり少し浮足立ち警備が緩んでしまった様だ。 そしてその隙をヴィランが突いた。」

 

 「そのヴィランがオールフォーワンというわけか。」

 

 オールマイトが塚内に先んじてその名を出す。

 塚内もヴィランの正体はオールフォーワンであると半ば確信しているが一応訂正する。

 

 「まだその可能性が高い、と言うだけだけどね。 だがそのヴィランは複数の個性を組み合わせて使い一流の警備システムと高い戦闘能力を持つ警備官をいとも簡単に排除して死柄木を奪還し逃走した。そんな芸当、オールフォーワンぐらいにしかできないと思うけどね。 まぁ簡単に逃走を許したのは殆どのヒーローが雄英に向かっていたからだろうが。」

 

 「いや、やはりオールフォーワンで間違いない。」

 

 オールマイトには確信があるようで断言する。

 

 「今回の雄英での怪獣事件はオールフォーワンが陽動として行ったものだろう。 また聞きになるが怪獣になった少年は個性を与える事ができる奴の仲間に怪獣に改造されたと証言していたらしいから間違いないだろう。」

 

 「そうか……」

 

 「あぁ」

 

 オールマイトは抑えきれないほどの怒りを抑えているのか握った拳が震えている。

 だが塚内にはもう一つオールマイトに伝えないといけないことがあった。

 それもきっとオールマイトに苦い思いをさせる事が分かっているので塚内は中々切り出せず少しの間沈黙が続く。

 だがいつまでもそうしているわけにもいかず塚内はもう一つオールマイトに悲しい事実を伝える。

 

 「オールマイト、実はもう一つ伝えないといけないことがあるんだ。」

 

 「もう一つ? なんだか怖いなぁ、これ以上悪い事でないといいんだが。 まぁ奴が現れたってこと以上に悪い事はそうそうないと思うけどね。 ハハハ。」

 

 オールマイトは塚内が黙している間に無理矢理に自分を落ち着けたのかぎこちなく笑う。

 

 そんなオールマイトを見て塚内は何やら申し訳に気持ちにでもなっているのか苦々しそうな表情だった。

 しかし一度言いかけたことをやめるわけにはいかないと思ったのか語りだした。

 

 「オールマイト、私が拘置を襲撃したのはオールフォーワンだと思ったのにはもう一つ大きな理由があったんだ、そしてその理由こそ君に伝えなければいけない悲しい真実なんだ。」

 

 オールマイトは塚内の言う悲しい事実と言う言葉に思わず身を固くする。

 

 「死柄木弔は先代ワンフォーオール志村菜奈の孫である可能性が高いんだ。」

 

 それを聞いたオールマイトは驚愕のあまり声も出ない様子でまるで全身に力が入り過ぎて微動だにできず震えている様だった。

 

 しかしそれでもオールマイトはかろうじて「なぜ?」と声に出すが塚内には答えられなかった。

 それはその『なぜ?』にオールマイトの万感の思いが込められているのが分かったからだろう。

 

 なぜ孫だと分かったのか。

 

 なぜヴィランになどなったのか。

 

 なぜオールフォーワンと一緒にいるのか。

 

 なぜ自分は死柄木が先代の孫だと気づかなかったのか

 

 なぜ自分は死柄木を助けてやれなかったのか。

 

 なぜ自分は今も力なくこんな所で座っているのか

 

 なぜ。

 

 なぜ。

 

 なぜ。

 

 「私の所為だ。」

 

 それがオールマイトの出した結論だった。

 

 確かにオールフォーワンが死柄木に目を付けたのはオールマイトを苦しめるためと言うのが正解に一番近いのかもしれない。

 しかしだからと言ってすべてがオールマイトの所為だとは塚内は思わなかった。

 

 「君の所為では……」

 

 君の所為ではない、塚内はこの言葉を言い切る寸前で呑み込んだ。

 うなだれて頭を抱え、自らの力の無さ嘆き、後悔で心を満たすオールマイトに『君の所為ではない』なんて薄っぺらな言葉をどれほど重ねようがオールマイトや死柄木だけじゃなく他の誰だって救えないと気づいたからだ。

 

 だから塚内は呑み込んだ言葉の代わりの言葉を送った。

 

 「まだ終わった分けじゃない。 スタート地点に戻っただけだ、だったらまた走りだせばいい。 そうすればいつかきっと誰かがゴールにたどり着く、それが君の力(ワンフォーオール)であり、君と言う存在(平和の象徴)だろう。 嘆きも後悔も全部抱えて笑って走っているのが君だろう。」

 

 坪内の厳しくも暖かい激励に答える様にオールマイトはマッスルフォームに変身し力強く立ち上がる。

 

 「ありがとう!! 塚内君、君の言う通りだ。平和の象徴がいつまでも沈んでいるわけにはいかない! それに死柄木が先代の孫とわかったんだ、一刻も早く捕まえて更生させなければな! そのためにも塚内君君にも力を借りたい」

 

 オールマイトは塚内に向かい手を伸ばす。

 

 「あぁ! もちろんだ。」

 

 オールマイトが伸ばした手を塚内は力強く握り返し協力を約束する。

 力強く握手をし、互いに見交わした顔には最初の陰鬱としたものはすっかりなくなり、覚悟を秘めた男の表情が姿を見せていた。

 

 

 

 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

 

 

 

 

 体育祭の日から2日間、信は様々な所から事情聴取をいやと言うほど受けていた。

 そして3日目、すでに学校も始まっているというのにまだそれは続いていた。

 それも終わる3日目の午後には今度は学校でも話を聞かれるらしい。

 

 事情聴取で同じようなこと何度も聞かれ、その都度、丁寧に説明をしていた信は少し疲れている様でいつもより元気がない様子だった。

 

 なぜ信がそこまでしているかは簡単なことだろう、怪獣事件の責任を感じているのだ。

 

 奇跡的に死者こそ出なかったものの多くの怪我人を出した怪獣事件。

 信は最初にマサトに合った時感じた不信感を己の罪悪感から無視した。

 その選択が今回の結果を招いた。

 信はそう考えている。

 

 そしてある意味これから最も被害を被った雄英で事情を聴かれるのだ、信の心中は察するに余りあるだろう。

 

 信が指定された時間に学校の会議室の前まで行ってドアをノックすると「はいれ。」と入室の許可が出た。

 声はプレゼント・マイクの物だったがいつもの陽気な声色ではなく低く重厚な声だった。

 それだけでもこれは単なる聞き取りではなく査問であるかのように信に感じさせた。

 

 緊張で少し汗ばんだ手をズボンで拭い信は会議室のドアを開け中に入り頭を下げる。

 

 「失礼します。」

 

 信が顔を上げるとそこには校長、プレゼント・マイク、スナイプ、そしてオールマイトの4人がいた。

 

 人数が思ったより少ないことに驚いた信だがすぐに今がまだ授業中であることを思い出した。

 

 「何度も同じようなことを聞かれて君もつかれている所、すまないが時間が無いので早速始めさせてもらうよ。 君も着席しなさい。」

 

 信が考え事をしている間に校長がそう言い事実上の査問が始まる。

 

 「はい。」

 

 信は返事をして用意されていた席に座る。

 

 「ではまず体育祭の当日の君の行動を説明してくれるかな?」

 

 信が着席した後すぐ校長が進行役なのか質問を始めた。

 口調は頼んでいる様ではあったがやはり雄英の校長である、有無を言わせぬ迫力がある。

 

 信は体育祭の当日の行動と何を考えていたかをなるべく詳しく説明した。

 説明が終わると4人それぞれ険しい表情をしていたがまた校長が質問を再開した。

 

 「うん、当日の行動は良く分かったよ。 それでは次の質問だ、 君と山川マサトはどういう関係なのかな?」

 

 「私は彼の事は友人と思っていますが、世間一般の常識に照らし合わせると単なる顔見知り程度の知人と言うのが正しい表現かと思います。」

 

 それからもなぜ雄英を案内していたのかなど色々聞かれたが信は効かれたことに淡々と答えていく。

 

 「でよぉ、実際はマサトって奴とグルじゃねぇのか? お前よぉ。」

 

 質問が出尽くしたところでプレゼント・マイクがドスの効いた声で信を問い詰める。

 

 「何を考えているんだプレゼント・マイク! 生徒を疑うなどと。」

 

 信を庇いプレゼントマイクを制止してくれたのはオールマイトだった。

 しかしプレゼントマイクはそれでも持論を否定する気はないようだ。

 

 「ですがねぇ、オールマイトさん、ぶっちゃけ怪しすぎるでしょう。 普通、一度会っただけの他人の願いをほいほい聞いたりしないでしょう。」

 

 「だが東田少年は怪獣少年を元に戻すために尽力していたじゃないか。」

 

 「それがさらに怪しいでしょう、イレイザーヘッドの個性はあの時、怪獣に効かなかったにもかかわらず今まで個性を使うことを渋っていた学生の力で解決するなんておかしいでしょう。 しかもオールマイトの言う所の怪獣少年も無傷と来ている。 グルで演技していたって方がしっくりくるでしょうが。」

 

 これについてはオールマイトもイレイザーヘッドの力を知る故強く反論できなかった。

 

 そして信自身も真相を知る故反論することができなかった。

 マサトを怪獣兵器に改造したのがしたのはドルズ星人であると信はなぜだか確信していた。

 だがなぜそんな事が解るのか信自身、全く説明できないのだ、ただ人を怪獣メモールに改造するのはドルズ星人だと知っているとしか言いようがなかった。

 そしてそんなことを言っても理解されないことは分かっていたからこそ言えないのだ。

 

 そんな中、プレゼントマイクはなおも信を問い詰めようとするがそれは今まで黙って聞く側に回っていたスナイプが止めた。

 

 「そこまでにしておいたらどうだ、マイク、頼みを聞いたって言っても別に犯罪行為と言うほど重いことじゃないし、イレイザーヘッドの個性だって絶対じゃない、そんな事じゃ、疑心暗鬼の深みにはまっていくだけだ」

 

 だがそれでも納得できないプレゼントマイクは何か言おうとするが校長がまとめに入りプレゼントマイクの言葉を制した。

 

 「まぁこれは東田君を責める場ではないし、何より山川マサトからも同様の話が聞けているから君の話の信憑性は高いと思われるしね。だから聞き取りは調査は此処までにしよう。明日から通常通り授業を受けなさい。 あとそれからもう一つ山川マサトから君に伝言を預かっている。」

 

 そう校長は言って一拍おいてマサトの伝言を信に伝えた。

 

 「『今回の事はすまなかった、そして助けてくれてありがとう。 自分自身の弱さに今更ながら気づくことができた。 だからこれからはもう少しましな人間に成長していきたいと思っています。 だから君は僕のことなど気にせずに君の持つ素晴らしい力を十二分に生かしてヒーローになってください。』だってさ。」

 

 その言葉を聞き信は涙が出そうになったが我慢して感謝を述べ頭を下げ会議室をでた。

 

 「ありがとうございました。」

 

 扉を出た信は涙を一筋流すと報われたような健やかな表情だった。

 この瞬間、彼の心の奥の棘が一つ抜けていたのかもしれない。

 

 しばし感傷に浸っていた信もそろそろ1-Aの教室に顔を出そうと歩き出した時、後ろからオールマイトに声をかけられた。

 

 「東田少年!! まだここにいてよかった。 伝え忘れていたことがあったんだ。」

 

 信がいつもと変わらぬ柔和で穏やかな表情で振り返るとオールマイトは少し驚いていた。

 それもそうだろう先ほどまでの信は何処か暗い印象を受ける表情ばかりだったのだから。

 

 「なんでしょう?」

 

 だがすぐに信の言葉で元の要件を思い出す・

 

 「そうだったまた忘れるところだった。 今1-Aではこれからの職場体験に備えて自分のヒーロー名を決めている所だから東田少年も考えておくようにね。」

 

 それだけ言い終わるとオールマイトは会議室へ戻っていったので信は教室へ向かった。

 

 

 

 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

 

 

 

 信が教室に行き始めた頃、1-Aでは帰りのホームルームまで持ち越されたヒーロー名決めも信を除いたクラス全員決める事が出来、帰り支度をしていた。

 皆がこれからの職場体験の事などで和気藹々としている中、八百万だけは信を心配してか心の底から楽しめてはいない様子だった。

 

 「はぁ。」

 

 知らず知らずのうちに八百万はため息をついてしまう。

 体育祭の日、信にかわいいと言われ張り切ってトーナメントに臨むも一回戦でツクヨミにいきなり敗北して呆けている内に怪獣が現れたがそれは信により解決されたかと思うと本人は気絶してしまうし、起きたら起きたですぐに事情聴取、ほとんど話す間の無かった八百万には何が起きていたのかさっぱりで、信に会えない今は、ため息しか出てこないと言った状況だ。

 

 そんな時ようやく信が戻ってきた。

 教室の扉を開け信が入ってくると皆の方を向く、信のことなど忘れていたかのように騒いではいてもやはり心配していたり興味があったりしたのだろう皆が信に群がるように集まる。

 信も心配や迷惑をかけてしまったと思っているからなのか丁寧にみんなの話を聞いて返事をしていた

 

 出遅れてしまった八百万はまた信と話せずモヤモヤとしたものを抱えながら信の様子を窺っている

 

 それに気づいた信はクラスメイト達との話がひと段落すると八百万の元まで来て「一緒に帰ろう」と誘う。

 

 それを聞いた八百万はまるで花が咲いたような笑顔になり、手早く荷物をかばんに詰めてこれ以上信がクラスメイトから質問攻めにされてはかなわないと信の背を押し急かすように教室を出た。

 

 しかし結局、八百万は体育祭の日何があったのか聞きはしなかった。

 それは信の顔が疲れてはいる様だが悩みが消え心に平穏が戻った様な雰囲気を感じさせたからだろう。

 そう八百万には何があったかよりも、信が心安らかでいられる方が大事なことだった。

 だから八百万は体育祭の事ではなく職場体験やヒーロー名の事を話題にした。

 

 「信さんはお聞きになりました? 今日はこれからある職業体験のためにヒーロー名を決めることになったんですよ。」

 

 「あぁ、オールマイトから聞いたよ。 それで俺も決めた。」

 

 信は少し誇らしげに告げた、己の新しい名前を。

 

 「俺はトラストだ。」

 

 

 




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