僕のヒーローアカデミア PLUS ウルトラマン 作:リューイ
信は今職業体験をさせてもらう科学特捜隊に来て、所長の井手光弘に挨拶をしていた。
この科学特捜隊という事務所は元々、先代村松敏夫が開いた事務所である。
彼は自ら科学特捜隊の隊長と名乗り雇用していたサイドキックを隊員と呼びヒーロー活動をしていた。
現役時代、村松はキャップと呼ばれ多くの人に慕われていたが、何時しか年には勝てなくなり引退をした。
そしてその時、次の隊長に指名されたのが井手隊員だ。
だが井手隊長はヒーロー免許こそ持っていたが先代に比べあまり戦闘が得意ではない。
そこで井手は己がサポートアイテムの開発などに長けていることを利用しサポートアイテムの開発会社としても科学特捜隊を有名にすることにより事務所を盛り立ててきた。
そう言った努力のもと成長してきた事務所だ、職場体験の学生だからと足手まといになり事務所の評判を落としたりなんてできない。
だからまずきっちり挨拶からだと信は意気込んでいる。
「はじめまして、職場体験でお世話になります。 雄英高校ヒーロー科一年A組、東田信です。 よろしくお願いします。」
信は井手に頭を下げ挨拶をした。
信が元気よく、はきはきとした挨拶で好感を得ようとしているのとは対照的に発目は此処でもいつもの調子でいる。
「はじめまして 雄英高校、サポート科の発目明です。 ヒーロー事務所には興味がないので早く工房が見たいです。」
だがちゃんと挨拶をしているだけ同じ天才的ひらめきをもつ発明家の先達として井手には発目なりの敬意を払っているのかもしれない。
だがそれは初めての職場体験で少し緊張気味の信には伝わらなかった。
「明さん、いきなりそんなこと言っちゃ失礼だよ。」
信は慌てて発目を注意するが井手は何とも思っていないようだ。
井手は人の良い笑顔で信を落ち着かせ、発目の発言を容認する。
「まぁまぁ、東田君、若い人はこれぐらいじゃないと。」
そう言う井手は先代から事務所を受継ぎ十数年、中年にさしかかろうと言うのに偉ぶったところがまるでない。
信はそんなところも井手が事務所を成長されられた一員なのかもしれないなと感心する。
「それじゃ早速、職場体験といこうじゃないか。」
井手は発目の要望に応え早速職場体験を開始する。
「工房は僕が案内するから東田君はあそこにいる嵐隊員について行ってくれ。」
井手の指さす方向には青いブレザーに灰色のズボンを穿いた恰幅の良い中年男性がいた。
その人物は信に向かい「おう、こっちだ。」と手を振って信を呼んでいた。
信は「ハイッ!」と嵐に返事をしてから井手にも会釈し嵐の所に向かった。
そして時を同じくして発目は井手と工房に向かったようだ。
信が嵐のもとに行くと早速、職場体験が開始された。
「よし! 新人、まずは着替えて街にパトロールに行くぞ! 細かいことは道すがら話してやる。」
そう言うと嵐はスタスタと歩いて行く。
信は驚くがこれがこの事務所のやり方なのかと嵐について行くがやはり戸惑いは隠せていない。
実際は嵐が少しせっかちな正確なだけなのだか……
更衣室の前に来ると嵐はその部屋のドアを開け中に入っていく。
信もそれに続き部屋の中に入ると嵐が科学特捜隊の制服を2着用意していた。
「あのコスチュームは自分の物を持参しているのですが。」
信が遠慮がちにそう言うが嵐は取り合わない。
「科学特捜隊ではこれを着るのが決まりだ。 つべこべ言わずに着ろ。」
そう言われれば仕方がないし、信自身も少し科学特捜隊の制服に興味があったのですぐに着替えた。
隊員服はオレンジを基調としたものに臙脂色のネクタイを付けたもので、体格の良い信にとてもよく似合った。
信が着替え終わるころには嵐はすでに着替え終わりヘルメットも装着していた。
流石に何度も着ているだけあって信などより格段に着替えるのが早い。
「よし、着替えたな、次はガレージだ。」
嵐は信が着替えるとヘルメットと流星マークのバッジを投げわたし、次に行く場所を告げさっさと歩いて行く。
信も素早く投げ渡されたヘルメットとバッジを素早く装備し嵐に続いて部屋を出る。
ガレージについて信を迎えたのは様々な科学特捜隊専用車やドリル戦車など科学特捜隊製のメカの数々だった。
信はその光景に思わず圧倒される。
数あるヒーロー事務所の中でもこれだけの装備を常時所有しているのはサポートアイテム開発会社でもある科学特捜隊ぐらいのものだろう。
「どうだ? 凄いだろう。」
「はい!! 凄いです。」
嵐にとっても自慢の様で信が素直に褒める嬉し恥ずかしと言った感じで頭を掻いていた。
「よし、じゃぁ早速、シボレー・コルヴェアを改造した科特隊専用車でパトロールだ。」
「はい!!」
嵐と信は科特隊専用車に乗り込んでパトロールに出た。
信の職場体験はこうして順調なスタートを切った。
職業体験では信と発目はお互い現場と工房に別れていたのでほとんど会うことはなかったが二人とも得るものは大きいようで充実した数日を過ごしていた。
信は時折一人でのパトロールなども任されるようになっていた。
そんな時、信はふと古い廃屋に人の気配を感じた。
恐る恐るその廃屋に入ってみると先ほどまで人がいた痕跡があった。
「誰かいるんですか?」
奥に誰かいるのかと大声で呼びかけながら進んでいくが痕跡はあるが痕跡の主は見つける事は出来なかった。
信は、今はもういないのかと帰ろうとすると「ダレカイルンデスカ ダレカイルンデスカ」とオウム目の鳥が人の声を真似している鳴き声のようなものが聞こえた。
そしてその後、それを制するかすれて濁った不協和音の様な声が聞こえるが聞こえた。
「しッ、静かにしてエレジア。」
信その声がした方に向かいあたりを注意深く観察する。
すると古くてもう襤褸切れと言って差し支えない布団や座布団が重ねられている一角が、少しもぞもぞと動いていることに気づく。
信は声の主に気づかれぬように音をたてぬように注意して近づいて行って、その一角に着くと勢いよく襤褸切れをはぎ取り、一歩飛び下がり何がいてもいいように身構える。
そこにいた者はまさに異形の怪物と言える姿だった。
肌はヘドロの様な色をして悪臭を放っていて、背中には甲虫の様な羽と獣の毛皮が同居している。
そして顔などは頭が肥大化している上に目が一つと大きく裂けた口だけで不気味な感じを醸し出している上に残ったもう一つの目と鼻はなぜか、異様に肥大化している左腕の付け根と肘に移動していた。
そのほかにも一つ一つ上げていくときりがないと思えるほど様々な生物や植物の名残のようなものが体のあちこちにある。
しかしそんな中で腕の中のオウムだけは汚れてはいたが普通のオウムだったので何やらアンバランスな感じで信には嫌悪感や恐怖より奇妙さが先に立つ。
そのおかげで恐怖感に支配されている時の人よりも冷静に相手を観察することができこの異形の怪物の様な者が自分に怯えていることに信は気づけた。
「君は一体何なんだ? どうしてこんなところに隠れている。」
信の問いかけに怪物は怯えつつも答えた。
「僕はキヨシ、11歳。 ここで住んでいます。」
その声や体からとても11歳とは思えないが確かにしゃべり方や語彙から子供の様にも思えなくはない。
しかしそれならなぜここに住んでいるのかと言う疑問が信にはわいてきた。
「なんでこんな所に住んでいるんだ? 親はどうしたんだ?」
少し強めに質問した信にキヨシは怯えてしまったようでなかなか喋りだせないでいる。
そんなキヨシに信が近づこうとするとキヨシの腕の中にいたオウムが信に飛びかかり嘴でつついてきた。
もしかしたら飼い主のキヨシを守ろうとしているのかもしれない。
信はオウムを払いのけて怪我をさせるわけにも行かないので一旦下がり、今度は優しく声をかける。
「君たちをどうこうしようって訳じゃないんだよ。 ただなんでこんな所にいるのか、君のお母さんとお父さんがどこにいるのか、その二つが聞きたいだけなんだよ。」
優しく聞いたのが功を奏したのか今度はキヨシ答えた。
「お父さん? お母さんはどこかに行っちゃったよ。 ここにいたのは暖かかったから…… ごめんなさい、邪魔なら出て行くから、ごめんなさい。」
信はキヨシの話を聞きようやく気づいた。
キヨシは『特異個性遺棄児童』だと。
児童遺棄事件は悲しいことに昔からあったが、この特異個性遺棄児童とはその中でも特に個性が原因で遺棄されて児童がそう呼ばれていた。
個性は親から子へと遺伝することが多く、どちらかの親の個性かもしくは両親の個性を合わせた様な個性が受け継がれる。
しかしまれに全く違う個性を持つ子供が生まれる事がある。
そう言った場合まず夫は妻の不貞を疑いがちで、それが原因となり離婚に発展することがある。そう言った場合、子供は母親が引き取り育てる。しかし何らかの事情で子供を捨てることになる者もごくわずかだがいるのだ。
これが一つ目の特異個性遺棄児童のパターンだ
そして二つ目のパターンはもっと単純で異形型の個性を持つ子供である。
余にも人とかけ離れた姿に成ってしまうと親が自らの子供と認められなくなってしまい捨てられてしまう事があるのだ。
キヨシの反応からその1つ目のパターンと2つ目のパターンが混合している形だろう。
キヨシの怯えた様子から恐らく相当前に捨てられ謂れのない中傷や暴力にさらされてきたことがうかがえる。
信も常人とは異なる姿で生まれてきたがそれでも信の両親は彼に愛情を注ぎ育てた。
豊かに育った信、捨てられたキヨシ。
2人の隔たりは余にも大きい。
信にキヨシの気持ちは分からない。
それでも信にはキヨシを何とかしなければと言う思いがとめどなくわいてきた。
だが今の信にできることなど児童相談所に連絡して保護員が来るのをキヨシと待つぐらいのものだ。
信は電話を取り出し児童相談所に連絡をしてこの廃屋までキヨシを迎えに来てくれるように相談した。
幸いにも児童相談所の職員はこのようなケースに成れているのかすぐに話はまとまり廃屋まで迎えに来てくれることになった。
児童相談所の保護員が迎えに来ることをキヨシに伝えねばならないがキヨシになんと伝えればいいのか分からに信が悩んでいると廃屋に大勢の人間が入ってくる気配がした。
児童相談所の人間にしては余にも早いなと思いつつもたまたま近くにいたのかもしてないと考え直し信が迎えに出るとそこにはおよそ児童相談所の人とは思えぬ人たちがいた。
信にはその人たちは警察官を除けばどこにでもいる様な普通の人に見えた。
しかしその誰もが殺気立っている様だった。
そんな中の一人が信の着ている科学特捜隊の制服をみて声をかけてきた。
「あんた科学特捜隊の人か、丁度良かったここに怪獣を操っているヴィランがいるらしいんだ。 一緒に来てくれ。」
だが信はこの廃屋をすでに調べていてヴィランなんていないことを伝えるが彼らは一向に信の話を信じなかった。
信は根気強く彼らに話をしていたが彼らの一人がキヨシを見つけ騒ぎ始める。
「ヴィランだ!! ヴィランがいたぞ!!」
キヨシはあっという間に彼らに囲まれてしまう。
信はキヨシを守るため人をかき分けキヨシのもと行くと彼らの前に立ちキヨシがヴィランではないと説得を試みる。
「みなさん落ち着いてください、彼はヴィランではありません。 異形型の個性を持つただの少年です。」
だがヒートアップしてしまっている彼らにはその説得も理解されない。
「そんな邪悪で醜悪なすがたでヴィランじゃないなんてことあるか!!」
「そうよ! そうよ! 心の醜さが姿に出ているのよ!!」
「そいつが怪獣を操っていた張本人だって話もあるんだぞ!!」
信は彼らの言う事は一つも分からなかったが気持ちは少しだけ理解できた。
彼らは怖いのだ。
今年に入り立て続けに出現した怪獣、ヴィランによる雄英襲撃、そして特別拘置所からの脱獄、これだけの事が起こっているのだ、皆不安になって当然だ。
そしてその不安から逃げるために手っ取り早く誰かの所為にして事件を終わらせて無理やりにでも安心を得たいのだろう。
だが気持ちがわかるからと言って信はキヨシを彼らに差し出す気は毛頭なかった。
しかし一般人の彼らを暴力で退けるわけにもいかず信とキヨシはだんだんと追い詰められていった。
そんな時、キヨシのペットのオウム、エレジアがキヨシの危機に反応したのか彼らに襲いかかった。
足の鋭い爪で彼らの一人をひっかくがただのオウムのエレジアにできたのはそれぐらいですぐに地面に叩き下ろされてしまった。
よほど強い力で叩きつけられたのかエレジアは全く動かなくなってしまった。
その姿を見てキヨシは泣きながらエレジアのもとに駆け寄るが興奮して半暴徒化している彼らにはそれが自分たちを襲いに来ているように見えたのか騒ぎが大きくなった。
「鳥に命令して俺たちを殺そうとしたぞ!! やっぱり怪獣を操っていたのもこいつだ!!」
「あぁ!! それにいま俺たちに襲いかかって来たぞ。」
「これでもヴィランを守るのか!! 科学特捜隊‼!」
またさらに彼らのボルテージが上がっていく。
「もうヒーローがやんないならお巡りさんがヴィラン撃っちゃってよ。」
誰かがそんなことを言い出した。
次第にその声が大きくなり一人の警官が銃を抜いた。
その瞬間、信は動いた。
警察官が本当にキヨシを撃つつもりだったのかは分からないがキヨシを守ろうと言う思いが強かった信は反射的に体が動き銃を抜いた警官の銃を持つ手を取り子手返しの要領で投げ飛ばす。
しかしそれを見た彼らが今度は信もヴィランだと言い始めた。
「そいつもヴィランとグルだ!! じゃないと雄英や拘置所が簡単に襲撃されるわけがねぇ!!」
「警官を投げ飛ばしたのが証拠だ!! そいつはヴィランのスパイだ!!」
信はもうこれ以上此処にいては危ないと、ようやく判断したのか死んだエレジアのもとで力なく座りこみ泣いているキヨシの腕を掴み半ばキヨシを引きずっていくように彼らの中を強行突破して外に出て逃げた。
だが彼らは信とキヨシを逃がす気はないようで執拗に追いかけてきた。
信はキヨシを連れ何とか逃げ切ろうと必死に走るが中々彼らを振り切ることができない。
そこで信はパトロールの時に度々通っていた長い一本道の路地に入ることにした、そこは迂回路が遠くに行かなければないところでその路地さえ塞げれば彼らは追ってくるのに時間がかかる。
そこでその路地に入った信は自分の服からベルトを取り外し通ってきた道に落とした。
そのベルトだけは科特隊の制服ではなく信が発目と一緒に開発した携帯エアマットになる物だったので一気にエアマットが膨らみ路地を塞いだ。
そうして彼らを撒いた後も信たちはもう管理する者もいなくなったさびれた社に身を隠した。
一方そのころ信たちを見失った者達はネット上に情報提供と協力を求めていた、『ヴィランのスパイとなっていたヒーローが警官に暴行を働き仲間のヴィランと逃げているので情報と捜索の手伝いを求む』と。
そしてそれはいまの様にネットワークが発達した時代では瞬時に情報が拡散されていきいろんな人の目に留まった。
それは科特隊であったり、雄英高校の人達だったり様々だが、ある一人の男の目にも留まった。
その男とはヒーロー殺しことステインである。
読んでいただきありがとうございました。
感想&批評などいただけましたら幸いです。