僕のヒーローアカデミア PLUS ウルトラマン 作:リューイ
あと八百万がなんかキャラがつかめずだいぶオリキャラみたいになってしまったかもです。
雄英高校の入試を受けた一週間後、信はいつものように日課であるランニングをするために家の近所にある公園の一周500mくらいのジョギングコースに来ていた。
いつもなら軽いジョギングをするために八百万も来ていて、そんな彼女の左側から信が何かのものマネなのか「左、失礼」と言って追い抜いて行き、そんな少し子供っぽさが残る信を八百万が少しあきれ気味の表情でみおくる。
そんなたわいもない事が二人の毎朝のお決まりの行動だった。
しかしここ数日間、八百万はジョギングコースに顔を表していない。
信は姿を見せない八百万に、何かもやもやしたものを感じているのかもしれない。
その所為か、いつもより早いペースでコースを周回している。
いつもより早く走り終えると信はポケットからスマホを取り出し八百万に電話をかけた。
電話はワンコールでつながり八百万がでた。
「はい、八百万でございます。」といつも礼儀正しい八百万の声が電話口から聞こえ、信は少しいつもの調子を取り戻したようだった。
「信だけど、今日もジョギングに来ていないみたいだけど、どうしたんだ?」
信は端的に用件だけ述べたが八百万の返答は色よいものではない。
「少し気分がすぐれなかっただけですわ。 お気になさらず。」
「それでは、失礼いたしますわ。」とにべもなく電話を切られる。
このようなことが今日の分を合わせもう6回も繰り返されている。
信はため息をつきながら自らに問いかけるように言葉をつむぐ。
「やっぱり、あの日に何か原因あったんだろうな。」
信はあの日、入試があった日のことを思い出しながら家路についた。
入試が終わったあと信と眼強が八百万と合流した時、あの時は結局八百万家の執事の内村さんにはそのまま車で帰ってもらって、信と眼強、八百万の三人はバスで駅前まで行き、そこで二階建てのよくあるハンバーガーのチェーン店に入った。
入店した信は、「俺が買ってくるから二人は積取っておいてもらえる?」と二人に問う。
二人は了承したので信は続いて何を注文するかを聞いく。
眼強は「私はハンバーガーとシェイクをお願い。」と言い。八百万は「私も同じものをお願いしますわ」と続いた。
信が「了解。」と販売カウンターに行くと八百万と眼強は席を探しに店の奥に入っていく。二人が選んだ席は二階の窓側のカウンター席だ。二人は示し合わせた訳でもないのに自然と間に一席開けて座る。二人は互いの距離感を量りかねているのかしばし沈黙が続く。
先に重苦しい沈黙を破ったのは眼強だった。
「そういえば自己紹介してなかったね。 私、眼強 瞳。」
「東田君とは今日の試験で偶然知り合うことになったの。」
眼強があらかじめ予防線を張るように自己紹介すると八百万も自己紹介を返す。
「そういえばそうですわね。申し訳ありませんでしたわ。」
「私は八百万 百と申しますわ。信さんとは幼なじみです。」
八百万は全くそんなことを意識していなかったのだろうがその会話はまるで恋人と浮気相手との前哨戦の様な様相を呈していた。
そんなところに丁度、買ったハンバーガーを乗せたトレイを持った信がやってきた。信は八百万と眼強の間が一席開いているのを訝しみながら二人の間の席に座る。信はトレイをカウンターに置き、次に棍を入れてある袋を自分と八百万の間に立てかけると二人の前に貰っておいたトレイマットを敷きそれぞれが注文したハンバーガーとシェイクを置いた。
信は二人がすでに自己紹介を終えていることを聞くと実技試験であったことを話し出した。八百万には葉隠や眼強との出会い、眼強には改めておお礼を言って彼女のことを褒めちぎっている。
最初こそにこやかに話していたが信の眼強への賛辞が彼女の精神や行動についての事柄から彼女の容姿の話に変わったあたりから不穏な空気が漂い始めた。
信は興が乗ったのか眼強を天使のように清廉で美しいなどとどんどん褒め称えている。だが眼強は容姿を褒められることには慣れているのか謙遜しつつ軽く流している。
しかし信や眼強と異なり八百万のイライラは高まる一方の様だ。やがて八百万のイライラが頂点に達したのか両手で机をドンとたたき、立ち上がり信の方を一睨みして「今日は気分がすぐれないので帰らせていただきますわ。」と言い残し足早に去っていった。
信はなぜ八百万が起こっているのか分からずキョトンとしているとさらに追い打ちをかけるように眼強が「私もそろそろ帰ることにするよ。あとそれからこれは忠告、あんまり鈍感すぎると大切なものをなくしてしますよ、気を付けて。」とこれまた今の信には理解不能な忠言を残して帰っていく。
二人が去った後の信は周りから見れば二股かけた挙句どちらからも振られた惨めな男に見えるのだろう、哀れみや軽蔑の視線にさらされる。居心地の悪くなったのか信も後片付けをして足早に店内をでてとぼとぼと一人家に帰った。
信が雄英の入試の後から家に帰るまでの事をひとしきり思い出し、ぽつりと一言「やっぱり何が悪かったのかまったくわからないな」とつぶやいていると信の家が見えてきた。その家は八百万の家と遜色ないほどの豪邸だった。
信が門から庭に入ると信が帰ってきたことがわかっていたのだろうか信が買っている白い毛並みのシーズー、ラピドックとクリーム色の毛並みの豆柴、ガーディーがちょこんとお座りをして待っていた。
遊んでほしそうに信を見上げている二匹を撫でて「また後でな」と名残惜しそうな二匹を後に家の中に入ると家政婦派遣所から派遣してもらっている中年の家政婦、石崎がいた。
石崎は手紙の様なものを手に信の傍まで来るとそれを手渡した。
「おかえりなさいませ。坊ちゃん、お手紙が来ていましたよ」
「ただいま。 手紙持ってきてくれてありがとう。」
信は手紙を受け取ると足早に部屋に戻り、手紙の送り主を確認する。手紙は雄英高校からの合否通知の様だった。信がその封筒を丁寧に開けると数枚の便箋と小型の映像投影機が出てくる。
信は早速カーテンを閉め明かりを消し部屋を暗くして映像投影機を起動した。すると体格のいい金髪のスーツ姿の男が映し出され、話し始める。
「わたしが投影された!! そう皆さんご存知、平和の象徴オールマイトさ!!」
よく一人だけ画風が違うなどと言われている日本人離れしたオールマイトの投影された姿を信は緊張した面持ちで見つめ、次の言葉を待っている。
「実は私は来季から雄英の教師を務めることになってね。最初の仕事として君たちに合否を伝える大役を仰せつかったのだよ。」
中々結果を発表しないオールマイトに焦れつつも録画された映像に早く本題に入ってくれと言っても仕方がないと信は焦る心を抑えようとしていた。
そしてついに合否が明らかにされた。
「さて色々前置きはしたがそろそろ結果を発表しよう。」
その言葉に信は手を握りしめ、まるで早鐘のように打ち鳴らされる鼓動も無視して集中した。
「試験結果は合格だ。 おめどう。」
合格、その結果を聞いた信は強く握りこんでいた拳を「よし」とさらに強く握りこんだ。そのあとは極度の緊張から脱したのか握りこんでいた拳は開かれ早鐘のように打ち鳴らされていた鼓動は今や穏やかになり、とてもリラックスしている様だった。
ひとしきり喜んだ信は、居住まいをただしオールマイトの次なる言葉を待つ。
「筆記はもうしぶんない成績だったよ。それから実技試験についてだかヴィランポイントは20点とあまり振るわなかったね」
「だが雄英が見ていたのはヴィランポイントだけではない。入試という他者を蹴落とさなくてはいけないとき、そんな時でも誰かをたすけるために行動できるかどうか、そうレスキューポイントも見ていたのさ。しかもこれは雄英教師陣による審査制だ。」
「君のレスキューポイントは30点。合計50点だ。惜しくもトップテン入りこそ逃したが全受験者中16位と中々の成績だった。」
オールマイトのそんな言葉に浮かれている様子の信だったがオールマイトのそのあとの発言で冷や水をかけられたかの様にギュッと身を固まらせた。
「正直言うと、君の合格判定に苦言を呈した者もいた。曰く実技試験は個性でもってヴィランロボットを破壊すること、つまり生徒の個性がヒーローとしての適性があるかを視ることが主旨のひとつ。なのに個性を全く使っていない君を合格させることは合理的判断ではないというものもいた。」
「だが私は君の合格には何の問題もないと思う。他者を蹴落とさねばならない試験中にも関わらず一瞬の躊躇もなく誰かのために動ける君の熱い心は十分に評価されるべき長所だと私は思う。」
「最後に、私は、いや、私たち雄英教師陣は君のヒーローアカデミアが有意義なものになるよう祈っているよ。」
「ではまた雄英でまっているよ」
その言葉を最後に投影された映像は途切れた。
信は先ほどのオールマイトの言葉を噛みしめながら自分がやっとヒーローへの第一歩を踏み出せることに喜びを感じていた。その姿は未来に進んでいく若い輝きに満ちているようだった。
信が受験結果を知らされていいたころ八百万は自分のスマホを持ちながら天幕付きのキングサイズのベッドに寝ころんでいた。
「あんな失礼な態度をとるつもりありませんでしたのに。 はぁ」
信からの電話のあと今日十数回目のため息をつく。
まだ恋をしらない八百万はその気持ちの源泉が嫉妬心であることに気づけないでいた。
八百万の生来の生真面目な性格から一週間前の眼強に対する礼を欠く行為や八百万のことを気にかけ電話してきた信へのそっけない態度をとても悔いている。
なのに信へ同じようなことを6回も繰り返してしまっている。
八百万は何度も何度も繰り返し自分に問いかけたが一向になぜあんな態度をとってしまったのか分からない。そんな判然としない気持ちを抱えたままずっともやもやしていた。
そんなもやもやした気持ちを吹き飛ばそうというのか八百万は普段と違い落ち着きなく、ベッドに寝ころび枕を抱え左へゴロゴロ、右にゴロゴロとせわしなくベッドの上を転がりまわっている。
ふと今日が雄英の合格発表の日であることに気づいた八百万はいそいそとベッドから起きてよそ行きの一番お気に入りの服に着替えた。
八百万の生真面目な性格がいい方向に働き、ぐずぐずと悩むのではなく、よくない態度をとったのならばきちんとあって謝ろうと物事を簡潔に整理した。
八百万は早速執事の内村に東田家まで車を出してもらうことにした。内村の運転は運転がうまく車内は余計な騒音ものく静まり返っていたその所為か八百万は自分の心臓の音が大音量で響いてるように感じた。
そんな静寂が苦痛だったのか八百万は内村にカーラジオをかけてもらった。そのラジオからは最近起きている、ある事件のニュースがながれてきた。
その事件は建物や車が見えない何かに突如として踏み潰されているというもので、いまだに警察もヒーローたちも犯人どころかどうやって踏み潰しているのかも見当がついていないという状態だった。
そのあとも色々なニュースは流れたがそれほど八百万の気を紛らわせてくれるニュースはなかった。
暫くすると車が停車し、執事の内村が「到着いたしました。」と八百万に声をかけた。
八百万は内村の先に帰っているように申し付け車をでて東田家の正門に向かう。八百万が正門脇にある呼び鈴を鳴らすとすぐに東田家の家政婦、石崎さんの声がした。
「東田でございます。どちら様でしょうか?」
「石崎さん、私です。八百万 百ですわ。信さんに会いに来たのですがいらっしゃるかしら?」
「まぁ 百お嬢さま、今すぐ門をお開けしますね。」そう石崎さんが言うと門が開いていった。
門をくぐった先、八百万を真っ先に歓迎したのはラピドックとガーディーだ。よく知る八百万がきたので今度は遊んでもらえると思ったのだろう行儀よくお座りをしているが尻尾はブンブン左右に揺れている。
だが二匹の願いは届かず、八百万はひとしきり二匹を「お出迎えありがとうございますわ。」と撫でると家に入っていった。
八百万が家に入ると石崎が彼女を迎えた。
幼いころから互いの家をよく行き来していた八百万にとって先ほどの2匹同様石崎もよく見知った人物だ。
「いらしゃいませ。百お嬢さん今日はいつもよりおめかしして坊ちゃんとどこかお出かけですか?」
「お邪魔いたします。今日は信さんに少し用があるだけですわ。信さんは今お部屋かしら?」
「はい。そうだと思いますよ。届いていた手紙を受け取られたので。」
「そうですの。ありがとう。信さんのお部屋に行ってみますわ。」
八百万はその手紙は雄英からの合否通知なのだろうと思い至ったが早く信に会って謝罪したいのか直接信の部屋に向かうことにした。
信の部屋に近づくにつれ八百万の足取りは遅くなったが、やがて部屋の前についた。八百万はドアをノックしようとするがその手は何度も止まってしまう。
ややあって彼女も決意したのか大きく深呼吸してドアとノックした。
「百です。いらしゃいますか?」
すると中から信が出てきてドアを開けて八百万を招きいれる。
「いらしゃい。」
信の部屋に入った八百万が早速本題を切り出そうとすると信はまず部屋の中ほどにあるソファーに座るように勧める。八百万が席に着くと信もテーブルを挟んだ反対側のソファーに腰を下ろす。
相対した二人の間に流れる沈黙の時間は八百万にとってそれこそ時が止まっている夢の世界の様にも感じていたがいつもより早く脈打つ心臓が八百万に今が現実であることを教えている。
八百万が意を決して謝罪の言葉を口にしたとき信からも八百万にとっては思いもよらぬ言葉が重なった。
「「ごめんなさい。」」
二人はかなってしまった。言葉に困惑した。互いに何についての謝罪か理解していなかったからだ。
信は八百万に「一体なんのことについてのこと?」と問う。
「入試のあとの事と電話をもらっても酷い態度をとってしまった。ことですわ。」
「本当に申し訳ありませんでした。」
信の問いに答える八百万の手は緊張からなのか膝の上でギュッと握りしめられていた。
信はそんな八百万の隣に座り直し握りしめられた手にそっと取り固まった指を一本一本ほどきながら語り掛ける。
「俺の方こそごめん。あの日俺が百の事怒らせたことが悪かったんだ。」
「そんな事ありませんわ。 だって私の時なんであんなに怒っていたのか自分でもわからないんです」
「実は俺もそうなんだよ。なんで百があんなに気分を害したのか分かってない。」
「けど百が何にもないのに怒ったりしないのはわかってる。だからごめん。俺が悪かった。」
八百万は目にうっすら涙をにじませる
「私たち本当に愚かですわね。訳もわからず怒ったり、訳も分からず謝ったり、」
信は八百万の言葉を肯定する。
「確かにそうかもしれない。問題は何一つ解決してないけど、それでもそれを先送りにして仲直りぐらいはできるだろ。」
八百万も信の言葉を肯定する
「そうかもしれませんわね。 仲直りいたしましょう。」
もう二人の間には溝はなくただ笑顔があるだけだった。
すっかり仲直りをして気分の良くなった八百万はふと窓際にある勉強机の上を見て信が何か書き物をしている途中だったことに気づく。
八百万は好奇心に負け信に何を欠いていたのか尋ねる。
「何か書き物の途中だったのですか?」
すると信は事も無げに机まで行き机の上の封筒を八百万に見せこう言った。
「ちょっと遺書を書いていたんだ。」
その瞬間、八百万の頭の中では今までの事、合否通知、仲直り、遺書が一本の線でつながった。見事に勘違いした八百万は信を捕まえるためにすごい勢いで駆けていく。その勢いたるや今まさにタッチダウンに行く選手を阻まんとするアメフト選手のタックルに例えていいぐらいだ。
信はそんな八百万をよけられず、八百万の頭が信の鳩尾に深々と突き刺ささる。信は息もできない様子で苦悶の表情を浮かべる。
八百万はそんな信にお構いなしに号泣しながら説教をし始める。
「ヒーロー科のある学校はは雄英だけではありませんわ。雄英に落ちたからと言って死のうだなんてしては絶対にいけませんわ。」
「心残りをなくす為の仲直りなんて、私は、わたくしは絶対にごめんこうむりますわ。」
息も絶え絶えの信だがそれでも八百万の誤解を解くなめに言葉を紡ぐ。
「死な ない から」
そのとぎれとぎれの言葉に少し冷静さを取り戻した八百万は「だったらなぜ遺書などかいているのです?」と詰問する。
「ヒーローは命がけの仕事だから、きっとヒーローになるための訓練も危険なものになると思う。だから予め家族や大事な人達に感謝の言葉を残しておこうと思って書いておいたんだよ。」
「とういうことは、雄英には?」
「もちろん。受かってたよ。」
それを聞いた八百万はすっかり脱力し怒る気力もなくした様だった。
結局てんやわんやの末、仲直りをした二人は信の合格祝いを気分転換もかねてすることになった。
お祝いは八百万のリクエストを受けて駅ビルの最上階の見晴らしのいいレストランに行き、二人でランチを食べることになり、二人は出かける準備をする。
信は出がけに石崎さんに昼食は外で八百万と二人でとる旨を伝え出かけた。
外に出ると出かける二人を見つけたラピドックとガーディーは三度目の正直とばかりに二人の周りを跳ね回り、遊んで遊んでと言っているみたいにじゃれついてくる。
信は二匹に帰ってきたら散歩に連れていくからいい子で待っているんだよと二匹を置いて出る。
それから信たちはバスで最寄りの駅に向かいそこから電車に乗り換え目的の駅ビルのある駅に着く。
二人は駅から出て駅ビルに入り最上階の50階に行くエレベーターに乗っていると突然ものすごい地響きがして強い衝撃があるとビルが壊れるような音があたりに響く。
信はエレベーターの窓に張り付き外を窺うとすぐ上の階が何かがぶつかったように崩れており、なおかつ何かに引火したのか火災が発生している。事の重大性に気づかされた信は八百万にエレベーターに設置されている緊急電話を確かめるように言う。
「百!! 緊急電話は?」
もうすでに確かめたていたのか返答はすぐきた。だがそれは色よいものではない。
「緊急電話はつながりませんわ。おそらくは先ほどの衝撃で壊れてしまったのではないかと。」
「上で火事が起きて一部崩れてる。兎に角ここから脱出することをかんがえよう。」と信は言うとエレベーターの扉の前に立ち力ずくでエレベーターの内側の扉を開いた。
エレベーターの内側の扉を開くと外側の扉の下半分が見えている状態だった。
信が少し安心したのか「ふぅ」と息を吐き、八百万に「外側の扉が開けられれば出られそうだ」というと八百万も気丈に振る舞っていてもやはり不安だったのか希望が見えた今は信の言葉に対する返事もすこし元気を取り戻したような声だ。
「では二人で左右から一気にあけましょう。」
八百万の言葉どおりに二人は左右に分かれ「せーの」と声を合わせてエレベーターの外側の扉を一気に開けた。
信はあたりを見回し安全を確認した後、「百、先に行って。」と八百万に先に出る様に促す。
八百万がエレベーターを出た後信もそれに続きエレベーターから出る。
二人はエレベーターを出ると避難するために階段に向かうとそこはすでに避難する人でごった返していた。
事の重大さを改めて理解した二人は自らも避難すべく階段を下りようとした時、皆が下ろうとしている階段を逆に上がってきている小学生低学年ぐらいの男の子がいた。その激流を遡上するかのような行為は小学生には到底なしえる事ではなくたやすく人の流れから放り出されたようだ。それでもなお涙をこらえ上の階に向かうことをやめようしない少年に二人は少年の手を取り、声をかけた。
「上に行くのは危険だ!! 下に避難するんだ。」
「大丈夫ですか? お母さまやお父さまとはぐれてしまわれたのですか?」
そうすると少年はそれまで必死に抑えていた不安が一気に噴出したのだろう堰を切ったように瞳から涙があふれる。あふれた涙をぬぐいながら少年は母が瓦礫に挟まれて動けなくなっている事、自分だけでも逃げる様に言ったこと。そして一度は母を残して逃げたことを嗚咽交じりに吐き出す。
「ぼく逃げたけど、だけど やっぱりお母さんに生きていてほしいんだ!!」
そして少年は信に叫ぶ、願いを託すように、
その少年の叫びを聞き信は立ち上がる。
「百、その子を連れて避難してくれ。」
その言葉に少年は「僕は行かないといけないんだ。」と信たちを振り切ろうとするが信は少年の肩をつかみ離さない。
信は少年を自らの方へ向かせ、膝立ちになり目線を合わせ、約束を交わす。
「君のお母さんは俺が助けに行ってくる。生きて君のもとにちゃんと送り届ける。」
「だから君も生きてお母さんにまた会うために、今は避難するんだ。」
「君の名前はなんていうんだ?」
「星野 勇気。」
「勇気か、いい名前だな。もう一度ちゃんと約束する、俺こと東田信は星野勇気とお母さん絶対にまた合わせる。 だから今は避難するんだ。わかったな?」
勇気が飛び出していきたいのを我慢しているのか服をギュッと握りながら頷く。それを確かめた信は八百万に目線を向けて「俺は勇気のお母さんを探しに行ってくるから、百は勇気を連れて先に避難してくれ。」と言った。
しかし八百万はとんでもないとばかりに首を横に振り信の考えを否定する。
「了承いたしかねますわ。 いくらなんでも危険すぎます。 それにもう少ししたらヒーローや消防の方も到着いたしますわ。」
「百のいうこともわかるけど、上では火災も起きている。今いかないと間に合わない可能性がある。」
「勇気のこと頼むよ。」そう言って駆けだそうとする信の腕を八百万がつかむ。
「百!! 離してくれ」
「せめて準備は整えてからにしてください。」
そう言いながら八百万は自らの個性を使い作った小型の酸素マスクを二つと耐火シートを信に渡す。
信は八百万から酸素マスクと耐火シートを受け取ると焦る自分を落ち着かせるように深呼吸してから酸素マスクをして耐火シートをマントの様に自分にまきつけた。
酸素マスクをつけた信に八百万は「これもつけていってください。」と個性で手から分泌したジェル状の物を頭や肌の見えている所に塗っていく。
「気休め程度のもですが耐火ジェルですわ。 気をつけて……」そう言った八百万の顔には不安の色が濃い、それでも「ちゃんと帰ってきてくださいね」と信を気丈に送り出し勇気の手を取り避難していった。
信も八百万と勇気が避難し始めると同時に行動を開始した。まず信は先ほどのエレベーターまで戻ってきて半分ほどが見えているエレベーターのカゴの上にのりまるでフリークライミングでもするようにすいすいと勇気の母がいるであろう4階上のエレベーターの外側のトビラまで登ってきた。
信が扉を開けるとそこは一面瓦礫と炎と粉塵であふれていた。その光景を前に信は絶望しかけるが勇気の必死な姿を思い出し己を奮い立たせ勇気の母を探し始める。
「助けにきました。誰かいませんか?」と酸素マスクを少し外し叫びながら辺りを探し始めた。
小さなうめき声が聞こえ信はその場所に急いだ。その場所には30過ぎぐらいの女性が倒れた棚と瓦礫にうずもれていた。大分意識がもうろうとしている様子のその女性にこえをかけ。
「いま助けます。」
信が瓦礫と倒れた棚をどかせると瓦礫や棚などの重圧から解放されたからなのか女性の意識が少し、もどって来たようだった。
「助けにきました。星野勇気君のお母さんですか?」
「は、はい。そうです」
その女性はそう答えた後、はっと何かを思い出したのか痛む体を起こし信の腕をつかみ
「勇気は、息子の勇気は大丈夫なんですか?」と必死にたずねる。
信は勇気の母を安心させようとゆっくりおおらかな声で大丈夫だと伝えた。
「勇気君は無事ですよ。 俺の友人が先に避難させています。」
「俺は勇気君に頼まれて助けにきました。俺たちも避難しましょう。歩けますか?」
勇気の母はその言葉に安堵した様子を見せ、そのあと立ち上がろうとするが途中でよろけてしまう。
こけそうになった勇気の母を抱きとめる。
「歩けなさそうですね。」
「すいません。瓦礫の下敷きになったとき足を怪我してしまったようです。」
申し訳なさそうな勇気の母に罪悪感を抱かせないように信は明るく自らが抱えていくから大丈夫であると伝える。
「大丈夫です。俺が背負っていきますから。」
「火事の煙を吸わないように酸素マスクをして耐火シートを頭から羽織ってからおぶさってください。」
そう言って酸素マスクと耐火シートをわたして勇気の母に信は屈んで背を見せる。
勇気の母は信に言われたとおりにして信におぶさった。
信は勇気の母を背負い非常階段の方へ火災の火に炙られながら走っていく。
信たちが非常階段のところまで来るとそこまではまだ火が回っていなかった。そのことに少し安堵した信たちは非常階段を降り始めた。
その直後すさまじい衝撃と轟音が響き信たちの階下が崩れていった。よろけながらも信は手すりをつかみ何とか踏みとどまった。
おそらく外から何かをぶつけられたのだろう外壁の大きく崩れ外が見える様になっていた。
信が外に目をやるとそこには居るはずのないものがいた。それはトカゲを2足歩行にしてゾウの長い鼻を付けたような姿の透明怪獣サータンであった。
だがすぐにサータンは消えてしまった。
信はサータンに出現に戸惑うと同時にサータンの特性を思い出し、今まで町で起きていた姿が見えないのに車やビルが踏み潰されていたなどの不可解な事件がサータンによるものだと気づいた。
だがそんなことに気づいても下へ降りる階段が破壊された今の状況は如何ともしがたい。
信はあきらめる事なく下に降りるために使えるものがないか探す。だが火がすぐそこまで迫り、外ではサータンが現れては消え送り返しその間に信たちのいるビルを含め様々な場所を破壊している。そんな絶望的状況だ
勇気の母は信の背中から降りて「ここを二人で降りるのは無理よ。でもあなた一人ならまだ脱出できるわ。行きなさい」と信の背中を押した。
「そんなことはない!! 何か方法があるはずだ。」
信は勇気の母のところに戻り説得するが勇気の母は信の言葉を聞き入れない。
「勇気の頼みを聞いて私を助けに来てくれた。そんな人のために行動できる貴方はきっと素敵な大人になって多くの人を助けられるわ。だからこんな所で死んでは駄目よ。生きなさい。」
そう言って勇気の母は女性の細腕から出たとは思えないほどの力で信を押した。
よろめき後ろに下がった信が見たのは下から信たちのいた場所に飛んでくる車だった。その車はサータン、がその自慢の鼻で軽々と持ち上げ飛ばした物の一つである。
信はその光景がゆっくりと見えている。極限状態で研ぎ澄まされた神経がまるで走馬燈を見るときの様にゆっくりと時が進む。迫る車、勇気の母の優しげな顔、すべてはっきりと見えているのに体は駆けだそうとする意志とは裏腹に少しずつしか動かない。そのもどかしさに信の心はかき乱されている。
それでも信は到底届かない勇気の母へ手をのばす。
「クソォー とどけぇー」
だがそんな行為もむなしく勇気の母に車は迫る。
勇気の母と投げられた車が接触しようとしたとき、辺りは突如光に満ちた。
信と勇気の母が絶体絶命の窮地に陥る少し前、八百万は勇気を抱えて遠くへ避難しようと歩いている。
本来ならば壊れたビルからある程度離れれば、頑丈な建物の中で救助を待つ方がいいのだろうがビルの外に出た者たちは40m級の怪獣が一瞬現れて周囲を破壊し消える。それは個性が広く認知されている今の社会においても前代未聞の出来事でだ。そんな出来事を目の当りにした者たちは、恐怖から遠くへと逃げていった。
ビルの高層階から階段で地上まで降りて、さらにそこから安全な場所まで避難するというのは、小学生の勇気にはつらかったのだろう。ビルを降りて暫くするまでは八百万が勇気の手をひき避難していたが次第に勇気は歩くこともままならなくなり八百万が抱えていくことになった。
普通の女子より鍛えている八百万とはいえ小学生の男の子を抱えて避難することは容易ではない。それでも個性で抱っこ紐の様なものを作りだし勇気を自らの体に固定し歩き続ける。足が棒のように硬くなり前に足を踏み出すことでさえ痛みを感じるほど辛かったが八百万は諦めなかった。それはヒーローになろうとしている自分がくじけるわけにいかないというプライドや、人として小さな子供を放り出してはいけないという使命感、もあったが一番は信から託されたからだろう。
勇気は不安なのだろう八百万の服を掴んで離さない。
「お母さん大丈夫かなぁ。」と勇気は不安で弱気になっているか度々口にする。
そのたび八百万は「大丈夫ですわ。 信さんは約束したことは必ず守ります。だから私たちのところに勇気君もお母さんを連れて無事にもどってきてくれますわ。」と勇気を励ました。
そう八百万は信じていた。信が必ず勇気のお母さんを連れて帰ることを。
だから自分も勇気を守ろうと八百万は辛くともくじけなかった。
かなりの距離を避難してきた八百万は勇気を下ろし人心地つくとビルの方を見るといまだに怪獣が暴れている。
勇気も同じように怪獣を見ている。そして絶望してしまったかの様に顔を伏せて目をそらす。
八百万はそんな勇気えを励ます。
「安心して下さい。もうすぐヒーローが到着して怪獣をやっつけてくれますわ」
涙を流しながら叫んだ
「あんなに大きな怪獣、ヒーローだってかなわないよ。」
それは色々なことが立て続けに起きた勇気の母にもう会えないんじゃないかという不安と怪獣に殺されるんじゃないかという恐怖と全てが無駄な事だったんじゃないかという絶望がぐちゃぐちゃに混ざった心の叫びだった。
それを聞いた八百万は勇気を抱きしめて「必ずヒーローは勝ちますわ。 信じましょう。信さんも勇気さんのお母さんをきっと無事に助けてきてくれますわ。」と言う。
そう言った八百万も少し震えている様だった。それの言葉はもはや信やヒーローに対する信頼ではなく、ただの八百万の願いだったのだろう。
抱きしめられて八百万の不安にも気づいた勇気は自らの不安を押し殺し勇気をやさしく包んでくれる八百万に母のぬくもりと同じものを感じた。そして勇気は彼女の言葉に泣きながら何度もうなずく。
八百万と勇気が信と母の事を思いビルの方を見るとサータンがまた出現して暴れ出していた。その時ビルからすさまじい閃光がほとばしると、その中から赤く光る球体が現れた。
その球体は八百万と勇気に向かって高速で飛来してきた。
それを見た人たちは蜘蛛の子を散らすように一斉に逃げていったが八百万と勇気にはそれが悪いものには思えず、球体が来るのを待っていた。
やがて球体が八百万たちのもとにやってくると次第に赤い球体は小さく薄くなっていってやがて勇気の母を抱えた信が姿を現した。
「信さん」「お母さん」と八百万と勇気が二人の事を呼びながら彼らに駆け寄った。
信は勇気に母を地面に耐火シートを敷いてから、その上に勇気の母を寝かせると勇気に母の無事を知らせる。
「勇気、お前のお母さんは無事助けてきたぞ。今は少し気絶しているがすぐ目を覚ますだろうから傍にいてやれよ。」
勇気は母の手をにぎりながら何度も信の言葉に頷き感謝した。
「うん うん ありがとう。 信兄ちゃん」
勇気の母を勇気のもとに返すと信は八百万に「酸素マスクと耐火シートには助けられたよ。ありがとう。」と言う。
「必ず無事に戻ってくると信じておりましたわ。」
「百も無事でよかったよ。」
二人は互いの無事を喜び合う。
八百万は信に怪獣を目撃したことを話す。
「信さん、信じられないかもしれませんがこれは怪獣が現れて街を破壊している様なのです。」
「ああ、ビルからも見えていたよ。」
八百万に返事をする信の表情はすぐれない。
まっすぐ怪獣が出現した方を見つめて歯を食いしばり、拳は血の気が引いて白くなるほど強く握りこまれている。
その姿は街を破壊する怪獣に怒りを向けているように見える。
だが八百万にはまったく違って見えた。何も出来ていない不甲斐無い自分への憤り、それこそが幼なじみの八百万百だけが気づいた信の心だった。
「信さん、残念ですが私たちにできることはありませんわ。 あのような怪獣相手では誰だって……」
そんな八百万の言葉を信は否定するかのようなことをいう
「違う、違うんだ。 俺には…… 俺の力ならっ」
ふと八百万は先ほどの赤い球体の事を思い出した。八百万が聞いていた信の個性は変身することができるというものだった。実際八百万は、数回変身した姿を見たことがある。変身とは違う先ほどの力、もしかしたら他にも信には凄い個性があるのかもしれないと八百万は推測した。
八百万は得心がいった様だった。しかしそれならばなぜ信が何もしないかと言う疑問が新たに八百万にはわいてきた。
八百万が信と出会ってからの記憶を思い出していくと確かに信は進んで個性を使っていた事はなかった。
信の心の奥底にあるものは八百万には分からなかったが、今信が心を痛めていることはわかった。だから八百万は信の背中をおすことにした。
「信さん」八百万の信を呼ぶ声に彼は振り向く。
「私は信さんがなぜご自分の力を使おうとなさらないのかはわかりません。私が想像もつかない様な深いご事情があるのでしょう。」
「ですが今信さんにしかできないことがあるならば、それをしなかったことを後悔するぐらいなら、私はやるべきだと思いますわ。」
その言葉を聞いた信は怪獣の方に向き直り、八百万の方を見ないで静かにだが力強く「行ってくる。」それだけ言って怪獣の方へかけだして行った。
駆けだして行った信に光が集まりその光と体が溶け合うように一体化し信は元の姿、ウルトラマントラストに戻った。
数年ぶりに元の姿に戻ったトラストだがその姿は人間体が成長したのに合わせて成長していた。生まれたころは小さかった銀と赤の体はたくましくなり、小さかった角も大きく雄々しくトラストの精悍な顔立ちに見事に合っていた。
トラストはまだ巨大化せず人間大のままサータンの足下まで低空を飛行していく。
「これ以上街に被害を与えるわけにはいかない。」
トラストはサータンの近くに来ると力を貯めた後、空に向かい手を掲げて黄金の光を打ち出した。それはサータンの頭上を越えるとはじけ光のシャワーとなりトラストとサータンを包んだ。
光が消えた後、そこにはトラストの姿もサータンの姿もなかった。
トラストは街の被害をこれ以上拡大させないためにウルトラマンネクサスが怪獣と闘うときに使用していた不連続時空間、メタフィールドと同様の物を発生させ自らとサータンを取り込ませた。
(ここなら街の被害も人の目も気にせず闘える!!)
トラストは巨大化して戦闘態勢をとる。
そうするとサータンはトラストに気づいたのか雄叫びをあげながら突進してくる。
そんなサータンを冷静に見極めて背後に回り込み大上段から手刀を叩き込んだが寸前の所でサータンが消えてしまい目標を失ったトラストそのままの勢いでつんのめる。そんなトラストを嘲笑うかの様にすぐに現れたサータンは自慢の鼻でトラストの背を打つ。
「くっ」
その衝撃に思わず膝をつくトラストだがすぐに立ち上がり振り向きざまにサータンの頭部めがけて渾身のパンチを放つ。だがそれも消えることで軽々と避けられてしまう。
(やはり消えたり現れたりするのをなんとかするしかない!!)
トラストはウルトラマンジャックがサータンにやったように透視光線でサータンの消える能力を無効化するしかないと考え、眼から透視光線を放つ。
しかしサータンが思いのほか素早くトラストの透視光線を動き回って躱してしまう。
だがトラストは何度もサータンに透視光線を放つ、しかしその全てをサータンに避けられ窮地に陥る。
胸のカラータイマーが危険を知らせる様に赤く点滅している。トラストは透視光線を幾度も放つことによりエネルギーをかなり消費してしまったのだ。
そんな息も絶え絶えで膝をついているトラストにサータンは近づきその鼻をトラストの首をへし折らんと巻き付ける。
トラストは鼻を巻き付けられ苦しそうな声を上げる。しかしトラストはこれを待っていた。
(今だ!! くらえ!)
トラストは至近距離から透視光線をサータンに放つ。サータンは鼻をトラストに巻き付けていたので避けられなかった。
消えられなくなったサータンにトラストは渾身の力を込めて殴り飛ばした。その一撃でサータンは思わずトラストの首を離し後方に吹き飛ぶ。
サータンとの間合いが十分に取れたトラストは痛みに気をとられているサータンに向かい自らの光線技を放つために両手を左右に広げて自分のエネルギーを高めてからT字に腕を組んだ。
「トラストリウム光線!!」
トラストの技名を叫ぶとT字に組んだ腕から凄まじい光のエネルギーの奔流がサータンに向かう。
トラストリウム光線を浴びたサータンになすすべなく、最後に一際大きな叫び声をあげて粉々に爆散した。
サータンを倒したトラストはエネルギーの限界を感じ、その脱力感から膝をつく。
(エネルギーを使い過ぎたか。 この空間ももう持たないし早く百の所に戻らないと。)
トラストは自らを光と変えてこの不連続時空間から抜け出し信の姿に戻ってから八百万の元に帰った。
数分前に信を見送った八百万はまるで祈るかのように手を胸の前で握り、信の駆けて行った方向をずっと見たいた。
八百万が先ほど怪獣と信が不連続時空間に消えた場所から光か瞬くのを見たしばらくあと信は八百万の元に帰ってきた。
「ただいま、百。 怪獣、たおしてきたよ。」
「おかえりなさい、信さん。」
そんな短い言葉に二人の互いを大切に思う思いがすべて詰まっている様だった。
「ところで勇気と勇気のお母さんは?」と二人がいないことに気づいた信が問いかける。
「先ほど救助に来られたヒーローに病院まで連れて行っていただきましたわ。」
「そうか、それならよかった。」
信は安心したのかその場に倒れこむように座り込む。
その様子に八百万は信に駆け寄り、隣で膝立ちになり信を支えて、信を心配する。
「信さん、大丈夫ですか?」
「少し疲れただけだよ。 それよりこれからどうしよう?」
「街がこのありさまではランチでお祝いってわけにもいかないし、帰るにしても電車は止まってしまっているだろうし。」
八百万は少し考えて「帰りましょう。電話で内村さんに車で迎えに来てもらいましょう。」と八百万にとっても信との楽しいランチも魅力的で捨てがたかったが信の言う通り街がこの状況では楽しいランチなんて望めないし、何より信の体の事を心配し帰ることを選択した。
「今日はまだ半分ぐらいしかたってないのにいろんなことがあって疲れたよ、もう今日は何もしたくないって感じだ。」
そう信が呟くと八百万は微笑みながら信の言葉を肯定する。
「そうですわね。お祝いはまた今度にして、ゆっくり致しましょう。」
微笑みあっている二人はふと約束があったことを思い出した。
「あっ、帰っても休めないんだった。ラピドックとガーディーと約束してたんだった。」
「確かに散歩に連れていくと約束していらっしゃいましたね。」
「今の信さん一人では何があるか分かりませんし私もおつき合いしますわ。」
そんな己を気づかう言葉に信は感謝を込めて軽口で返す。
「ありがとう。百と一緒ならへとへとでもきっと楽しい散歩になるよ。たとえガーディーとラピドックに引きずられ行くかもしれなくてもね。」
そんな日常会話が今までの非日常で疲弊した二人の心をいやしている。
それは八百万家の内村が到着するまで続くのだった。
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