僕のヒーローアカデミア PLUS ウルトラマン   作:リューイ

8 / 15



USJ回の続きです。


第8話 ヴィラン来襲!! 怒り爆発ウルトラマントラスト

 13号やイレイザーヘッドがヴィランたちと死闘を繰り広げていた時、黒霧にワープさせられた生徒たちもヴィランたちとの初めての戦闘を経験していた。

 

 黒霧のワープゲートにより信は一人谷間の様な所に移動させられた。

 

 「ここは一体どこなんだ?」

 

 信は天を仰ぎ自問する。

 

 「山岳ゾーンの谷間って所かな。」

 

 見上げた先が先ほども見たドームの天井とほぼ同じことから信は今いる場所が山岳ゾーンの谷だと推測し、これからどう動くべきか考えている。

 

 「装備はこれだけだし、とりあえず他の奴らと合流することを第一目標にするか。」

 

 信は手元にある装備、自動巻き上げ式のワイヤーアンカー、電磁警棒、腕に装備したシールド、フラッシュバーンや煙玉などを一通り確認してから谷の出口へと周囲を警戒しながら歩いて行く。

 

 少し歩いた所で人の気配を感じた信は岩陰に隠れて周囲を窺うとそこには3人のヴィランらしきものたちがいた。

 

 「出てこい。 小僧!! この蝙蝠の個性を持つ俺には貴様が隠れていることなどすでにおみとうしだ。」

 

 蝙蝠に似たヴィランが得意げに自らの個性を明かして信を挑発する。

 

 そんな蝙蝠ヴィランの足下に缶が転がってくる。それは信が投げたフラッシュバーンだった。

 

 あたりにけたたましい爆音と光がはなたれ、そして煙がたちこめた。

 

 蝙蝠ヴィランは耳が良いことが災いし身動きできなくなり、残りの2人のヴィランも混乱している。

 

 信はその隙を逃すまいと素早く先頭にいた蝙蝠ヴィランを電磁警棒で殴り倒し、続けざまに残りの2人も警棒と盾で反撃の暇はおろか声をあげる隙もなく倒した。

 

 その後も2から3人組のヴィランに数度遭遇して信はそのたびに奇襲や煙玉で視界を奪うなどして素早く倒していったが同時に疑問も感じていた。

 

 (人間、3人いれば派閥ができるとはよく言うけど戦力を小出しにする意味が分からないな。)

 

 注意深く進んでいくと谷の入り口着いたが、その場所は大小さまざまな岩が乱雑に積み上げられてふさがれていた。

 

 そこには2人のヴィランと腕を縛られて捕らえられているクラスメイトの青山がいた。

 

 (そうか!! 俺に対して戦力を小出しにしているんじゃなくて、俺以外にもここにワープさせられていてそれを個別に捕まえるためか。 だがそうなるとあと何人いるのか見当がつかないが、助けるなら今しかないか。)

 

 決断した信はヴィランからは死角となっている岩陰に隠れながら物音を立てぬように慎重に進んでいった。

 

 気づかれないギリギリの距離まで来た信はヴィランが青山から目を離した一瞬を狙い電磁警棒を投げつけ青山に近い方のヴィランを感電させて動きを封じる。その瞬間、信も岩陰を飛び出し青山のもとまで駆け寄ると座り込む彼の胸倉をつかみ立ち上がらせて「逃げろ!!青山。」と言い、腕を縛られた彼を逃がす。

 

 逃げる青山に気を取られたヴィランに信は盾を体の前に掲げ突進していった。

 

 信の突進に押される形で谷の壁に激突したヴィランは痛みにのけぞる。そこを柔道で言うところの大腰で投げ飛ばし、そしてそのまま間髪おかず馬乗りになり数発殴り、ヴィランを気絶させた。

 

 二人のヴィランを倒した信はすぐに青山を追いかける。

 

 信が青山を追いかけて走っているとすぐに青山の背中が見えてきたが青山は必死に走っているためか信の存在に気づかない。

 

 「待て、青山!! ヴィランは倒したぞ!!」 

 

 信はヴィランに気づかれるリスクを承知で青山との合流を優先させるために大声で呼びかけた。

 

 信の声が届いたのか青山はその場でやたら派手にターンし、信の方へ向き直る。

 

 「なんだいもう片づけてしまったのかい、すぐに応援を連れて戻ろうと思っていたのに。」

 

 信はそんな強がりを言う青山の腕のロープを外していると谷の上の方から強い稲光と雷鳴が聞こえた。

 

 「青山君、上まで登ろう。 誰かいるみたいだ。」

 

 「正気かい? 上にいるのがクラスメイトだとは限らないんだよ。」

 

 青山は必死に信を止めるが信は考えを変えるつもりがない。

 

 「たとえさっきの稲光がヴィランの発した物でも誰かが戦っていることは間違いないよ。」

 

 信はワイヤーアンカーを谷の壁面に打ち込み登って行く。谷を登り切るとワイヤーを下の青山に投げ渡す。

 

 青山は少し迷いながらも一人で谷底に残るのも嫌だったのか、おずおずとワイヤーを掴み登ってくる。

 

 2人が谷を頂上付近まで登っていくと話声が聞こえたので谷から少しだけ顔を出して様子を窺う。

 

 そこには倒れ伏した多数のヴィランと八百万と耳郎、そしてヴィランとその人質に取られた上鳴がいた。

 

 信はすぐさま上鳴たちを助ける方法を考えて青山に協力を要請する。

 

 「青山君、手を貸してほしい。俺があのヴィランが背を向けている岩山に後ろから登って、背後から攻撃するから青山君は上鳴君の安全の為とヴィランの気を引くために正面から出て行って上鳴君の首元に当てられているヴィランの腕にレーザーを打ってほしい。」

 

 「何を言ってるんだい☆ 相手は本物のヴィランだよ。それに失敗したら上鳴くんが……。」

 

 「確かにリスクはある。だけどこのまま何もしなければ最悪3人とも捕まって殺されるかもしれない。今はリスクを取ってでも最善を目指すべきだ。」

 

 信にも青山の言いたい事はは痛いほどわかった。高校にあがったばかりでいきなりこんな事件に巻き込まれているだけじゃなく、訳が分からないままやみくもに動いている今がいかに自分と何より仲間にとって危険な事か十分にわかっていた。だがあえて青山が言いよどんだことをはっきり口にして説得した。

 

 「わかった。やってみるよ。」

 

 信の説得に押される形で青山は戦うことを承知した。

 

 そして青山も覚悟を決めたのか、いつもの調子に戻る。

 

 「気を引くのは任せてくれよ! 僕はどんなに静かにしてても目立ってしまうからね☆」

 

 「ありがとう。俺はこれから背後にまわる。着いたら合図を送るからよろしく頼む。」

 

 信は青山にそう言いと岩山の後ろに回りこみ登っていく。

 

 岩山を慎重に上っていくと丁度ヴィランの真上に出ることができた信はいつでも大丈夫だと青山に合図を送った。

 

 

 

 

 

 

 

 八百万、耳郎、上鳴の3人は窮地に立たされていた。

 

 3人が黒霧のワープゲートで山岳ゾーンに飛ばされてきた時すでにヴィランに囲まれていたが3人力を合わせて何とかヴィランの攻撃をしのぎきり、八百万が機転を利かせ絶縁シートを作って自分と耳郎を保護して上鳴に帯電の個性を最大出力で使わせてヴィランを倒させた。

 

 しかし全員倒したと思いきや地下に潜っていたヴィランに個性を最大出力で使い脳の回路がショートしたかの様に呆けている上鳴を人質にとられた。

 

 「手ぇ上げな、個性は禁止だ。 使えばこいつを殺す。」

 

 ヴィランは上鳴の首に手をかざして八百万と耳郎を脅す。

 

 「上鳴さん!!」

 

 「やられた…!! 完全に油断してた……」

 

 油断していた八百万たちはヴィランの要求通りにするほかない。

 

 「同じ電気系として こいつを殺すのは忍びねぇが、まぁお前らがこいつ殺してぇってことなら仕方ねぇが殺したくないんならそこのお前、なんかいろんな物作り出せるんだろ、手錠作って自分たちの手足にはめな。」

 

 ヴィランは八百万に命令するが実行しようとはしない。業を煮やしたヴィランは上鳴の首に当てた手に力を入れ始めた。

 

 「……上鳴もだけどさ……」

 

 突然ヴィランの気を引くように耳郎が話し始める。

 

 「電気系の個性ってさ、生まれながらに勝ち組じゃん?」

 

 なぜ今そんな話をと不思議に思った八百万が顔を動かさず眼だけで耳郎の方を見ると彼女の耳についてるプラグを足のスピーカーへと伸ばそうとしていることに気づいた。

 

 八百万は耳郎に協力すべくヴィランの気を引くために耳郎に続き話かけた。

 

 「そうですわね。それにヒーロー以外でもいろんな仕事から引く手あまたではないですか。 それに」

 

 「黙れ!」

 

 ヴィランが八百万たちの話をさえぎる。

 

 「気づかれていないとでも思ったか? そんな子供騙しに引っ掛かる奴なんていねぇよ。 さっさと言う通りにしろ!!」

 

 ヴィランが八百万たちに服従をしいていると唐突に声がした。

 

 「だったらコレならどうだい☆」

 

 全員が声のした方を見るとそこには足を震えさせながら立っている西洋甲冑風のコスチュームに身を包んだ男、青山がヴィランに向けて彼の個性ネビルレーザーを放っていた。

 

 ヴィランが上鳴の首元に当てた手にネビルレーザーが命中するとヴィランが背にしていた岩山から信が音もなく飛び降り、その勢いのままヴィランの後頭部を警棒で殴りつけた。

 

 殴られたヴィランは何もする間もなく倒れ伏す。するとその音に驚き今度は皆、ヴィランがいたの方を振り返る。そこでは信が青山に向かってサムズアップしていた。

 

 「信さん!!」

 

 八百万が信の名を呼び彼のもとに駆け寄ると自然に青山と耳郎も彼の元へ集まった。

 

 信はウェイウェイと言いながら呆けて座っている上鳴に手を貸して起き上がらせる。

 

 「青山、完璧なタイミングだったよ。ありがとう。」

 

 「僕ならあれぐらいは当然だよ☆」

 

 信が感謝を伝えると青山は恥ずかしそうに応じた。

 

 次に信は八百万たちの無事を喜ぶとこれからの事を話し合う。

 

「みんな無事でよかった。これからなんだけど、百と耳郎さんと青山君で上鳴君をつれて身を隠して上鳴君が回復し次第学校に連絡を入れてほしい。俺はその間に他のゾーンに行ってクラスメイトと先生を探してみるから。」

 

「いけませんわ!! 単独行動するなんて危険すぎます。」

 

 八百万は信をただ純粋に心配してなのか、それとも彼女が信に感じている負い目の為か信の単独行動を止める。

 

 「危険なのはわかっているよ。 だけどさっきの君たちみたいにクラスの誰かが困っているかもしれない。 だから行かなきゃならない。」

 

 他のゾーンに行くことをやめるつもりのない信に譲歩したのか八百万は自分もついて行くと信に詰め寄る。

 

 「なら私も一緒に行きます。」

 

 「駄目だよ、百。 危険だ! 君は残ってくれ!」

 

 信は八百万を止めるが彼女はなおも食い下がり、一緒に行くことを頑なに主張した。

 

 「いいえ、これだけは譲れませんわ。」

 

 「一人じゃいくら何でも危なすぎだよ。 こっちは三人で十分だよ。」

 

 八百万の必死な様子に同情して、そして同じ年頃の少女同士、八百万の心の奥底にある何かに気づいて耳郎は助け船をだした。

 

 女子2人に詰め寄られて然しもの信も否とは言えず八百万と共に行くこととなった。

 

 

 

 

 

 

 

 耳郎たちと別れた後、信と八百万は他のゾーンへ行くために中央の広場に向かっていた。

 

 「信さん、怒っておられますか?」

 

 八百万がいつもと違いおずおずと聞く。 

 

 「怒ってないよ。そもそも怒るようなことじゃないだろ。」

 

 信が何の感情も乗せず平坦にそう答えると八百万は「私は心配なんです。私の所為で信さんが無理をしているのではないかと。」と信に言う。

 

 「そんなことないよ。 どうしてそう思うの?」

 

 信は八百万の発言に驚き思わず言葉の真意を問うた。

 

 すると八百万は意を決したのか滔々と語りだす。

 

 「先だって勇気君を助けるために穴に一人で飛び込んだ時から考えておりましたの、勇気君が怪獣の体内から出てきたとき信さんがどこにいらしたのか。」

 

 「あの時現れた巨人は信さんではないのですか? そして入学前の怪獣騒ぎで出た怪獣を何とかしたのも信さんなのでしょう?」

 

 八百万は質問している様な話し方だったがもはや彼女の中では確固たる事実として受け止めている様だった。

 

 「そうなのだとしたら、あのような無茶をさせたのは私が『信さんにしかできないことがあるならば、それをしなかったことを後悔するぐらいなら、私はやるべきだと思う』などと気軽に言ってしまったからなのでしょう。 あんなこと言わなければよかった。」

 

 「そんなことないよ。 俺は時々いろんなこと考えすぎて立ち止まってしまうけど、そんな俺の背中を百はいつも優しく押してくれる、そのおかげで俺は大事なものをなくさずに済んだ。 だから百が気に病む必要は一つもないんだよ。」

 

 自分がウルトラマンかどうかには触れなかったが信は微笑みながら八百万の思いを受け止めて自分の心の内をさらけ出した。

 

 「だから余計な事なんて思わず、これからもよろしくお願いします。」

 

 「はい。」

 

 八百万を気遣う様に優しく感謝する信に八百万にも少し笑顔が戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「話はここまでにしよう。ここからは今まで以上に慎重に行こう。」

 

 話をしている内に山岳ゾーンを抜けた信と八百万は中央広場がもう少しで見える位置まで来ていた。

 

 慎重に物陰に隠れて中央広場へと進む2人が目撃したのは死柄木、黒霧、脳無の3人のヴィランと瀕死の13号とイレイザーヘッド、そして今まさにヴィランに襲われようとしている緑谷、蛙吹、峰田だった。

 

 信はとっさに八百万に離れて援護してほしいと伝えてイレイザーヘッドと13号を助けに走った。

 

 (クソッ こんな見晴らしのいい場所じゃろくな作戦も立てられない。)

 

 信が駆けて行くのヴィランと緑谷達も気づいたようで緑谷以外全員信の方を向いた。

 

 ただ一人信の方に顔を向けなかった緑谷は今が好機と考えたのか果敢に脳無に向かって行った。

 

「SMASH!!!」

 

 緑谷の渾身の一撃が脳無の腹にクリーンヒットするが全く効いていないようで逆に脳無は緑谷の腕を掴みそのまま振り回し何度も地面に叩きつけた。

 

「やめぇろぉぉぉー」

 

 信は喉が裂けんばかりに脳無に向かって叫ぶが、脳無はそんな事はお構いなしに緑谷を痛めつける。そして緑谷を助けようと蛙吹が伸ばした舌もつかみ、振り回した上に峰田に投げつけた。蛙吹と峰田は互いに絡まりながら十数メートル転がってようやく止まる。

 

「緑谷を離せ!!」

 

 信が脳無の所までたどり着き、手にしていた警棒で脳無の頭を殴りつけるが全くダメージはない様子だった。

 

「と…うだ…くん にげて。」

 

 緑谷は地面に叩きつけられかなりのケガを負ったようだが意識はある様子で信の事を案じ逃げる様に促す。

 

 「まっていろ、緑谷。いま助ける。」

 

 信は緑谷の言葉に従わずに彼を助けようとしている。

 

 信はまず緑谷を離させようと緑谷の腕を掴んでいる脳無の手の指を狙い警棒を振り下ろす。

 

 だがそれも脳無にはまるでダメージを与えることはなかった。しかし脳無は頭はあまり良くないのか人質のはずの緑谷を信に猛スピードで投げつけた。

 

 体格がいい方ではない緑谷だったとはいえ人一人分の質量と投げられた時の速度がはやかったこともあり、受け止めた信は相当の衝撃をくらい緑谷と共に吹っ飛んだ。

 

 だがそのおかげで脳無と距離を取ることができたので八百万の援護を受けることができる様になった。

 

 「百!! 援護!!」

 

 八百万は信の要請対して即座に作り出していた大砲で援護射撃を行った。

 

 その援護のおかげで信は何とか緑谷を連れて八百万の所まで後退することができた。

 

 「緑谷さんは大丈夫なのですか?」

 

 ぼろぼろの緑谷を見て八百万は心配そうに状態を訪ねる。

 

 「酷い怪我だけど意識ははっきりしているみたいだ。」

 

 「信さん、この場は一旦撤退して再度作戦を立てて蛙吹さんたちを助けましょう。」

 

 八百万はこれ以上の戦闘行為は良い結果を生まないと判断して信に撤退を促す。

 

 「だめだ!! 今ここで撤退していたら蛙吹たちはともかく先生たちは確実に死ぬ。」

 

 「ですが攻撃しても効いている様子が全くないですし為す術がありませんわ。」

 

 「確かに今の俺ではどうしようもないのは分かっている。 だからウルトラマンに戻って戦う。だから大丈夫だ。 皆助ける。だから緑谷を看ていてやってくれ。」

 

 信はそう言い改めてヴィランたちの方へ歩みを進める。その姿はどこかいつもの信とは違い怒りをその身に滾らせているようだった。

 

 「お話は終わったかな? ちびっこヒーロー。」

 

 それまで黙っていた死柄木が信を馬鹿にする様に話しかける。

 

 「あぁ 待たせてしまったかヴィランども。」

 

 「かまわないさ。所詮オールマイトが来るまでの暇つぶしだ。」

 

 死柄木の言葉に信はますます怒りをつのらせる。

 

 「暇潰しだと、ふざけるな!!」

 

 「先生ぶっ殺されて、友達ボコられておこっちゃたかなぁ」

 

 どこまでも信を馬鹿にした態度の死柄木に信は惑わされぬように淡々と歩みを進める。

 

 「もちろん、お前らにも怒っている。しかしそれ以上に不甲斐無い自分への怒りで気が狂いそうだ。だからお前らに八つ当たりさせてもらうぞ、ヴィランども!!」

 

 信が静かに滾っていた怒りを爆発させ脳無へと駆け出した。脳無の野太い腕から放たれる拳が信に届こうとしたその時まばゆい光を放ち信はウルトラマントラストに戻った。

 

 その光はヴィランたちの目をくらませ一瞬の隙を作る。その一瞬でトラストは13号、イレイザーヘッド、蛙吹、峰田の四人を助け出し八百万と緑谷がいる場所まで戻った。

 

 「信さんなのですか?」

 

 八百万は確認せずにはいられなかったようでトラストに本当に信なのか聞いた。

 

 「あぁ 俺は信だ。」

 

 助けた四人を床に静かにおろしながらトラストは答えた。

 

 その答えに八百万は納得したようだが緑谷は大変に驚いている。

 

 トラストは緑谷と先ほど助けた4人に手をかざして温かな光を放つ。それはトラストのリライブ光線だ。その光を浴びた5人の傷が見る見る内に回復していった。

 

 「ヴィランたちは俺が倒す。緑谷達は気絶しているイレイザーヘッドと13号を守りながら少し休んでいてくれ。」

 

 トラストはそう言い残してまたヴィランへ向かって行く。

 

 トラストが緑谷達を助けたことに死柄木は激怒する。

 

 「たった数秒でこれまでの事が全部チャラか!! チート野郎が!! いけ脳無!!」

 

 せっかく痛めつけたイレイザーヘッドたちを奪われるだけでなくケガまで治療してしまったトラストに腹を立てた死柄木はがなり立てる様に脳無へと命令した。

 

 迫り来る脳無の腕を躱したトラストはそのまま十発以上の連打を打ち込む。

 

 しかし脳無は全く効いてない様子で逆に下から掬い上げる様に強烈な一撃をトラストの腹に打ち込む。

 

 たまらず腹を押さえトラストは数歩、後退る。

 

 「我々を先に倒そうとしても無駄ですよ。」

 

 黒霧がそう言うとゲートをトラストの頭上につなげる。

 

 ゲートから出た脳無はその勢いを保ったままトラストへとぶつかり押しつぶす。

 「グワッ!!」

 

 押しつぶされながらもトラストは諦めず脳無を跳ね除け立ち上がる。

 

(このまま格闘戦では分が悪いな。)

 

 跳ね除けられた脳無が再びトラストへ攻撃しようと走ってきたときトラストはこれまでの様に打撃で迎え撃つのではなく両腕を前方に向けてその腕の間から光線を放ち脳無を迎え撃った。

 

 その光線はウルトラマンジャックがステゴンに使ったストップ光線と同種のもので見事に脳無の動きを停止させた。

 

 その突然の脳無の活動停止に驚く死柄木と黒霧を拘束すべくトラストは動かなくなった脳無を飛び越えて腕を十字に組んで金縛り光線を死柄木に放つ。金縛り光線は死柄木に命中すると何重にも巻きつき体を拘束する。

 

 「なんだ!これは!」

 

 「死柄木!! いま助けます。」

 

 死柄木の拘束を解こうと黒霧は死柄木に近寄ろうとするが、トラストが腰だめに構えていた腕を前に伸ばし三日月状のスラッシュ光線を足下に打ち込んで足止めをする。

 

 トラストは黒霧が死柄木に向かう足を止めた一瞬を見計らい高く跳び上がり前方一回転一回ひねりを入れた飛び蹴りを死柄木に体に蹴り込んだ。

 

 死柄木はそのまま力が抜けて膝から崩れ落ちる様に倒れて気を失った。

 

 「死柄木!!」

 

 「残るはお前ひとりだ!! 諦めておとなしく掴まれ。」

 

 死柄木を呼び彼に駆け寄ろうとする黒霧にトラストは死柄木と黒霧の間に立ちふさがり降伏するように告げる。

 

 「どうやら勝ち目はないようですね。 ですが死柄木は連れて帰らせてもらいますよ。」

 

 黒霧は脳無と死柄木を倒され勝機が無いことを悟るも死柄木だけでも連れ帰ろうとトラストの降伏勧告を無視して死柄木のほうへと向かう。

 

 黒霧を止めるべくトラストはスラッシュ光線を放つ。しかしスラッシュ光線は黒霧の黒い霧を揺らすだけで通り抜けていった。

 

 「私の体は霧でできています。攻撃は効きませんよ。」

 

 黒霧の霧が死柄木に届こうと言う所でトラストはスラッシュ光線ではなく両手を黒霧へとかざして初代ウルトラマンも使ったウルトラサイコキネシスを使った。

 

 トラストの両手から出る螺旋状の念波は瞬く間に黒霧へと吸い込まれる。するとトラストが手上にかざすとその動きに連動しているように黒霧も浮き上がった。

 

 「なにっ!!」

 

 ウルトラサイコキネシスに驚いている黒霧に立ち直る隙を与えまいとトラストは即座に腕を振り下ろし、黒霧を地面に叩きつける。

 

 「これで最後だぁぁ!!」

 

 トラストはもう一度腕を高く振り上げ一気に振り下ろす。

 

 黒霧の体が高く浮き上がり先ほどよりもずっと早い速度で落下する。

 

 もう一度地面に叩きつけられては意識を保つ自信のなかった黒霧はやむなく死柄木の回収を諦めて自らが叩きつけられようとしている地面に黒い霧が集めてワープゲートを開く。

 

 ギリギリのところで開ききったゲートに黒霧は落とされるのに任せるままゲートへ入り、素早くゲートを閉じた。

 

 「しまった!!」

 

 トラストでもゲートを閉じられるとどこに行ったか分からず黒霧を捕まえる事が出来なかった。 

 

 あまりにも唐突な幕切れにトラストは気持ち悪いものを感じながらも気絶した死柄木と活動停止した脳無を抱えて八百万たちのもとに戻る。

 

 「おかえりなさい 無事なようでなによりですわ。」

 

 八百万がトラストの無事を喜ぶと「ありがとう。」とトラストは応じた。

 

 そこには先ほどまでの険しさはなく気持ち悪さが和らいだのか優し気な声だった。

 

 「百、何か拘束するための物を出してくれないか?」

 

 「わかりましたわ。」

 

 八百万に拘束具を作り出してもらい死柄木と脳無を拘束するとトラストは信へ変身する。

 

 「本当に東田君なんだね。」

 

 信がトラストから信へ変身する瞬間を見て改めて実感したのか緑谷は驚きの表情を浮かべていた。

 

 「聞きたい事、言いたい事、いろいろあると思うけどまた後にしてもらえるかな。」

 

 何か聞きたそうな緑谷達を遮り信は疲労の為に座り込む。

 

 助けられたということもあって緑谷達は座り込む信に何も聞くことができず黙り込む。だがその沈黙が続いたのは上鳴の連絡で雄英の先生たちが駆け付けるまでのわずか1分間だけだった。

 

 

  

 

 

 

 

 

 襲撃の後、先生たちが嘘の災害や事故ルームに着いて倒されたヴィランたちの確保や残党狩り、生徒の保護など事後処理にかかっていたころ、薄暗い窓のない古びたバーでドサッと何か重いものが落ちた時の様な音がした。

 

 その音の正体は黒霧がワープゲートで何とか逃げ延び床に倒れ込んだ時の物だった。

 

 黒霧が何とか痛む体を起こしバーカウンーの座席に座り身を預けていると突然カウンターの隅に置かれた古ぼけたブラウン管テレビがひとりでに点く。

 

 そのテレビに3人のシルエットを確認すると黒霧は居住まいを正し謝罪し始める。

 

 「申し訳ありません。オールマイトを倒せなかっただけではなく学生に倒され死柄木弔を連れて帰ることもままなりませんでした。」

 

 「弔は捕まったのか?」

 

 「恐らくは。」

 

 「まぁ いいさ。 捕らえられたと言うなら奪い返せばいいだけだ。それに捕まえられた事への怒りと憎しみが彼の憎悪をより大きく育ててくれる。」

 

 「私は今それが楽しみでたまらないよ。」

 

 装愉快そうに笑う画面の向こうの男に頼もしさと恐ろしさを感じ黒霧は頭を下げ続ける。

 

 

 

 雄英を覆う暗雲はまだ晴れる兆しはみえそうになかった。

 







 今回でUSJ回が終わりました。

 戦闘の連続で何書いてるのか分からなくなってきましたけど何とか書き上げました。

 次も頑張りますので感想&評価よろしくお願いします。

  


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。