僕のヒーローアカデミア PLUS ウルトラマン 作:リューイ
今回は信の過去のはなしです。
雄英へのヴィラン襲撃事件から数日後、警察の捜査と襲撃された生徒のカウンセリングも終わったころ、雄英高校では襲撃事件についての職員会議が開始されていた。
会議にはオールマイトの古くからの知人でもある警察の塚内直正も参加している。
「今回の襲撃犯は80人、その内主犯格の一人と思しき黒霧と呼ばれるヴィランが逃走中で残りの79人はすでに拘束しています。 もう一人の主犯格と思われる死柄木弔と脳無と呼ばれていたヴィランは特別拘置所に、残りの77人はどれも裏路地に潜んでいるような小物ばかりで何の情報も持っていなかったので通常の拘置所に収監しています。」
「主犯格2人の身元を確かめようと個性登録を探しましたが個性からはたどれませんでした。 同じく名前からも調べましたがこちらも見つけることができませんでした。」
「死柄木と脳無に関してはそれらと並行してDNA検査も実施しており、その結果については近日中にお持ちすることができると思います。」
「続きまして脳無と死柄木の事情聴取の結果なのですが死柄木はひどく錯乱しており、まともに会話が成立せず何も聞き出せませんでした。 脳無の方はもっとひどくて、話しかけても全く反応せず声を聴くこともかないませんでした。」
「ですので現在判明していることはあのヴィランたちの集団が自らをヴィラン連合と名乗ってる事と今回の襲撃がオールマイトを狙ったものだったということだけです。」
塚内の説明に先生の一人が「それじゃあ全く何も分からないのと変わりないじゃないか。」と悪態をつく。
塚内はその教師に申し訳なさそうに「現在も鋭意捜査中ですので新しい情報が入りしだいお知らせに参ります。」と謝罪した。
塚内の真摯な謝罪に悪態をついた教師もばつが悪いようでそっぽを向き、会議自体の雰囲気が悪くなりかけた時、さりげなく校長が話題を変えた。
「逃亡中のヴィランや彼らの計画については引き続き警察に動いてもらうとして生徒たちはどんな様子かな?」
校長の質問に塚内に変わりイレイザーヘッドが答える。
「生徒たちは全員のカウンセリングはすでに終わっています。 その結果を見る限りでは全員問題ないと判断してよいと思います。」
「それは良かった。今回生徒に大きな怪我がなかったことだけが救いだったね。」
「それじゃあ次はもうこのような事態を引き起こさないようにする対策と起こってしまった時の対応策について話し合おう。」
校長は生徒たちの無事を喜びこれからの事を話し合うことにした。その話し合いは皆精力的に意見を出し合い、議論して納得のいく物が出来るまで続いたのだった。
先生たちの会議があった日の翌日ようやく学校が始まった。
みんな久しぶりに会うクラスメイトと和気あいあいと襲撃事件などもう忘れてしまったかのように授業を受けている。
何事もなく授業も終わって行き、午後のホームルームの時間となりイレイザーヘッドが教室にやってきた。
「午後のホームルームを開始する。大した連絡事項はないが、一応職員会議で決まったことを伝えておく。今年も例年どおりに体育祭を開催することになった。」
イレイザーヘッドの体育祭が開催されるという言葉は一気にクラス全員をどよめかせた。
だが同時に襲撃があった後なのにと言う気持ちもあったのか耳郎が「ヴィランに侵入されたばっかなのに大丈夫なんですか?」と聞くとみんな一気に静かになりイレイザーヘッドの答えを待った。
「逆に開催することで雄英の危機管理体制が盤石だと示す。それに今年の警備は例年の5倍以上増やすことになっている。」
「そして何より雄英の体育祭は現役のヒーローたちがスカウト目的でお前らを見に来る。 お前らにとっても大事な自己アピールの場だ。ヴィランごときで中止していいイベントじゃねぇ。」
「連絡事項は以上だ。」
イレイザーヘッドの話が終わると委員長の飯田が号令をかけて挨拶してホームルームが終わる。
イレイザーヘッドが出て行くと再び教室は騒がしくなったが話題は完全に体育祭一色になっていた。
そんな中、信はこれから緑谷達に自分語りをしなくてはならず少し憂鬱な顔で俯いていた。
そうしている内に話さなくてはいけない緑谷が教室を出ていってしまったので、急ぎ後を追った。
信が緑谷に追いつくと丁度彼は麗日と飯田と話をしていた。何を話しているのかと耳を傾けると麗日が何のためにヒーローを目指しているのか語っていた。
その内容は麗日のヒーローを目指すのは「お金がほしいから」と言うことらしい。しかしながらそれは単に彼女の私欲ではなく両親に楽をさせてあげたいが為だという。
そんな麗日の優しい夢を聞き信も心が軽くなったようなで今までの憂鬱な表情は消え失せて緑谷達に元気に話しかける。
「少しいいかな? 話したいことがあるんだ。」
「この間のことだよね」
麗日と飯田は何のことかわからない様子だったが緑谷だけは信の個性の話だと察した。
「そうだよ。 怪獣騒動の時の巨人の話だ。」
信は緑谷の言葉を肯定して、他の2人にもわかる様に用件を言う。
「僕はかまわないよ。」と緑谷が言うと麗日と飯田もそれに続き了承する。
「ありがとう。 あと蛙吹さんと眼強さん、それに百も呼ぶつもりだから食堂ででも待っていてほしい。」
緑谷達に感謝すると信は八百万たちを呼びに行った。 そして緑谷達も信が八百万たちを呼びに行くのを見届けると食堂へ向かうのだった。
信が八百万たちを連れて食堂に着くと緑谷達が大勢で話すのにぴったりな角の長机の席をとって待っていた。
「おーい!! 東田君、こっちだ。」
入り口付近の信たちを見つけた飯田が手を振りながら大声で信の名を呼んだ。
信は少し気恥ずかしくなり少し速足で緑谷達の元へと向かった。
全員が席に着くと信は集まってくれたことへの感謝をのべて、静かに語りだす。
「集まってくれてありがとう。今日集まってもらったのは怪獣騒ぎの時の巨人の正体について話しておきたいと思ったからなんだ。」
一拍おいたあと信は「あの巨人は俺だったんだ。」とかたった。
ヴィラン襲撃事件の時、信がウルトラマンに変わった瞬間を見ている八百万たちはそれほど驚いた様子はないが逆に見ていない飯田たちは大変驚いた様子でまだ信が語った事実を呑み込めていないようだった。
「ちょっと待ってくれ! あの巨人が東田君だとすればあの怪獣が現れた時戦った事は問題じゃないか? 公共の場での個性の無許可の不正使用にあたるんじゃないか?」
生真面目でどこかずれてる飯田らしい質問にみんな『真っ先に聞く質問がそれか』と心の中で突っ込みを入れる中、信は苦笑しながらも真摯に答える。
「あれは結局警察との話し合いで不正使用には当たらないってことになったよ。 怪獣に対する個性使用を規制する法律がないから猛獣なんかに襲われて個性で身を守ったって扱いになるみたいだよ。」
「なるほど確かに自衛なら不正使用には当たらないな。」
飯田が納得すると今度は蛙吹が質問を投げかけてきた。
「私、思った事を何でも言っちゃうの、だから率直に聞くわ。」
「この間のヴィランが襲撃してきたとき、どうして緑谷ちゃんがあんなに痛めつけられるまで変身しなかったの? もっと早く変身していれば緑谷ちゃんが大怪我する前に助けられたんじゃないの?」
蛙吹の質問に信は自らの手をギュッと握りしめ目を伏せている。
「ちょっと待ってくれ蛙吹君、この前のヴィラン襲撃事件の時は誰も大きな怪我はなかったはずだぞ。」と蛙吹の問いに飯田が疑問を挟む。
「みんなの怪我は東田ちゃんが治してくれたのよ。 それに私は責めるつもりはないの。私だって緑谷ちゃんを助けられなかったしそれに私自身も助けられたから。ただ何か事情があるなら聞きたいと思ったのよ。」
信も聞かれる質問だとは思っていただがそれを説明するには信の苦い思い出をかたることになるので少しためらわれた。しかしいつまでも俯いているわけにもいかないと信は顔をあげ語り始める。
「それは俺が個性を使わずヒーローになりたいと思っているからギリギリまで使わなかったんだ。 すべては俺のエゴだ。 すまなかった。」
信は立ち上がり深々と頭を下げる。十秒ほど頭を下げると信は椅子に座り直して続きを語る。
「俺が個性を使わないヒーローを目指したのはある少年との出会いがきっかけなんだ。」
俺が最初にその少年と最初に出会ったのは随分昔、個性診断を受けるために母と病院を訪れた時だった。
その少年は最初待合室でオールマイトの人形で誰よりも騒がしく遊んでいて俺より先に名前を呼ばれて診察室に入っていった。
暫くすると「東田 信君、東田 信君」と看護師が俺の名も呼んだので、俺はその少年とは別の診察室に母と一緒に入っていった。
診察室に入ると医者に早速椅子に座るよう勧められ、言う通りにすると医者はカルテを見て早速俺に個性を使うように言ってきた。
俺は言われるがままウルトラマントラストへと変身すると医者は二三度頷き「もういいですよ。」と言い個性登録の書類に一定の姿への変身能力と書き込み母にわたした。
俺はトラストから信へと戻ると母が手を差し出すが俺は気恥ずかしさからその手を取ることはせず一人で先に診察室を出た。
俺の後すぐ母が診察室から出てくると丁度その時、俺より先に診察室に入っていたオールマイトの人形で遊んでいた少年が彼の母親らしき女性に抱きかかえられながら滝の様に涙をながして出てきたところだった。
だが俺はその時、あまり少年の事を気にかけてはいなかった。その少年がオールマイトの人形で遊んでいた少年だとわかったのも彼の流星マークのついた真赤なスニーカーが凄く目立っていたからに過ぎない。
その後俺は家族との食事会やら何やらで、すっかりその少年の事を忘れていたぐらいだ。
だが一年半ぐらいして俺はまたその少年と出会った。
俺は買い物帰りに偶然通った道の脇にあった空き地その少年が3人の少年と一緒にいる姿を目撃した。
俺が彼を個性診断の時に見た彼だと判断できたのはあの頃履いていた流星マークのついた赤いスニーカーのサイズ違いの物を履いていたからだ。
どうやら赤いスニーカーの少年と一緒にいるのは皆いじめっ子の様で少年をいたぶって楽しんでいた。
いじめっ子のリーダー格の少年はどうやら空気を打ち出す個性の様でその個性で何とも空気の塊を赤いスニーカーの少年へとぶつけていた。そして赤いスニーカーの少年は為すすべなく地面にうずくまりひたすらにそれに耐えるだけだった。
そんな光景を目にして俺はいてもたっても居られずに赤いスニーカーの少年といじめっ子たちの間に割って入る。
「やめろ。 いじめなんてカッコ悪い真似するんじゃない。」
「はぁ いじめじゃねぇし! その無個性のザコを俺らが鍛えてやってんだよ。訓練だ! 関係ねぇ奴は引っ込んでろ! それともてめぇも鍛えてほしいのか?」
いじめっ子は俺の言うことなど全く効かないで俺にも脅しをかけてくる始末だ。だが俺はヒーローになることをすでに決めておりこんな弱い物いじめは見過ごせなかった。
「関係ならある!! 俺はヒーローになる!! 弱きを守り強きをくじく、そんなヒーローに!! だから弱い者いじめを絶対に見過ごすことなんてできない!!」
俺がそういじめっ子たちに対して見得を切ると赤いスニーカーの少年はそれまで泣くのを我慢していたのか堰を切ったかの様に泣き出す。
「ったく うぜぇのが増えちまったぜ。 もう2人まとめてやっちまうぞ。」
いじめっ子のリーダーが他の二人に命令し先駆けて空気弾を放ってくる。
俺はとっさにウルトラマントラストの姿に変身すると腕を上下に開き半球状のバリアを作り空気弾をいじめっ子たちの足下に跳ね返した。
空気弾を跳ね返されたいじめっ子たちは「うわっ! 何すんだ!! あぶねぇだろが!!」と今まで自分たちがしていたことを棚に上げて俺を批難してくるものだから元の姿に戻って「訓練だろ。」と皮肉を言ってやった。
そうすると自分たちの不利を悟ったのかいじめっ子たちのリーダーと子分の2人はは舌打ちをして去っていった。
「もう大丈夫だ。 いじめっ子たちはどっかに行ってしまったよ。 立てるか?」
いじめっ子が去ったことを確認すると俺は赤いスニーカーの少年に手を貸す。そうすると少年は涙を流しながらも歯を食いしばり立ち上がった。
「ケガしてるみたいだし家まで送っていくよ。」
少年は何とか立ち上がったものの足を怪我したのか引きずっていたので俺は彼を家まで送ることにした。
少年に肩を貸して歩いていると彼の涙はもう止まっていたが俯いて何もしゃべらないので間が持たなくて俺は自己紹介して彼に名前を聞いた。
「俺の名前は東田信だ。困っている人や、弱者を助けるヒーローを目指しているんだ。
君の名前も聞いていい?」
「マサト」
彼は自分の名前は小声でだが答えてくれたがそれ以降は家への道順しか喋ってくれなくなった。
しばらくすると彼の家だという一軒家がみえてきてその表札には山川と書いてあった。
俺はその家の玄関までマサトを連れてくるとドアを開けようとするが鍵がかかっていたので玄関チャイムを鳴らした。
すると、とたとたと家の中からスリッパで走る音が聞こえてきた。やがてその音が大きくなり玄関ドアを挟んだ向こう側に来たとき鍵が開きドアが開いた。
ドアを開けてくれたのはマサトの母親だろう。彼女は顔を真っ青にしてマサトを心配している。当然だろう、息子が体中に痣を作り、足を引きずって帰れば心配しない親などいないだろう。
マサトの母は彼を抱えてすぐに家に入った。俺もぶしつけかとも思ったが事の顛末を話すべきだろう家にお邪魔しあけ放たれたままになっていたドアをしめた。
マサトの家の中に入り彼らを探すとすぐに見つけることができた。2人はリビングらしきところでマサトの怪我の治療をしていた。
マサトの母は何も言わず家に入ってきた俺に驚いたみたいだがすぐにマサトの治療を再開した。
「勝手に入ってすいませんでした。 何があったのか説明した方がいいと思ったので勝手ながら上がらせていただきました。」
彼女は見た目に反して大人びたおかしな子供だった俺にも臆さず治療を終えるとまずはマサトに事情を問う。
「どうしてこんなに怪我をしたの?」
マサトはその問いに答えないでずっと俯いている。そうするとマサトの母は俺の方に顔を向けてきたので俺はなるべく掻い摘んで事の顛末を語った。
「マサト君はいじめを受けている様なんです。 俺が空き地で彼を見かけた時は3人の少年たちに無個性だからという理由だけで個性により攻撃を加えられていました。」
俺がそこまで話すとマサトは感情が抑えられなくなったのか俯いたまま泣きながら心情を吐露した。
「無個性だからかな。無個性だからいつまでも弱いままなのかな。ぼく、何でそんな風に生まれてきちゃたんだろう。ちゃんと生まれてこれなくてごめんなさい。」
泣きじゃくるマサトを見て彼の母も堪えきれなくなったのかマサトを抱きしめて「ごめんねぇマサト、強い子に、普通の子に産んであげられなくて、お母さんが悪かったのよ。ごめんねぇ…」と何度も謝り泣いている。
そんな光景を見た俺は間違っていると感じた。個性のあるなしなんてマサトの所為ではないしましてやマサトの母親に責任があるわけじゃないのに。そんなことで子が親に、親が子に泣いて謝らなきゃいけない社会なんては絶対に間違ってると、俺は個性重視の今の社会へのやり場のない怒りを内に滾らせながらマサトの言葉を反芻していた。
そして俺はあることに気づいた。俺はマサトの体は守ったけれど心は傷つけたのかもしれない。マサトが泣いたのは俺がマサトを弱い者と決めつけ見下し、自分の力をひけらかしているだけだと感じたからなのだろう。そしてマサトがそう感じたということは俺の中にも少なからずそう言った気持ちがあったのかもと、そう感じた瞬間、後ろには誰もいなかったのになぜか後ろから引っ張られた感覚があって俺はそれに逆らわずにマサトの家を逃げ出した。
俺は走り続けた自らの邪心を振り払おうと。ずっと当てもなく走って日が暮れたころ、ようやく家に帰り、部屋へと戻った。 部屋は出かけた時のままでクローゼットも開けっ放しで姿見がみえた。その姿見越しに俺は自分と目が合った。俺はその姿がとても醜く見えて思わず思わず姿見を叩き壊してしまった。
鏡に映る自分の姿が醜く見えたのはきっと自分の心の醜い部分に気づいたから。俺はマサトの傷を本当の意味で抉ったのは自分だと気がついたんだ。
「そして俺はそれから何日もずっと考え続けて個性を使わないでヒーローになることを目指すことにしたんだ。強い個性を最も必要とされる職業であるヒーローに個性を使わずになれれば無個性の人を勇気づけられるんじゃないかと思った……」
信は話を止め静かに頭を振りさっきの言葉を否定した。
「……違うな。 個性を使わずにヒーローになって彼に希望を持ってもらうことで罪滅ぼしをしたかったのかもしれない。 そんなことしても何の解決にもなってないんだろうけど。 彼はあの後すぐに引っ越してしまって他に何もできなかったんだけどね。」
「どちらにしても俺がそうしたいから個性を使わなかった。 俺のエゴだ。緑谷達には怪我を負わせてしまったり、危険にさらしてしまったり、本当に申し訳ありませんでした。」
信はすべて語り終えるともう一度、深々と頭を下げた。
「お話はよく分かったわ。私も助けられた身だから文句なんてないけど、これからどうするかは聞きたいわ。」
蛙吹が信にこれからの事を聞くとみんな信に注目して彼の答えを待った。
「俺はこれからも個性を使わないでヒーロー目指そうと思っている。」
信の答えに蛙吹は納得するが眼強は苦言を呈する。
「ヒーローは自分の命は基より仲間や助けるべき一般市民の命もかかっているのに、それらをあえて危険にさらすのはどうかと思うわよ。」
「それは俺にもよくわかっている。だから個性を使わないでも危険に陥らせることがない様に努力していきたいと思っている。」
「それで個性を使わないでヒーローになったとして、ヒーローになってからやむなくでも一度でも個性を使えばきっとひどいバッシングを受けると思うけど、それもちゃんと考えているの?」
「それは仕方のないことだと思って受け入れる覚悟はしている。」
「そこまで考えてるんならもう何も言うことはないわ。」
信の覚悟を聞き眼強も納得し彼にあきれ混じりの笑顔を向ける。
そしてそれに続き飯田と麗日も「人気商売なヒーロー業ではついつい放置されがちなマイノリティーに目を向けている東田君の考えも大事なことだと理解できる。」「うちもそう思うよ!!」と理解を示してくれた。
そんな中、緑谷は信の話を聞いた後、何か考え込んでいる様でずっと俯いていた。そんな緑谷を気にかけて麗日が声をかける。
「どうかしたの? デク君。」
「えっ! いや、何でもないよ。 僕もいいと思うよ。」
突然声をかけられた緑谷は狼狽えながらもそう答えた。だが彼の中では何か解決してない問題がくすぶっているかの様に浮かない顔だった。
信の話が終わり、みんな別々に家路につく中、信と八百万はいつも通りに2人で帰っていた。
だがいつもとは違い八百万は信の一歩後ろをついて歩いていた。
「ごめんなさい。」
八百万は信の背中に語り掛ける様に謝った。
「何が?」
「個性を使うよう促したことですわ」
「この話前にもしなかったっけ。」と信は八百万にお道化て返すが彼女は真剣な様子は崩さない。
「この間とは違います。 以前は信さんがなぜ個性を使おうとしないか知らなかったから……」
信は歩みを止め、ゆっくりと振り返える。
「知っていたら、ああは言わなかった?」
「わかりません。 ですがああも簡単には言えなかったと思います。」
迷っている八百万に信は優しく諭すように語る。
「前にも言ったけど百には感謝してるんだよ。俺にとって個性を使わずにヒーローになるっていうのは大事なことだけど、その所為で誰かを傷つけてしまったら本末転倒だし、死なせでもしたらヒーローになる資格さえ失ったってきっと後悔が何倍にもなってた。」
「そうならなかったのはあの時、百が俺の背中を押してくれたから…… 後悔しても一歩踏み出す勇気をくれたからだ。」
「だからさ、元気出してくれ、もう落ち込んだりしないでほしい、百はいつだって俺に戦う勇気をくれる天使なんだからさ」と信は静かに八百万の右側に回り、そっと優しく肩を抱いて語り掛ける。
すると八百万は俯いていた顔をあげ「わかりましたわ。」と少し微笑む。
八百万の微笑む顔を見ることができた信はうれしくなり、ついついからかうようなことを言ってしまう。
「そうそう何時もみたいに元気に自信に満ち溢れてて、いつものように俺のケツをケッ飛ばすぐらいじゃないと張り合いがない。」
「私そんな事しませんわ!!」
信の下品なギャグに八百万は頬を少し赤らめ信の胸を軽く突き飛ばす。
すると信は数歩下がり「あれ、そうだったけ。」と大げさにおどけて見せる。
そうすると2人の間には自然に笑いが起こり、さきほどまでとまでの少し沈んだものとは打って変わり楽し気な雰囲気になった。
そうして2人の間にはもう蟠りがなくなり、いつものように2人並んで楽しそうに家路についた。
読んでいただいてありがとうございました。
今回は信の過去の話でしたが次に出そうと思っている怪獣の伏線でもあったのです。
露骨すぎて次に出る怪獣がもうわかってしまいましたでしょうか?
また頑張って書くので感想&評価、何卒よろしくお願いいたします。