彼が病院へ行き、娘とうたた寝をしている時に電話が鳴る。
『もしもし、こちら××病院の山田と申します。比企谷様のお宅でしょうか?』
「ええ、そうです。」
病院から、、、?一体何なのだろうか。
『八幡さんのことで少しお話したい事がありますので、病院に来ていただけますでしょうか?』
「え?話ですか。分かりました。」
胸騒ぎがする。嫌な予感しかしない。
しかしここで止まっているわけにも行かない。私は娘を連れて病院に向かった。
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受付に名前と呼び出されたと言う説明をすると、彼のところへ案内された。
「おう、雪乃。」
「ねぇ、どういう事かしら?」
「よく分からん。俺にもまだ何も。お連れ様がいらっしゃるまで、、、って言って教えてくれなかった。そういう決まりなのん?」
「分からないわ。大丈夫なの?」
「俺的には何もねぇな。まあ心配すんなよ。顔、怖ぇぞ。」
「.........」
「お待たせしました。それでは診断の結果が出ておりますので診察室までお願いします。」
「わかりました。」
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「えっとですね。簡単に説明しますと、八幡さんはガンです。」
「は?」
思わず声に出してしまった。
彼がガン?そんなはずはない。こんなに元気ではないか。
「先生、それは本当ですか?」
彼は落ち着いて聞いている様子だ。
なぜそんなに落ち着いていられるのか。
「ステージは?」
「ええ残念ながら本当です。さらにステージ4の。」
「治る見込みとかはありますか?」
「なんとも言えませんが、手術は転移がひどく行えません。抗がん剤治療というのもありますが、過酷なものになるかと。」
視界が掠れる。頭の中が真っ白になる。何も聞こえない。なにもきこえない。
彼がガン?ステージ4?そんなの嘘に決まっている。そんなはずない。やっと掴んだ幸せだ。神様はそんな酷いことするはずない。
「そうですか。少し考えます。ありがとうございました。」
「ええ、分かりました。少しお話がありますので、奥様は少し残って頂けますか?」
「.......はい。」
「おう、じゃあ雪乃頼むわ。」
そう言って彼は娘を連れて診察室から出ていった。
「...........」
「心中お察しします。しかし、詳しくお話をさせていただきます。」
「はい。」
混乱して真っ白な頭の中。しかし、かろうじて返事できた。
「まず、旦那さん肺に腫瘍があり、それが悪性腫瘍、、、いわゆるガンです。肺の中で転移が激しく、もう手遅れです。わずかですが希望にかけて抗がん剤治療を行うことも出来ますが、心身ともに厳しい治療になりますので、大変だと思います。」
「そんな......私達はやっと幸せになったんです、、、何とかなりませんか?」
震える声でそう聞いてみる。
「恐らくもう無理かと。もって2年と言ったところでしょうか、、、。」
「ッ.......2年!?そんな、まだ娘が小学生にもなってないじゃない、、、、」
「残念ですが、、。このことはご本人さんにはお話しますか?」
そんなことを私に聞くのか?神様は残酷だ。こういうことを知らない方が良いという意見もある。知らぬが仏というやつだ。しかし何も知らぬまま残されたわずかな時間を無駄に過ごすことも、彼にとっては残酷なのだろう。
なぜ彼なのか。なぜ今なのか。どうしてどうしてどうして。
「どうするのが、、、その、いいんでしょうか、、、。」
「なんとも言えません。ただ、残りの時間を無駄なく使うのならば、残された時間は把握しておいた方がいい気もします。」
「分かりました。本人には、、、伝えます。」
「では、その方向で。手が及ばず申し訳ありません。」
診察室から出るための数メートルが、ものすごく長く感じた。
ありがとうございました。
短いですね。
本格的に悲しいストーリーに入ります。
それではまた次回、お会いしましょう。