とある科学の氷葬地獄(インフェルノ)   作:水谷祐

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第四話 木山春生

 

 

 

「ごめん。流石にやり過ぎたわ……」

 

 最悪のタイミングで病院にたどり着いた月浦は、「ちょっとあんたねぇええええええええっ!」と叫ぶ御坂に電撃を落とされ、しばらく動くことが出来なかった。

 月浦の能力、氷葬地獄(インフェルノ)は水と風で氷を生成している。しかも今日は冷房が効いていなかったこともあり、彼は周囲の温度を能力で冷やすことで暑さをしのいでいた。つまり、感電したのである。

 

「別に怒ってないが、普通なら傷害罪だぞ」

 

 冷房の効いたファミレスで、御坂にジャンボフルーツパフェを所望しておきながらこの言葉である。どうやら彼は意外と根に持つ性格らしい。

 

「……ふむ。君の近くが涼しいのは能力だったのか」

 

「ええ。彼の能力は氷系統ですから」

 

 「ほぅ、珍しいな」と目を細める彼女は大脳生理学の専門家、木山春生。最近幻想御手(レベルアッパー)と言うものを使い、昏睡した学生たちを調べるためにやって来た学者だ。

 

「そうか……。さて、先ほどの話の続きだが同程度の露出でも何故水着は良くて下着はダメなのか――」

 

「「いや、そっちじゃなく」」

 

 仕方ない、とため息を吐いた御坂が幻想御手(レベルアッパー)について調べたことを話始める。ウェイトレスが飲み物を運び、グラスが汗をかき始めた頃、

 

「つまりネット上に幻想御手なるものがあり、ソレが昏睡した学生と関係があると君たちは考えているのだね?」

 

内容を簡潔にまとめて復唱した。

 

「はい。ただ実際に確認された存在でもなく合ったとしても、その情報を開示するわけにもいかないですの。ですから、現段階では公表は見送ることになりましたの」

 

「なるほど。噂の一人歩きを防ぐには妥当な判断だな。しかし何故私にその話を?」

 

「能力を向上させるということは脳に干渉するシステムに近い。そうなると専門家の意見が必要になるということだろう」

 

 「私のセリフを取らないで下さいの!」と怒る黒子をほって置いて、月浦は山盛りのパフェに挑む。学園都市に来てからというもの、月に一度は口にしていたものが今回は奢りで食べられる。

 彼自身、過去に『滅多にいない氷系能力者を是非研究したい』と様々な研究所から依頼を受けたこともあり、金には全く困っていない。それにも関わらず、従兄兼保護者からは使っても余るような生活費を送ってくる。それでも節約生活を送ってしまうのは彼の性と言ってもいい。

 

「ところで一つ気になったのだが……、そこにいる彼女たちは君たちの知り合いかね?」

 

大きな窓の外には顔を押しつけてにこっと笑う佐天と初春の姿。二人はそのままファミレスに入ると真っ直ぐこちらのテーブルに座ってきた。

 

「こちらの方が木山春生さんといって、大脳生理学を研究している方ですの」

 

「そんな方とどうして白井さんがお茶を? もしかして、白井さんの脳に何か問題でも?」

 

 笑顔で毒を吐く初春に、月浦はまた一つ女性の怖さを思い知った。

 

「実は幻想御手(レベルアッパー)の件について相談していましたの」

 

幻想御手(レベルアッパー)ですか? それなら……」

 

 ポケットを漁り、携帯を取り出した佐天。彼女は都市伝説やその手のサイトをよく見ると聞いている。何らかの情報を得たのかもしれない。しかし彼女は、

 

「黒子がいうには、幻想御手(レベルアッパー)の所有者を保護するんだって」

 

御坂の一言に固まった。

 

「まだ調査中ですので、ハッキリしたことは言えませんが、使用者に副作用が出る可能性がありますの。それに、容易に犯罪に走る傾向が見受けられまして……」

 

「どうかしました?佐天さん」

 

「あ、いや、別に…」

 

明らかに焦った佐天がアイスコーヒーのグラスを倒し、飲み物が木山の脚に掛かった。じわりと広がる染みを見てフキンを取る佐天。

 

「あっ、スミマセンっ!」

 

「ああ……、気にしなくていい。かかったのはストッキングだけだから、脱いでしまえば…」

 

 月浦はつい一時間前ほどの事を思いだし、咄嗟に視界を覆うことに成功した。彼女たちの焦った声が聞こえるが、この際全てスルーさせてもらう。

 

「だ、か、ら! 人前で脱いじゃダメだと言ってますでしょうが!」

 

「しかし、起伏に乏しい私の身体を見て、劣情を催す男性がいるとは……」

 

「趣味趣向は人それぞれですの! それに殿方じゃなくても、歪んだ情欲を抱く同性もいますのよ! ほら、月浦さんも目を塞いでないでタオルケットを貸して下さいな!」

 

 

 

 

 

 

「今日はお忙しい中ありがとうございました。」

 

「いやいや、こちらこそ色々迷惑をかけて済まなかった。いろいろ楽しかったよ、教鞭をふるっていた頃を思い出してね」

 

「教師をなさっていたんですか?」

 

「昔……、ね」

 

 御坂の問いに嬉しそうに笑って、彼女は帰って行った。

 

 

 

 

 

 

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