七月二十四日。
月浦は突然入院した友人、上条当麻の知り合い、
「うー、ごめんなさい」
「いや、怒ってないのだが……。むしろ、それだけ健康だということだろう? だが、今度からは少し加減してくれ」
「ごめんなさい……」
うー、と唸っている彼女を甘やかすわけにはいかない。何故ならば、一週間分の食事が入っているはずの冷蔵庫のほとんどをたった二日で食い尽くされた。これは、あの暑い中買い出しに出なければいけないということである。……憂鬱な気分になってきた。たまに差し入れしてやらないと上条家の家計は潰れるだろう、そう思った。
「でも食べないとお腹が空くかも……」
上目遣いで見られても敢えて無視する。ここで甘やかしたら後々に響くと彼の頭では警鐘が鳴っていた。
「腹八分目な、腹八分目」
「それってどれくらいなの?」
「お腹一杯じゃなく、少し控える感じか。……まぁ、それくらいしたら上条もたまには良いもの食べさせてくれるかもな」
済まない上条。きっと
すると、机の上に置きっぱなしになっていた携帯が突然震え始めた。動作の感覚からして、電話だろう。表示されていた名前は白井黒子。嫌な予感しかしない。
「もしも『お願いします! お姉様と初春を助けて下さいの!』おい、本題が抜けてるぞ」
『ですから、
調査する側であった木山が首謀者であれば、確かに犯人が見つかるはずがない。ファミレスでは全て分かった上で話を聞いていたのだろうか。しかし、彼女はあれを楽しんでいる節があった。月浦の主観としても彼女は悪い人に見えなかった。
「何?」
『木山春生が今、初春を人質に取っていますの。
「……なるほど。場所は?」
『今転送しますわ』
送付された情報にざっと目を通す。なるほど、今から行けば充分間に合う距離だ。ならばと、
「
「ホント!?」
「ああ。約束する」
万が一、外に出るときは鍵を閉めるように言ってから月浦は家を後にした。
タクシーを使って途中まで駆けつけたまでは良いものの、現場に居た
アンチスキルはほぼ壊滅状態。途中で途切れてしまった高速道路。そして胎児のような姿をした化物。
月浦が様子を見に向かおうとした時、
「これは酷いな……」
白井が連日の仕事で生傷を増やしていることを聞いたからこそ、月浦は前線へ出てきたのだがここまでなると怪しくなってくる。だが一つ言えることがあると言えば、
「全く、最近の化け物は常識がないのか」
彼の逆鱗に触れたということである。
御坂と初春は木山と一緒に居た。化け物を倒すにはどうしたら良いか、それについて話し合っていたらしい。彼女も化け物の攻撃の余波を受けたのか、地面に落ちた白衣は土を被り、全身的に衣服がボロボロだ。
「君は……」
「どうも。白井から連絡を受けて来てみれば、大変なことになってるみたいだな」
「あの怪物の事について知りたいのだな?」
「じゃないと止めようがない」
「それを私に聞くか」
月浦の問いに彼女は自嘲気味に笑って言い、そして彼女は仮説を話し始めた。
「AIM拡散力場の?」
「恐らく、集合体だろう。そうだな、仮に
苦しそうにもがきながら肥大化していく
「何か、可哀そう……」
「どうすればアレを止めることが出来るの?」
「それを私に聞くのかい? 今の私が何を言っても、君たちは信用……」
初春が木山の目の前に手を出して見せ、
「私の手錠、木山先生が外してくれたんですよね?」
「ただの気まぐれさ。まさかそんなことで私を信用するとは……」
「それに、子どもたちを助けるのに、木山先生がウソつくはずありません。信じます!」
真っすぐ顔を見て笑う初春。その素直な答えを聞いて、ふっと笑いが漏れたのを見て、「笑わないで下さいよ」とぽかぽかと叩く初春を敢えてそのままにしておく。
月浦は木山の詳しい事情を何も知らない。でも感じるものはあった。月浦に守りたいものがあるように、彼女にも譲れない何かがある。
「全く……
「
「試してみる価値はあるはずだ」
「アイツは私とコイツがなんとかするから、初春さんは、その間にそれを持って
「分かりました」
「了解した」
頷いて階段へと走り出した初春を横目に、月浦と御坂も銃を撃ち続けている
「本当に、根拠もなく人を信用する人間が多くて困る」
一人取り残された木山は何処か嬉しそうに呟いた。