第一話 妹との出会い
小学校三年生に上がって数か月の弟分が
フィンランドで暮らしていた時からの弟分に当たる海斗は一見人懐っこい性格をしているが、興味がない人には淡白な所がある。その海斗が自分からなりたいと言ったのなら止める気はない。そう固法に言ったら、「あんた、熱あるんじゃないの?」と言われた。……解せぬ。
『あのねぇ、兄ちゃん。最近色んな所にマネーカードが落ちてるって聞いたんだにゃー。
「マネーカードとはまた酔狂な奴も居るんだな……」
紙幣をばらまくことに関しては罪に問われる学園都市だが、マネーカードの件はまだ法整備が整っていない。海斗の言う通り、気になりはする。学園都市に金持ちは数多く居るが、そんな酔狂な事をして回る奴などいないだろう。誰がどんな目的でマネーカードをばらまいているのか。
『にゃー? 兄ちゃんじゃないんだー。てっきり兄ちゃんかと思ったんだなー』
「……海斗?」
『ごめんなんだにゃー』
「まぁ、人間観察の為にやりそうとお前が思うのは分かる。だが、俺は金の無駄遣いはしない」
『だよねぇ。兄ちゃんって無駄遣い好きじゃないし。まぁ、俺も探してみるにゃー』
そう言って電話を切る海斗に溜め息をついてしまった俺は間違っていない。
海斗の能力はレベル3の
遠く離れた地点を
しかしこの能力、レベル4に上がった時の予想データを見る限り海斗はかなり苦労する。
しかし、海斗は自分で飛べないなら道具を使えば良いと言う考え方をする。その内、何処のアクション映画だと言うようなワイヤーアクションを身に付けてくるに違いない。そう思うと頭が痛くなる月浦だった。
朝七時。
御坂美月は頭に響く蝉の声で目が覚めた。
壁に掛かったままの白いシャツとライトイエローのニットベスト、紺の
夏休みであるにも関わらず、美月が珍しく早起きした理由は別の学校へ行った友人からのお誘いがあったからだ。美月にとって彼は、レベル5だろうと分け隔てなく接してくれる数少ない人間だった。
「でもマネーカードを見つけて欲しいって何でだろう……」
友人の頼みが変わっているのは何時もの事だが、今回のものは度を越していると思った。
美月の能力で周囲のマネーカードの情報を集め、先回りして手に入れると言う作戦は上手くいった。その成果はマネーカードを探し始めて三時間で十五枚にも上っていた。万が一狙われることがあっても、二人はレベル5。簡単に蹴散らすことが出来る。
「暑いねぇ、零哉……」
カーキ色の上着をパタパタさせながら言う美月は本当に暑そうだった。対する月浦も首にクールネックと呼ばれるスカーフを付けている。能力上、水分さえあれば空気を冷やすことが出来る彼も実は暑さには弱かった。
「暑い。もう溶けそうだ」
「大丈夫、じゃないよねぇ。アイスでもって……、美琴?」
美月が指さす先に居たのは、常盤台中学の制服を身に付けた茶髪の中学生。彼の妹であり、常盤台の電撃姫、
妙なことに彼女は一言も話さない。普段であれば「月浦じゃない!」や「この愚兄!」などと言ってくるはずなのにじっと見つめてくるだけ。
「え、えーと、どうしたの、美琴。何時もの挨拶は?」
「意味が分かりません。むしろお兄様は何がおっしゃりたいのですか、とミサカは顔をしかめてみます」
……全くしかめてないんだが。
「れ、零哉! この子美琴じゃないよ! 美琴がお、お兄様なんて!?」
「お、落ち着け、美月。お前が冷静に聞けば声のトーンが違うことぐらい分かるだろう」
シスコン前回の美月を止め、冷静になることを促す。
実をいうと、月浦も混乱していた。御坂らしくないことから、彼女は恐らくクローン。現在、学園都市でも世界でも人間のクローンを作ることは禁止されている。それなのに彼女が居る。どう考えても、嫌な考えしか浮かばない。
「あ、え、うん、そうだった。そう言えば君。美琴と声が違うね? 俺の記憶じゃ、妹なんか居なかったんだけど……」
「そうですよ。私は御坂美琴お姉さまのクローンです、とミサカは銀髪の貴方を見て答えます」
月浦海斗の能力は