復讐者と共に往く未来   作:センゾー

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英霊と人




彼の者は紛れもなく王であり、そして

「君の覚悟を見せてやれ。我が息子、ソロモン。いや、人間、ロマニ・アーキマン」

 

 あの人は涙を流す立香ちゃんを引き止めながら、いつものような何を考えているかわからない笑顔で僕の前に立つゲーティアを指差した。

 きっとその笑顔はいつも通りにダビデという人物だった。僕の知る彼だった。だから、ずっと考えていた事を確信した。この人は全てを察していながら、『人』の覚悟を認めてくれていた。『ロマニ・アーキマン』の成す事を見守ってくれていた。最初から理解して、この笑みを僕に向けていた。

 

 カルデアではクズと称される彼は、僕の父は、僕を理解してくれていた。

 

 僕はその笑顔に背中を押されるように前を向き、ゲーティアと向き合った。

 

「わかったよ。僕はやる。きっとやる。だから、見ていて欲しい、父上––––––いや、父さん」

「あぁ、見届けるさ。君ならやれる。この娘に希望を繋ぐことができるとも」

 

 覚悟はできている。少しは怖かったけど、その後押しで僕はなんとかやり遂げられそうだ。いや、きっとやり遂げられる。

 さぁ、終わりにしよう。

 

「––––––––––––ゲーティア、お前に最後の魔術を教えよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誕生の時きたれり、其は全てを修めるもの」

 

 自らの体から生まれた獣を前にして、彼は最後の詠唱を始める。僕の瞳に映るその背中は、普段の彼が見せていた頼りなさを少しも感じさせず、希望の未来が訪れるという確信を僕にもたらした。それは、決意の強さだった。

 

「戴冠の時きたれり、其は全てを始めるもの」

 

 その心は『人』のままに、遥か高みへと辿り着いた。『人』となる前に人類史の終焉を見てしまったが為に、楽しむという事に費やされなかった人生。労働に費やされたその生の中で、『王』であった彼は論ずるまでもないほどに『人』として成長していた。それは、人の強さだった。

 

「そして––––––––訣別の時きたれり、其は世界を手放すもの」

 

 僕はその終わりを見届けなければならない。彼を『王』とした僕だからこそ、『人』としての終わりを知らなければならない。それが無責任な僕にできる最後の行いだ。生前の私の行いにも、きっと問題はあった。だが、もうやり直す事はできない。それは、死して亡霊となった英霊の弱さだった。

 僕は真っ直ぐに彼の姿を見つめ、涙を流しているマスター、立香に前を見るよう促す。

 君にはあの子の最後を見ていて欲しい。『ロマニ・アーキマン』と共に人理修復に王手をかけた君には、あの子の決意を見ていて欲しい。

 

 

「アルス・ノヴァ––––––––––」

 

 

 彼は光に包まれる。

 

「さらば、ソロモン。さようなら、ロマニ・アーキマン」

 

 そして、彼はその存在と共に消滅を迎えた。自身の消滅を以ってゲーティアの不死性を打ち破り、神代の終焉を語って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダビデ、ごめんね」

「どうして君が謝る必要がある。大丈夫だよ、僕は」

「......全てを、知っていたから?」

「どうだろう。わからないな。ところであれはやはり僕達を殺そうとしているみたいだけど、どうする?」

「言うまでもないでしょう?」

 

 彼女は涙に瞼を腫らしながらも、その瞳には決意を宿していた。彼と同じ色の決意を。

 僕は「うん、うん」と呟きながら立ち上がった。

 ゲーティアは明確な殺意を持って僕の前に立ちふさがる。強大な力、不死性を失おうともその力は獣、ビーストと呼ばれるには十分なものだった。

 だけど、僕はその前の立つ。彼がやり遂げた事を無駄にしない為に、彼が守ろうとしたものを守る為に。

 

「今の君が改心する事は無さそうだ」

 

 ゲーティアを見て僕は呟く。それを聞いて、人類最後のマスターはその顔に凛々しさを湛えて、立ち上がる。

 

「君ならやれるよね、ダビデ」

 

 

 

「あぁ、やれるとも。これに勝つ程度には僕はやるよ、かなりやる」

 

 

 

 私の瞳に映る彼の者は紛れもなく王であり、そして疑うまでもなく親だった。




親と子
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