間を開けてしまいました事、申し訳ありません。
7.歓喜と新たな役目
――ヤマト出撃から10日後――
新横須賀軍基地の宇宙艦バースにぽつんと突撃駆逐艦が繋がれ、その周囲を数十人と車両が行き来している。
その駆逐艦――『カミカゼ』――は、現時点で国連宇宙軍が動かし得る極少数の宇宙艦の1隻だった。
前年の戦闘で被った損傷の修復が済み、新艦長の嶋津冴子以下、新たな乗組員による最初の任務は月面基地への補給任務で、それは成功したのだが、第2次補給任務の前に、ガミラスの攻撃と、極秘で建造と準備が進められていた超弩級宇宙戦艦『ヤマト』の出撃が行われたため『カミカゼ』の出撃は延期され、再度整備と補給を受けていた。
その『カミカゼ』の狭い艦橋――。
「艦長、管区本部より緊急報です!」
「「「!!!!????」」」
通信長の報告に、艦橋に詰めていた艦長以下の表情が引き締まった。
というもの、『ヤマト』が出撃してからこの方、“緊急報”は全て『ヤマト』が関わったもので、かつ人類史上初の物事ばかりだったから。
例えば
①人類初の超光速航行を実施。
②艦首波動砲の試射を兼ねて波動砲を浮遊大陸上のガミラス基地に向けて撃ったら、基地どころか浮遊大陸、それもオーストラリア大陸大のそれまで破壊してしまった。
この一報は、軍の幹部たちは皆頭を抱えたという。
そして極めつけが、冥王星本星にあるガミラス軍基地攻略――実態は殲滅――作戦の実施だった。
国連軍本部サイドは、『ヤマト』に冥王星基地攻略は命じていなかった。
『ヤマト』の任務はイスカンダル星に赴き、『放射能除去システム』本体と稼働・メンテナンス技術を受領・習熟し、1年以内に持ち帰る事で、戦闘はそれを妨げる者を排除するための必要最小限に限ると、本部・『ヤマト』艦長ともに同意していた。
しかし『ヤマト』艦長の沖田十三は、このまま遊星爆弾攻撃が続けば、地下都市における放射能の侵食が予想以上に進み、人種単位の絶滅(部族単位の絶滅は発生していた)や、再びガミラスの艦隊規模戦力による地球への直接攻撃が行われる事を危惧し、ガミラスの太陽系攻略拠点たる冥王星基地を叩き、少なくとも遊星爆弾攻撃は停止させなければならないと判断。その旨を連絡してきた。
これには賛否ともに強く、あちこちで激しい議論になった。
さらに輪をかけたのが、作戦開始後、『ヤマト』からの連絡が30時間以上絶えた事だった。
国連本部や各国政府は、原則として『ヤマト』の動向を公開していたが、冥王星に対する作戦については全く触れなかった。
成功すればいいが、失敗し、かつ『ヤマト』が失われれば、それは
だからこそ、この緊急報告は、冥王星と『ヤマト』に関する事以外にあり得ないと、その場にいた者は解釈した。
だから、『カミカゼ』艦長・嶋津冴子の指示は簡潔だった。
「――読め」
「はいっ!」
通信長は立ち上がり、深呼吸すると、プリントアウトした紙を見ながら読み上げた。
「日本時間0725、『ヤマト』は冥王星のガミラス基地の殲滅に成功しましたっ!!」
“うおおおおおっ!!”
瞬間、艦橋が野太い声でドッと沸いた。
本部から送られてきた画像・動画データも開封され、モニターに映し出される。
そこには、崩壊し、津波に飲み込まれていくガミラス基地や、『ヤマト』の砲撃で爆沈していくデストロイヤー艦があった。
「艦長、他のクルーにも知らせていいですか!?」
「ああ」
副長・大村耕作の問いに嶋津は頷き、駆け出していく大村の背に被せるように言う。
「外の作業員にも伝えてやれ。どのみちわかる事だからな!」
「はいっ!!!」
果たせるかな、数分の後に『カミカゼ』とその周囲で歓声や万歳が何度も響いた。
(――さてと、忙しくなるな)
その声を耳にしながら、嶋津は次に起きるであろう事を予想した。
冥王星基地の壊滅で、太陽系内におけるガミラスの活動は一時的かも知れないが、かなり鈍化するだろう。
国連軍としてもこの機を逃す事はすまい。
これまでは月や水星・金星にある基地との連絡を細々と行ってきたが、今後は地球の外側の惑星圏へのルートは確保しなければならない。
特に火星には、技術士官の大山敏郎が言うところの“宝”があるという。
“宝”とは、波動機関等のデータを携えて地球に来る途中、力尽きて不時着大破したイスカンダルの宇宙船だ。
データの提供主――『スターシャ』というイスカンダル人女性(?)――の言うとおりならば、件の宇宙船は『カミカゼ』とさほど変わらぬサイズで大マゼラン銀河から天の川銀河までの約15万光年を、地球時間で半年以内で航行できる能力を有する、まさに異次元の船だ。
そして我々は、設計データをもとに波動機関を造って実際に動かしたが、できればもっと造って艦船の動力や発電用等に使いたい。
火星に落ちたあの船には、我々が造ったものよりも小型かつ精巧な波動機関が搭載されているはずだ。
それを解析できれば、我々もより小型の波動機関を開発できるはずだ。
大山はそう力説していた。
嶋津でなくとも、宇宙艦乗りとしては波動機関の小型化・量産化は望むところだ。
実現すれば、地球の艦もガミラス艦相手にだいぶましな戦いができるし、電力事情も今よりは改善し、市民生活も少しは良くなるだろう。
嶋津の脳裏には、自分の官舎に同居してもらっている亡き幼馴染みの母親と末の妹の顔が浮かんでいた。
いずれにせよ、国連宇宙軍が活動を再開するのならば、
果たせるかな。再び通信長から声がかかった。
「艦長、土方司令のお呼びです。3時間以内に第2艦隊臨時司令部に出頭せよとの事です」