かんぴょう戦記 ~地球防衛艦隊2200~   作:EF12 1

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また間を開けてしまいました。申し訳ございません。

特設輸送艦『オーテアロア』の名は、1970年1月に房総半島野島崎沖で発生した『かりふぉるにあ丸遭難事故』の際、二次遭難の危険を冒して乗組員の救出活動にあたってくれた、ニュージーランド船籍の同名の貨物船からとりました。



15.激突!残党艦 VS 再生艦

土星圏、フェーべ軌道付近、国連宇宙軍·第2艦隊特務第11戦隊臨時旗艦『オーテアロア』

 

「········」

 

本来民間船籍である特設艦船は戦時任官した船員が主体になって動かしているが、今次作戦で臨時旗艦に指名された『オーテアロア』には、作戦を指揮する第2艦隊司令の土方 竜と参謀、増設されたレーダーを扱う人員ら15名が加わっており、ブリッジは手狭になっていた。

 

「········」

 

土方は、先ほどからブリッジで腕を組んだまま立っている。

土方自ら指揮する、巡洋艦と駆逐艦からなる第11戦隊(TF11)と特設輸送艦『オーテアロア』『キヨカワマル』からなる《仮称·ミッ○ーマウス船団》は既に土星圏に進入し、ガミラス残存艦艇のお出迎え(来襲)に備えていた。

 

『ヤマト』による冥王星基地攻略と駐留ガミラス艦隊殲滅で、遊星爆弾等による地球への攻撃は止まり、太陽系内でのガミラスは息を潜めたが、国連軍は今なお数隻ないし10隻程度のガミラス艦が外惑星圏(土星圏以遠)で活動していると予想していた。

このため、ガミラスが新たな侵略部隊を派遣してくる前に戦力を再建するべく、波動機関の製造に必要不可欠なコスモナイトの採掘と還送を目的とした特務船団を土星圏に派遣。

その作戦名は密かに(仮)ミッキーマウ○作戦とされたが、著作権への懸念が拭い切れないことから、『ガンバ』等、複数の名が予備として挙がっていた。

果たせるかな──。

 

 

 ──日本、国連宇宙軍極東管区司令部──

 

「あの、参謀長····」

「何だ?」

 

若い女性部員が、極東管区参謀長·芹沢虎鉄のデスクの前に立った。

本来なら、彼女の上官たる広報部長が来るところだが、その部長は過労でダウン。

他の者も手が離せる状態ではなかったため、本作戦の名称『ミ○キーマウス』を提案した本人が貧乏くじを引いたのだ。

その表情には、明らかに落胆の二文字が浮かんでいる。

 

「申し訳ありません、先方の態度は変わりませんでした」

「····けんもほろろか?」

「はい····」

 

芹沢はふんと鼻を鳴らすと、引き出しから封筒を取り出し、女性部員に手渡しながら告げた。

 

「····あの連中とこれ以上の交渉は時間のムダだ。こちらの案でいく。私の方で著作権者とは話をつけてあるから問題はない。(藤堂)長官には私が話しておくから、これで進めるように」

「········は?」

 

怒鳴り付けられるどころか、著作権すら既にクリアしたという新案を、そういう事柄からは縁遠いと思われている芹沢が用意していたという予想外の事態に、女性部員は固まる。

が、しかし、

 

「何を呆けている!? 直ちに進めろ!」

「は、はい!」

 

参謀長の叱声に我に帰り、女性部員は文字通り広報部にすっ飛んでいった。

芹沢が面白くもなさそうな表情のまま、再びふんと鼻を鳴らした時だ。

 

「『オーテアロア』より入電!《敵艦見ユ》!!」

 

通信オペレーターの声が響き、司令部の空気は極限まで張り詰めた。

 

 

  ──『オーテアロア』ブリッジ──

 

元が商船である『オーテアロア』に軍用の高性能レーダー·センサーや解析·通信用機器を半ば無理矢理載せたため、ブリッジは手狭になっていた。

さらにそれらの機器をフルスペックで稼働させる電力を得るため、船倉の一部を仕切って発電専用補機まで載せていた。

その手狭になったブリッジは、敵発見の報にまさに戦場と化している。

 

「敵艦····軽巡洋艦1、駆逐艦2。速力27宇宙ノット。こちらの有効射程まであと350秒です!」

「TF11に通達しろ。『予定の接敵機動を続行。別命あるまで第3戦速を厳守』とな」

「了解しました」

 

観測員の報告を受け、土方はTF11各艦の手綱を締め直す。

ここで言う“第3戦速”は従来の最大戦速にあたる。

今ここにいる巡洋艦·駆逐艦は全て波動推進化されているため、最大速度はさほど変わらないが、そこまでの加速力と機動力は大幅に向上していた。

それをガミラス側にギリギリまで悟らせないために、あえて従来の機動数値でガミラス艦に相対しつつあった。

 

(····それにしても、レーダー妨害なしに中途半端な速度とは、相変わらずの七面鳥(ターキー)扱いだな。あるいは機関不調なのか?)

 

敵艦が3隻なのが、こちらを侮っているのか、今動かせる精一杯の数なのかはわからないが、レーダー妨害もせず、少なくとも35宇宙ノットは出せるはずなのに、27宇宙ノットしか出していないのは解せない。

単に侮られているのか、基地壊滅で早くも機関不調になったのか····?

とはいえ、あの3隻にはこちらを壊滅させられるだけの戦力がある。

まるきり油断していると判断するのは早計だ。

 

「あと20秒で敵の有効射程に入ります!」

「敵の別動隊は確認できるか?」

 

観測員の報告に、土方は最後の確認を行う。

 

「反応ありません!」

「うむ」

 

土方は頷き、簡潔に下令した。

 

「全艦、突撃せよ!」

 

 

 

      ──『カミカゼ』──

 

「最大戦速、敵3番艦を()るぞ!」

「「「「了解っ!!」」」」

 

嶋津の号令に、ブリッジが沸く。

1隻の巡洋艦と6隻の駆逐艦は、旗艦『オーテアロア』から指示された目標(ガミラス艦)に向け、波動機関を全開にして突進した。

敵駆逐艦2隻にはこちらの駆逐艦2隻ずつが、軽巡洋艦には巡洋艦『スラヴァ』と駆逐艦2隻であたり、敵を第一撃で一掃するのが作戦の肝で、敵3番艦には『カミカゼ』と『J·G·エバーツ』があたる。

 

戦艦『フソウ』が旗艦であれば、かなり統制された攻撃管制ができたのだが、今回はこちらも少数であり、そこまでの統制は必要なかった。

何より、各艦の乗組員は皆、何度も死神の魔手を振り払ってきた猛者揃い。

さらに改めて“鬼竜”こと土方が課した猛訓練で、練度は最高に近い。

7隻の地球艦は、飢えた猛禽のごとく、思い思いの航跡を引きながら、3隻のガミラス艦に迫った。

 

当然、ガミラス艦も阻止砲火を放つ。

しかし、既存の地球艦の性能データを元に砲撃しているため、そのエネルギービームは地球艦のかなり後方の空間を空しく切り裂き、2射目、3射目も命中どころか至近弾にすらならない。

 

首尾は上々。敵が照準を補正する前に雷撃すればこちらの勝ちだ。

 

「(J·G·)エバーツは生きてるか!」

「やや先行して並走しています」

「そりゃ重畳。····僚艦はどうだ!?」

「全艦健在。損傷なし!」

「よし!」

 

嶋津は頷き、この攻撃の要である砲雷長·フランベルク·シルヴィア夏美と、舵を握る航海長·大村耕作に指示を下す。

 

全火器自由(オールウェポンズフリー)! 大村、進路そのまま!····シルヴィア、主砲発射用意!敵のブリッジを潰す。一撃で当てろ!!」

「りょうか~い。大村君、進路そのままね~」

「了解!」

 

軽口を叩きつつ、シルヴィアは素早く照準を固定する。

 

「照準、来た!!」

「撃ち方、始めっ!」

()ーっ!」

 

艦体上下に1基ずつある無砲身2連装フェザー砲から、僅かな時差を挟んで薄緑色のビームが4本放たれ、少し離れて並走する『J·G·エバーツ』も主砲を放った。

数秒後、ビームが向かった先で爆炎らしき煌めきが走った。

手応えありかも知れないが、確認している暇はない。

続いて、

 

「魚雷、全門発射!」

「撃ーっ!」

 

ズンズンズン!と3度の軽い衝撃と共に、大型空間魚雷が3本、炎と煙の尾を引きながらガミラス艦目掛けて走っていった。

 

「艦首下げ30、反転取り舵210!」

「艦首下げ30、反転取り舵210、よーそろー!」

 

『カミカゼ』は姿勢制御スラスタをふかして艦首を下げつつ反転。本隊である『オーテアロア』『キヨカワマル』を目指す。

と、その時、敵艦隊──3隻だが──のあたりで大きめの火球が続け様に2つ煌めき、その一瞬後には更に大きな火球が1つ煌めき、そして消えた。

 

「戦果確認と被害確認、どうだ!?」

 

嶋津の問いに、観測士は初めて聞く上ずった声で応える。

 

「せ、戦果、敵艦3隻とも反応消失。轟沈!敵艦全て撃沈ですっっ!!!」  

「本艦被害なし!」

 

艦橋がドッと沸いた。

続いて、

 

「旗艦より入電。『我ガ隊全艦健在、敵艦ハ全テ撃沈ヲ確認。全艦直チニ合流セヨ』です!」

 

久しぶりというか、局地戦とはいえガミラス戦役では初めての完全勝利に、艦橋は再び沸く。

嶋津は頷くや、マイクを艦内一斉放送に切り替えた。

 

「艦長だ。我が隊はたった今の戦闘でガミラス艦3隻を撃沈。味方の損害はない」

 

艦内への出入口から歓声が漏れ聞こえてきたが、嶋津は言葉を続ける。

 

「しかし、あくまで第1ピリオドを無失点で取ったに過ぎない。資源を無事地球に荷下ろししてこそ成功だ。兜の緒を締め直し、引き続き警戒に当たってもらいたい」 

 

『カミカゼ』ら7隻の護衛艦は槍騎兵から護衛《エスコート》に戻るべく、『オーテアロア』『キヨカワマル』に近づいていった。

 

 

   ──『オーテアロア』船橋──

 

「敵軽巡から、沈没直前に大出力での通信波発信を確認しました」

「うむ」

 

通信士からの報告に、ブリッジクルーは一様に渋面になった。

 

「····敵もさる者だな」

 

土方は内心、たった今(たお)した敵艦の乗組員を称賛した。

敵艦はこちらの艦が波動推進に変わった事を知らなかったのだろう。突撃していく艦への阻止砲火は空しく空を斬るだけだった。

しかし、放たれた魚雷22発に対する迎撃は正確で、少なくとも5発は阻止されたようだ。

敵が3隻しか出してこなかったのと、序盤の油断(?)が致命的になったがためにこちらの一方的勝利になったものの、あと2隻多かったらどうだったか。

そして、旗艦であろう敵軽巡が断末魔に放った通信は、我々(残存地球艦)が『ヤマト』と同じ心臓を得た事を、太陽系内に潜む味方に知らしめたと断じるべきだろう。

 

だが、ともあれ、第1セットを奪取した事には変わりない。

土方は極東管区本部への報告を指示した。

 

──戦闘結果を打電して数分後、土方宛に電文が送られてきた。

なぜか件名が真っ白で、発信者名は極東管区参謀長·芹沢虎鉄。

 

「······~~~~·······」

 

その電文を目にした土方は、数十秒沈黙した後、珍しく溜め息をついて、数時間ぶりに指揮官席に腰を下ろした。

 

「····司令?」

 

“鬼竜”らしからぬ挙動を案じた司令部員が声をかけると、土方は、

 

「問題ない。それより、この内容を各艦に通知してくれ」

 

と告げ、電文が載ったタブレットに閲覧済タップをすると、幕僚に返して瞑目し、しばらく一言も発しなかった。

 

 

      ──『カミカゼ』──

 

「艦長、旗艦から各艦宛電文です」

「ハイな」

 

通信士から電文データが表示されたタブレットを受け取った嶋津は、しばらく無言で見入っていたが、閲覧済のタップをして通信士に返した。

そして一人ごちる。

 

「作戦名、(仮)『トムと○ェリー』で著作権もクリアとは。····芹沢参謀長(あのおっさん)、どんな魔法(力技)を使ったのやら····」




あと1~2話で第1次輸送作戦が終わります。
その後、新型艦登場編になります。

なまこみたいな更新で申し訳ありませんm(__)m
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